「タタミ」政治に翻弄される柔道大会 イラン代表の葛藤描く

ジョージア

 第36回東京国際映画祭でコンペティション部門に出品されたジョージア・米合作映画「タタミ」。「聖地には蜘蛛が巣を張る」(22)でカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を受賞したイラン系フランス人の女性監督、ザル・アミールと、米国系イスラエル人監督のガイ・ナッティヴの2人が共同でメガホンを取った作品だ。

 画面比率4:3のスタンダートサイズにモノクロ画面。「タタミ」は、ジョージアの首都トビリシで開催される女子柔道選手権がテーマだ。スポーツ映画と思いきや、政治的な理由で大会に政府が介入し、翻弄されるコーチと選手を描いている。

 イラン政府は敵対するイスラエル選手との対戦を回避するため、コーチに電話で「ケガを理由に試合を棄権しろ」と圧力をかける。メダル獲得に意欲を燃やすイラン代表のレイラ。選手の気持ちを尊重したいコーチのマルヤムは、国の圧力と選手の間で板ばさみになり精神的に追い詰められる。政府の思惑に振り回され、師弟関係は徐々に崩壊へ向かう。

 「タタミ」で描かれるコーチと選手、その家族の姿は、現在のパレスチナ・イスラエル情勢を思わせる。イランとの関係が濃厚とされるイスラム組織・ハマスも連想させ、タイムリーな内容に驚くばかりだ。当事者であるイスラエルとイラン出身の監督2人は、自国の不穏な空気感やきな臭さを作品に投影させたのかもしれない。

 一方、コーチと選手の状況を察知し、救いの手を差し伸べるWJA(世界柔道協会)の女性スタッフたちの様子に救われる。スポーツマンシップをないがしろにし、国のメンツを保とうとする政府の悪質さを緊張感たっぷりに描きつつ、試合シーンでは投げ技に合わせて画面も一緒に回転させる。攻めた映像表現で、柔道映画としてのカタルシスを両立させた。日本で生まれた柔道が海外作品として逆輸入されたことも感慨深い。東京国際映画祭では惜しくも最高賞「東京グランプリ」を逃したものの、最優秀女優賞と審査員特別賞を受賞した。ぜひ日本で劇場公開してほしい。

(文・藤枝正稔)

「タタミ」(2023年、ジョージア・米)

監督:ザル・アミール、ガイ・ナッティヴ
出演:アリエンヌ・マンディ、ザル・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン

作品詳細
https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3601CMP14

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