「ビリーバーズ」無人島で「入信」した3人 極限状態での人間心理

レビュー

 無人島で生活する男2人と女1人。新興宗教「ニコニコ人生センター」に所属している。互いにオペレーター(磯村優斗)、副議長(北村優衣)、議長(宇野祥平)と呼び合い、冥想や夢の報告、テレパシー実験など、メールで送られてくる不可解な指令を実行。時々届くわずかな食料で生き延びていた。すべてが俗世の汚れを浄化し“安住の地”へ出発するための修行なのだ。だが、わずかなほころびから、3人は徐々に本能と欲望をむき出しにする──。

 山本直樹の原作漫画を「アルプススタンドのはしの方」(20)、「女子高生に殺されたい」(22)の城定秀夫が監督。「サニーデイ・サービス」の曾我部恵一が音楽を担当した。 

 無人島の3人はそろいのTシャツを着て、トイレもないプレハブに雑魚寝で暮らしている。生活インフラは太陽光発電とネット接続。食料は本部職員が数日に1度、家から離れた場所に置いて変える。職員と3人の接触は禁止。3人は屈託なく修行に励んでいるが、夢の中に欲望が少しずつ現れる。中でも若いオペレーターの女性に対する欲望が日に日に強まる。

 ある日、クルーザーに乗った若い男性グループが島に漂着。3人は島から去るよう促すが、酒に酔った男たちはオペレーターに暴行。副議長をレイプしようとする。3人は本部の指令にのっとり、男たちを「不浄」と判断し「処理」しようとする。この1件から3人の自制心が崩れ始め、欲望があらわになる。入信した3人が、教祖に絶対服従して感情を殺し、「修行」の末に「安住の地」を目指す。カルト教団の秘密の儀式を描いた「ミッドサマー」(19)に似ている。

 基本的には磯村、北村、宇野の3人芝居。ドラマ「ひょっこ」で好青年、「ヤクザと家族 The Family」(21)で半グレを演じた磯村が、欲望に落ちていく青年を好演。「罪の声」(20)の宇野が偏った宗教家を怪演する。オーディションで抜擢された北村は、欲望の沼にはまる女性を熱演。教祖である「先生」は、原作者の山本自身が演じている。

 城定監督は過去に多くの成人映画やVシネマを手掛けてきた。「R15+」指定で大胆に性描写を取り入れつつ、極限状態での人間の行動と心理を掘り下げている。

(文・藤枝正稔)

「ビリーバーズ」(2022年、日本)

監督:城定秀夫
出演:磯村勇斗、北村優衣、宇野祥平

2022年7月8日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

映画『ビリーバーズ』公式サイト
映画『ビリーバーズ』公式サイト

作品写真:(C)山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

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