2019年09月08日

「荒野の誓い」開拓時代の終わりと変わる西部 騎兵隊大尉の心情に重ね クリスチャン・ベール好演

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 1892年、米西部。騎兵隊大尉ジョー(クリスチャン・ベール)はかつての宿敵でシャイアン族の長、イエロー・ホーク(ウェス・ステューディ)とその家族を、居留地へ送り返すよう命じられる。ニューメキシコからコロラド、モンタナへ。途中、コマンチ族に家族を殺されたロザリー(ロザムンド・パイク)も加わり、一行は北を目指す。ジョーとロザリーは危険に満ちた旅を通じ、互いに協力せずには生きてはいけないとを知る──。

 監督、脚本、製作は「クレイジー・ハート」(09)で長編デビューしたスコット・クーパー。ベールとは「ファーナス 訣別の朝」(13)に続くタッグで、4本目の長編だ。

 西部開拓時代が終わり、産業革命で新時代が始まった米国が舞台の西部劇。荒野で平和に暮らしていたクウェイド家を、コマンチ族が襲う。夫と子ども3人は殺され、ロザリーだけがかろうじて生き延びた。一方、騎兵隊はインディアンの家族を捕らえ、刑務所に強制連行していた。白人から見たインディアン、インディアンから見た騎兵隊の蛮行が、対比するように描かれる。

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 騎兵隊のジョーはかつて、インディアンとの戦争で英雄になった。たび重なる戦いで仲間を失い、インディアンを嫌っている。しかし、上官から命じられたのは、皮肉にもがんに冒されたインディアンの長、イエロー・ホーク一家の護送だった。

 インディアンとの融和をアピールし、出世を目論む上官は、インディアンの言葉が話せるジョーに白羽の矢を立てたのだ。ジョーは任務を拒むが、上官は軍法会議をたてに受け入れない。ジョーは仕方なく引き受け、小隊を組織して馬に乗り、モンタナへ向かう。道中、焼け跡で放心状態だったメアリーを見かけ、安全な場所に連れて行くため同行させる。

 かつての敵を護送するジョーの心境の変化が物語の鍵になる。職業軍人として任務に取り組むが、コマンチ族や野盗に襲われ、騎兵隊5人だけでは手に負えない。護送するインディアンの手を借りずにいられなくなり、かつての敵であるイエロー・ホークの意志を尊重し、理解しようとする。さらに、家族を失い自暴自棄のロザリーと心を通わせるうち、ジョーの中に自尊心が芽生え始める。

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 開拓時代が終わり、時代も移る転換期に、騎兵隊の心情も変わっていく。ジョーを演じるベールがいい。職業軍人として感情を殺し、ストイックに任務をこなす男が、行動をともにすることで、嫌っていたインディアンを認め、考えを変えていく。非常に複雑な感情のせめぎあいを、ベールが繊細かつ力強く演じている。ロザリーを演じるパイクも、傷心で破壊行動を見せる女性が、次第に人間らしく変わる難役を好演した。

 敵対する民族同士の理解は、現代に通じる普遍的なテーマだ。米国の負の歴史を、監督は骨太のメッセージとして観客に投げかけている。

(文・藤枝正稔)

「荒野の誓い」(2017年、米)

監督:スコット・クーパー
出演:クリスチャン・ベール、ロザムンド・パイク、ウェス・ステューディ、アダム・ビーチ、ベン・フォスター、クオリアンカ・キルヒャー

2019年9月6日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kouyanochikai.com/

作品写真:(C)2017 YLK Distribution LLC. All rights reserved.
posted by 映画の森 at 14:43 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月03日

「引っ越し大名!」星野源、6年ぶりの主演映画「ものすごく、ものすごくうれしい!」

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 星野源6年ぶりの主演映画「引っ越し大名!」がこのほど公開され、東京・丸の内で高橋一生、高畑充希、及川光博、浜田岳、犬童一心監督と舞台あいさつした。

 土橋章宏の時代小説「引っ越し大名三千里」を「のぼうの城」の犬童監督が映画化。江戸時代、書庫にこもってばかりの引きこもり侍・片桐春之介(星野)が、国替え(引っ越し)の総責任者「引っ越し奉行」に任命され、国の存亡をかけて難題に挑む姿を描く。

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 観客の歓声を受けて客席から登場した星野、高橋、高畑、及川、浜田。まず主演の星野が「ものすごく、ものすごくうれしい。久しぶりの主演作で、いろいろ(宣伝に)稼働させてもらって、初日を迎えられた。撮影が終わってから公開まで1年半くらいあいたので、すごく長く待って、待って、待って来た初日。皆さん本当にありがとうございます」と何度も喜びと感謝を口にした。

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 春之介の幼なじみで武芸の達人・鷹村源右衛門を演じた高橋は、激しいアクションにも挑戦した。「過酷でしたが、とても楽しい映画になっているので、作品を見ると救われる。キャストの仲が良くて、炎天下でも楽しく過ごせた」と振り返った。

 乗馬に挑戦した於蘭役・高畑は「馬のテンションがあがるとスピードも速くなる。怖くて顔が固まってしまったのが、いい具合に意志強く走る感じになり、安心しました」と話した。

 藩主・松平直矩を演じた及川は「王子から殿に転職しました」と会場の笑いを誘う。「台本を見た時に面白い役だと思った。気を付けたのは、殿の風格と男色家としての素顔のギャップ」と語った。

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 キャスティングについて犬童監督は「撮影中に印象に残っているのが(星野、高橋、浜田の)3人がいつも楽しそうに話していたこと。男同士何を話しているんだろうと思うくらい。とにかくいつも楽しそうに、3人でずーっとしゃべっている」と説明。配役は「適材適所。僕が子供の頃に見た時代劇の楽しさを再現できた」と自信をのぞかせた。監督が気になるほど仲の良い星野、高橋、浜田の3人は終始息の合ったトークを繰り広げ、会場は笑いの渦に包まれた。

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 最後に星野が「脚本を読んでぜひ出たいと思った日から、すごく長い時間がたって、やっとこの日を迎えられた。現場で楽しく話した思い出、苦労を共にした思い出が、映像の中で素晴らしい作品として昇華している。沢山の人に何度でも観てもらいたい。子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで、どんな人でも楽しめる。現代の日本で観て楽しい活劇となっているので、ぜひ何度でも観に来てください」と締めくくった。

 さらに今日の会場の様子を自ら持ち込んだカメラで撮影するなど、何度も感謝と喜びを口にした星野。作品にかける思いが伝わる初日となった。

(文・写真 岩渕弘美)

「引っ越し大名!」(2019年、日本)

監督:犬童一心
出演:星野源、高橋一生、高畑充希、及川光博、浜田岳

2019年8月30日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://hikkoshi-movie.jp/

作品写真:(c)2019「引っ越し大名!」製作委員会

posted by 映画の森 at 14:58 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ラスト・ムービースター」バート・レイノルズ、最後の主演作 大スターの大らかさと輝き

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 かつて一世風靡した映画界のスーパースター、ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)のもとに、ある映画祭から功労賞授与式の招待状が届く。歴代受賞者がロバート・デ・ニーロやクリント・イーストウッドと聞き、しぶしぶ参加したものの、だましに近い名もない映画祭と知ると、エドワーズは憤慨する。だが、映画祭の場所は生まれ育った街ノックスビルに近く、過去の思い出がよみがえる──。

 2018年9月、82歳で世を去ったレイノルズ最後の主演作「ラスト・ムービースター」。一周忌にあたる9月6日に公開される。監督・脚本は「デトロイト・ロック・シティ」(99)、「LOOK」(07)のアダム・リフキン。

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 レイノルズは「脱出」(72)、「ロンゲスト・ヤード」(74)、「トランザム7000」(77)など、男臭さを売りにしたアクションスターだった。今回演じるエドワーズは、レイノルズにあてがきしたような役だ。かつてスーパースターだったが、引退後は映画オタクにしか知られておらず、愛犬と寂しい余生を過ごす男。

 そこへ「国際ナッシュビル映画祭」から功労賞を授与すると連絡がある。デ・ニーロやイーストウッドら、かつての仲間たちも受賞してきたと知り、旧友の元スターのソニー(チェビー・チェイス)に相談。「もらいに行ったほうがいい」と助言され、しぶしぶ授賞式に出席する。

 しかし、待っていたのは厳しい現実だった。エコノミー席でナッシュビルの空港に着くと、迎えに来たのはボロ車の若い女性運転手リル(アリエル・ウィンター)。タトゥーの入った不愛想な女で、運転中も彼氏と電話でけんか。まったく自己中心的な態度に抱いた嫌な予感は的中する。

 映画祭はまやかしイベントだった。小さなスクリーンにプロジェクター、ホームシアターに毛が生えたような会場。エドワーズが登場すると主催者やファンは大喜びするが、だまされた当人の怒りは収まらない。ホテルで安酒を飲み、転倒して額にけがを負う。翌朝、リルを呼び出して空港へ向かったが、道路標識に懐かしい「ノックスビル」の文字を見つけ、導かれるように生まれ故郷を目指す。

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 レイノルズの人生をなぞったような物語が秀逸だ。スタントマンとしてキャリアをスタートさせたエドワーズ。レイノルズがスタントマン役を演じた「グレート・スタントマン」(78)につながる。雑誌で披露したヌードが劇中に引用されるなど、本人の過去がそのまま使われている。

 代表作「脱出」と「トランザム7000」の映像で、当時のレイノルズとエドワーズがCG合成で共演。粋な演出も用意されている。内容はレイノルズにとって自虐的ともいえるが、大らかに受け入れ、自分色に染め上げてしまう大スター、レイノルズの最後の輝きを収めた。

(文・藤枝正稔)

「ラスト・ムービースター」(2017年、米国)

監督:アダム・リフキン
出演:バート・レイノルズ、アリエル・ウィンター、クラーク・デューク、エラー・コルトレーン、チェビー・チェイス

2019年9月6日(土)、シネマカリテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://lastmoviestar2019.net-broadway.com/

作品写真:(C)2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

posted by 映画の森 at 10:50 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月28日

「アイネクライネナハトムジーク」完成披露 三浦春馬&多部未華子、4年ごとの共演「温かい気持ちで帰ってもらえる映画」

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 人気作家・伊坂幸太郎の同名小説が原作の恋愛群像映画「アイネクライネナハトムジーク」の完成披露上映会がこのほど、東京・六本木で開催され、主演の三浦春馬、多部未華子、貫地谷しほり、原田泰造、今泉力哉監督らが参加した。

 三浦演じる会社員と多部演じる恋人の10年越しの恋を中心に、二人を取り巻く人々のめぐり合いの連鎖を描く物語。

 舞台挨拶では三浦に続き、多部、今泉監督らが大歓声に迎えられて登場。三浦が「秋にしっかり温かい気持ちで帰ってもらえる作品。日本中の皆様に見てほしい」とあいさつ。原田は「サウナに入って、水風呂に入って、外気浴で整うような素敵な映画」と笑顔で語った。

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 三浦と多部は今回が3度目の恋人役。三浦は「多部さんに(4年ごとに訪れる)『オリンピックのような関係だよね』と言われた。20歳の時もここで一緒に舞台あいさつした。その頃よりゆとりをもって、緊張せず映画の話ができる。成長できたのかな」と感慨深げだった。

 一方、多部は「安心感があり、撮影中に今まで共演してきたことは無駄ではなかったと思える瞬間がいっぱいあり、うれしかった。また4年後にご一緒できたら」と話した。さらに三浦は「20歳の時、24歳の時の自分を知っている。主軸として立たせてもらう機会に、どう多部さんという女優にいい芝居と雰囲気を届けられるか。いい緊張感があり、貴重な経験だった」と振り返った。

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 最後に三浦が「奇跡や運命は、誰かが誰かを思いやり、その行動からつながっていくのでは。そういうエッセンスがたくさん詰まった映画。日常生活を今以上に誇りに思ってもらえます。楽しんで下さい」と締めくくった。

(文・写真 岩渕弘美)

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「アイネクライネナハトムジーク」(2019年、日本)

監督:今泉力哉
出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳

2019年9月20日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/

作品写真:(c)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会
posted by 映画の森 at 09:53 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月22日

「ディリリとパリの時間旅行」華やかなフランスの“良き時代” 歴史上の人々と少女の謎解きの旅

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 19世紀末から20世紀初頭、「ベルエポック(良き時代)」のパリ。フランス領・ニューカレドニアに住む少女・ディリリは、どうしても外国に行ってみたくて、こっそり船に乗りパリに来た。開催中の博覧会に出演し、偶然出会った配達の青年・オレルとバカンスを楽しむ約束をする。一方、街は少女誘拐の話で持ちきり。謎の集団「男性支配団」が犯人という。ディリリはオレルの紹介さパリの有名人たちに会い、男性支配団について次々と質問する──。

 監督・脚本は「キリクと魔女」(98)、「アズールとアスマール」(06)などで知られる仏長編アニメーション界の巨匠ミッシェル・オスロ。音楽は「イングリッシュ・ペイシェント」(97)のガブリエル・ヤーレ。

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 幕開けは1900年のパリ万博。「人間動物園」で有色人種を原住民に見立て、暮らしぶりを再現している。ディリリは見世物的な子どものキャストとして出演していた。上半身裸に腰巻姿の少女に興味を持ったオルレは、会場の外で会う約束をする。現れたのは白いドレスで正装したディリリだった。流暢なフランス語を話し、マナーも行き届いた立派な淑女。二人はオルレの案内で、街歩きに出かける。しかし、少女誘拐事件のため、通りには不穏な空気が流れていた。

 当時のパリの町並みを。写真を加工して忠実に再現。歴史に名を残す有名人が次々と登場し、事件解決を試みるディリリたちに助言を与え、力を貸してくれる。タイムスリップしたような「もしも」を具現化する夢のようなアニメーションだ。

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 ピカソ、モネ、キュリー夫人、ロートレック、ルノワール、マティス、ルソー、ドビュッシー、サティ──映画にもなった黒人芸人「ショコラ」など、誰もが知る著名人が現れる設定が抜群だ。当時のフランス芸術、文化に詳しければより楽しめるだろう。一方で、植民地の先住民に対する差別、偏見も取り入れたことがポイントといえる。

 パリが繁栄した「ベルエポック」の世情を背景に、華やかなフランス文化を生んだ人々を物語に絡め、ノスタルジックな郷愁を生み出した。謙虚で礼儀正しいディリリの活躍はいとおしく、しばし現実を忘れ、観客に幸せな時間をくれる。アニメならではの柔軟性がユニークな作品だ。

(文・藤枝正稔)

「ディリリとパリの時間旅行」(2018年、仏・独・ベルギー)

監督:ミッシェル・オスロ
出演:プリュネル・シャルル=アンブロン、エンゾ・ラツィト、ナタリー・デセイ

2019年8月24日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://child-film.com/dilili/

作品写真:(C)2018 NORD-OUEST FILMS - STUDIO O - ARTE FRANCE CINEMA - MARS FILMS - WILD BUNCH - MAC GUFF LIGNE - ARTEMIS PRODUCTIONS - SENATOR FILM PRODUKTION

posted by 映画の森 at 09:59 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする