2020年05月24日

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、9月以降にオンライン開催

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 北海道夕張市で行われるゆうばり国際ファンタスティック映画祭の事務局は22日、今年の映画祭を9月以降にオンライン形式で開催すると発表した。日程は改めて調整するとしている。新型コロナウイルス感染症拡大の懸念が残るため、観客を集めた上映を断念した。

 実行委員会は「全国・海外から約1万人が来場する。来場者や運営スタッフ、市民ボランティア、学生ボランティア、そして映画関係者に感染するリスクを避け、健康と安全を最優先に考慮した」としている。

 コンペティション部門もオンライン上映とし、応募者には上映方式や審査上映について6月末ごろに案内する予定。

 ゆうばり映画祭は1990年に始まって以来「雪の中の映画祭」として親しまれてきたが、スキー客誘致との兼ね合いから近年は上映会場や宿泊施設の確保が困難になっていた。昨年3月の映画祭で、30回目を迎える2020年から夏季開催に変更することを発表。当初は8月28日から行うとしていたが、準備時間を考慮し、さらに遅らせる。

(文・芳賀恵)

写真:2019年映画祭のフォトセッション(C)ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019
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2020年04月08日

「アドリフト 41日間の漂流」ヨットで遭難、生還まで 壮絶実話の映画化

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 1983年、婚約したてのタミー(シャイリーン・ウッドリー)とリチャード(サム・クラフリン)は、世界旅行の資金を稼ぐため、ヨットでタヒチからサンディエゴへ向かった。出発から2週間後、ハリケーンに遭遇。巨大津波に飲み込まれてしまう。船室のタミーは目を覚ますが、ヨットは操縦不能で無線もつながらない。リチャードは大けがを負い、波に漂っていた。リチャードを助け出したタミーは、セーリングの知識を総動員して陸を目指す──。

 タミー・オールダム・アッシュクラフトが1983年、ハリケーンにより難破、漂流、生還するまでの41日間を記録した原作をベースに、アーロン&ジョーダン・カンデルが脚本化した。監督、製作は実際の集団遭難を映画化した「エベレスト3D」(15)のバルタザール・コルマウクル。

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 実際の海難事故を描いた映画は世界に数多くある。最近では1991年に米国でハリケーンにのまれた漁船を描いた「パーフェクトストーム」(00)があるが、生存者がいないため、出航後のエピソードは創作だった。一方、「アドリフト 41日間の漂流」は生還したタミーが書いた経験談がベース。生きて帰ることがあらかじめ分かっている。

 そこで作品は、実話を逆手に取った構成となっている。二人の出会い、恋愛に発展する過程、リチャードがヨットを運ぶ仕事を引き受け、出航からハリケーンに遭うまでの過去に、難破して漂流する現在が交差して展開する。

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 実話である制限がある中、平面的になりがちなドラマを時間軸を巧みに操って立体的に描く。漂流者や遭難者が見るという“ある現象”を大胆に取り入れ、ハリケーンの恐怖をダイナミックに再現。漂流する人物の心理を丁寧に描写した。テレビの実話再現番組のように陳腐ではなく、映画ならではの骨太な人間ドラマに仕上がった。

 遭難する現在のパートは、ウッドリーとクラフリンの二人芝居だ。タミーの船上でのサバイバル生活。漂流したリチャードは助けられるが、けがで寝たきりとなり、ほとんど動けない。大海原で絶望しつつ、二人は互いを頼って生きようとする。

 製作も務めたタミー役のウッドリーがいい。主演したSFアクション「ダイバージェント」シリーズのヒロインから一転、ぎりぎりの精神状態の中、生還を信じてあきらめない姿を好演した。空腹のリチャードのために海に潜り、もり一本で魚を仕留めるアクションも披露。柔軟な演技に共感し、自然と物語に引き込まれる。再現ドラマの域を超え、ひねりの利いた壮絶な実話映画に仕上がった

(文・藤枝正稔)

「アドリフト 41日間の漂流」(2018年、英・米)

監督:バルタザール・コルマウクル
出演:シャイリーン・ウッドリー、サム・クラフリン

2020年公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://adrift-movie.jp/

(C)2018 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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2020年04月02日

「ポップスター」ナタリー・ポートマン主演 輝ける歌姫の栄光、転落、再起

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 2000年、米国。同級生による銃乱射事件で、生死のふちをさまよったセレステ(ラフィー・キャシディ)。姉のエリー(ステイシー・マーティン)と作った犠牲者の追悼曲が異例の大ヒットとなり、敏腕マネージャー(ジュード・ロウ)の手で一気にスターダムを駆け上がる。

 18年後。人気の絶頂を極めたセレステ(ナタリー・ポートマン)だったが、アルコールとスキャンダルにつまずき、活動休止に追いやられる。悪魔に魂を売ってでも再びステージで輝きたい歌姫は、再起をかけたツアーを企画する──。監督、脚本は「シークレット・オブ・モンスター」(2015)で長編監督デビューした俳優のブラディ・コーベット。

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 作品は2部構成だ。幕開けは1999年。銃乱射に巻き込まれた14歳のセレステは、ショービジネス界に入り、スターの階段を上っていく。しかし、マネージャーとエリーが男女の関係となり、姉妹の関係にひびが入る。少女時代をラフィー・キャシディが演じる。2017年からの後半では、ポップス歌手として大スターとなった31歳のセレステ役を「レオン」(94)、「ブラックスワン」(10)のナタリー・ポートマンが演じる。

 銃乱射の悲劇をばねに、スター街道を走る少女を描いており、前半が秀逸だ。まず乱射事件の描写がショッキングで凍りつく。重傷のセレステはベッドの上で歌を作り、人々の共感を得てショービジネスの世界へ。普通の少女が芸能界に入ったことで、自堕落な生活に陥る過程が生々しい。キャシディが素人っぽいセレステを魅力的に演じている。

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 しかし、後半のセレステは貫禄の大スターになっており「17年の間に何があったのか」と思うほど変貌している。恐らく米ポップ界の大スター、マドンナを参考にしたのだろう。精神的に追い詰められる歌姫の舞台裏ドラマが、前半とかみ合わずバランス悪く感じた。

 前半は銃乱射事件に揺れる少女の心を丁寧に掘り下げたが、後半はショービジネスの裏側が楽屋落ち的に明かされる。セレステの家族のドラマに加え、ポートマンの夫のバンジャマン・ミルピエが振り付けたクライマックスのステージ。全体に欲張りすぎた印象だ。完ぺきだった前半の足を凡庸な後半が引っ張ってしまい、惜しい作品となった。

(文・藤枝正稔)

「ポップスター」(2018年、米)

監督:ブラディ・コーベット
出演:ナタリー・ポートマン、ジュード・ロウ、ラフィー・キャシディ、ステイシー・マーティン、ジェニファー・イーリー

2020年公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/popstar/

作品写真:(C)2018 BOLD FILMS PRODUCTIONS, LLC
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2020年03月01日

「レ・ミゼラブル」“花の都パリ”の闇 貧困と格差を描く衝撃作

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 フランス、パリ郊外のモンフェルメイユ。ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台は、危険な犯罪地域と化していた。犯罪防止班に加わった警官のステファン(ダミアン・ボナール)はパトロールするうち、複数のグループが緊張関係にあると察知する。ある日、少年イッサが起こしたささいな出来事が大騒動に発展。取り返しのつかない方向へと進み始める──。監督、脚本は初長編となるラジ・リ。

 カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した「レ・ミゼラブル」。フランスの貧困や格差社会リアルに浮かび上がらせる作品だ。

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 2018年夏。サッカーW杯優勝に歓喜するパリ市民たちの実写映像で物語は幕を開ける。一転、舞台はパリ郊外の古ぼけた団地へ。ベテラン警官のクリスとグワダが率いる犯罪防止班に、新しくステファンが加わった。ステファンはパトロール先で、緊張状態のギャングと、市民に横暴に接するクリスの姿だった。街で暮らす少年イッサがある日、サーカス団から子どものライオンを盗み、ギャングたちが一触即発に。やがて街全体を揺るがす大惨事に発展する。

 舞台となるモンフェルメイユは1960年代、分譲団地として建設されたが、パリや空港に直結する高速道路計画がとん挫・陸の孤島となり、貧しい人々や移民が暮らす地域となった。治安は悪化し、複数のギャングが一帯を牛耳る無法地帯。取り締まる警官も街の流儀にならい、違法行為に手を染めていた。イッサによるライオン盗難事件は、かろうじて保たれていた地域の均衡を崩すことになる。

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 “花の都パリ”とかけ離れたモンフェルメイユの実態。退廃的な負の空気に包まれた街が、小さな事件を着火点に、少年たちのうっぷんを爆発させるクライマックスを呼ぶ。ラジ・リ監督は地元出身。シビアな実情をあぶりだす衝撃作だ。

(文・藤枝正稔)

「レ・ミゼラブル」(2019年、仏)

監督:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ、イッサ・ペリカ、アル=ハサン・リ

2020年2月28日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://lesmiserables-movie.com/

作品写真:(C)SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS
posted by 映画の森 at 15:57 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月29日

韓国の映画人、「ポスト・ポン・ジュノ法」制定求め署名 映画産業の構造改革求める

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 「次世代のポン・ジュノを生み出すためには映画産業の構造改革が必要」――。韓国の映画人らが、映画産業における「格差」を解消する法案(通称「ポスト・ポン・ジュノ法」)に賛同し、署名を行った。

 署名を呼びかけたのは「映画産業の構造改善法制化準備の集い」。同団体が作成した映画産業の構造改善を求める宣言書に、2月26日までに1325人が賛同した。

 同団体が求めるのは次の3項目だ。まず、大企業の映画配給業と上映業の兼業制限。報道資料によると、韓国ではシネコン大手3社(CJ・ロッテ・メガボックス)のシェアが大きく、国内の全映画館の入場料金の97%を占める。3社は配給も手掛けるため、利益が社内のみで循環し、製作者や出演者、スタッフに還元されないことが問題だとの指摘だ。

 次に、特定の映画のスクリーン独占・寡占の禁止だ。昨年、ある人気の映画が一日の上映延べ回数の81%を占めたという。この日の全国の上映作品数は106本だった。実際に韓国のシネコンではスクリーンの半分以上をたった一本のブロックバスター映画が占めることが珍しくない。そのたびに「多様性」が叫ばれるが、なかなか改善しないのが実情だ。同団体は、韓国の映画館の売上高の上位10本の合計額は全体の46%を占め、米国(33%)、日本(36%)に比べて偏りが顕著だと指摘する。

 三つ目はインディペンデント映画・アート映画の製作と、それらを専門に上映する映画館への支援の制度化。インディペンデント映画・アート映画の一般公開数は全体の9.5%に達するが、観客のシェアはわずか0.5%だという。

 署名簿には俳優のムン・ソリ、ソル・ギョング、アン・ソンギ、オム・ジョンファ、イ・ソンギュン、チョン・ウソン、監督のイム・グォンテク、イム・スルレ、イ・ミョンセ、ヤン・イクチュンらが名を連ねている。

 法案の名前となっているポン・ジュノ監督の名前は署名簿にはない。「パラサイト 半地下の家族」のアカデミー賞受賞も、CJエンターテインメントが配給を手掛けたからこそ実現したとも考えられるわけで、単なる「大企業憎し」の発想だけではこの問題は解決しないと思われる。

 ただ、報道資料には「多くの映画人から『大企業と契約関係があり、今すぐ署名するのは難しい。理解してほしい。しかし意志は同じだ』との声が寄せられた」とある。すぐれた映画人を発掘・育成するには、さまざまな映画が観客の目に触れることが不可欠だ。どこかに眠る「未来のポン・ジュノ」のために、映画人がどう取り組んでいくのかに注目したい。

(文・芳賀恵)

posted by 映画の森 at 14:58 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする