2021年02月13日

ゆうばり映画祭作品の上映会 グランプリ作品「湖底の空」も

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 昨年9月にオンラインで開催された第30回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020の舞台あいさつ付き上映会が2月11日、北海道夕張市で行われ、グランプリ作品「湖底の空」の佐藤智也監督らが駆けつけた。

 冬の風物詩だったゆうばり映画祭は2020年から夏開催になることが決まっていたが、その初回は新型コロナウイルス感染防止のため、オンライン開催に転換せざるをえなかった。

 今回の上映会は、スクリーンでも映画を楽しんでもらいたいと企画されたもので、1月末から東京、神戸、佐賀、名古屋のミニシアターで順次開催。夕張市が最終回となった。

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 複合施設「りすた」で行われた上映会は、2019年3月に廃線となったJR北海道石勝線夕張支線のラストランを描く「夕張支線ノスタルジア」(西田知司監督)でスタート。続いてファンタスティック・ゆうばり・コンペティション部門グランプリとシネガーアワード(批評家賞)を受賞した「湖底の空」が上映された。

 「湖底の空」は日中韓の合作。韓国インディペンデント映画界で活躍する女優イ・テギョンが主演し、日中で活動する阿部力、韓国で活動する武田裕光らが共演している。

 登壇した佐藤監督は韓国映画界との縁について「2000年にゆうばりで『L’Ilya』が審査員特別賞を受賞し、姉妹映画祭の富川国際ファンタスティック映画祭に招かれたことがきっかけ」と明かし、「ゆうばりで生まれた縁を今後も広げていきたい」と語った。

 中国語や日本語のせりふをこなしながら双子の一人二役を高い演技力で表現したイ・テギョンは、ビデオメッセージを寄せ「3カ国のみんなが一丸となって力を注いだ映画。心が温かくなってくれたらうれしい」とあいさつした。

 「湖底の空」は新宿K‘s cinemaで今夏に一般公開される予定。

今年は9月に開催

 2021年の映画祭は9月16〜20日に開催することが決まり、作品の募集も始まった。現時点では、夕張市内の上映とオンライン上映のハイブリッド方式が予定されている。

 ただ、ゆうばり映画祭には逆風が吹く。最近、参加者の宿泊と上映に使われていた市内のホテルの運営会社が経営破綻したのだ。コロナ禍による観光客の激減が背景だった。市内には他に大規模ホテルがなく、代わりの宿泊場所や上映会場は未定だ。

 2007年の市の財政破綻に続く最大のピンチに直面し、キャッチフレーズの「世界で一番、楽しい映画祭」を実現できるか、これからが正念場となる。

(文・写真 芳賀恵)

「湖底の空」公式サイト
https://www.sora-movie.com/movie

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭映画祭
https://yubarifanta.jp

作品エントリーページ
https://yubarifanta.jp/entry2021en/

写真1:舞台挨拶する佐藤智也監督(左)
写真2:「湖底の空」(映画祭事務局提供)
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2021年02月07日

「哀愁しんでれら」幸せに始まったおとぎ話 事態へ思わぬ方向へ

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 海辺の町の児童相談所で働く福浦小春(土屋太鳳)は、自転車店を営む父、大学受験を控えた妹、祖父と4人で暮らしている。母親は小春が10歳の時、「あなたのお母さんをやめました」と吐き捨てるように言ったまま消息不明になった。4人は平和に暮らしていたが、ある夜突然の不幸に見舞われる──。

 自主製作映画「かしこい狗は、吠えずに笑う」(12)のほか、ドラマや映画脚本を書いてきた渡部亮平による初監督劇場作品。自らの「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016」グランプリ企画で監督・脚本を担当した。

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 継母にいじめられていた娘が、王子に見初められ幸せになる童話「シンデレラ」。題名の通り童話をなぞるように始まるが、話が進むにつれ、観客の予想の斜め上方向に展開していく。「裏」おとぎ話サスペンスの趣がある。明るく前向きなイメージがある土屋と田中が、後ろ向きで暗い世界へ踏み込む。

 福浦家の夕食時、突然不幸が襲う。祖父が倒れて残りの家族が病院に向かう途中、自損事故を起こす。酒を飲んだまま運転していた父は警察に連れて行かれ、留守宅は火の不始末で火事になり、自転車店は廃業に追い込まれる。小春が恋人の家に行くと、恋人は浮気の真っ最中。茫然自失で夜道を歩いていた小春は、踏切に倒れていた男性を助ける。泥酔していた男性は、タクシーで去り際に「お礼をしたい」と小春に名刺を渡す。男性はクリニック経営者の泉澤大吾(田中圭)だった。窮地の小春は大吾に連絡する。

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 小春と大吾の出会いから、話は「シンデレラ」のように軽妙に進んでいく。しかし、幸せすぎる展開が妙に心に引っかかり、ざわついた悪い予感が現実になる。きっかけは大吾の8歳の一人娘、ヒカリ(COCO)だ。一見人なつこい少女だが、明るい笑顔に隠された素顔が見え隠れする。同時に娘を偏愛する大吾の裏の顔も明らかに。小春は大吾親子に迎合するように変貌していく。

 ポイントは小春の過去だ。10歳で母に捨てられたトラウマから、自分も母と同じようにヒカリに接してしまう。スイッチが入った小春はモンスター・ペアレントとなり、凶悪事件を起こす。娘への思いが誤った方向に向かい、善悪の判断ができなくなり、行動はエスカレート。玉の輿のシンデレラストーリーは、予想を超えた場所に着地する。後味の悪さが作品の肝だ。

 土屋は「3度出演を断った」というネガティブな役で新境地。田中も王子様から一転、暗い本性を見せる怪演だ。今回が映画初出演の子役、COCOも大人顔負けの演技。おとぎ話をうまく利用しつつ、現代社会の闇を描いている。 

(文・藤枝正稔)

「哀愁しんでれら」(2021年、日本)

監督:渡部亮平
出演:土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、正名僕蔵、銀粉蝶、石橋凌

2021年2月5日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://aishu-cinderella.com/

作品写真:(C)2021「哀愁しんでれら」製作委員会

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2021年01月29日

「ヤクザと家族 The Family」綾野剛と舘ひろし初共演 変わりゆく極道と男たちの絆

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 荒れた少年期に地元の親分・柴咲(舘ひろし)に手を差し伸べられ、父子の契りを結んだ男・山本(綾野剛)。ヤクザの世界でのし上がり、愛する自分の“家族”と出会う。しかし、暴対法の施行でヤクザの世界は一変。山本は因縁の敵と戦う一方、大切なものを失うことになる──。日本アカデミー賞を6部門受賞した「新聞記者」(19)の藤井道人監督新作。

 題名が意味深だ。血縁関係のない親分子分は疑似家族のよう。子分は「親父」と呼び、親分も息子のようにかわいがる。家庭崩壊が問題になる昨今、ヤクザは本当の親子より強い絆で結ばれている。

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 1999年の地方都市。両親を亡くした山本は自暴自棄になり、糸が切れた凧のように荒れ狂っていた。売人から覚せい剤を横取りし、ヤクザの逆鱗に触れて半殺しの目にあうが、以前助けた親分・柴咲の名刺を持っていて命拾い。山本は柴咲と父子の契りを結び、極道に足を踏み入れる。

 時は下って2005年。一本気で名を挙げた山本は、敵対する侠葉会の川山(駿河太郎)と格闘して負傷。手当てをしてくれたホステスの由香(尾野真千子)を気に入り、一方的に愛を求める。柴咲組と侠葉組の争いは激化し、川山刺殺事件に発展。山本は罪を引き受け、刑務所に14年間服役する。2019年。出所した山本が見たのは、社会で居場所を失い衰退したヤクザたちだった。

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 三つの時代を通してヤクザの生き様が描かれる。暴力団対策法施行(1992年)の数年後から話は始まる。ヤクザ映画の金字塔「仁義なき戦い」(73)のようなヒロイックな高揚感はない。細々と裏稼業を営む男。足を洗い新たな人生を歩もうとする者。幼少期に山本にかわいがられ半グレとなった少年。血縁を超えた絆の強さ、逆に血のつながった家族の苦悩。

 綾野の役作りはアグレッシブだ。自暴自棄で弾けまくる19歳。男の色気が匂い立つ25歳。刑務所生活を経て枯れ果てた39歳。これに対し、受けの芝居に徹した舘ひろしがいい。舘のデビュー作「暴力教室」(76)や「男組 少年刑務所」(76)など東映作品で暴れまくった姿を見た身には、43年ぶりのヤクザ役、しかも親分とは感慨深い。

 北村有起哉、市原隼人、駿河太郎、磯村優斗らもインパクトある好演。藤井監督は「デイアンドナイト」(19)で描いた善悪の境界にさらに踏み込んでいる。一歩引いた冷めた視線で現代社会を映したネオノワール作品といえる。

(文・藤枝正稔)

「ヤクザと家族 The Family」(2021年、日本)

監督:藤井道人
出演:綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、岩松了、豊原功補、寺島しのぶ

2021年1月29日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://www.yakuzatokazoku.com/

作品写真:(C)2021「ヤクザと家族 The Family」製作委員会

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2021年01月27日

「花束みたいな恋をした」菅田将暉・有村架純、リアルな5年愛を等身大で

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 東京・京王線の明大前駅で終電を逃し、偶然出会った麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。好きな音楽や映画が一緒で恋に落ち、大学を卒業後はフリーターをしながら同棲を始める。「日々の現状維持」を目標に2人は就職活動を続けるが──。

 ドラマ「東京ラブストーリー」(91)、「最高の離婚」(13)、映画「カルテット」(17)の脚本家・坂本裕二の書き下ろし脚本。「ビリギャル」(15)、「罪の声」(20)の土井裕奏監督がメガホンを取った。

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 2015年からの5年間が描かれる。幕開けは2020年。一つのイヤホン音楽を聴く若いカップルを見た麦と絹が、同時にイヤホンに対するうんちくを語り出す。そこから一気に時代はさかのぼり、2人が出会った5年前の冬へ。時系列で物語が展開する。

 脚本の坂本が「菅田と有村に宛て書きした」というように、等身大の20代が絶妙なさじ加減で描かれる。好きな音楽や映画など趣味がことごとく一致する麦と絹。友達から始まった関係は「3回目のデートで告白しないと恋人になれない」という、「恋愛あるあるネタ」に基づき、麦の告白を絹が受けて交際が始まる。

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 ポップカルチャーネタを使った軽妙なセリフのキャッチボールが、オタク心をくすぐる。しかし、共通の趣味で結びついた2人に現実が突き付けられる。長い同棲の後、麦はイラストレーターの夢を捨てて就職。現実社会に飲み込まれて仕事人間になってしまい、絹の心は麦から離れていく。

 20代の男女の恋愛を等身大で描いた「花束みたいな恋をした」。ファミレスやイヤホンなどの設定や小道具、思わず共感してしまうポップカルチャーネタを巧みに使い、5年間を凝縮して描いている。滑稽に思えた冒頭のイヤホンネタが、最終的に二人にとってブーメランになる。恋の始まりと終わりを対比させるエピソードが秀逸だ。伏線回収が巧みな脚本、的確な演出に心動かされる。旬の菅田と有村の自然な演技で、多くの観客の心をつかむだろう。

(文・藤枝正稔)

「花束みたいな恋をした」(2020年、日本)

監督:土井裕泰
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫

2021年1月29日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://hana-koi.jp/

作品写真:(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

posted by 映画の森 at 20:08 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月03日

「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」ドニー・イェン、ぽっちゃりメイクで大暴れアクション・コメディー

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 超熱血刑事のフクロンは、ある事件をきっかけに証拠品保管室へ異動となった。さらに事件を追うあまり、結婚式用の写真撮影をすっぽかし、婚約者にも見放される。外回りがなくなって暴飲暴食も重なり、半年後にはポッチャリ刑事“デブゴン”になっていた──。

 主演は「イップマン」シリーズや「スター・ウォーズ」のスピン・オフ作品「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」(16)のドニー・イェン。谷垣健治監督は香港でスタントマンとして活動後、1995年のテレビドラマでドニーと出会い、数々の作品を一緒に作り、絶大な信頼を受けている。「るろうに剣心」シリーズでアクション監督も担った。

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 サモ・ハン・キンポー主演「燃えよデブゴン」(78)にオマージュをささげたアクション・コメディーなだけに、1980年代の作品を意識している。ブルース・リー主演「ドラゴンへの道」(72)のテーマ曲をアレンジした曲をバックに、作品のハイライトシーンを流す懐かしいタイプのオープニングだ。

 銀行強盗に巻き込まれたフクロンが、キレッキレのアクションを武器に強盗団を一網打尽にする妄想から一転。現実には強盗団とやるかやられるかの格闘を繰り広げている。ドニーは超絶技能を封印し、太った特別メイクの体型を生かし、コミカルだが切れのある動きを披露する。

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 プロットはどことなく米国の刑事が大阪で事件に巻き込まれる「ブラックレイン」(89、リドリー・スコット監督)を思わせる。香港で物語が動き出し、フクロンが重要参考人の日本人を日本へ護送することで展開する。東京の歌舞伎町、新橋、芝の増上寺付近でロケ撮影。クライマックスには東京タワーのセットでフクロンと悪役の島倉(承威)が壮絶な一騎打ちを見せる。

 デブ=運動音痴という固定観念を逆手に取り、ドニーが体重120kgのデブ刑事に変身。日本で大暴れするシンプルな物語で、ドニーのアクションを最大限引き出した。車内での接近戦、高低差を生かしたパルクール、ワイヤー・アクション。クライマックスはブルース・リー超えの高速ヌンチャクさばきだ。

 日本人キャストにも注目だ。フクロンと絡みの多い訳ありヅラ刑事・遠藤に竹中直人。やくざの親分・東野に渡辺哲。歌舞伎町やくざに「忍者狩り」(15)の三元雅芸。芸人のバービーも少し顔を見せている。

 谷垣監督は外国人が見た日本を確信的にコミカルに描き、ドニーのアクションを大々的にフィーチャーした。画面から「面白い映画を作る!」という意気込みが感じられて心地よい。のんびりしたお正月にぴったりで、香港と日本の才能が融合した楽しい映画だ。

(文・藤枝正稔)

「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」(2020年、香港)

監督:谷垣健治
出演:ドニー・イェン、ウォン・ジン、ルイス・チョン、テレサ・モウ、ニキ・チョウ、竹中直人

2021年1月1日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://debugon-tokyo.jp/

作品写真:(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

posted by 映画の森 at 16:28 | Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする