2019年07月03日

「サマーフィーリング」恋人が突然世を去った 細やかに描かれる喪失と再生の物語

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 30歳のサシャは、夏の盛りに突然世を去った。恋人のロレンス(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)は、サシャの妹ゾエ(ジュディット・シュムラ)と顔を合わせる。突然の別れが訪れたベルリン。深い悲しみが残るパリ。生活が少しずつ戻るニューヨーク。3つの都市で3度の夏を過ごし、残された人たちは人生の光を取り戻していく──。

 ミカエル・アース監督の長編2作目。アース監督は昨年、3作目の「アマンダと僕」で東京国際映画祭で最高賞「東京グランプリ」を受賞した。「アマンダと僕」と「サマーフィーリング」には共通点が見い出せる。「サマーフィーリング」のロレンスは恋人を失い、「アマンダと僕」はテロで弟が姉を亡くした。喪失と再生はアース監督の一貫したテーマのようだ。

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 作品のアプローチも2作品は共通している。傷ついた主人公の心は、人々との触れ合い、なにげない日常を通じ、淡々と静かに癒されていく。心の解放を表すかのように、自転車や公園が使われる。監督は非常にパーソナルな出来事を繊細に映していく。個人の再生を時間をかけて描いた「サマーフィーリング」に対し、「アマンダと僕」では残された人々の絆にも踏み込んだ。

 恋人のサシャを失ったロレンスと、サシャの妹ゾエの関係は、友達以上恋人未満の親密さ。ロレンスの姉、仲間たち、姉の店で働く女性など、周囲の人々との触れ合いの中、ロレンスの心は癒されていく。

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 ダイレクトに悲しいシーンはあえて描かない。前後の場面を使い、ロレンスの心の揺れが表現される。平和で穏やかな日常の風景と対比させるように、取り残された主人公の喪失感を際立たせる。心に染み入る演出だ。公開中の「アマンダと僕」が気に入った人には、おすすめの作品。

(文・藤枝正稔)

「サマーフィーリング」(2015年、仏・独)

監督:ミカエル・アース
出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジュディット・シュムラ、マリー・リビエール、フェオドール・アトキン、マック・デマルコ

2019年7月6日(土)、シアターイメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://summerfeeling.net-broadway.com/

作品写真:(C)Nord-Ouest Films - Arte France Cinema - Katuh Studio - Rhpone-Alpes Cinema

posted by 映画の森 at 20:47 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月24日

「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」坂口健太郎&吉田鋼太郎、父子の絆を絶妙な呼吸で

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 インターネットのオンラインゲームを通した父と息子の絆を描いた「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」が公開中だ。東京都内でこのほど開かれた関連イベントに主演の坂口健太郎、吉田鋼太郎が参加し、撮影を振り返った。

 互いに距離ができてしまった父親と息子が、素顔を隠して人気ゲーム「ファイナルファンタジー」でつながり、ともに戦いながら絆を取り戻していく物語。実話をもとにした人気ブログの映画化だ。

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 父親を演じた吉田は「セリフの少ない寡黙なお父さん。難しい役だったが、健太郎が受け止めてくれて、いい作品ができた」と感謝。息子役の坂口は「鋼太郎さんとせりふのやり取りが少なく、せりふに頼れなかった。目があった瞬間の微妙な距離感とか、瞬間、瞬間の反応を大事にしようと思った。鋼太郎さんが父親でいてくれて(役を)構築できた」と振り返った。

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 吉田は実生活でも20代の息子の父親。「一緒にゲームを買いに行ったりした小さな時代があって、大きくなって、いつの間にか話をしなくなった。その過程が胸にぐっときた。共感できるところが多かった」と話した。

 吉田について坂口は「紳士でダンディーな印象があった。(実際には)すごくチャーミングで驚いた。一緒に芝居して、好きになっちゃう。すごいと思う」。吉田は坂口を「優しく、穏やかな好青年。芝居の集中力はすごい。せりふのやり取りがあまりない中、一言に思いを込めて返してくれる。きっちりできる俳優」と絶賛した。

(文・写真 岩渕弘美)

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「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」(2019年、日本)

監督:野口照夫(実写パート)、山本清史(ゲームパート)
出演:坂口健太郎、吉田鋼太郎、佐久間由衣、山本舞香、前原滉

2019年6月21日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/hikarinootosan/

作品写真:(c)2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会 マイディー/スクウェア・フェニックス
posted by 映画の森 at 15:22 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月15日

「女の機嫌の直し方」男女脳の違い研究、トラブル解決 結婚式コメディー

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 大学で人工知能(AI)を研究する真島愛(早見あかり)は、「男女脳の違いによる女の機嫌の直し方」をテーマに卒業論文を執筆している。データを集めるため、結婚式場でアルバイトをスタート。上司のウェディングプランナー・青柳誠司(平岡祐太)とある結婚式を担当し、控室に顔を出すと、新郎・北澤茉莉(松井玲奈)と新郎・悠(佐伯大地)の間にトラブルの予感──。

 黒川伊保子の同名ベストセラーが原案のコメディー作品。全3回のテレビドラマを、劇場映画版として再編集した。監督は日本テレビでバラエティー番組を中心に担当する有田駿介。

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 結婚式場を舞台に、式直前にトラブルを抱えた新郎新婦。火種は招待客、新郎の母らに飛び火し、最悪な状態に陥るが、「男女脳の違い」を最新AIで研究した愛が次々と問題を解決していく。

 時間を上手に前後させ、ほぼ全編式場内だけで話を進める構成が秀逸だ。結婚式が進む様子をメーンに、トラブルの原因が回想として織り込まれる。トラブルのエピソードはそれぞれよく練られている。

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 披露宴の直前に汚れてしまったウェディングドレス。新郎の同僚・小早川梓(水沢エレナ)の突然の余興拒否。めでたい席で熟年離婚の危機に陥る新婦の叔父(金田昭雄)と叔母(原日出子)。優柔不断な新郎・悠のせいで起きる新婦・茉莉と新郎の母・晴美(朝加真由美)の女性同士のバトル。さまざまなパターンで男女脳の違いを示す。

 バラエティー番組で培われた有田監督の演出は、ツボを押さえて小気味良く、笑いと涙のバランスもいい。アイドルグループ「ももクロ」の早見あかり、「SKE48」の松井玲奈が、女優としてめざましい成長を見せる。朝加真由美、原日出子、金田明夫らベテランがドラマをうまく引き締めている。

(文・藤枝正稔)

「女の機嫌の直し方」(2019年、日本)

監督:有田駿介
出演:早見あかり、平岡祐太、松井玲奈、佐伯大地、水沢エレナ

2019年6月15日(土)、ユナイテッドシネマアクアシティ台場ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kigen-movie.official-movie.com/

posted by 映画の森 at 10:36 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月14日

「パージ:エクスペリメント」シリーズ4作目「すべての犯罪が合法になる」スリラー

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 経済が崩壊した米国。政権を握るNFFA(新しいアメリカ建国の父たち)は犯罪率を抑えるため、すべての犯罪を12時間合法化する「パージ法」の実験的導入を決定。ニューヨークのスタテン島の住民に報酬5000ドルを約束し、サバイバル競争をスタートさせる──。

 「パージ」(13)、「パージ:アナーキー」(14)、「パージ:大統領令」(16)に続くシリーズ4作目。製作総指揮、脚本はジェームズ・デモナコ。製作は「パラノーマル・アクティビティ」シリーズのジェイソン・ブラム、「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイ。監督は「ヘルウィーク」(17・未)のジェラード・マクマリー。

 「パージ法」に則って展開するスリラーは、過去3本で描き切ったと思われたが、今回は意表をついて時間軸をさかのぼる。法の制定前、実験段階を描く前日譚になっている。

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 実験ではスタテン島を外部と遮断。島に残った住民には、映像が記録できるコンタクトレンズの装着と引き換えに、報酬5000ドルが約束される。腕には追跡装置が埋め込まれ、政府の監視下に置かれるのだ。
 
 残った住民は黒人やヒスパニック系の低所得者たち。12時間をやり過ごすため自宅に閉じこもる人。安全な教会に集まる人。一方で、ギャングの抗争に「パージ法」を利用する者も出現。島民たちのサバイバルが始まる。

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 島という閉ざされた場所が舞台なのは、ジョン・カーペンター監督「ニューヨーク1997」(81)を思わせる。監獄となった近未来ニューヨークの島に大統領機が墜落。行方不明になった大統領を、元特殊部隊員の男が救出に向かう物語だ。今回脚本を書いたデモナコは、カーペンター監督「要塞警察」(76)のリメイク版「アサルト13 要塞警察」(05)の脚本も担当した。
カーペンター監督の影響は、次世代に受け継がれたようだ。

 犯罪が増え続ける国内のガス抜きを目的に、12時間だけ殺人と犯罪を政府が肯定する。暴力を通して世相を映したスリラーといえよう。

(文・藤枝正稔)

「パージ:エクスペリメント」(2018年、米)

監督:ジェラード・マクマリー
出演:イラン・ノエル、レックス・スコット・デイビス、ジョイバン・ウェイド、クリステン・ソリス、スティーブ・ハリス

2019年6月14日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://purge-exp.jp/

作品写真:(C)2018 Universal Pictures
posted by 映画の森 at 11:17 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月28日

「アナと世界の終わり」英国発の青春ゾンビミュージカル 斬新アイデアをバランス良く

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 英国の田舎町に父と暮らす高校生のアナ(エラ・ハント)は、さえない同級生とパッとしない毎日を送っていた。ところがクリスマス、町にゾンビがやってきた。アナたちは、日頃の鬱屈した想いを発散するかのように、高らかな歌声と軽快なリズムにのってゾンビに立ち向かう──。

 青春とゾンビとミュージカル。交わるはずのないジャンルが見事に融合した「アナと世界の終わり」。ジョン・マクフェール監督の長編2本目で、スペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭を皮切りに各国のファンタスティック映画祭で話題を呼んだ作品だ。

 ゾンビ映画の原点は、ジョージ・A・ロメロ監督「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(68)である。死者が蘇って人間を襲い、噛みつかれた人間は死に、ゾンビとなって人間を襲う。ロメロ監督が生んだルールは、その後のゾンビ映画の定型になり、日本でも最近「カメラを止めるな!」が話題になった。

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 一方、1960年代に世界的なブームとなったミュージカル映画は、「ラ・ラ・ランド」(16)や「グレイテスト・ショーマン」(17)が大ヒットするなど、21世紀に入って復活の兆しを見せている。

 映画業界の二つのキーワード、ゾンビとミュージカルを掛け合わせたのが「アナと世界の終わり」だ。米国から派生した英国のゾンビ映画は秀作ぞろい。「28日後...」(02)や「ショーン・オブ・ザ・デッド」(04)など、数こそ少ないが良質だ。

 「アナと世界の終わり」は、ゾンビ映画には珍しく高校生が主人公。ミュージカル形式にすることで、米国映画をパロディーにしているようだ。クリスマスの高校で、突然生徒が秘めた思いを歌で吐露する。食堂で歌い踊るシーンや、オタクを体育会系がいじめる表現などは、米国製の青春映画を英国のフィルターを通して戯画化したようだ。

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 ゾンビ映画にはお約束のえげつないスプラッター描写、終末的な世界観。対照的で不釣り合いなクリスマスの背景がポイントになる。青春学園ものならではの友情と恋、親子愛、英国流の黒い笑い、歌と踊り。斬新なアイデアが抜群のバランスで配分されている。

(文・藤枝正稔)

「アナと世界の終わり」(2017年、米・英)

監督:ジョン・マクフェール
出演:エラ・ハント、マルコム・カミングス、サラ・スワイヤー、クリストファー・レボー、マルリ・シウ

2019年5月31日(金)、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://anaseka-movie.jp/

作品写真:(C)2017 ANNA AND THE APOCALYPSE LTD.
posted by 映画の森 at 23:42 | Comment(0) | 英国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする