「ザ・メニュー」孤島の高級レストラン 恐怖しのび寄る怪作スリラー

レビュー

 世界で最も予約の取れないレストラン。美食にすべてを捧げる店のチケットを獲得するのは、著名料理評論家、人気映画俳優、エンジェル投資家など選び抜かれたゲストだ。カリスマ性に満ちた天才シェフ(レイフ・ファインズ)が振る舞うのは、美しく完璧なコース料理の数々。しかし、そこには思いがけない驚きと結末が添えられていた──。

 今年のエミー賞で最多25部門で候補となったテレビドラマ「メディア王 華麗なる一族」の製作陣による作品。監督はテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローン」のマーク・マイロット。ドラマ「クイーンズ・ギャンビット」のアニヤ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト、ジョン・レグイザモ、ジャネット・マクティア、ホン・チャウらが出演している。

 刺激的な物語だ。米北西部の孤島の高級レストランを舞台に、オープンキッチン式の店内で進行する密室劇。店へは船で往復し、客は厳選。フルコースは20万円。島には店のスタッフだけが暮らしているらしい。客用の簡単な宿泊施設があるが、軍宿舎のような大部屋。上客を泊める場所ではなく、どこかおかしい。

 美食ドラマの趣で幕が開けるが、導火線の火がじりじり迫り来るように、違和感と狂気が顔を見せ始める。ある出来事をきっかけに、シェフが用意した恐ろしいメニューの正体が明らかになる。シェフを頂点にスタッフは軍隊のごとく統制され、客を威圧する。しかし、ただ一人冷静で物おじしないマーゴが、シェフのメニューを狂わせる。

 スリラーの新たな怪作といえる。シェフに従う部下はカルト集団のよう。平手を打つ音でシェフは場を仕切り、客たちは理不尽な恐怖にさいなまれる。味も分からぬ大金持ち、知識先行のグルメオタク、落ち目の俳優やIT長者が懲らしめられる。拝金主義やグルメブームに対するブラックユーモアか。不条理な題材をスリリングに料理したスリラーだ。

(文・藤枝正稔)

「ザ・メニュー」(2022年、米)

監督:マーク・マイロッド
出演:レイフ・ファインズ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト、ホン・チャウ、ジャネット・マクティア、ジュディス・ライト、ジョン・レグイザモ

2022年11月18日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

ザ・メニュー|映画/ブルーレイ・デジタル配信|20世紀スタジオ公式
『ザ・メニュー』公式サイト。アカデミー賞(R)常連のサーチライト・ピクチャーズが贈る、絶海に浮かぶ孤島の高級レストランにて、伝説のカリスマシェフがもてなす極上のスリルに満ちた驚愕のフルコース・サスペンス!|映画のあらすじや予告映像、キャスト...

作品写真:(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.

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