2018年03月28日

復活11回目のゆうばり映画祭、「出会いの場」として盛況のうち幕

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 北海道夕張市で3月15日から19日まで開かれた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」は昨年をやや上回る1万2522人を動員した。例年同様に多くの映画人が集い、映画ざんまいの5日間を過ごした。市の財政破たんによる中断を経て復活してから今年で11回目。会場の選定やスポンサーの確保などでは手探りが続く中、「出会いの場」としての映画祭は盛況のうちに幕を閉じた。

 期間中は国内外の長短編約110本を上映。メーンのコンペ部門、ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門はグランプリに「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」(西口洸監督)を選出した。大阪芸術大学を卒業後、同大学で機材係として働きながら映画製作を続ける西口監督は、「学生時代は“いけてない方”だった。賞を取れるとは思っていなかったがうれしい」と、控えめに喜びを語った。審査委員長の瀬々敬久監督は審査が最後までもつれたことを明かしつつ、「(グランプリ作は)弱者への目配りや優しさを持っている点がよかった」と評した。

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 これに先立つ15日のオープニングセレモニーで発表された期待の映画人を選定する「京楽ピクチャーズ.PRESENTS ニューウェーブアワード」は、俳優部門で葉山奨之と川栄李奈が受賞。葉山は「日本映画界に必要とされる俳優を目指して精進したい」とコメントした。クリエーター部門は、脚本家としてキャリアを積み、このほど長編アニメーション「さよならの朝に約束の花をかざろう」で監督デビューした岡田麿里が受賞した。

 今年の映画祭は昨年より半月遅く始まった。オープニング当日は気温が上がり、雪景色の夕張にも雨が降った。真冬の開催にこだわってきたゆうばり映画祭。運営に長年携わるスタッフは「期間中に雨が降るなんて初めてのこと」とつぶやいた。

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 開催時期の変更は、市内の宿泊施設とスキー場の経営権所有者が変わったためだ。売却先を探していた施設を東京の不動産会社が昨年買収し、中華圏のスキー客誘致を優先する方向に転換した。夕張の3月はまだスキーのハイシーズン。書き入れ時に映画祭があると集客に響くとの判断があったのだろう。

 参加者の立場に立てば、映画祭に向かう交通手段が年々不便になっていることが気にかかる。夕張は公共交通の衰退が著しい。この冬は新千歳空港と市内スキー場を結ぶバスが廃止され、JR石勝線夕張支線の廃止も決まった。

 夕張を取り巻く厳しい状況が映画祭にも影響を及ぼすなか、今年は上映会場を合宿施設「ひまわり」に集約したほか、札幌市内にサテライト会場を開設するなど新しい取り組みが目を引いた。映画祭が30回目となる2020年を見据え、関係者の模索が続いている。

(文・写真 芳賀恵)

<受賞作>

・ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門

グランプリ 「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」(西口洸監督)

審査員特別賞「温泉しかばね芸者」(鳴瀬聖人監督)

北海道知事賞「キュクロプス」(大庭功睦監督)

シネガーアワード(批評家賞)「キュクロプス」(大庭功睦監督)

・インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門

グランプリ 「ぱん。」阪元裕吾監督・辻凪子監督

優秀芸術賞 「NO LINE」(川中陸監督)

      「父の日」マット・ジョンズ監督

      「Black Dog」ジョシュア・ディーン・タットヒル監督

・アニメーション企画優秀賞

「ドントクライ」(高嶋友也監督)

・その他

ゆうばりファンタランド大賞(観客賞)「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)

写真
1:参加者によるフォトセッション
2:ファンタスティック・オフシアター・コンペティション グランプリ「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」の西口洸監督(右)と瀬々敬久審査委員長
3:ニューウェーブアワードを受賞した(左から)葉山奨之、川栄李奈、岡田麿里監督
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2018年03月09日

「ザ・キング」チョ・インソン×チョン・ウソン、悪に染まった検事熱演 極上の韓国犯罪エンターテインメント 

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 けんか好きの貧しい青年パク・テス(チョ・インソン)は、権力で悪を制する検事に憧れ、猛勉強の末に夢を実現。新人検事として地方都市で多忙な日々を送るが、ソウル中央地検のエリート部長ガンシク(チョン・ウソン)と出会って人生が一変する。ガンシクは他人を踏み台に成り上がり、大統領選を利用して権力をつかんだ「1%の成功者」だった──。

 テス役に「露花店(サンファジョム)運命、その愛」(08)以来の映画出演となるチョ・インソン。ガンソクに「愛のタリオ」(14)、「アシュラ」(16)のチョン・ウソン。テスの先輩検事役にペ・ソンウ。監督・脚本は「観相師 かんそうし」(13)のハン・ジェリム。

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 1980年〜2010年の韓国現代史をバックに、テスの激動の半生を描く。監督の語り口は軽妙で饒舌。韓国事情にうとい日本の観客をうまく作品世界へいざなう。まず成功したテスの姿を見せる。さかのぼって貧しい少年が検事を目指す道のりを、スローモーションや静止画像、ナレーションを多用して紹介する。マーティン・スコセッシ監督「グッドフェローズ」(90)を思わせる。緑がかったスタイリッシュな映像は「セブン」(95)のデビッド・フィンチャー監督の影響か。

 歴史的事実の裏で、権力を握った検事たちが、裏工作で国民をあざむき、社会を動かしていく。史実と創作のさじ加減が絶妙でリアルだ。フィクションのはずが、見ているうちに真実味が増してくる。脚本と演出のなせる技だろう。

 ガンソクと出会い、悪事のうまみを知るテス。一方、テスの幼なじみのチェ・ドゥイル(リュ・ジョンユル)は、暴力団員として裏街道まっしぐら。スタートラインは一緒だった二人が交差する瞬間、運命が動き出す。

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 俳優たちが実に魅力的だ。10代から40代まで、髪型と衣装を変えて柔軟に演じ分けたチョ・インソン。ダンディーで渋い二枚目のチョン・ウソンは、怒りやダンス、歌と静と動を自在に使い分け、二面性ある腹黒い男を魅力的に演じている。欲に染まった男二人と対照的に、正義の道を突き進む女性検事のヒヨン(キム・ソジン)。達観した視点が物語のスパイスになっている。

 小刻みなテンポでリズムを作り、大きなうねりにつなげる監督のセンス。極上の韓国犯罪エンターテインメントだ。

(文・藤枝正稔)

「ザ・キング」(2017年、韓国)

監督:ハン・ジェリム
出演:チョ・インソン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、リュ・ジュンヨル、キム・ウィソン

2018年3月10日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://theking.jp/

作品写真:(C)2017 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & WOOJOO FILM All Rights Reserved.

タグ:レビュー
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2018年02月28日

「シェイプ・オブ・ウォーター」冷戦時代に描く人間と異生物の愛 ギレルモ・デル・トロ監督、シンプルに独創的に

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 1962年、米政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は、秘かに運び込まれた不思議な生き物を見てしまう。アマゾンの奥地で神のように崇められていた“彼”は、奇妙だがどこか魅力的。イライザは周囲の目を盗んで会いに行くようになる。子どもの頃のトラウマで声が出ないイライザだが“彼”との間には言葉はいらなかった──。

 ギレルモ・デル・トロが監督、脚本、製作、原案のラブファンタジー「シェイプ・オブ・ウォーター」。ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)、ゴールデングローブ賞で監督賞を受賞、3月発表の米アカデミー賞では作品、監督、主演女優賞など13部門にノミネートされている話題作だ。

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 日本のマンガやアニメ、特撮作品をこよなく愛するデル・トロ監督。「ミミック」(97)、「ヘルボーイ」(04)、「パンズ・ラビリンス」(06)、「パシフィック・リム」(13)と、マニア心をくすぐるダーク・ファンタジーを送り出してきたが、今回は愛すべき小品といえよう。米国とソ連が科学技術開発でしのぎを削った冷戦時代、人間の女性と半魚人系クリーチャーの禁断の愛を描いた。

 話せないイライザは、自宅と職場を往復するだけ。寂しい日常を反復して描き、愛を知らない孤独を観客の脳裏に焼き付け本題に入る。巧みな演出だ。イライザが出合った生き物は、実験対象としてアマゾンで捕獲された。生き物に過酷な仕打ちをするエリート軍人のストリックランド(マイケル・シャノン)、研究チームの新任ホフストラー博士(マイケル・スタールバーグ)は、イライザや清掃員の同僚ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)を厳しく見張っている。イライザはすきを狙って研究室に忍び込み、生き物と交流を始める。

 人間と異生物と友情といえばスピルバーグ監督の「E.T.」(82)を思い出す。今回は友情より難易度の高い愛情だ。監督はファンタジーの魔法を使い、生き物を知能ある神秘的な存在に位置付け、主人公の孤独な心を埋める様子を描いた。

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 イライザは話せないため、生き物と手話でやり取りする。ゆで卵や音楽で親密になる過程が、違和感なく描かれる。ホーキンスはほぼセリフがないが、内面からにじみ出る感情表現が秀逸だ。イライザの代弁者となる勝気な相棒のゼルダを演じたスペンサー。隣人でよき理解者のジャイルズを演じたリチャード・ジェンキンス。悪役を一手に引き受けたストリックランド役のシャノン。デル・トロ作品の常連で数々のクリーチャーを演じた生き物役のジョーンズが、スーツアクターとして素晴らしい演技を見せている。

 動きを止めない流麗な映像、琴線に触れるシンプルな音楽。ダーク路線から一皮むけた監督が、新たな一面を見せる愛の物語だ。

(文・藤枝正稔)

「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年、米国)

監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ

2018年3月1日(木)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/

作品写真:(C)2017 Twentieth Century Fox
タグ:レビュー
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2018年02月21日

「The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ」ソフィア・コッポラ監督、女性心理を深く繊細に

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 南北戦争3年目の1864年、米南部のバージニア州。世間から隔絶された女子寄宿学校に、美しい女性7人が暮らしていた。ある日、負傷した北軍の兵士に遭遇し、運んできて手当てをする。紳士的な兵士に、女性たちは心奪われていく──。

 1971年、クリント・イーストウッド主演、ドン・シーゲル監督で映画化された「白い肌の異常な夜」と同じトーマス・カリナンの原作を、ソフィア・コッポラ監督が女性の視点で描き直した。2017年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞している。

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 男子禁制の女の園を仕切るのは、園長のミス・マーサ(ニコール・キッドマン)だ。教師エドウィナ(キルスティン・ダンスト)は、好奇心旺盛なアリシア(エル・ファニング)ら女子生徒5人と暮らしている。ある日、生徒がキノコ採りに出かけ、負傷した敵軍のマクバニー伍長(コリン・ファレル)を連れ帰る。

 「白い肌の異常な夜」は、登場人物の内なる声を使い、夢や幻想を使ったスリラーだった。マクバニーは女性たちを女として見ており、男性の観客に向けて作られた印象があった。

 一方、「ビガイルド」では、女性たちがマクバニーに色めき立ち、おしゃれを始めるなど、女性心理を掘り下げている。濃密な雰囲気だった「白い肌」に比べ、シンブルでストレートな印象だ。自然光、ろうそくの光など照明を重視。手作りのドレスには「マリー・アントワネット」(06)にも共通する監督のこだわりが見える。

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 マクバニー役のファレルは、イーストウッドに比べて小粒の印象。逆に堂々たる風格のキッドマン、ダンスト、今が旬のファニング。女優は適材適所で愛憎劇を盛り上げる。シーゲル監督が「ダーティハリー」(71)と同年に作った「白い肌」と対照的に、寡黙で繊細な女性の心を見つめ、静かに観客の心に刺さるスリラーとなった。

(文・藤枝正稔)

「The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ」(2017年、米国)

監督:ソフィア・コッポラ
出演:コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、キルステン・ダンスト、エル・ファニング、オオーナ・ローレンス

2018年2月23日(金)、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://beguiled.jp/

作品写真:(C)2017 Focus Features LLC All Rights Reserved

タグ:レビュー
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「8年越しの花嫁 奇跡の実話」佐藤健、大ヒット御礼舞台挨拶「上映されている時間が幸せ」

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 「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の大ヒット御礼舞台挨拶がこのほど東京都内で開かれ、主演の佐藤健が出席した。佐藤は「素敵な物語をそのまま伝えることができれば、感動してもらえるし、映画もヒットする」と話した。

 佐藤はこの日、客席から登場。観客から「おめでとう」とヒットを祝う声がかかり、「うれしかった」と感動した様子を見せた。もとになったのは動画サイト「YouTube」の映像が話題になり、書籍化された実話。土屋太鳳との主演で映画化された。

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 佐藤は「(原作の主人公である)尚志さんと麻衣さんが素敵な奇跡を起こしてくれたおかげ。改めて感謝を伝えたい」と語った。

 また、第41回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を受賞したことに「役者の力はちっぽけなもの。どんな作品、役に出合い、どんなクリエイターと仕事をするかで生かされもするし、その逆もある。今回は瀬々監督のおかげだと思っている」と話した。

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 さらに、相手役の土屋も優秀主演女優賞を獲得。W受賞になったことに「賞を獲っても驚かない力を持っている。出会いがあれば今回のような素敵なことが起こるとずっと思っていた」と称えた。

 最後に「この映画が上映されているこの時間が、とても幸せ。少しでも続けばいいと思う。映画を応援、愛して下さって感謝しています」と話し、舞台挨拶をしめくくった。

(写真・文 岩渕弘美)

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「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2017年、日本)

監督:瀬々敬久
出演:佐藤健、土屋太鳳、北村一輝、浜野謙太、中村ゆり

全国公開中。作品の詳細は公式サイトまで。

http://8nengoshi.jp/#/boards/8nengoshi

作品写真:(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会
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