「パスト ライブス 再会」初恋と別れ 韓国系二世の視点にじませ

レビュー

 ソウルに住む少女ノラと同級生の少年へソン。ノラは12歳で家族とともに米国に移住することになり、二人はひかれ合いながらも互いに気持ちを伝えることなく別れる。12年後、24歳の二人は偶然オンラインで再会するが、再び連絡を絶ってしまう。さらに12年後、36歳になったノラは作家アーサーと結婚していた。へソンはそれを知りながらも休暇を取ってニューヨークを訪れ、二人は24年ぶりに対面する――。

 「パスト ライブス 再会」は初恋の相手との再会を描いた米韓合作の作品だ。韓国語の“イニョン”(漢字では「因縁」)すなわち「人と人の縁・運命」をテーマに、人生のターニングポイントで選び取ったものと選ばなかったもの、ずっと変わらないものと変わっていくものを静かに見つめる。

Copyright 2022 (C) Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

 脚本・監督のセリーヌ・ソンは韓国系カナダ人だ。劇中のノラと同様、映画監督の父ソン・ヌンハンら家族とともに12歳で海外移住した。劇作家として活動後、自伝的要素を盛り込んだ本作で長編監督デビュー。2023年ベルリン国際映画祭のコンペティション部門や24年米アカデミー賞の作品賞・脚本賞にノミネートされるなど国際的に注目を集めた。

 ソン監督は2月28日にソウル市内で行われたメディア向け記者会見に出席し、韓国との合作が実現したことについて「ホームカミングの感じ。不思議で面白くて嬉しかった」と回想。欧米で評価されたことに関しては「“イニョン”は韓国の言葉だが、その感情は全世界の誰もがわかるもの。(欧米には)その感情を表す名前がなかっただけで、みな“イニョン”という言葉をすぐに理解できた」と話した。

Copyright 2022 (C) Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

 ノラを演じるのは米国でドラマなどで活躍する韓国系移民二世のグレタ・リー。ドイツ生まれで欧米での活動歴が長いユ・テオが、典型的な韓国人男性として描かれるへソンを好演している。

 アジア系移民に向けられる視線や儒教的価値観を残す祖国の人への小さな違和感など、監督自身の実体験がにじむ。「ミナリ」(2020年、リー・アイザック・チョン監督)が米社会に定着しようともがく移民一世の姿を描いたなら、「パスト ライブス 再会」には異文化の中で葛藤しながら居場所を見つけ、過去の自分と折り合いをつけていく移民二世の視点を読み取ることができる。このような視点も作品に“大人のラブストーリー”にとどまらない深みを与えている。

(文・芳賀恵)

「パスト ライブス 再会」(2023年、米・韓)

脚本・監督:セリーヌ・ソン
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
2024年4月5日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

映画『パスト ライブス/再会』|2024年4月公開
映画『パスト ライブス/再会』公式サイト

コメント

タイトルとURLをコピーしました