2017年03月08日

斎藤工の長編監督デビュー作「blank13」、ゆうばり映画祭で観客賞

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 北海道夕張市で開かれた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」で、俳優の斎藤工が“齊藤工”名義で監督した初の長編作品「blank13」がプレミア上映された。斎藤とキャストの村上淳が登壇するとあって、夕方からの上映にもかかわらず早朝から熱心なファンが行列を作り、約600席の会場はほぼ満員に。6日に発表された観客賞のファンタランド大賞も手にした。

 「blank13」は13年間行方をくらましていた父親と家族の再会と別れの物語。放送作家のはしもとこうじの経験をもとにしたストーリーで、リリー・フランキー演じる父と高橋一生演じる次男の関係が軸となっている。

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 前半では父と家族の関係性が描かれる。ギャンブル好きの父のせいで極貧生活を強いられる母と二人の息子。家を出た父は13年ぶりに現れたとき病に冒され、死を目前にしていた。後半の父の葬儀のシーンでは、ギャンブラーやニューハーフなど一風変わった友人たちが次々に惜別の言葉を述べる。佐藤二朗や蛭子能収といった個性派俳優たちがアドリブをきかせた演技で家族の知らない人間味にあふれた男の姿を浮き彫りにし、13年の空白を埋めていく。

 斎藤は「あこがれの俳優の村上さんといっしょにゆうばりに帰って来れたことを映画の神様に感謝します」とあいさつ。村上は斎藤について「俳優も監督もどちらも男前。撮影現場でも潔い」と絶賛した。斎藤は、葬儀のシーンはキャストに自由に演じさせ、編集スタッフにも「脚本を無視していい」と伝えたという。かっちりした構成の前半と、予測不可能な展開となる後半の落差が観客をひきつける作品だ。

 斎藤は監督を務めながら長男役で出演もしている。当初キャスティングしていた俳優が撮影直前にキャンセルし、スタッフの勧めで出演を決めたという。

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 ゆうばり映画祭は斎藤がブレーク前から参加し、映画談義に花を咲かせていた場所。「blank13」も企画段階からゆうばりでの上映を目標にしていたという。斎藤は「映画を通じて人と人が交流できる祭りは他にない」とゆうばり愛を吐露し、集まったファンに感謝していた。

(文・写真 芳賀恵)

写真:
1と3:(右から)斎藤工、村上淳
2:「blank13」

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2017年03月07日

ゆうばり映画祭、グランプリは「トータスの旅」

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 北海道夕張市で開かれていた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」は2017年3月5日、ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のグランプリに永山正史監督の「トータスの旅」を選んで幕を閉じた。永山監督には次回作の支援金200万円が贈られる。

 オフシアター・コンペティション部門は内藤誠監督を委員長とする5人の審査員が7本のノミネート作品の中から受賞作を決定。審査員特別賞は韓国のイム・チョルミン監督の「ベートーベン・メドレー」、北海道知事賞は横山翔一監督の「はめられて Road to Love」が受賞した。グランプリの「トータスの旅」は、父と息子を中心とする家族、それにペットの亀が繰り広げるロードムービー。永山監督の実体験をもとにしているという。

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 インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門は韓国のキム・ヒョジョン監督の「M-Boy」がグランプリに輝いた。

(文・芳賀恵)

■受賞作■
【ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門】
グランプリ 「トータスの旅」永山正史監督
審査員特別賞「ベートーベン・メドレー」イム・チョルミン監督
北海道知事賞「はめられてRoad to Love」横山翔一監督
スペシャルメンション「堕ちる」村山和也監督
シネガーアワード(批評家賞)「ストレンジデイズ」越坂康史監督
【インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門】
グランプリ 「M.Boy」キム・ヒョジョン監督
審査員特別賞「歯」パスカル・ティボウ監督
優秀芸術賞 「あたしだけを見て」見里朝希監督
      「Mizbrük」ダニエル・ドランロー監督
      「タコ船長とまちわびた宝」飯田千里監督

作品写真:
「トータスの旅」オフシアターコンペグランプリ
「M.Boy」短編コンペグランプリ
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2017年03月03日

復活10年目、ゆうばり映画祭が開幕 困難乗り越え新たな一歩

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 北海道夕張市で2017年3月2日、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」が開幕した。国内外からのゲストが到着し屋外にしつらえられたレッドカーペットを次々に歩くと、市民が「お帰りなさい」の合言葉で歓迎した。例年通りのアットホームな光景だ。今年は6日までの期間中、84本の映画の上映と16のイベントが行われる。

 市の財政破たんで休止に追い込まれ、民間の手で復活してから今年で10回目。資金難やメーン会場の老朽化による閉鎖、人材不足などさまざまな困難に直面してきた映画祭が、一つの節目を迎えた。

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 開会式に先立ち、北海道出身のGLAYの曲に乗せて夕張市の再生をアピールする映像が紹介された。名誉大会長の鈴木直道市長は「市が財政破たんしたのはちょうど10年前の3月6日。映画祭が閉幕する6日にみなさんと新たな一歩を踏み出せるのはとてもうれしい」とあいさつ。映画祭を支えてきた人々に感謝した。

 このあと実行委員長で作家の小檜山博氏が開会宣言。神山健治監督のアニメーション「ひるね姫 知らないワタシの物語」で5日間の祭りが幕を開けた。

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「映画界に新たな波を起こしてほしい映画人」を表彰する「京楽ピクチャーズ.PRESENTS ニューウェーブアワード」は、俳優部門で駿河太郎と足立梨花、クリエーター部門で映画・アニメーションで活躍する静野孔文監督が受賞した。駿河は「賞とは無縁だと思っていた。自分の作品を持ってまたここに帰ってきたい」と喜びを語った。

(文・写真 芳賀恵)

写真:
1:「お帰りなさい」と市民が出迎え
2:短編コンペティション部門の審査員を務める武田梨奈
3:開会宣言する小檜山博実行委員長
4:ニューウェーブアワードを受賞した(左から)駿河太郎、足立梨花、静野孔文監督=いずれも北海道夕張市で3月2日

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2017年02月28日

「フレンチ・ラン」豪腕CIA捜査官と天才スリ、テロ犯を追い詰める

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 仏パリで起きた爆弾テロ事件を、一匹狼の米中央情報局(CIA)捜査官と若き天才スリがコンビを組んで解決する“バディ・ムービー”「フレンチ・ラン」。

 革命記念日前夜のパリ。天才スリのマイケル(リチャード・マッデン)は、広場の雑踏に全裸の美女を歩かせ、人々が気を取られたすきに財布をかすめ取っていた。同じころ、テロ組織が実行犯の女ゾーエ(シャルロット・ルボン)を使い、ビル爆破を企てる。しかし、女は未遂のまま現場を去る途中、マイケルに爆弾入りのバッグを盗まれる。マイケルは広場にバッグを置き捨て、その後爆発が発生。防犯カメラにはバッグを手にしたマイケルの姿が映っていた──。

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 ジェームズ・ワトキンス監督が目指したのは「1970年代アクション映画」という。クリント・イーストウッド主演「ダーティハリー」(71)、ジーン・ハックマン主演「フレンチ・コネクション」(71)など名作刑事アクションが多い時代だ。一匹狼的な刑事が単独で事件に挑み、生身のアクションで解決する。今回のCIA捜査官ブライヤー(イドリス・エルバ)も同じく、猪突猛進で犯人を追う。アパートの屋根を走り、廊下で犯人と接近戦。肉弾捜査スタイルが印象的だ。

 ポイントはそんなCIA捜査官とスリが即席でコンビを組み、犯罪組織を追い詰めていく点だろう。堅物のブライヤーに調子のいいマイケル。そこへ容疑者として確保した女ゾーエが加わる。テロ組織の「革命記念日にパリを制圧する」目論見を阻止するため、捜査のプロと素人2人が街を走る。

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 爆弾テロで始まった物語は、大勢のパリ市民を巻き込み、大掛かりなクライマックスを迎える。一人テロと戦うストイックなブライヤーは、仏映画「レオン」(94)のジャン・レノ演じる主人公を思い出す。テロ犯の正体、目的にはやや荒っぽさを感じるが、疾走感と謎解きのバランスがいい。ひとひねり加えたオチまで92分間、痛快なバディ・アクションが楽しめる。

(文・藤枝正稔)

「フレンチ・ラン」(2016年、英・仏・米)

監督:ジェームズ・ワトキンス
出演:イドリス・エルバ、リチャード・マッデン、シャルロット・ルボン、ケリー・ライリー、ジョゼ・ガルシア

2017年3月4日(土)、渋谷シネパレスほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

作品写真:(C)2016 Studiocanal S.A. TF1 Films Production S.A.S.All Rights Reserved
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2017年02月24日

「ラ・ラ・ランド」人生の夢と希望、甘さと苦さ 50年代ミュージカル形式で描く

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 女優の卵とジャズピアニストとの恋を、ミュージカル仕立てで描いた「ラ・ラ・ランド」。高速道路上で繰り広げられる冒頭の群舞シーンから、1950年代ミュージカルのテイストがあふれ、目を引き付ける。俳優たちの歌い踊る姿や表情も、古き良き時代の雰囲気たっぷりだ。「キャロル」(15)や「ブルックリン」(15)などと同じ、50年代を舞台にした“レトロムード”な作品かと一瞬思う。しかし、違った。

 時代は現代、場所はロサンゼルス。登場人物はケータイを所有し、ファッションもイマ風である。要するに、今日の男女の恋物語を、50年代ミュージカルのスタイルで撮った映画なのだ。

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 だが、50年代ミュージカルといえば、歌も踊りも超一流。圧倒的なテクニックを備えたスターたちが、最高のパフォーマンスで観客を魅了したもの。主演のライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが、どこまでその境地に迫り得ているのか。

 フレッド・アステアやジーン・ケリー、シド・チャリシーやレスリー・キャロン。もちろん彼らの美技・神技には及ばない。とはいえ、数分間もの長回しに耐えるダンスの完成度は十分称賛に値する。ジャズピアニスト役のゴズリングの演奏シーンも吹き替えなし。たった3カ月の特訓でものにしたというから大したものだ。

 場面転換ごとに一変する服装。画面を彩るカラフルな色彩。いかにもミュージカルらしい楽しさ、華やかさが横溢(おういつ)している。若い男女が互いに夢を追いながら、励まし合い、愛し合う、青春の喜びに満ちたラブストーリー。

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 ところが、終盤から様相が変わる。2人の人生を揺るがす大きな転機が訪れ、物語にサスペンスの色合いが加わっていく。2人は夢を実現できるのか。幸福を手にできるのか。答えを出さないまま、映画は5年後のエピローグに飛ぶ。

 ここから本作は、ハッピーなミュージカルから厳しいリアリズムの世界に移行。2人の運命がドラマティックに紹介される。ともにゴールデングローブ賞を受賞したゴズリングとストーン。その視線の演技に注目したい。人生の苦味、酸味を凝縮したようなラストの数分間は圧巻だ。

 監督は、「セッション」(14)で脚光を浴びたデイミアン・チャゼル。単なる50年代ミュージカルへのオマージュに終わらせず、ずしりと心に響く人間ドラマに仕立て上げた手腕はさすがである。

(文・沢宮亘理)

「ラ・ラ・ランド」(2016年、米国)

監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、ソノヤ・ミズノ、J・K・シモンズ

2017年2月24日(金)、TOHOシネマズみゆき座、TOHOシネマズシャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/lalaland/

作品写真:(c)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate.
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 04:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする