2021年01月27日

「花束みたいな恋をした」菅田将暉・有村架純、リアルな5年愛を等身大で

1.jpg

 東京・京王線の明大前駅で終電を逃し、偶然出会った麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。好きな音楽や映画が一緒で恋に落ち、大学を卒業後はフリーターをしながら同棲を始める。「日々の現状維持」を目標に2人は就職活動を続けるが──。

 ドラマ「東京ラブストーリー」(91)、「最高の離婚」(13)、映画「カルテット」(17)の脚本家・坂本裕二の書き下ろし脚本。「ビリギャル」(15)、「罪の声」(20)の土井裕奏監督がメガホンを取った。

2.jpg

 2015年からの5年間が描かれる。幕開けは2020年。一つのイヤホン音楽を聴く若いカップルを見た麦と絹が、同時にイヤホンに対するうんちくを語り出す。そこから一気に時代はさかのぼり、2人が出会った5年前の冬へ。時系列で物語が展開する。

 脚本の坂本が「菅田と有村に宛て書きした」というように、等身大の20代が絶妙なさじ加減で描かれる。好きな音楽や映画など趣味がことごとく一致する麦と絹。友達から始まった関係は「3回目のデートで告白しないと恋人になれない」という、「恋愛あるあるネタ」に基づき、麦の告白を絹が受けて交際が始まる。

3.jpg

 ポップカルチャーネタを使った軽妙なセリフのキャッチボールが、オタク心をくすぐる。しかし、共通の趣味で結びついた2人に現実が突き付けられる。長い同棲の後、麦はイラストレーターの夢を捨てて就職。現実社会に飲み込まれて仕事人間になってしまい、絹の心は麦から離れていく。

 20代の男女の恋愛を等身大で描いた「花束みたいな恋をした」。ファミレスやイヤホンなどの設定や小道具、思わず共感してしまうポップカルチャーネタを巧みに使い、5年間を凝縮して描いている。滑稽に思えた冒頭のイヤホンネタが、最終的に二人にとってブーメランになる。恋の始まりと終わりを対比させるエピソードが秀逸だ。伏線回収が巧みな脚本、的確な演出に心動かされる。旬の菅田と有村の自然な演技で、多くの観客の心をつかむだろう。

(文・藤枝正稔)

「花束みたいな恋をした」(2020年、日本)

監督:土井裕泰
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫

2021年1月29日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://hana-koi.jp/

作品写真:(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

posted by 映画の森 at 20:08 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月03日

「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」ドニー・イェン、ぽっちゃりメイクで大暴れアクション・コメディー

1.jpg


 超熱血刑事のフクロンは、ある事件をきっかけに証拠品保管室へ異動となった。さらに事件を追うあまり、結婚式用の写真撮影をすっぽかし、婚約者にも見放される。外回りがなくなって暴飲暴食も重なり、半年後にはポッチャリ刑事“デブゴン”になっていた──。

 主演は「イップマン」シリーズや「スター・ウォーズ」のスピン・オフ作品「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」(16)のドニー・イェン。谷垣健治監督は香港でスタントマンとして活動後、1995年のテレビドラマでドニーと出会い、数々の作品を一緒に作り、絶大な信頼を受けている。「るろうに剣心」シリーズでアクション監督も担った。

2.jpg

 サモ・ハン・キンポー主演「燃えよデブゴン」(78)にオマージュをささげたアクション・コメディーなだけに、1980年代の作品を意識している。ブルース・リー主演「ドラゴンへの道」(72)のテーマ曲をアレンジした曲をバックに、作品のハイライトシーンを流す懐かしいタイプのオープニングだ。

 銀行強盗に巻き込まれたフクロンが、キレッキレのアクションを武器に強盗団を一網打尽にする妄想から一転。現実には強盗団とやるかやられるかの格闘を繰り広げている。ドニーは超絶技能を封印し、太った特別メイクの体型を生かし、コミカルだが切れのある動きを披露する。

3.jpg

 プロットはどことなく米国の刑事が大阪で事件に巻き込まれる「ブラックレイン」(89、リドリー・スコット監督)を思わせる。香港で物語が動き出し、フクロンが重要参考人の日本人を日本へ護送することで展開する。東京の歌舞伎町、新橋、芝の増上寺付近でロケ撮影。クライマックスには東京タワーのセットでフクロンと悪役の島倉(承威)が壮絶な一騎打ちを見せる。

 デブ=運動音痴という固定観念を逆手に取り、ドニーが体重120kgのデブ刑事に変身。日本で大暴れするシンプルな物語で、ドニーのアクションを最大限引き出した。車内での接近戦、高低差を生かしたパルクール、ワイヤー・アクション。クライマックスはブルース・リー超えの高速ヌンチャクさばきだ。

 日本人キャストにも注目だ。フクロンと絡みの多い訳ありヅラ刑事・遠藤に竹中直人。やくざの親分・東野に渡辺哲。歌舞伎町やくざに「忍者狩り」(15)の三元雅芸。芸人のバービーも少し顔を見せている。

 谷垣監督は外国人が見た日本を確信的にコミカルに描き、ドニーのアクションを大々的にフィーチャーした。画面から「面白い映画を作る!」という意気込みが感じられて心地よい。のんびりしたお正月にぴったりで、香港と日本の才能が融合した楽しい映画だ。

(文・藤枝正稔)

「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」(2020年、香港)

監督:谷垣健治
出演:ドニー・イェン、ウォン・ジン、ルイス・チョン、テレサ・モウ、ニキ・チョウ、竹中直人

2021年1月1日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://debugon-tokyo.jp/

作品写真:(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

posted by 映画の森 at 16:28 | Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月24日

「新感染半島 ファイナル・ステージ」大ヒットゾンビ映画続編 舞台は列車から半島全体へ 迫力のカーアクション

1.jpg


 謎のウイルス感染が半島を襲って4年。家族を守れなかった元軍人のジョンソク(カン・ドンウォン)は、亡命先の香港で廃人同様に暮らしていた。そこへ大金稼ぎの仕事が舞い込む。封鎖された半島に戻り、大金を積んだトラックを3日以内に回収する任務だ。半島への潜入に成功したジョンソクらを待っていたのは、増加した感染者と、この世の地獄を楽しむ狂気の民兵集団631部隊。両者に追い詰められたジョンソクを助けたのは、ミンジョン(イ・ジョンヒョン)と2人の娘だった──。

 大ヒットした韓国ホラー映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」の4年後を描いた続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」。監督は前作に続いてヨン・サンホ。前作では人間が狂暴化する謎のウイルスが発生し、高速列車に感染者が紛れ込み、車内での生死をかけたサバイバルが描かれた。ドラマの根底には残酷なゾンビ映画と対照的な親子愛、自己犠牲が置かれ、世界の観客の心をつかんだ。

2.jpg

 続編の「新感染半島 ファイナル・ステージ」は、前作の世界観を継承しつつ、新たな手法で勝負に出た。前作が高速列車内の密室劇にだったのに対し、今回は感染者のるつぼと化した半島すべてが舞台となる。極悪囚人の監獄島となった米ニューヨークに飛行機が墜落し、緊急脱出した大統領を救う近未来SF映画「ニューヨーク1997」(81)と似た設定だ。

 ジョンソクらが戻った半島では、民兵たちが街を牛耳っていた。光と音に反応する感染者たちを横目に、法も秩序のない半島で自堕落な生活を謳歌している。そんな民兵たちの楽しみは生存者の男たちをつかまえ、コロシアム風の場所に放ち、感染者との生き残りゲームを強制することだった。

 前作で描かれた親子愛の流れをくむのがミンジョン母子の物語だ。実は4年前、ジョンソクは助けを求めてきたミンジョンたち見捨てていた。その罪滅ぼしするように、ジョンソクは母子を助けようと奮闘する。

ジョンソクたちVS民兵631部隊VS感染者の構図で物語は展開するが、後半はジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」(78)と同じく人間VS人間の構図に変わる。半島から脱出を試みるジョンソクらは、大金を積んだトラックを狙う631部隊と激しいカーアクションを展開。身体能力が異常に高い感染者たちを巻き込んだすさまじいアクションは必見だ。

3.jpg

 ミンジョンの若い長女ジュニが軽快なドリフト走行を見せ、迫りくる無数のゾンビ化した感染者たちを跳ね飛ばす。痛快なカーアクションはほぼCGだが、実写とCGゾンビとの融合スタイル。現在の韓国映画の柔軟な発想によるものだ。

 密室から解放空間へ進化し、現在の韓国エンターテインメント映画の熱量がそのまま反映されている。前作が正統なゾンビ映画とすると、続編はアクティブなゾンビ・アクション。人間の欲やエゴ、醜い争いを主軸に、舞台が解放されたことで、激しいアクションを多用した作品となった。

(文・藤枝正稔)

「新感染半島 ファイナル・ステージ」(2020年、韓国)

監督:ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョ、キム・ミンジェ、ク・ギョファン、キム・ドゥユン、イ・レ

2020年12月25日(金)、緊急先行公開。2021年1月1日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/shin-kansen-hantou/

作品写真:(C)2020 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILMS.All Rights Reserved.
posted by 映画の森 at 22:44 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月08日

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」出会いつながり助け合い 一歩ずつ前へ進む人たち

1.jpg

 米ニューヨーク・マンハッタンで、創業100年を超える老舗ロシア料理店「ウィンター・パレス」。かつて栄華を極めた店も、今は古びて料理もひどいありさまだ。経営を立て直すため雇われたマネージャーのマーク(タハール・ラキム)は、刑務所を出たばかりで謎だらけの人物。常連の看護師アリス(アンドレア・ライズボロー)は、仕事中毒で他人のために生きる変わり者。そんな店に子供2人を連れ、夫から逃げてきたクララ(ゾーイ・カザン)が飛び込んでくる──。

 「幸せになるためのイタリア語講座」(00)、「17歳の肖像」(09)、「ワン・デイ 23年のラブストーリー」(11)などで知られるデンマーク出身の女性監督ロネ・シェルフィグによる群像劇。出演は「ルビー・スパークス」(12)のゾーイ・カザンら。

2.jpg

 邦題はやさしげな「ニューヨーク 親切なロシア料理店」だが、原題「The Kindness of Strangers」の直訳は「見知らぬ人のやさしさ」。さまざまな問題を抱えた人々が織りなす、シリアスな群像劇だ。

 子どもたちを連れ、夫から車で逃れてきたクララ。看護師の激務をこなしながら、教会で悩みを抱えた人たちにセラピーを行い、貧しい人々に食事を無料で配るアリス。一方、出所したてのマークは友人の弁護士ジョン(ジェイ・バルチェル)に紹介され、店を立て直すことに。さらに、手先も人付き合いも破滅的に不器用な無職のジェフ(ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ)は、腹をすかせて無料の食事配布所にたどり着く。

 真冬のニューヨーク。人生どん底の人たちが、ひょんなことで出会い、つながり、助けられながら一歩ずつ前進する。監督は客観的に問題を拾い上げ、キャラクターを街に放ち、さまざまな状況で出会わせる。互いの優しさに触れ、影響を与え合いながら、それぞれが抱えている問題を解決しようと努力する。

3.jpg

 ポイントは人をつなげる舞台となるロシア料理店だ。多民族社会マ米国を象徴する場所で、一歩店に入ると異国情緒あふれるロシアの雰囲気が漂う。登場人物は引き寄せられるように店に集まり、つながっていく。ロシア語なまりの怪しげな店のオーナー役は、英国出身の名優ビル・ナイ。力を抜いたチャーミングな老紳士を好演し、シリアスになりがちな物語に癒しを与えている。

 混沌としたニューヨーク。人と人のつながりの大切さ、優しさに気づかされる。

(文・藤枝正稔)

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」(2019年、デンマーク・カナダ・スウェーデン・ドイツ・フランス)

監督:ロネ・シェルフィグ
出演:ゾーイ・カザン、アンドレア・ライズボロー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、タハール・ラヒム

2020年12月11日(金)、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.cetera.co.jp/NY/

作品写真:(C)2019 CREATIVE ALLIANCE LIVS/RTR 2016 ONTARIO INC. All rights reserved
posted by 映画の森 at 12:36 | Comment(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月28日

「アンダードッグ」森山未來・北村匠海・勝地涼 負け犬ボクサー3人、熱く戦う群像劇

1.jpg

 チャンピオンへの道からはずれ、かませ犬=アンダードッグとしてリングに上がるボクサー・末永晃(森山未來)。幼い息子に父としての背中を見せられず、負け犬同然の毎日だ。プライドも粉砕され、どん底を這いずる男に、宿命的な出会いが訪れる──。

 安藤サクラ主演「百円の恋」(14)の武正晴監督、脚本の足立伸、製作の佐藤現らが再集結したボクシング映画。第33回東京国際映画祭オープニング作品で、今回前後編が同時に劇場公開された。

2.jpg

 負け犬となった男3人のドラマが交差する。末永は元日本ライト級1位に上り詰めたが、チャンピオン目前で夢破れ、ボクシングジムに籍を置きながら、デリヘル店運転手兼用心棒として生計を立てている。妻(水川あさみ)や息子とは別居し、実家で老いた父(柄本明)と暮らしている。

 一方、夢あふれる若き天才ボクサー・大村龍太(北村匠海)。夜のトレーニング中に末永のジムにちょくちょく来て、なれなれしく末永にからんでいる。龍太の過去に理由があり、末永とは因縁めいた関係だ。児童養護施設で育ち、施設で一緒に育った加奈(萩原みのり)と結婚。龍太は過去に起こした傷害事件でボクサーの道を断たれていた。

 最後に有名俳優の父(風間杜夫)を持つ二世タレントの宮本瞬(勝地涼)。金銭的にまったく不自由ないが、芸人としては鳴かず飛ばず。バラエティー番組の企画で一旗揚げようと、ボクシングに挑む芸人ボクサーだ。

3.jpg

 「アンダードッグ」は、劇場版前編131分+後編145分=276分の大長編。年明けには動画配信サイト「NETFLIX」で配信版が公開される。主人公3人にスポットをあてた劇場版に対して、配信版では1話は短いものの、主人公以外の周りの一人一人の物語が描かれるという。

 劇場版と配信版を合わせると壮大な群像劇で、3人の人生は複雑に絡み合っている。元悪童だった龍太は施設にボクシングを教えに来た末永と出会い、腕っぷしに自信満々で挑むが一撃で撃沈。プロの技に感銘を受け、ボクシングに開眼する設定だ。

 一方、デリヘル店運転手の末永が、送迎する明美(滝内公美)の常連客が、車いす生活を送っている設定など、3人のドラマは底辺でつながっている。サイドストーリーも充実していて、末永と腐れ縁のデリヘル店店長(二ノ宮隆太郎)とベテランのデリヘル嬢(熊谷真実)の淡い恋が作品にふくらみを与える。

 どん底から這い上がる男たちの熱いドラマの中、「観客の目をだませないファイトシーンをどう見せるか」がハードルになる。高い演技力が要求されるが、森山、北村、勝地が素晴らしい身体と演技を見せる。日本のボクシング映画史を塗り替える迫力のファイトシーンに胸を熱くさせられた。北野武監督作品の常連俳優・芦川誠が、末永が所属するボクシングジム会長役を渋く演じる。

 監督の前作「百円の恋」に続いてボクシング映画となった「アンダードッグ」。チャンピオンの華々しさと正反対に、負け犬人生を送るボクサーたちの生きざまと、彼らを取り巻く人々の生活が生々しく、見ごたえ満点な群像劇だ。

(文・藤枝正稔)

「アンダードッグ」(2020年、日本)

監督:武正晴
出演:森山未來、北村匠海、勝地涼、瀧内公美、熊谷真実、水川あさみ、風間杜夫

2020年11月27日(金)、丸の内TOEIほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://underdog-movie.jp/

作品写真:(C)2020「アンダードッグ」製作委員会

posted by 映画の森 at 15:18 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする