釜山映画祭レポート(3)カン・ドンウォン、プロデュース業にも意欲

映画祭

 「第27回釜山国際映画祭2022」では、活躍する俳優のトークイベント「アクターズハウス」を4回にわたり開催した。ハン・ジミン、カン・ドンウォン、ハ・ジョンウ、イ・ヨンエと、いずれも人気と実力を兼ね備えた俳優たち。9日に登場したカン・ドンウォンは満員の観客を前に、これまでの役者人生と今後の活動について1時間にわたり語った。

「ベイビー・ブローカー」の挑戦
 今回の映画祭では是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」が上映された。ドンウォンが演じたのは、児童養護施設で育ち、捨てられた赤ん坊の売買に手を貸すドンス。ジャンル映画で演じてきた特異なキャラクターとは違う“普通の人間”だ。ドンウォンは「ドンスを通して、養護施設で育った人々の生活の様子や心の痛みをそのまま観客に伝えたかった」と話した。

 
 出演作の撮影が続いているドンウォンだが、ここ1年は米国でマネジメント契約を結んだり、プロデュース業にも進出したりと多忙だ。「ベイビー・ブローカー」はドンウォンが初めてプロデュースに加わった作品。7年前、脚本の初校段階からスタートし、監督らと話し合いながら作品を作り上げてきた。

 演出を手掛ける俳優は多いが、プロデュースを担うケースは珍しい。その理由についてドンウォンは「監督をする自信はない。それに演出は1つの作品に数年かかるが、俳優としてすべき仕事も多いし、プロデュースは複数の作品を平行してできる」と説明。今後もプロデュースを続けていきたいと意欲を見せた。

イ・ミョンセ監督との出会い
 俳優カン・ドンウォンを語る時に欠かせないのがイ・ミョンセ監督の「デュエリスト」(2005年)、「M」(2007年)。ドンウォンはイ監督の「映画は各自がそれぞれの分野で最善を尽くせば魔法が起きる」という言葉が印象的だったといい、イ監督の映画での経験が現在に生きていると明かした。

 「『デュエリスト』は、以降の自分の役作りにおいて基準となった作品。それまでよく分からなかった役作りや準備の仕方をイ監督から学んだ。映画の楽しさや俳優としての基本的な姿勢を教えてくれた映画界の父のような存在」。そして「『デュエリスト』では5カ月間、週に5~6日トレーニングをして撮影に入った。それが今も習慣になっている。現代舞踊も5カ月間習った。先生が大会に出ろと言うほどだった(笑)」と振り返り、「この時の経験をもとに、それ以降は自分で基準を決めて役作りをしている」と話した。

「チョン・ウチ2」を熱望
 トークでは「チョン・ウチ 時空道士」(2009年、チェ・ドンフン監督)も話題に上った。司会者が「『チョン・ウチ』はチェ監督が『カン・ドンウォンによるカン・ドンウォンのための映画』と考えてシナリオを書いた映画。難しいチャレンジだったのでは」と尋ねると、ドンウォンは「まだ新人で、大作に出演することにプレッシャーを感じストレスもあったが、演技は楽しかった。スラップスティックも加味し華麗なアクションも見せようと努力した。『アバター』と封切り時期が同じだったのが残念(笑)。年を取る前に『チョン・ウチ2』も作りたい」と続編を熱望した。

 この映画の後半に登場する10人の分身の術は、「シナリオには『分身の術で敵を倒す』とだけ書いてあったが、すべて違う動きにしたら面白いと思い、キャラクターを考えた」という。ただ、アクションの撮影が11日も続く過酷な現場でもあったようだ。

 「チョン・ウチ」は現場での過ごし方も変えた。それまでは撮影後に共演者と一緒に食事に行くことはなかったというが、「撮影が半分くらい進んだ頃、(キム・ユンソク、チュ・ジンモ、ユ・へジンら)先輩方に誘われた。あまり気が進まなかったが、参加してみるととても楽しかった。これが映画の面白さの一つだと感じ、映画の現場は同じ会社に勤める同僚のようなものだと思うようになった。次の『義兄弟』(2010年、チャン・フン監督)の時はソン・ガンホ先輩と飲みに行った。今は後輩を誘っている」と楽しそうに話した。

作品選びの基準は「新鮮さ」
 「プリースト 悪魔を葬る者」(2015年)のチャン・ジェヒョン監督や「華麗なるリベンジ」(2016年)のイ・イルヒョン監督のような新人監督の作品に多く出演している理由は、「新鮮さ」と「使命感」だという。「新しいことが好きなので新鮮なアイデアのある作品がいい。また、これまで先輩たちが引っ張ってくれたので、今度は自分の世代が引っ張っていかなければとの思いで新人監督の作品を選んでいる。そのおかげで新人監督たちから大量のシナリオが送られてくる」と会場を笑わせた。

 それに関連して作品選びの基準にも触れ、「最初に見るのは物語の構造、その次にディテール。どんなジャンルでも構造が良く、新鮮な視点があれば気に入る」と自身のこだわりを語った。

(文・写真 芳賀恵)

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