2018年05月05日

「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」ビョン・ソンヒョン監督に聞く ソル・ギョング主演犯罪映画「新しい感覚で撮りたかった」

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 韓国の演技派俳優、ソル・ギョング主演の犯罪映画「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」が公開中だ。固い絆で結ばれた犯罪者2人が、組織を登り詰める中で互いの意図を知り、関係性が変化していく様子を描く。共演は「弁護人」(13)の若手俳優、イム・シワン。公開に先立ち来日したビョン・ソンヒョン監督に話を聞いた。

 主なやり取りは次の通り。

 ──男同士の犯罪映画を、今までにないスタイルで映像化した。

 韓国には似たようなジャンル・題材で、男性2人を共演させた作品が多い。今回も企画段階では反対する人が多かった。過去には「新しき世界」(13)などもあったが、自分は「違う感性でもっと若々しく撮れる」と主張した。何を撮るより、どう撮るかが重要だった。スタイリッシュに、愛情表現を盛り込んで作ろうと思った。

 まずは絵コンテ作りに時間を割いた。撮影監督、美術監督たちと「ありふれた作品にするのはやめる」ことを基本に会議を重ねた。今までとは違う、新しい感覚のものが撮れたと思う。

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 ──遊び心が散りばめられた作品だ。刑務所の食事シーンはレオナルド・ダ・ヴィンチの名画「最後の晩餐」を思わせたり、トッポッキ店で打ち合わせしていたり。狙いは。

 「最後の晩餐」に見えるシーンは、組織にいる2人の関係性を表してみた。トッポッキ店での密談シーンは、高級店などより、幼なじみの関係性を感じさせ、昔から通うような場所もいいかな、と。店内ががやがやしている中での密談も面白いと考えた。

 ──ソル・ギョングの役作りについて。犯罪組織内で重要な位置にありながら、生き生き楽しそうに演じていた。監督の指示か、本人の判断か。

 私の演出と、彼のキャラクター分析の両方。シナリオにもそう描かれていた。よく笑う設定の役だ。ソルさんが最初の撮影で、高い声で笑ったのを聞いて「いいな。それでいきましょう」とお願いした。内面には重い部分を持っていて、仮面で隠している。ソルさんと話し合いながら作っていった。

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 ──男同士の友情ものでも、善悪を問う作品でもないように感じた。それでいて後味は心地よい。

 「何かを伝えよう」という大きな意図はなかった。最初は犯罪映画を撮ろうと思い、次に「ロミオとジュリエット」を頭に浮かべた。男同士ではあるが、相手に対する愛情、ドラマ的な要素がベースになっている。「タイミングがずれる」ことが悲劇を呼び、重要になると思った。

 ──時間軸をずらすことを、感情表現に生かしている。

 シナリオ段階から考えていた。オープニングからラストまで、セリフ・道具・感情の細部まで構成は作っていた。

 ──ドラマ「ミセン 未生」(14)を見てイム・シワンの起用を決めたと聞いた。ソル・ギョングとの相性は素晴らしかった。

 普段はテレビを見ないので、彼がアイドルと知らなかった。最初彼は、自分の演じる役を非常に男性的で重いと考えていた。しかし、台本を読む段階で「あなたの持っている少年らしさがあっていい。だんだんと男らしく変わる姿を見せよう」と話した。感情のない美しい顔が必要で、彼はぴったりだった。撮影が進むにつれ、互いを信じて撮っていけた。

(文・写真 岩渕弘美)

「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」(韓国、2017年)

監督:ビョン・ソンヒョン
出演:ソル・ギョング、イム・シワン、チョン・ヘジン、キム・ヒウォン、イ・ギョンヨン

2018年5月5日(土)、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開中。作品の詳細は公式サイトまで。

http://norainu-movie.com/

作品写真:(C)2017 CJ E&M CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED



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2018年05月03日

「サバービコン 仮面を被った街」コーエン兄弟脚本×クルーニー監督 黒い笑いに満ちた犯罪推理劇

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 「明るい街、サバービコンへようこそ!」。1950年代の米国。アメリカン・ドリームの街に住むロッジ家の生活は、強盗の自宅侵入で一変する。足が不自由な妻ローズ(ジュリアン・ムーア)が亡くなり、幼い息子ニッキーが遺され、仕事一筋の主ガードナー(マット・デイモン)と妻の妹マーガレット(ジュリアン・ムーアが二役)は、前向きに日常を取り戻そうとする──。

 1950年代の実話と、コーエン兄弟が99年に書いた脚本を融合させた犯罪サスペンス。監督、脚本、製作をジョージ・クルーニーが務め、マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザックら人気スターが競演する。

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 米国人の理想を反映したような郊外の住宅地「サバービコン」に、黒人一家が引っ越してきて激震が走る。人種差別が当たり前の時代。住民たちのあからさまな嫌がらせが始まる。一方、黒人一家の隣に住むロッジ家に2人組の強盗が押し入り、妻ローズが死亡してしまう。ローズの双子の妹マーガレットは、姉と入れ替わるように、妻の座に収まろうとしていた。

 トランプ大統領が「白人至上主義」を叫ぶ狂った現代に、コーエン兄弟ならではのブラックでシニカルな脚本がさく裂。劇場映画の監督6本目となるクルーニーは、毒気たっぷりに料理する。

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 クルーニーが影響を受けた作品の気配が見える。ムーア演じる双子の姉妹はヒッチコック監督の「めまい」(58)か。地下室での情事を目撃する姿は「サイコ」(60)のパロディーのようだ。劇中音楽は、部分的にヒッチコック作品の常連作曲家、バーナード・ハーマンを彷彿とさせる。絶妙な旋律が隠し味として効いてくる。

 大人たちの悪だくみに振り回される子供・ニッキーの冷めた視点が本質を突く。欲望のために平気で嘘をつき、人をだまして殺人まで犯し、暴徒化する身勝手な大人たち。そんな大人をしり目に、隣に住む黒人少年と友情を育むニッキー。根強い人種差別に対する強烈なアンチテーゼが込めつつ、シニカルでブラックな喜劇にした監督のセンスにしびれる。

(文・藤枝正稔)

「サバービコン 仮面を被った街」(2017年、米国)

監督:ジョージ・クルーニー
出演:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザック、ノア・ジュプ、グレン・フレシュラー

2018年5月4日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://suburbicon.jp/

作品写真:Hilary Browyn Gayle (C)2017 Paramount Pictures. All rights reserved.

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2018年04月20日

「タクシー運転手 約束は海を越えて」韓国民主化運動弾圧・光州事件 名優ソン・ガンホが再現

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 1980年5月。韓国・ソウルのタクシー運転手マンソプ(ソン・ガンホ)は、ドイツ人記者ピーター(トーマス・クレッチマン)を乗せ、一路光州を目指していた。「通行禁止時間前に着きたい」と言われ、何としてもタクシー代を受け取りたいマンソプは、機転を利かせて検問を切り抜け光州に入る──。

 韓国光州市で起きた民主化運動弾圧「光州事件」を、ドイツ人記者とタクシー運転手の視線で描く「タクシー運転手 約束は海を越えて」。出演は「殺人の記憶」(03)のソン・ガンホ、「戦場のピアニスト」(02)のトーマス・クレッチマン。監督は「義兄弟 SECRET REUNION」(10)、「高地戦」(11)のチャン・フン。記者の身分を隠したドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターと、タクシー運転手キム・サボク。2人の実在した人物をモデルに、改めて光州事件をひも解いていく。

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 幕開けでマンソプの人物像と背景が軽妙な語り口で描かれる。平和なソウル。11歳の娘を男手ひとつで育てるマンソプは、滞納した家賃も払えぬほど困窮している。ある日、大金がもらえる光州行きチャーター運転の話を聞き、後先を考えずに引き受けてしまう。

 大金目当てのマンソプは「光州行き」の意味を理解していなかった。片言の英語を駆使してドイツ人記者を乗せ、ソウルを出るが、進めば進むほど雲行きがあやしくなる。裏道を走ると軍の検問所が待ち構えている。得意の口八丁と強運で難所をかいくぐり、戒厳令下の光州へ到着。待っていたのは想像を絶する光景だった。

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 韓国の負の歴史である光州事件に、いわば部外者のタクシー運転手とドイツ人記者が巻き込まれ、目撃者となった経緯が明確に描かれる。通訳をかって出た大学生、地元光州のタクシー運転手たちの協力。胸を熱くするエピソードも盛り込まれる。

 光州事件を内から描くのではない。ソウルから来たマンソプと、東京から来たピーター、外から来た2人の視点で描いたことで、改めて全世界の観客に事件を検証してもらおうとしているようだ。

 デモ参加者を暴徒とみなし、軍が人民に向けて浴びせる銃弾。ピーターの潜入取材に気付いた公安警察の執拗な追跡。光州の惨状を明確に伝えぬ国内の実情。マンソプの心の葛藤やピーターとの友情。実話をベースに物語として脚色し、観客を光州事件の目撃者にしていく。映画的な醍醐味も合わせ持ち、韓国映画の底力を感じた。

(文・藤枝正稔)

「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2017年、韓国)

監督:チャン・フン
出演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル

2018年4月21日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://klockworx-asia.com/taxi-driver/

作品写真:(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.
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2018年04月04日

「ミスミソウ」壮絶ないじめ、復讐の鬼と化した少女 「実写不可能」漫画を切れ味鋭く

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 東京から田舎の中学校に転校した野咲春花(山田杏奈)は、“部外者”として壮絶ないじめを受けていた。春花の唯一の味方は、同じ転校生の相場晄(清水尋也)。彼を心の支えに必死に耐える春花だが、クラスの女王的な小黒妙子(大谷凛花)の取り巻きによる嫌がらせは加速していった──。

 「実写化不可能」と言われた押切蓮介原作の漫画の映画化だ。監督は「先生を流産させる会」(11)の内藤瑛亮。

 雪に覆われた過疎の町で、春花に対する陰湿ないじめがエスカレートする。グループが春花の家に放火し、両親を殺し、小学生の妹を全身やけどにしたことで、春花は復讐の鬼と化す。

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 特定人物に対する妬みや嫉妬が悪循環となり、いじめへ発展するメカニズムが焦点だ。発端はいじめの首謀者・妙子の春花に対する妬みだった。晄に好意を寄せる妙子だが、晄が好きなのは春花だ。妙子の嫉妬は刃となり春花に向かう。

 一方、担任の森京子(奥田亜紀)は、学生時代にいじめられた経験から、自分のクラスのいじめには無関心。春花が転校してくる前にいじめられていた佐山流美(大塚れな)は、新たなターゲットになった春花を見て、「また自分が狙われるのでは」とびくびくしている。そんな流美の恐怖心が野咲家の放火殺人事件へ発展していく。

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 「先生を流産させる会」では、実際に起きた事件を題材に、多感な少女たちの危うい心理を鋭く描いた内藤監督。今回は「実写化不可能」な漫画を忠実に実写化。ネガティブな要素を妥協せず描いた。

 中学生の無邪気で残酷な悪意。復讐する春花の行為はホラー映画的だ。眼球を釘で刺す描写は、東映映画の「女囚701号さそり」(72)を思わせる。子どもの復讐は田舎町を血で染め上げ、大人たちはうろたえるばかり。絶望的な風景がナイフのように切れ味鋭い演出で切り取られる。

(文・藤枝正稔)

「ミスミソウ」(2017年、日本)

監督:内藤瑛亮
出演:山田杏奈、清水尋也、大谷凜香、大塚れな、中田青渚

2018年4月7日(土)、新宿バルト9ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://misumisou-movie.com/

作品写真:(C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会

タグ:レビュー
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2018年03月28日

復活11回目のゆうばり映画祭、「出会いの場」として盛況のうち幕

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 北海道夕張市で3月15日から19日まで開かれた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」は昨年をやや上回る1万2522人を動員した。例年同様に多くの映画人が集い、映画ざんまいの5日間を過ごした。市の財政破たんによる中断を経て復活してから今年で11回目。会場の選定やスポンサーの確保などでは手探りが続く中、「出会いの場」としての映画祭は盛況のうちに幕を閉じた。

 期間中は国内外の長短編約110本を上映。メーンのコンペ部門、ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門はグランプリに「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」(西口洸監督)を選出した。大阪芸術大学を卒業後、同大学で機材係として働きながら映画製作を続ける西口監督は、「学生時代は“いけてない方”だった。賞を取れるとは思っていなかったがうれしい」と、控えめに喜びを語った。審査委員長の瀬々敬久監督は審査が最後までもつれたことを明かしつつ、「(グランプリ作は)弱者への目配りや優しさを持っている点がよかった」と評した。

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 これに先立つ15日のオープニングセレモニーで発表された期待の映画人を選定する「京楽ピクチャーズ.PRESENTS ニューウェーブアワード」は、俳優部門で葉山奨之と川栄李奈が受賞。葉山は「日本映画界に必要とされる俳優を目指して精進したい」とコメントした。クリエーター部門は、脚本家としてキャリアを積み、このほど長編アニメーション「さよならの朝に約束の花をかざろう」で監督デビューした岡田麿里が受賞した。

 今年の映画祭は昨年より半月遅く始まった。オープニング当日は気温が上がり、雪景色の夕張にも雨が降った。真冬の開催にこだわってきたゆうばり映画祭。運営に長年携わるスタッフは「期間中に雨が降るなんて初めてのこと」とつぶやいた。

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 開催時期の変更は、市内の宿泊施設とスキー場の経営権所有者が変わったためだ。売却先を探していた施設を東京の不動産会社が昨年買収し、中華圏のスキー客誘致を優先する方向に転換した。夕張の3月はまだスキーのハイシーズン。書き入れ時に映画祭があると集客に響くとの判断があったのだろう。

 参加者の立場に立てば、映画祭に向かう交通手段が年々不便になっていることが気にかかる。夕張は公共交通の衰退が著しい。この冬は新千歳空港と市内スキー場を結ぶバスが廃止され、JR石勝線夕張支線の廃止も決まった。

 夕張を取り巻く厳しい状況が映画祭にも影響を及ぼすなか、今年は上映会場を合宿施設「ひまわり」に集約したほか、札幌市内にサテライト会場を開設するなど新しい取り組みが目を引いた。映画祭が30回目となる2020年を見据え、関係者の模索が続いている。

(文・写真 芳賀恵)

<受賞作>

・ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門

グランプリ 「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」(西口洸監督)

審査員特別賞「温泉しかばね芸者」(鳴瀬聖人監督)

北海道知事賞「キュクロプス」(大庭功睦監督)

シネガーアワード(批評家賞)「キュクロプス」(大庭功睦監督)

・インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門

グランプリ 「ぱん。」阪元裕吾監督・辻凪子監督

優秀芸術賞 「NO LINE」(川中陸監督)

      「父の日」マット・ジョンズ監督

      「Black Dog」ジョシュア・ディーン・タットヒル監督

・アニメーション企画優秀賞

「ドントクライ」(高嶋友也監督)

・その他

ゆうばりファンタランド大賞(観客賞)「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)

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1:参加者によるフォトセッション
2:ファンタスティック・オフシアター・コンペティション グランプリ「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」の西口洸監督(右)と瀬々敬久審査委員長
3:ニューウェーブアワードを受賞した(左から)葉山奨之、川栄李奈、岡田麿里監督
posted by 映画の森 at 23:16 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする