「月の満ち欠け」生まれ変わりを幻想的に 直木賞小説を映画化

レビュー

 仕事も家庭も順調だった小山内堅(大泉洋)の日常は、妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃(菊池日菜子)を事故で失い一変した。悲しみに沈む小山内のもとに、三角哲彦(目黒蓮)が訪ねてくる。事故の日、瑠璃が面識のない三角に会いに来ようとしていたという。、三角は「彼女は自分が愛した正木瑠璃(有村架純)の生まれ変わりではないか」と告げる──。

 2017年に直木賞を受賞した佐藤正午の同名小説を実写化。大泉洋、有村架純、目黒蓮、伊藤沙莉、田中圭、柴咲コウら豪華なキャスティングだ。監督は「余命1か月の花嫁」(09)、「ストロボ・エッジ」(15)の廣木隆一。

 同じ人物が何度も生まれ変わる不思議な現象。大泉演じる小山内を軸に、現代と過去が交差しながら物語は展開する。ファンタジックな「生まれ変わり」という設定に、家族とに恋愛要素を加えて描いている。

 “瑠璃”という女性にまつわる数奇な出来事と、二つの時代に焦点があてられる。堅の前に突然現れた三角が大学生だった1980年の話。一方、堅は亡き娘の高校時代の親友・ゆい(伊藤紗莉)に呼びだされ、「瑠璃が描いていた肖像画を探して」と頼まれる。堅は娘に導かれるように信じがたい事実に直面する。

 とても不思議な作品。生まれ変わりという難しいテーマを、監督はじっくり丁寧に群像劇にした。小山内の娘・瑠璃と同名の謎めいた女性・正木瑠璃。彼女を愛した大学生・三角。再現された1980年の高田馬場の街並みが絶品だ。駅前のシンボル的なビル・BIGBOXの壁画、三角のバイト先のレコード店、人々のファッション、道を走るビンテージカーやバイク。懐かしい風景に目が釘付けとなる。オープンセットとCGで再現したそうだ。作品の完成披露試写会が行われた名画座・早稲田松竹は、正木瑠璃と三角をつなぐ重要な場所となる。

 1980年の象徴として、ジョン・レノンの「Woman」が使われる。美しい曲だが、奇しくもレノンはその年の12月に暗殺された。事実を知る観客の胸に悲しみが押し寄せるかもしれない。「生まれ変わり」を盛り過ぎの感もあるが、前向きにとらえており共感した。男女問わず万人向けの作品だ。

(文・藤枝正稔)

「月の満ち欠け」(2022年、日本)

監督:廣木隆一
出演:大泉洋、有村架純、目黒蓮、伊藤沙莉、田中圭、柴咲コウ

2022年12月2日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

映画『月の満ち欠け』公式サイト | 大ヒット上映中
第157回直木賞受賞、佐藤正午の描く感涙のベストセラー小説が廣木隆一監督により待望の実写映画化!出演:大泉洋 有村架純 目黒蓮(Snow Man) 柴咲コウ

作品写真:(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会

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