2018年11月12日

「ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲」“Mr.ビーン”ことローワン・アトキンソン、「007」パロディーを熱演

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 イギリスの諜報機関「MI7」のスパイ情報が、サイバー攻撃で漏洩した。隠居状態の元スパイ、ジョニー・イングリッシュ(ローワン・アトキンソン)が呼び出され、任務を開始する。しかし、ローテクのアナログ人間ジョニーにとって、敵はむしろ最新技術だった──。

 大ヒットコメディー「Mr.ビーン」のアトキンソン主演シリーズ3作目。監督は英BBCで多くのテレビドラマを監督してきたデビッド・カー。初の劇場映画だ。

 スパイが活躍する映画の人気は今も高い。ジェームズ・ボンドの「007」、イーサン・ハントの「ミッション・インポッシブル」。俳優のマット・デイモン主演の「ボーン」シリーズ、コリン・ファース主演「キングスマン」シリーズと、作品を重ねて世界の観客を魅了している。

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 そんな王道スパイ映画と別の道を、「ジョニー・イングリッシュ」は独走する。06年に第1弾、11年に続編の「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」が公開。今回の「アナログの逆襲」は7年ぶりのシリーズ最新作。

 物語はいたって真面目だ。アトキンソン主演で「007」をパロディー化するもので、主人公のイングリッシュは「MI6」ならぬ「MI7」諜報員。愛車はボンドと同じ旧型のアストンマーチン。武器担当者のコードネームは「Q」ではなく「P」。最新のスパイ・アイテムも、イングリッシュの手にかかれば無用の長物と化す。

 パロディーといっても手抜きはない。アシスタント監督は米スタント界の重鎮ヴィク・アームストロング。本家の「女王陛下の007」(69)、「007 死ぬのは奴らだ」(73)のスタント、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」(97)のセカンド監督のほか、「レイダース 失われたアーク」(81)など、多くの作品でハリソン・フォードのスタントを務めた。英国の首相役には英の大女優エマ・トンプソン。謎の美女に「007 慰めの報酬」(08)のボンドガール、オルガ・キュリレンコ。

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 しかし、なんといっても見どころは、アトキンソンの顔芸と体を張った「迷」演技。イングリッシュはいたって真面目に任務をこなしているが、思い込みと勘違いが激しく、事態が思わぬ方に動いてしまう。むちゃくちゃな中も最終的には結果オーライになり、アトキンソンがポーカーフェイスできめまくる。

 アナログ男のイングリッシュが、初体験のVR(バーチャル・リアリティー)に没入。街の人々を巻き込み大暴れするシーンが最高だ。「Mr.ビーン」が復活したようなアトキンソンの健在ぶり。作りこまれたスパイ・コメディーの快作である。
 
(文・藤枝正稔)

「ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲」(2018年、英)

監督:デビッド・カー
出演:ローワン・アトキンソン、ベン・ミラー、オルガ・キュリレンコ、ジェイク・レイシー、エマ・トンプソン

2018年11月9日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://johnnyenglish.jp/

作品写真:(C)2018 Universal Studios and Studiocanal SAS
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2018年11月10日

「生きてるだけで、愛。」痛々しくネガティブな若者たち ヒリヒリするまで掘り下げて

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 うつによる過眠症で引きこもりの寧子(趣里)と、出版社でゴシップ記事を書き続ける津奈木(菅田将暉)。二人が同棲する部屋に、津奈木の元彼女・安堂(仲里依紗)が現れ、関係が変化していく──。

 劇作家・小説家の本谷有希子の同名小説の映画化。CMやMV演出、短編オムニバス映画「BUNGO ささやかな欲望」(12)の関根光才が監督・脚本も手掛けた長編デビュー作だ。

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 コンパで知り合い、寧子が津奈木のマンションに転がり込んで3年。津奈木は朝早く家を出て、夜遅く帰る日々。寧子はバイトも続かず、家事もせず、姉とメールをするぐらいで引きこもっている。

 寧子と津奈木をつなぐのは、帰宅途中に買ったコンビニ弁当を食べること。優柔不断の津奈木は別々の弁当を買い、寧子に食べる弁当を決めてもらう。恋人らしくなく、同居人のような関係だ。

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 そこへ安堂が割って入る。津奈木に未練たっぷりの安堂は、寧子になじみのカフェでバイトさせて引き離そうとする。寧子はなかば強制的に社会復帰させられ、津奈木のストレスも編集長からの圧力でピークに達する。

 甘くコーティングされた最近の日本映画と違い、痛々しい二人のネガティブな日常がつづられる。うつで精神状態が不安定な難役に趣里が挑む一方、押しの演技が得意な菅田将暉が、趣里に振り回される引きの演技。ストーカーばりの粘着気質ながらユーモラスな仲里依紗がいい。今が旬の若い役者たちが絶妙なさじ加減の好演だ。

 原作は寧子一人の視点で書かれているが、寧子と津奈木の視点に変更され、津奈木のパートを膨らませて深みが出た。現代の若者の不器用な生き方を、ヒリヒリするほど徹底的に掘り下げて、観客の心をえぐっていく。

(文・藤枝正稔)

「生きてるだけで、愛。」(2018年、日本)

監督:関根光才
出演:趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊

2018年11月9日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://ikiai.jp/

作品写真:(C)2018「生きてるだけで、愛。」製作委員会

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2018年10月28日

「あいあい傘」25年行方不明の父、探す娘との再会物語 宅間孝行、劇場映画監督3作目

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 恋園神社がある小さな田舎町。年に1度の祭が近づいた日、さつき(倉科カナ)は25年前に姿を消した父の六郎(立川談春)を探しにやって来た。宿に向かう途中、偶然六郎を知るテキ屋の清太郎(市原隼人)と出会ったさつきは、「祭を取材したい」と嘘をつき、町を案内してもらう。父の暮らしぶりを知ったさつきは、父の新しい家族、妻の玉枝(原田知世)、娘(入山杏奈)に会いに行こうとする──。

 宅間孝行が主宰する劇団「東京テレソンデラックス」が07年に上演し、再演がなく「幻の作品」だった同名舞台劇の映画化。宅間自身が監督、脚本を担当している。

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 25年前。六郎は仕事で責任を押し付けられ、電車に乗り、小さな田舎町をさまよい歩き、恋園神社にたどり着いた。思い詰めた表情の六郎を見たお茶屋「恋園庵」の女将・玉枝は後を追い、そっと傘を差し出す。美しいモノクロ無声映画のワンシーンのようだ。六郎の過去が回想として描かれた後、舞台は今に移る。

 車にテキ屋道具を詰め込んだ清太郎は、カメラマンを名乗るさつきと知り合い有頂天。町で皆から慕われ、新しい家族と幸せに暮らす父の様子を知り、さつきに怒りと憎しみ、嫉妬が混じった複雑な感情がわきあがる。

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 テキ屋の男が美しいヒロインに一方的に思いを寄せ、物語が動き出す。山田洋次監督「男はつらいよ」シリーズを思わせる設定だ。寅さんの笑いの底には落語が流れているが、「あいあい傘」は舞台劇のハイテンションなリズム感が生きている。清太郎と仲間夫婦の台詞のキャッチボールが典型だ。さつきの本当の目的を知った清太郎は、六郎とうまく引き合わせようとする。

 宅間監督の劇場映画3作目。ワンカット、ワンシーンで人物の心の動きを丁寧に掘り下げていく。冒頭の白黒映像と対照的に感情の起伏の激しい舞台劇的なドラマが展開し、最後はしっとりした家族の話に着地させる。変幻自在な演出だ。

 さつきと六郎はなかなか会えないが、再会シーンは6分間の長回し撮影。父を前にあふれる感情を抑えた倉科。朴訥とした立川談春。2人の演技は化学反応を起こし、親子の思いがつながる名シーンに仕上がった。脇に徹した原田知世のしおらしさをはじめ、キャストの一体感が心地良い感動を生み出している。

(文・藤枝正稔)

「あいあい傘」(2018年、日本)

監督:宅間孝行
出演:倉科カナ、市原隼人、立川談春、原田知世、入山杏奈

2018年10月26日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://aiai-gasa.com/

作品写真:(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

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2018年10月25日

「旅猫リポート」愛する猫と別れの旅路 福士蒼汰、光る繊細演技

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 元野良猫のナナ(声・高畑充希)は、交通事故に遭ったところを心優しい青年・悟(福士蒼汰)に助けられ、飼い猫として5年間、幸せに暮らしていた。しかし、悟はある事情でナナを手放さなくてはならなくなり、一緒に新しい飼い主を探す旅に出る──。

 有川浩の同名小説を映画化。監督はフジテレビのホラードラマ「トリハダ」シリーズや「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」(16)の三木康一郎、音楽は「この世界の片隅に」(16)のコトリンゴ。

 「吾輩は猫である。名前はナナである」。夏目漱石の「吾輩は猫である」の書き出しになぞらえ、物語の幕が開く。ナナの心の声が随時差し込まれ、悟との道中がロードムービーのように描かれる。悟は過去を回想し、過去と現在が交差する構成だ。

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 ナナを手放す旅の最初の目的地は、悟の小学校時代の同級生・幸介(山本亮介)が働く実家の写真館。小学生のころ、二人は猫を拾い、悟が「ハチ」と名付けて飼い始める。一方で当時、幸せな悟の人生を左右する大変な出来事が起きる。

 次に向かった先は、高校時代の同級生の千佳子(広瀬アリス)と修介(大野拓朗)夫婦が経営するペンションだ。3人は高校時代に仲が良く、姉御肌の千佳子に悟と修介は淡い恋をした。しかし、ペンションの飼い犬とナナが大ゲンカ。最後に向かったのは、悟が子どもの頃から世話になっている伯母(竹内結子)の家だった。

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 起承転結の「起」をぼかして旅は始まる。旅の途中で悟の人生が振り返られ、ナナを手放す理由も見えてくる。行きつく先はまさかの着地点。予想もせぬ展開に驚き、涙があふれた。過去と現在を交差させ、悟の過去と今をしっかり伝えながら、感情移入するよう作られている。巧みな構成と演出だ。

 今年公開の「曇天に笑う」(18)で、天真爛漫で破天荒な主人公をエネルギッシュに演じた福士。今回は正反対。憂いと陰りのある繊細な演技に成長を感じた。ナナを擬人化した心の声が効果的で、高畑のユーモアある表現力は、陰の功労者といえる。猫好きでない人にもお勧めの心温まる感動作だ。

(文・藤枝正稔)

「旅猫リポート」(2018年、日本)

監督:三木康一郎
出演:福士蒼汰、高畑充希(声)、広瀬アリス、大野拓朗、山本涼介

2018年10月26日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://tabineko-movie.jp/

作品写真:(C)2018「旅猫リポート」製作委員会 (C)有川浩/講談社

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2018年10月18日

「デス・ウィッシュ」ブロンソン往年の名作「狼よさらば」、ウィリス主演でリメイク

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 犯罪都市・米シカゴで、緊急患者を診る外科医ポール・カージー(ブルース・ウィリス)。ある日、何者かが家に侵入し、妻ルーシー(エリザベス・シュー)は殺され、娘は昏睡状態になってしまう。進まぬ捜査に怒ったポールは銃をとり、犯人抹殺のため危険な街へ繰り出す──。

 チャールズ・ブロンソン主演、マイケル・ウィナー監督「狼よさらば」(74)のリメイク作品だ。「狼よさらば」はブロンソンのライフワークで、続編4本が製作される人気シリーズとなった。“一人自警団”カージーは、マーチン・スコセッシ監督「タクシードライバー」(76)、ロバート・ギンティ主演「エクスタミネーター」(80)など後続作品に多大な影響を与えた。

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 「デス・ウィッシュ」を監督したイーライ・ロスは、「食人族」(80)をモチーフにした「グリーン・インフェルノ」(13)、「メイク・アップ」(77)をリメイクした「ノック・ノック」(15)と、好きな映画のルーツをたどるように、影響を受けた作品をリメイクしてきた。今回も思い入れの強い1本だろう。

 オリジナルとリメイクはところどころ設定が異なる。建築家だったカージーは外科医に変更。男臭く武骨なイメージだったブロンソンは、「狼よさらば」で市民から自警団に変わる姿を繊細に演じ、俳優としての幅を大きく広げた。一方、「ダイ・ハード」のウィリスは一味違い、人間味あるカージー像を作り上げた。新しいキャラクターとして、カージーに頼り切りのダメな弟フランク(ビンセント・ドノフリオ)が登場。物語の絶妙なアクセントになっている。

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 オリジナルを覆っていた悲壮感と重苦しさを取り払い、シリーズ3作目「スーパー・マグナム」(85)あたりの大らかな乗りを目指した印象。カージーの戦いは動画撮影され、SNSを通じて拡散。街のヒーローとして神格化されていくところに、現代らしさが色濃く出ている。

 「自分の身は自分で守る」開拓精神がカージーを突き動かし、拳銃を手に街のダニの一掃にとりかかる。犯罪都市に現れたヒーローは、無力な警察を揶揄するようにも感じられる。現代に再現された痛快復讐劇だ。

(文・藤枝正稔)

「デス・ウィッシュ」(2018年、米)

監督:イーライ・ロス
出演:ブルース・ウィリス、ビンセント・ドノフリオ、エリザベス・シュー、ディーン・ノリス、キンバリー・エリス

2018年10月19日(土)、TOHO シネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://deathwish.jp/

作品写真:(C)2018 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
posted by 映画の森 at 14:23 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする