2017年02月22日

「愚行録」妻夫木聡「確実に心に傷跡を残す作品。人間の愚かさ感じ取って」

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 第73回ベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門出品作「愚行録」が2017年2月18日公開され、主演の妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、石川慶監督らが東京都内で舞台あいさつした。

 直木賞候補となった貫井徳郎の同名推理小説を映画化。ロマン・ポランスキー監督らを輩出したポーランド国立映画大学で演出を学んだ石川監督の長編デビュー作。人間の嫉妬やねたみ、羨みや駆け引きなど、日常的に積み重なる「愚行」が絡み合う様を描いたミステリーだ。

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 主人公の週刊誌記者・田中を演じた妻夫木は、出演を決めた理由を「直感。石川監督の存在、原作に興味を持ち、やりたいと思った。原作は田中の目線で描かれておらず、性格や人間像が想像できず期待も多かった。満島さんときょうだいを演じ、話をしなくても通じ合う部分があり、とても安心した。心強かった」と語った。

 妻夫木の妹・光子を演じた満島は「光子の生い立ちと似た人の話を石川監督と長くした。地に足がついていない感覚で『もしかしてこのやり方、間違っているのでは』と思った撮影だったけれど、一番シンプルに伝わる方法を見つけ、役を作り上げた」と振り返った。

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 撮影はポーランドのピオトル・ニエミイスキが担当。臼田は「監督の初長編作で、現場に新しい風が吹いていた。これほど共演者と顔を合わせてお芝居しない現場はなく、完成した映画を初めて見た時が一番新鮮だった。まるで知らない映画を見るような感覚」と話した。

 作品について妻夫木は「深い泥沼に浸かり、あまり明るい話ではないけれど、確実に心に何かの傷跡を残す作品。人間の愚かさを感じ取ることができ、皆さんに役立つものもあるのではと思う」と話していた。

「愚行録」(2017年、日本)

監督:石川慶
出演:妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣

2017年2月18日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gukoroku.jp/

作品写真:(C)2017「愚行録」製作委員会
タグ:イベント
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2017年02月21日

「百日告別」最愛の人を突然失った痛み 台湾トム・リン監督、実体験を映画化

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 最愛の妻を突然亡くした実体験を、台湾青春映画「九月に降る風」(08)のトム・リン監督が映画化した。

 台湾の路上で多重事故が起きた。平和な日常が一瞬で非日常に変わる。シンミン(カリーナ・ラム)は婚約者レンヨウを亡くした。ユーウェイ(シー・チンハン)は妊娠中の妻シャオエンを失った。最愛の相手の死を受け入れられない二人は、喪失感に押しつぶされそうになりながら、初七日を迎える──。

 初七日、三十五日、四十九日と行われる合同の法事。縁のなかった他人同士が、事故に巻き込まれた共通点で山の上の寺に集まる。何度か顔を合わせるうち、奇妙な連帯感が生まれていく。しかし、法事が終われば再び、それぞれ孤独な喪失感と向き合わなければならない。

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 シンミンは調理師のレンヨウと、レストランを開く夢があった。メニューの開発を兼ねて新婚旅行する予定だった沖縄に、シンミンは一人旅立ち、孤独を改めてかみ締める。一方、ユーウェイはピアノ教師だった妻の教え子の家を訪ね歩き、レッスン料を返していく。そして二人は、法事の節目である「百日」を迎える。

 「百日告別」は悲惨な事故シーンで幕を開ける。それぞれ事故車に乗り合わせ、一命をとりとめた二人。もうろうとする意識の中、病院で初めて現実を知る。怒りと悲しみが入り乱れ、我を失うユーウェイに、親族たちは理解を示さない。その姿は監督自身の体験から生まれたのではないだろうか。

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 心に穴の開いた二人をよそに、時は無情に、刻々と過ぎていく。合同の法事を節目にしながら、二人は喪失感を埋めるため動き出す。一人向かった沖縄。島の人々の優しさや風景が、言葉の通じないシンミンの心を癒やしていく。

 残された人が亡き人を思う気持ちは、日を追うごとに募るものだろうか。監督自身が亡き妻への思いを整理し、映画にすることが、癒やしの儀式だったのかもしれない。監督の痛みがダイレクトに伝わり、観客も言い知れぬ痛みと悲しみを共有する。

(文・藤枝正稔)

「百日告別」(2015年、台湾)

監督:トム・リン
出演:カリーナ・ラム、シー・チンハン、チャン・シューハオ、リー・チエンナ、ツァイ・ガンユエン

2017年2月25日(土)、渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.kokubetsu.com/

作品写真:(C)2015 Atom Cinema Taipei Postproduction Corp. B'in Music International Ltd. All Rights Reserved
タグ:レビュー
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2017年02月20日

「ラ・ラ・ランド」夢の街で出会った男女 歌と踊りで紡ぐ甘くほろ苦い人生 オスカー14部門候補の話題作

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 夢追い人が集まる米ロサンゼルス(L.A.)。女優を目指して映画スタジオのカフェで働くミア(エマ・ストーン)は、オーディションに落ちるばかり。ある夜、場末のバーでピアノを引くセブ(ライアン・ゴズリング)に出会う。前作「セッション」が注目を集めたデイミアン・チャゼル監督の最新作。米ゴールデングローブ賞7部門を制し、米アカデミー賞も14部門で候補となっている話題作だ。

 「ラ・ラ・ランド」はロスのハリウッド周辺地域の愛称で、「ハイになり陶酔する」、「夢の国」を意味するという。ハリウッドのミュージカル映画は1950〜70年代が最盛期。「シカゴ」(02)や「マンマ・ミーア!」(08)のように最近多い舞台の映画化ではなく、久しぶりに完全オリジナルなミュージカル作品だ。

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 チャゼル監督が目指したのは、仏ミュージカルの名作「シェルブールの雨傘」(64)、「ロシュフォールの恋人たち」(67)で知られるジャック・ドゥミ監督へ壮大なオマージュを捧げることだろう。せりふをすべて歌でつづった切ない恋愛劇「シェルブールの雨傘」に、男女の出会いと別れを歌い上げた「ロシュフォールの恋人たち」を重ね、ドゥミ監督の遺作「想い出のマルセイユ」(88)を隠し味に使っている。

 ドゥミ作品は原色の衣装や背景が視覚に訴え、ジャズベースのビッグバンドや甘いメロディーが耳を刺激する。そんなスタイルをチャゼル監督は現代の技術で再現した。ドゥミ作品を多く手がけたミシェル・ルグランの作曲法を徹底的に研究したようだ。ミアが演じる一人芝居の主人公“ジュヌヴィエーヴ”は「シェルブールの雨傘」の主人公と同じ。ドゥミ作品で特徴的に使われる画面転換法「アイリスイン&アウト」(黒字に丸枠が閉じて広がる表現)まで使われている。

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 プロローグ。高速道路で渋滞に巻き込まれた人々が、ワンカットで歌い踊る。高揚感あふれる幕開けだ。二人の出会いを描いた「冬」に始まり、四季でエピソードを区切りつつ、物語は進んでいく。男女が愛を育む過程が、シンプルな歌と踊りで語られ、監督は最後に「もう一歩」踏み込む。

 エピローグ。渋滞に巻き込まれたミアは、運命に導かれてたどり着いた場所で、「もしも」に裏打ちされたもう一つの人生を夢想する。「シェルブールの雨傘」のラストを観客に予感させ、さらに一歩踏み込んだことで、極上の深みが加わり、心地よい余韻が引き出された。ゴズリングは3カ月でピアノをマスターし、プロ級の腕前を披露している。歌と踊りを吹き替えなしで演じたゴズリング、ストーンが素晴らしい。

 同じ音楽を取り上げた「セッション」で、カリスマ教師のしごきで神経をすり減らす主人公の狂気を描いたチャゼル監督。今回は一転、ハリウッドが忘れていたミュージカルの夢を抜群のセンスで復活させた。美しい歌と踊りが高揚感を生み、ミュージカルの新たな可能性と醍醐味を存分に感じられる秀作だ。

(文・藤枝正稔)

「ラ・ラ・ランド」(2016年、米国)

監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス、ジェシカ・ローゼンバーグ、ソノヤ・ミズノ

2017年2月24日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/lalaland/

作品写真:Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
タグ:レビュー
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2017年02月16日

「セル」スティーブン・キング原作アクションホラー 携帯依存の恐怖 移動型サバイバル劇

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 小説家スティーブン・キングが自作を脚本化し、映画化されたアクションホラー「セル」。コミック作家のクレイ(ジョン・キューザック)は、ボストンの空港で妻子に電話するが、電池切れで通話が途切れる。すると携帯電話で話していた周りの人たちが突然暴徒化。空港はパニック状態に。地下鉄に逃げたクレイは、車掌トム(サミュエル・L・ジャクソン)と少女アリス(イザベル・ファーマン)の協力で、家族が待つニューハンプシャーを目指す──。

 キング作品は「キャリー」(76)、「シャイニング」(80)、「ミザリー」(90)、「ミスト」(07)など続々と映画化されてきた。今回はキューザックが製作総指揮を務め、同じキング原作の「1408号室」(07)でコンビを組んだジャクソンが共演。「パラノーマル・アクティビティ2」(10)のトッド・ウィリアムズがメガホンを取った。

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 米国で携帯電話は「セル」。原作が出版された06年は、携帯電話が急速に普及した時期だった。携帯を通して人間が凶暴になり、周りの人々を襲っていく。死者が蘇り襲う「ゾンビ」に設定は似ており、群れになって素早く襲う様子は最近のゾンビ映画と共通する。

 ボストンの空港で突如パニックに巻き込まれるクレイ。「奴ら」から逃げる視点で物語は展開する。地下鉄から街へ移動しながら、途中で偶然出会った人たちと徒歩、車でニューハンプシャーへ向かう。移動型のサバイバル劇だ。

 人々は携帯電話のノイズで暴れ始めるが、終末的な状況でクレイを突き動かす原動力は家族愛だ。息子に会うため「奴ら」と戦う姿は、同じキング原作「ペット・セメタリー」(89)を思い起こさせる。死んだ息子を蘇らせるため、禁断の方法に手を染める主人公だった。

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 今回は携帯電話に依存する現代人に、キングが放った皮肉を感じる。原作が発表された10年前、すでに携帯依存の恐ろしさを描いた先見性は見事だ。平和な日常が一変する瞬間が、たたみかける残酷描写で描かれる。テンポの良い監督の演出、個性派俳優のひとくせある演技。ホラー映画ファンも満足の仕上がりとなった。

(文・藤枝正稔)

「セル」(2016年、米国)

監督:トッド・ウィリアムズ
出演:ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン、イザベル・ファーマン、オーウェン・ティーグ、クラーク・サルーロ

2017年2月17日(金)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://cell-movie.jp/

作品写真:(C)2014 CELL Film Holdings, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

タグ:レビュー
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2017年02月10日

第12回大阪アジアン映画祭ラインナップ発表 過去最多19カ国・地域の58作品上映

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 「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」がテーマの第12回大阪アジアン映画祭(2017年3月3〜12日)の上映作品がこのほど発表された。今年は過去最多の19カ国・地域の計58本を上映。世界初上映16本、日本初上映29本など豊富なラインナップとなっている。

 オープニング作品はマレーシアのホー・ユーハン監督「ミセスK」(日本初上映)、クロージング作品は瀬田なつき監督、橋本愛主演の青春映画「PARKS パークス」。コンペティション部門には日本から宮崎大祐監督の「大和(カリフォルニア)」のほか、香港のハーマン・ヤウ(邱禮濤)監督の「77回、彼氏をゆるす」など世界初上映3本が出品されている。

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 特別招待部門は7本。台湾のウェイ・ダーション(魏徳聖)監督の「52Hz, I LOVE YOU」、中国のフォン・シャオガン(馮小剛)監督の「わたしは潘金蓮じゃない」などを上映。特集企画「アジアの失職、給食、労働現場」は6本。アジア社会で働く人々の人間模様を切り取る。日本から野村芳太郎監督の「亡命記」、田中羊一監督の「ピンパン」も上映される。

 また、東南アジア映画界の新しい動きを紹介する特集企画「ニューアクション!サウスイースト」は11本。新世代の台頭で変化する香港映画特集「Special Focus on Hong Kong 2017」は6本。主演女優の好演が注目されたデレク・ツァン(曾國祥)監督作「七月と安生」などを紹介する。

第12回大阪アジアン映画祭は3月3日(金)〜12日(日)、大阪・梅田ブルク7ほかで開催。チケットは2月18日発売される。詳細は公式サイトまで。

http://www.oaff.jp

作品写真:映画祭事務局提供

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