小学6年生のユウタは1年前、交通事故で父を亡くした。夏休みにひとり、父とよく来た山奥のダムへ虫を採りに行き、不思議な老人と出会う。しかし突然の雨で足を滑らせ意識を失い、目覚めると目の前には小さな女の子・さえ子がいた。ダムに沈んだはずの村があるところをみると、30年以上前にタイムスリップしたらしい。さえ子はユウタに“いとこ”として接し、同じ年のケンゾーも現れる。さえ子に連れられ訪れた家では、おばあちゃんが優しくユウタを出迎える──。
川口雅幸が2004年、ホームページに連載を始めた物語が人気を呼び、出版に至った“シンデレラ小説”が原作だ。監督は「ワンピース」シリーズディレクターの宇田鋼之介。「白蛇伝」(58)から始まる東映アニメーションが総力を挙げたオリジナル作品だ。美しい自然、繊細な人物描写、太いラインで余白を残したシンプルな作画。作家のセンスを感じ取れる。
ユウタがタイムスリップするのは1977年(昭和52年)。キャンディーズやピンクレディー、スーパーカーがはやった時代に、現代の少年が迷い込む。ユウタの親が子供だった時代で、観客の親たちには懐しく、子供たちにはアナログな世界が新鮮だろう。
昆虫採集、花火、夜店、夏祭り、子供の友情、淡い初恋、友との別れ。ユウタは迷い込んだ村で1カ月、不思議な体験をする。物語の入り口と出口はファンタジーの形をとるが、大部分は村で過ごす夏休みに費やされる。ユウタを過去に導いた不思議な老人、さえ子の隠された秘密、現代と過去。そしてユウタとさえ子の絆が結ばれる涙のクライマックス。70年代に子供時代を過ごした大人に向けて作られたように思う。
ロボットアニメやSF全盛の日本製アニメーション。世界から“ジャパニメーション”とリスペクトされ、勢いは衰えない中、あえて主人公を70年代にタイムスリップさせた不思議な作品である。音楽は大林宣彦監督「ねらわれた学園」、篠原哲雄監督「天国の本屋 恋火」などのファンタジーを得意とする松任谷正隆。主題歌は松任谷由実が担当。クライマックスには松任谷由実のアルバム「時のないホテル」(80)収録の名曲「水の影」が使われる。
さえ子の未来を暗示する絶妙な選曲。音楽は観客の底に眠る感情を揺さぶる力を持つと、改めて感じさせられた。ホタルによる時を超えたエピソードは、松任谷正隆が音楽を担当した大林監督版「時をかける少女」を思わせ、美しい幕引きとなっている。
(文・藤枝正稔)
「虹色ほたる 永遠の夏休み」(2012年、日本)
監督:宇田鋼之介
出演:武井証、木村彩由実、新田海統、櫻井孝宏、能登麻美子、中井和哉、大塚周夫、石田太郎
5月19日、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.nijiirohotaru.com/
作品写真:(C)川口雅幸/アルファポリス・東映アニメーション
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