2017年08月19日

「LUCK-KEY ラッキー」韓国映画の名脇役ユ・ヘジン、主演コメディーで縦横無尽

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 韓国で2016年に大ヒットしたコメディー映画「LUCK-KEY ラッキー」(イ・ゲビョク監督)が公開中だ。原案は、堺雅人と香川照之の共演で話題を集めた日本映画「鍵泥棒のメソッド」(12、内田けんじ監督)。名バイプレーヤーのユ・ヘジンの起用が大当たりし、コメディー映画としては韓国映画史上最高の約697万人を動員した。重厚で骨太な映画が人気を集める中での異例の快進撃だった。

 眼光鋭い殺し屋の男が銭湯で石鹸を踏んづけて転倒し、記憶を失う。居合わせた貧乏役者は、脱衣所で男の財布に大金が入っているのを見ていた。そして男のロッカーの鍵を自分のものとすり替え、ふたりの人生が入れ替わる──。この「鍵泥棒のメソッド」の基本設定はそのまま生かし、大幅に脚色を加えて新たな世界を作り出している。

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 主演ユ・ヘジンの特徴的な風ぼうは、韓国映画ファンにはおなじみだろう。舞台俳優出身。スクリーンデビュー当時はチンピラややくざ者のイメージが強かったが、次第に重要な役どころを任されるようになり、「里長と郡守」(07)でチャ・スンウォンとのダブル主演に抜てきされる。

 「チョン・ウチ 時空道士」(09)では変化自在な犬、「ベテラン」(14)では財閥家に仕える従順で卑屈な社員、「極秘捜査」(15)では心優しい占い師、「共助」(16)では北朝鮮の刑事とチームを組む落ちこぼれ刑事と、演じる役柄は多種多様。物語にリアリティーを与える強力な存在でありながら、自らの役割をわきまえて決して主役を食うようなことはしない。いまや韓国映画になくてはならない俳優だ。

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 そんな彼のワンマンショーが堪能できるのが「LUCK-KEY ラッキー」。ユ・ヘジン演じる殺し屋ヒョンウクは記憶を失い、自分を駆け出しの役者と思い込む。銭湯で倒れた自分を助けてくれたレスキュー隊員リナに支えられ、地道な努力を重ねてエキストラからセリフのある役へと着実に進化していく。一方、貧乏役者ジェソンは殺し屋への電話を受けて仕事に足を突っ込んでしまう。そこに美貌の女性ウンジュが絡み、事態は予想外の展開を見せる。

 ユ・ヘジンはスクリーンを縦横無尽に駆け回り、コメディーにミステリー、アクションにロマンスと、ごった煮になりかねない要素をすっきり整理する。冷徹な殺し屋、駆け出しの役者、さらには劇中劇の登場人物といくつものキャラクターを演じ分け、カメレオン俳優の本領を存分に発揮。まるで彼自身の演技人生が投影されているかのような物語のクライマックスは、劇中劇のラストシーンとシンクロし、観客の心を震わせる。この映画が発信するのはまさしく「演技とは」、「人生とは」というメッセージなのだ。

 人気グループ・MBLAQ出身で、演技のキャリアを順調に重ねているイ・ジュンがジェソン役を好演。キュートなレスキュー隊員リナ役のチョ・ユニ、謎めいた美貌の女性ウンジュ役のイム・ジヨンが華を添える。

(文・芳賀恵)

「LUCK-KEY ラッキー」(2016年、韓国)

監督:イ・ゲビョク
出演:ユ・ヘジン、イ・ジュン、チョ・ユニ、イム・ジヨン

2017年8月19日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://klockworx.com/movie/m-405151/

作品写真:(C)2016 SHOWBOX AND YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED.
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2017年08月15日

「海の彼方」沖縄・石垣島への台湾人移民、苦難を乗り越えて ドキュメンタリー・シリーズ第1弾

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 戦前、台湾から沖縄県石垣島に移り住んだ人々を追ったドキュメンタリー映画「海の彼方」。日本に統治されていた1930年代、台湾から八重山諸島に農家約60世帯が移り住んだ。「海の彼方」に登場する玉木家の人々も含まれていた。

 2015年、88歳になった玉木玉代おばあは、娘や孫に連れられ、台湾の埔里へ最後の里帰りをする。長年の思いを胸にたどり着くが、70年の歳月がもたらした変化は大きかった。

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 玉代おばあの孫である玉木慎吾がナレーションを務める。慎吾はヘビメタバンドのメンバーとして活動している。東京から石垣島へ慎吾が帰るところから、カメラは追っていく。慎吾を迎える家族の中に、玉代おばあの姿も。再会を喜ぶ家族の幸せの向こうには、おばあが歩んだ苦難の歴史があるのだ。

 日本の敗戦後、石垣島に残った台湾の人々は無国籍状態に置かれた。おばあも沖縄が本土に復帰する1972年、日本国籍となった。沖縄の台湾人は、台湾の戦後教育を受けていないため、台湾語と日本語しか話せない。孫の代になると台湾語ができなくなる。台湾と日本の間にいる移民のアイデンティティーに迫りながら、おばあの里帰りを追っていく。

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 台湾人移民の苦難の歴史、玉木家の家族史がうまく合わさっている。日本と台湾の歴史も分かりやすく入ってくる。黄インイク監督のドキュメンタリー・シリーズ「狂山之海(くるいやまのうみ)」第1弾作品。

(文・藤枝正稔)

「海の彼方」(2016年、台湾・日本)

監督:黄インイク
出演:玉木玉代、玉木慎吾、玉木茂治、玉木美枝子、登野城美奈子

2017年8月12日(土)、ポレポレ東中野ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://uminokanata.com/

作品写真:(C)2016 Moolin Films, Ltd.

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2017年08月11日

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017 監督賞受賞「中国のゴッホ」本物との出会いが運命を変えた レプリカ職人の人生に迫るドキュメンタリー

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 ゴッホの複製画を描くことを生業(なりわい)としている男を追ったドキュメンタリー「中国のゴッホ」。画集やテレビでしかゴッホの絵画を見たことのなかった男が、オランダ人のバイヤーからの誘いでアムステルダムに渡って、初めて本物に接し、衝撃を受ける。

 色が全然違う。入念にコピーしてきたつもりだったが、実物とは大違いだった。そのショックが、男の芸術家魂に火をつけた。ゴッホの描いたカフェを発見するや、「あの絵のとおりだ」と興奮し、その場でキャンバスを立て写生を始める。

 生活のために複製画を描き続けてきた。これからは自分のオリジナルを描こう。男は決意を胸に帰国する――。

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 中国・深セン市近郊の大芬(ダーフェン)村。世界で流通する複製画の半分がここで生産されているという。多数のスタッフが分担しながら、ゴッホの複製画を製作している風景は、日本のアニメ製作現場を彷彿とさせる。

 スタッフはみな地方からの出稼ぎ者らしい。美術学校どころか、主人公の男は家が貧しく小学校しか行っていない。だが、独学で身につけた技術は確かだ。自分の手になるレプリカが世界中に流通しているという自負もある。だからこそ、本物を見たいという気持ちは、人一倍強かったろう。

 バイヤーの援助はあるものの、渡欧には多くの出費が伴う。妻は後ろ向き。それを懸命に説得し、何とか夢をかなえる。生活のこと、息子の教育のこと。芸術と人生との両立に苦闘する男の姿は、シリアスであったりユーモラスであったり。自作の複製画がアムステルダムの土産物屋で売られているのを見て落胆する様子は、さすがに気の毒である。

 思わず感情移入してしまう、愛すべきキャラクター。そんな主人公の素顔に迫り、本音を語らせ、人生の転機を迎える瞬間を切り取って見せたドキュメンタリーである。

(文・沢宮亘理)

「中国のゴッホ」(2016年、中国・オランダ)

監督:ハイボー・ユウ、キキ・ティエンチー・ユウ

作品写真:(c)YU Haibo
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2017年08月10日

「きっと、いい日が待っている」デンマーク発 施設の児童虐待、未来ひらく兄弟の絆

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 1967年、コペンハーゲン。労働者階級の家に生まれた兄弟、13歳のエリック(アルバト・ルズベク・リンハート)と10歳のエルマー(ハーラル・カイサー・ヘアマン)は、病気の母親と引き離され、男児向け養護施設に預けられる。施設ではしつけ名目の体罰が横行していた。エリックたちは環境になじめず、上級生のいじめの標的されてしまう──。

 「きっと、いい日が待っている」は、コペンハーゲンの養護施設で起きた実話をもとにしている。子どもに対する暴力、薬物投与が明るみに出て、2000年代半ばに報告書がまとめられた。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(00)のラース・フォン・トリアー監督が率いる製作会社の俊英、イェスパ・W・ネルスンがメガホンを取った。

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 エリックとエルマーの兄弟が車に乗せられ、人里離れた施設へ送られる。物悲しい幕開けだ。かつて兄弟は元気いっぱいだった。天体望遠鏡を万引きした兄弟は店員に追われ、母親は呼び出されて責められる。宇宙飛行士になりたい天真爛漫なエルマーは、貧しさで手に入らない望遠鏡がほしかったのだ。しかし、シングルマザーの母が入院。兄弟は養護施設に入れられる。

 施設の生活は地獄だった。しつけ名目の教師の体罰、上級生のいじめ、過酷な労働。小児性愛嗜好の教師の毒牙。施設を支配していたのは、独裁的な校長(ラース・ミケルセン)だった。施設の仲間は兄弟に、気配を消して「幽霊になれ」と助言する。外界との接触を絶たれ、独自のきまりで運営される施設。

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 そこへ、新しく女性教師ハマーショイ(ソフィー・グローベル)が赴任してきた。傷の絶えない兄弟を親身になって手当てし「言いつけを守れば、最後は報われる」と諭す。文章が読めるエルマーに郵便係の仕事を与え、重労働から解放する。兄弟は「クリスマスは一緒に過ごせる」という母の言葉を信じ、つらい生活に耐える──。

 1960年代、閉ざされた施設に横行する児童虐待を、真正面から告発する。校長役ラース・ミケルセンの迫真の演技に凍り付く。兄弟の母的な立場となるハマーショイ先生の母性、エルマーが抱く宇宙への憧れが癒やしとなる。子役2人の演技が素晴らしく、幕引きにも救われる作品だ。

(文・藤枝正稔)

「きっと、いい日が待っている」(2016年、デンマーク)

監督:イェスパ・W・ネルスン
出演:ラース・ミケルセン、ソフィー・グロベル、アルバト・ルズベク・リンハート、ハーラル・カイサー・ヘアマン

2017年8月5日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.kittoiihigamatteiru.ayapro.ne.jp/

作品写真:(C)2016 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa International Sweden AB.

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2017年08月02日

特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語」ジャック・ドゥミ夫妻、再評価受け一挙に5作品

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 仏ミュージカル映画の傑作「シェルブールの雨傘」(64)、「ロシュフォールの恋人たち」(67)で知られるジャック・ドゥミと、同じく映画監督だった妻のアニエス・ヴァルダ。最近ドゥミの影響を受けた米ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」が注目され、再評価の動きが高まっている。

 特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福について5つの物語」ではドゥミが監督した「ローラ」(60)、「天使の入江」(62、日本初上映)、ヴァルダが監督した「ジャック・ドゥミの少年期」(91)、「5時から7時までクレオ」(61)、「幸福(しあわせ)」(65)の計5本がデジタルリマスター版で上映される。「幸福(しあわせ)」と同時に、ヴァルダが15年に監督した新作短編「3つのボタン」も上映される。

「ローラ」

 ドゥミの長編デビュー作。トレードマークとなった黒味から丸く画面が広がるアイリスインで幕を開ける。その後の作風を思わせる表現が随所に散りばめられている。港町ナントを舞台に、キャバレーの踊り子ローラ(アヌーク・エーメ)をめぐり、登場人物たちが繰り返しすれ違う。

 ドゥミの作品で面白い点は、人物が別の作品でも同じ役で登場することだ。「ローラ」は「シェルブールの雨傘」の前日譚ともいえる。主人公のローラン(マルク・ミシェル)は、この作品で夢破れて「アフリカに旅立つ」とナントの町を去っていく。その後「シェルブールの雨傘」で宝石商として成功。主人公のジュヌビエーヴ(カトリーヌ・ドヌーブ)と結婚する。

 「ローラ」に流れるミシェル・ルグランのテーマ曲「ウォッチ・ホワット・ハブンズ」は、「シェルブールの雨傘」の中で再び使われる。ローランが出会う母娘は、「シェルブールの雨傘」のジュヌビエーヴと母の原型だろう。ローラもドゥミ初の米映画「モデル・ショップ」(69)でその後が描かれる。「ローラ」はドゥミにとって原石。つたない部分もあるが、みずみずしい輝きを放つ愛すべき作品だ。

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「天使の入江」

 南仏のリゾート地ニースの「天使の入江」。パリから逃げてきた銀行員ジャン(クロード・マン)は、カジノでジャッキー(ジャンヌ・モロー)と出会い、2人でギャンブルにのめり込む。「天使の入江」はドゥミ作品では異質な意欲作といえる。ギャンブル依存症のジャッキー、ビギナーズ・ラックで博打にはまったジャン。ルーレットで勝ち負けを繰り返し、関係を深めていく。

 ジャッキーには夫と子供がいる。病んだ心をジャンは愛の力で断ち切れるか。夢見る作品が多いドゥミにしては現実的なテーマだ。ピアノの高音がきらめくルグランのテーマ曲は、ルーレットで転がり続ける玉の音を再現したよう。「ローラ」から始まるドゥミとルグランの合作は、ドゥミの遺作「思い出のマルセイユ」(98)まで続いた。

(文・藤枝正稔)

「ローラ」(1961年、フランス)

監督:ジャック・ドゥミ
出演;アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、ジャック・アルダン、アラン・スコット

「天使の入江」(1963年、フランス)

監督:ジャック・ドゥミ
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン、ポール・ゲール、アンリ・ナシエ

2017年7月22日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.zaziefilms.com/demy-varda/

作品写真:
「ローラ」(c) mathieu demy 2000
「天使の入江」(c) ciné tamaris 1994
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 10:32 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする