中国・上海国際映画祭で最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の3冠を獲得した映画「658km、陽子の旅」が2023年7月28日公開され、東京・新宿で同29日、主演の菊地凛子、オダギリジョー、竹原ピストル、浜野謙太、熊切和嘉監督が舞台あいさつした。菊地は「映画に救われ、この日までたどり着けた」と話し、感極まった様子で涙を見せた。
就職氷河期世代の40代フリーター女性・陽子(菊地)が、父(オダギリ)の訃報を受け、東京から故郷・青森県弘前市を目指す物語。菊地は「自分にとって宝物のような作品になった」と感慨深げに舞台に立った。映画「空の穴」(01)以来22年ぶりに菊地と組んだ熊切監督。その後、ハリウッド映画「バベル」や「パシフィック・リム」で世界へ羽ばたいた菊地について「うれしい反面、自分が菊地さんの代表作を撮り損ねたような悔しさがあった。遠い存在だった菊地さんと再び撮れて、夢のような時間だった」と話した。
これに対し、菊地は熊切監督に「約20年間、あきらめずにやって来られたから、この日までたどり着けた。感謝でいっぱいです」と笑顔。陽子の再生を描いた物語に自分を重ね合わせ、「自分自身も映画に救われ、どんなことがあっても映画を観て前向きにやってきた」と話しながら、感極まって目に涙を浮かべた。
陽子の父を演じたオダギリは、そんな菊地の様子を見て「そんな感性が女優さんには必要。うらやましい」としみじみした様子。菊地は「オダギリさんは独特な空気をまとっている。オダギリさんの後に話すと穏やかな感じに引っ張られるので、陽子は陽子だ、と思いながら演じた。父親役がオダギリさんでよかった」と話していた。
熊切監督は「清らかな気持ちで撮れた映画。何かを感じてもらえれば」と客席に呼びかけた。最後に菊地は「私は陽子と同じ年齢で、『あと何役できるか』と不安を抱えていた時、この作品の話を頂いた。観て頂くことが自分の糧になり、映画は育っていく。たくさんの方々に共有してほしい」と話していた。
(文・阿部陽子 写真・龐棟元)
「658km、陽子の旅」(2023年、日本)
監督:熊切和嘉
出演:菊地凛子、竹原ピストル、黒沢あすか、見上愛 、浜野謙太、仁村紗和、篠原篤、吉澤健、風吹ジュン、オダギリジョー
ユーロスペース、テアトル新宿ほかで全国順次公開中。作品の詳細は公式サイトまで。
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