2020年02月18日

「RED」夏帆と妻夫木聡、大人向けの恋愛映画 島本理生原作

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 誰もがうらやむ夫、かわいい娘。何不自由ない生活を過ごしていたはずの塔子(夏帆)は、10年ぶりにかつて愛した鞍田(妻夫木聡)に再会する。ずっと行き場のなかった塔子の気持ちを、鞍田は少しずつほどいていく──。直木賞作家・島本理生による同名小説の映画化。監督は「幼な子われらに生まれ」(17)の三島有紀子。

 一流商社に勤める夫・真(間宮祥太朗)と結婚し、義父母と長女と一緒に郊外のおしゃれな一軒家で暮らす主婦。人もうらやむ暮らしぶりだが、塔子はそんな暮らしに窮屈さを感じていた。そこへかつて不倫関係だった鞍田が現れ、物語が急展開する。

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 塔子の目を通して、男の嫌な面や理想が描かれる。3人の男が登場する。一人は夫の真。エリートで非常にプライドが高く、理想を追いすぎて自己中心的。妻は性処理の道具で、娘の母親に過ぎず、恋愛対象として見ない。女性から見て嫌な男の代表として描かれる。間宮祥太朗が「殺さない彼と死なない彼女」(19)のニヒルな主人公から一転、思いやりが欠如した自己中心的な男を演じる。

 正反対なのが鞍田だ。10年前、鞍田の設計事務所でバイトしていた学生の塔子は、妻のいる鞍田と不倫していた。10年ぶりに再会した鞍田の登場シーンはミステリアス。ブライアン・デ・パルマ監督「殺しのドレス」(80)の美術館のシーンを彷彿とさせる。鞍田は塔子を女性として受け入れ、ブランクを埋めるよう二人は激しく愛し合う。妻夫木が寡黙さと情熱を合わせ持つ男性を体現した。

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 二人の間で揺れる塔子の前に、もう一人の男が現れる。鞍田の勤務先で働き始めた塔子に言い寄る遊び人風情の同僚、小鷹(柄本佑)だ。自由のない塔子の心を開くムードメーカー。柄本が珍しく二枚目半の遊び人キャラを好演する。

 恋愛に対する男女の温度差を濃密に描いている。夏帆は内面演技と体当たりの濡れ場をこなし、女優としてターニングポイントになる作品だろう。演出も実にたくみだ。耐え続けた塔子の心の沸点を直接描くのではなく、トラックの積載量オーバーを表す赤い旗を暗喩に使った。酸いも甘いも噛み分けた大人に向けた恋愛映画だ。

(文・藤枝正稔)

「Red」(2020年、日本)

監督:三島有紀子
出演:夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗

2020年2月21日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://redmovie.jp/

作品写真:(C)2020「Red」製作委員会
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2020年02月15日

「嘘八百 京町ロワイヤル」中井貴一、佐々木蔵之介が丁々発止 広末涼子「プレッシャー感じた」

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 映画「嘘八百 京町ロワイヤル」の初日舞台挨拶が1月31日東京六本木で行われ、中井貴一、佐々木蔵之介、広末涼子らキャストが登壇した。

 幻のお宝をめぐり、中井貴一と佐々木蔵之介扮する古物商と陶芸家がだまし合いの大騒動を繰り広げるコメディのシリーズ第2作。

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 主演の中井は「去年の今ごろ撮影して、1年間寝かせてきた子を世に放つ感じ。ここからお客様に育てていただく」とあいさつ。佐々木は晴れ晴れとした笑顔で「初日はこんなにドキドキするのかと思っている。まさかの続編、2本目なんて100にひとつ。地元・京都で(撮影)なんて、こんなに幸せなことはない」と喜びをにじませた。

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 今回マドンナ役の広末涼子は「ハリウッドみたいに宇宙を相手にしたり、AI(人工知能)を相手にした大作ではないけれど、私はこれこそ、日本の喜劇、日本のエンターテインメントなのかな、と幸せな気持ちになった」と話した。
 口の立つ古物商、則夫を演じた中井は「僕が口、佐々木さんが作陶。役割分担ができていた。セリフが多いのはやむを得ない。多さをあまり感じさせないよう芝居に専念した。良い脳トレになった」と話すと、陶芸家を演じた佐々木は「口八丁、手八丁の手の方。陶芸家に見えなきゃいけない。嘘八百というタイトルだが、絶対うそはだめ。蹴ろくろを回した翌日は筋肉痛で大変だった」と苦労を語った。

 また、広末は「本読みでも中井さん、佐々木さんはテンポもよく、スピーディーな言い回しが圧巻。初日現場に行って、テストしてすぐ本番。練習したり、悩んだりする暇がないので、毎日舞台に立っているようだった。久しぶりに朝3時に起きて、ひとりで練習して、自分を温めてから現場に入った。おふたりがNGを全く出さないので、プレッシャーで緊張した」と振り返った。

(文・写真 岩渕弘美)

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「嘘八百 京町ロワイヤル」(2020年、日本)

監督:武正晴
出演:中井貴一、佐々木蔵之介、広末涼子、友近、森川葵、山田裕貴、坂田利夫

2020年1月31日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/uso800-2/

作品写真:(C)2020「嘘八百 京町ロワイヤル」製作委員会
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2020年02月09日

チベット映画「巡礼の約束」ソンタルジャ監督&主演のヨンジョンジャに聞く「国や地域を問わず、人間の情や愛は変わらない」

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 チベットの聖地・ラサ巡礼を目指す家族の道のりを描いた映画「巡礼の約束」が2020年2月8日から公開されている。チベット人監督として初めて日本で作品が劇場公開された「草原の河」のソンタルジャ監督が、チベット人歌手・ヨンジョンジャを主演に迎えた人間ドラマだ。監督は「国や地域を問わず、人間の情や愛は変わらない」と語った。

 チベット文化圏の四川省ギャロン地域。女性ウォマは、夫のロルジェ、義父と暮らしている。病院で医師にあることを告げられたウォマは、ロルジェに「ラサへ五体投地で巡礼する」と宣言する。4反対を押し切り出発したウォマを、ロルジェが追い、前の夫との息子のノルウも会いに来た──。

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 主なやり取りは以下の通り。

 ──ヨンジョンジャさんの故郷・ギャロンの文化の特徴を教えて下さい。

 ソンタルジャ監督:ギャロンは村ではなく、広い地域を指します。四川省所属しており、その地域一帯に住むギャロン語を話す人たちがギャロンと呼ばれています。

 ヨンジョンジャ:私の実家はギャロンにあります。チベット民族として、ギャロンの村からラサへ巡礼に行く風習は古くからありました。全員が行けるわけではなく、仕事や体の具合などの都合で一部の人々しか行けません。

 私の故郷にいた小学校の先生が、五体投地でのラサ巡礼を長い時間をかけて実現しました。その話を監督にしたことが、企画のきっかけです。映画のストーリーとはかなり異なっています。監督が映画的に脚色してくれました。

 ソンタルジャ監督:共通しているのは(途中で巡礼に加わる)ロバの存在ですね。

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 ──映画のキーワードである「約束」「運命」「縁」は、チベットの人たちの生活の中では重要な意味を持つのでしょうか。

 ソンタルジャ監督:はい、その通りです。私たちが信じる仏教の考え方と一致します。漢民族は比較的、縁を宿命的で、悲観的にとらえる傾向がありますが、私たちチベット人は、豊かな人間関係の一つと考えます。「約束」「運命」「縁」は、チベットの人々の普遍的な価値観の象徴と思いますね。

 また、チベット人は、世の中のいろいろな場所に魂が宿ると信じています。人間関係について考える時も、簡単には判断を下しません。「縁」を大事にするのです。

 ──死についてはいかがですか。一般的に日本人は死ぬことに対して悲観的です。チベットの人たちはどうでしょう。

 ソンタルジャ監督:チベット人は死は生まれ変わりと考え、それほど悲観的にはとらえません。北京に一時期に住んでいた時、お年寄りが毎日身体を鍛えるのを見ました。老いへの抵抗ですね。チベットでは歩きながらお経を唱えたりします。都市の人は死にあらがおうとしますが、チベット人は普段の生活から死に向けて準備し、死に向かうことを当たり前と考えますね。

 ──お二人もそうですか。

 ソンタルジャ監督:まだその時期ではないですが、そう死にたいとは思います。その時になってみないと分からないです(笑)。

 ヨンジョンジャ:仏教徒として輪廻を信じています。死は新たな生の始まりだと考えます。

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 ──「巡礼の約束」を見て、チベットの人たちの間にはさまざまな言語、文化があると知りました。ギャロンの特徴はどんなところでしょうか。

 ヨンジョンジャ:宗教や信仰はほかの地域と一緒ですね。

 監督:建築や服飾が独特です。建物は石造りなんですよ。

 ヨンジョンジャ:そう、私もちょうど家を建てている最中で、すべて石で作るギャロン式です。チベットでもラサとギャロンは農耕文化。定住するので石造りの家。アムドやカンバなどは移動する遊牧民の土地で、人々はテントに住んでいます。

 監督:(チベット高原の)アムドやカンバの人たちは、モンゴル草原と同じようにゲルを住んでいます。

 ──映画を見てチベット文化に触れる外国人の観客に、どんな部分に注目してほしいですか。

 監督:「巡礼の約束」はチベットの映画ですが、どこの国であろうと、生きている人間の関係、親子の情は変わらないことを感じてほしいです。

 ヨンジョンジャ:政治的なレッテル、宗教の違いを取り払えば、残るのは人と人の心の通い合いです。「巡礼の約束」はギャロンの話ですが、民族や地域に関係なく、人間は愛が大事だと伝えています。包容力、豊かな広い心で、人を受け入れることや、約束を守ることが、とても大事だと感じてもらえればいいな、と思います。

(文・写真 遠海安)

「巡礼の約束」(2018年、中国)

監督:ソンタルジャ
出演:ヨンジョンジャ、ニマソンソン、スィチョクジャ、ジンバ

2020年2月8日(土)、岩波ホールほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://moviola.jp/junrei_yakusoku/

作品写真:(C)GARUDA FILM
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2020年01月31日

「Red」完成披露舞台あいさつ 夏帆「悩んで悩んで苦しんだ」難役 妻夫木聡に感謝

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 直木賞作家・島本理生の小説が原作の映画「Red」の完成披露試写会が2020年1月29日、東京・新宿で行われ、主演の夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗、三島有紀子監督が舞台あいさつした。

 夫と娘とともに幸せな生活を送る主婦の塔子(夏帆)が、10年ぶりにかつての恋人・秋彦(妻夫木)に再会し、快楽におぼれていく物語。三島監督は「塔子は本当に難しい役。誰ならできるかと考え、夏帆さんにと思った」と語った。

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 鮮やかな真っ赤なドレス姿で登場した夏帆は「監督が現場で戦う姿を見てきて、今回主演で呼んでもらえた。監督の覚悟を感じ、生半可な気持ちではできないと思い、覚悟を決めて挑んだ」と話した。

 初共演の夏帆の印象について、妻夫木は「嘘がない。役にどう接していいか、どうアプローチしていいか分からない気持ちを素直に吐露していた。顔にもすぐ出ちゃう。嘘がなくて好きだった。悩んで悩んで出したものが塔子自身で、初めて成立する。最後まで戦う姿は素晴らしかった」と絶賛した。

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 妻夫木の言葉に「すみません」と恐縮しきりの夏帆。「悩んでいること全て妻夫木さんにぶつけてみようと思った。見栄を張るより、自分をすべて見せて、思いをすべてぶつけた方が、距離を縮められるかなと。妻夫木さんはすべて受け止めて、芝居で返してくれる安心感があった」と感謝の言葉を述べた。

 また、夏帆は「1年前の撮影を振り返ると、この日を迎えられるなんて、と思うくらい悩んで悩んで苦しんだ。振り返るとそれも幸せな時間だった。1人の女性として生きる中で、何を選び取れば、より自分に素直になれるか、考えながら演じた。見終わった後、いろいろな人と語りたくなる映画になっていると思う」と話していた。

(文・写真 岩渕弘美)

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「Red」(2020年、日本)

監督:三島有紀子
出演:夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗

2020年2月21日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://redmovie.jp/

作品写真:(C)2020「Red」製作委員会

posted by 映画の森 at 23:44 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月30日

「母との約束、250通の手紙」仏作家ロマン・ガリ、母との絆と激動の人生

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 思い込みが激しく、負けん気の強いシングルマザーのニーナ(シャルロット・ゲンズブール)。息子のロマン(ピエール・ニエ)はいずれ「仏軍勲章を受けて外交官、大作家になる」と信じて、才能を引き出すことに命をかけていた。母とロシア、ポーランド、フランスに移り住んだロマンは、溺愛の重圧にあえぎながらも、幼い頃に母と結んだ約束を果たすべく、努力を惜しまぬようになっていく──。

 映画「勝手にしやがれ」(59)の主演女優ジーン・セバーグの元夫で、仏の作家ロマン・ガリの自伝小説「夜明けの約束」を映画化した。1970年以来2度目、47年ぶりの映画化。監督、脚本は「赤と黒の接吻」(91)、「蛇男」(08)、「ラスト・ダイヤモンド 華麗なる罠」(14)のエリック・バルビエ。

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 幕開けは1950年代半ば。米ロサンゼルスの仏総領事になったロマンは、旅先のメキシコで頭痛を抱えつつ「夜明けの約束」を書いていた。やがて幼少期の記憶がよみがえり、ロマンは母との20年間を回想し、1924年のポーランドから時系列でエピソードがつづられる。

 フランスを理想化するユダヤ系ポーランド人移民の母ニーナは、ロマンに「将来お前はフランス大使、大作家になる」と暗示をかけている。母の言葉を信じ、実現しようとする息子。親子の根底には壮大な思い込みが横たわっている。

 「有限実行」の母は、他人の前で堂々と理想を話して行動に移す。高級服飾店を開いた時は、俳優をデザイナーに仕立てて話題づくり。店を堂々と開店し、繁盛店にしてしまう。計算高く神経が図太い。

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 母と息子は擬似恋人のようだ。ニーナはロマンが愛する女性をことごとく否定し、関係をぶち壊す。母との距離が近すぎて、ロマンも苦しむが、裏切れずに理想の姿になるべく努力する。仏軍に従軍し、第二次世界大戦でロンドン、アフリカと場所が移るたび、母は息子に手紙を書く。手紙は二人をつなぐ重要なコミュニケーションの道具となる。

 ロマンの数奇な運命の裏に、叱咤を続けた母がいた。母を演じたゲンズブールが強烈だ。父は歌手セルジュ・ゲンズブール、母に女優ジェーン・バーキン。少女の頃から歌手や女優としてキャリアを積み、繊細なイメージだったが、今回は激しく極端な母親役だ。

 ロマン役のニエは、実在のデザイナーを演じた「イヴ・サンローラン」(14)から一転、人間味あふれる主人公を好演した。131分の長尺作品だが、テンポ良くメリハリの利いた演出。ロマン・ガリを知らない観客も、自叙伝として十分に楽しめる。

(文・藤枝正稔)

「母との約束、250通の手紙」(2017年、仏)

監督:エリック・バルビエ
出演:ピエール・ニネ、シャルロット・ゲンズブール、ディディエ・ブルドン、ジャン=ピエール・ダルッサン

2020年1月31日(金)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://250letters.jp/

作品写真:(C)2017 - JERICO-PATHE PRODUCTION - TF1 FILMS PRODUCTION - NEXUS FACTORY - UMEDIA
posted by 映画の森 at 23:33 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする