2019年07月21日

「ポラロイド」古いカメラから広がる死の連鎖 恐怖と葛藤にさいなまれる高校生

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 アンティーク店で手に入れた年代物のポラロイドカメラ。SNS世代の高校生バード(キャサリン・プレスコット)は、シャッターを押せば写真が出る仕組みに夢中になる。しかし、撮影された友人たちが次々と悲惨な死を遂げ、悪夢の原因はカメラにあると気付くバードだが、自分も写真に写っていたことが分かる──。

 ノルウェー出身のラース・クレブバーグ監督が、自作の短編をリメイクしたホラー映画。才能がこの作品でハリウッドの目に止まり、「チャイルドプレイ」リブート版の監督に抜てきされた注目の新鋭だ。

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 1972年発売の「ポラロイドSX-70」を、少女が母の遺品から発見する。冒頭のシーンは下敷きになった短編を再構築しており、続いて長編オリジナルの物語が始まる。バードがアルバイトするアンティーク店に、いわくつきポラロイドカメラが持ち込まれ、写真を撮られた友人たちの死の連鎖が始まる。

 ポラロイドで撮った写真には、人物と一緒に謎の黒い影が映っている。「黒い影が出てしまった人物が死ぬ」設定だ。死の連鎖から逃げようとする人々の恐怖と葛藤。カメラがたどった負の歴史。中田秀夫監督「リング」(99)が作ったルールが、世界のホラー映画で一般化したようにみえる。「ポラロイド」では高校生が死の連鎖に翻弄され、予知夢で死亡が予告される「ファイナル・デスティネーション」(00)に近い印象だ。

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 「死の連鎖からの回避」に新味はないが、演出は抑制が効いており、じわじわと恐怖が迫りくる。カメラにまつわる負の歴史もミステリアスに描かれるが、後半はCGを大盤振る舞い。ハリウッド的なサービスが炸裂し、リアリティーが薄くなった。しかしながら、短い上映時間88分をまったく飽きさせず、監督の語りのうまさを感じる作品だ。

(文・藤枝正稔)

「ポラロイド」(2018年、米)

監督:ラース・クレブバーグ
出演:キャスリン・プレスコット、タイラー・ヤング、サマンサ・ローガン、グレイス・ザブリスキー、ミッチ・ピレッジ

2019年7月19日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/polaroid/

作品写真:(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

posted by 映画の森 at 14:28 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月03日

「サマーフィーリング」恋人が突然世を去った 細やかに描かれる喪失と再生の物語

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 30歳のサシャは、夏の盛りに突然世を去った。恋人のロレンス(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)は、サシャの妹ゾエ(ジュディット・シュムラ)と顔を合わせる。突然の別れが訪れたベルリン。深い悲しみが残るパリ。生活が少しずつ戻るニューヨーク。3つの都市で3度の夏を過ごし、残された人たちは人生の光を取り戻していく──。

 ミカエル・アース監督の長編2作目。アース監督は昨年、3作目の「アマンダと僕」で東京国際映画祭で最高賞「東京グランプリ」を受賞した。「アマンダと僕」と「サマーフィーリング」には共通点が見い出せる。「サマーフィーリング」のロレンスは恋人を失い、「アマンダと僕」はテロで弟が姉を亡くした。喪失と再生はアース監督の一貫したテーマのようだ。

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 作品のアプローチも2作品は共通している。傷ついた主人公の心は、人々との触れ合い、なにげない日常を通じ、淡々と静かに癒されていく。心の解放を表すかのように、自転車や公園が使われる。監督は非常にパーソナルな出来事を繊細に映していく。個人の再生を時間をかけて描いた「サマーフィーリング」に対し、「アマンダと僕」では残された人々の絆にも踏み込んだ。

 恋人のサシャを失ったロレンスと、サシャの妹ゾエの関係は、友達以上恋人未満の親密さ。ロレンスの姉、仲間たち、姉の店で働く女性など、周囲の人々との触れ合いの中、ロレンスの心は癒されていく。

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 ダイレクトに悲しいシーンはあえて描かない。前後の場面を使い、ロレンスの心の揺れが表現される。平和で穏やかな日常の風景と対比させるように、取り残された主人公の喪失感を際立たせる。心に染み入る演出だ。公開中の「アマンダと僕」が気に入った人には、おすすめの作品。

(文・藤枝正稔)

「サマーフィーリング」(2015年、仏・独)

監督:ミカエル・アース
出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジュディット・シュムラ、マリー・リビエール、フェオドール・アトキン、マック・デマルコ

2019年7月6日(土)、シアターイメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://summerfeeling.net-broadway.com/

作品写真:(C)Nord-Ouest Films - Arte France Cinema - Katuh Studio - Rhpone-Alpes Cinema

posted by 映画の森 at 20:47 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月24日

「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」坂口健太郎&吉田鋼太郎、父子の絆を絶妙な呼吸で

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 インターネットのオンラインゲームを通した父と息子の絆を描いた「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」が公開中だ。東京都内でこのほど開かれた関連イベントに主演の坂口健太郎、吉田鋼太郎が参加し、撮影を振り返った。

 互いに距離ができてしまった父親と息子が、素顔を隠して人気ゲーム「ファイナルファンタジー」でつながり、ともに戦いながら絆を取り戻していく物語。実話をもとにした人気ブログの映画化だ。

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 父親を演じた吉田は「セリフの少ない寡黙なお父さん。難しい役だったが、健太郎が受け止めてくれて、いい作品ができた」と感謝。息子役の坂口は「鋼太郎さんとせりふのやり取りが少なく、せりふに頼れなかった。目があった瞬間の微妙な距離感とか、瞬間、瞬間の反応を大事にしようと思った。鋼太郎さんが父親でいてくれて(役を)構築できた」と振り返った。

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 吉田は実生活でも20代の息子の父親。「一緒にゲームを買いに行ったりした小さな時代があって、大きくなって、いつの間にか話をしなくなった。その過程が胸にぐっときた。共感できるところが多かった」と話した。

 吉田について坂口は「紳士でダンディーな印象があった。(実際には)すごくチャーミングで驚いた。一緒に芝居して、好きになっちゃう。すごいと思う」。吉田は坂口を「優しく、穏やかな好青年。芝居の集中力はすごい。せりふのやり取りがあまりない中、一言に思いを込めて返してくれる。きっちりできる俳優」と絶賛した。

(文・写真 岩渕弘美)

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「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」(2019年、日本)

監督:野口照夫(実写パート)、山本清史(ゲームパート)
出演:坂口健太郎、吉田鋼太郎、佐久間由衣、山本舞香、前原滉

2019年6月21日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/hikarinootosan/

作品写真:(c)2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会 マイディー/スクウェア・フェニックス
posted by 映画の森 at 15:22 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月15日

「女の機嫌の直し方」男女脳の違い研究、トラブル解決 結婚式コメディー

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 大学で人工知能(AI)を研究する真島愛(早見あかり)は、「男女脳の違いによる女の機嫌の直し方」をテーマに卒業論文を執筆している。データを集めるため、結婚式場でアルバイトをスタート。上司のウェディングプランナー・青柳誠司(平岡祐太)とある結婚式を担当し、控室に顔を出すと、新郎・北澤茉莉(松井玲奈)と新郎・悠(佐伯大地)の間にトラブルの予感──。

 黒川伊保子の同名ベストセラーが原案のコメディー作品。全3回のテレビドラマを、劇場映画版として再編集した。監督は日本テレビでバラエティー番組を中心に担当する有田駿介。

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 結婚式場を舞台に、式直前にトラブルを抱えた新郎新婦。火種は招待客、新郎の母らに飛び火し、最悪な状態に陥るが、「男女脳の違い」を最新AIで研究した愛が次々と問題を解決していく。

 時間を上手に前後させ、ほぼ全編式場内だけで話を進める構成が秀逸だ。結婚式が進む様子をメーンに、トラブルの原因が回想として織り込まれる。トラブルのエピソードはそれぞれよく練られている。

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 披露宴の直前に汚れてしまったウェディングドレス。新郎の同僚・小早川梓(水沢エレナ)の突然の余興拒否。めでたい席で熟年離婚の危機に陥る新婦の叔父(金田昭雄)と叔母(原日出子)。優柔不断な新郎・悠のせいで起きる新婦・茉莉と新郎の母・晴美(朝加真由美)の女性同士のバトル。さまざまなパターンで男女脳の違いを示す。

 バラエティー番組で培われた有田監督の演出は、ツボを押さえて小気味良く、笑いと涙のバランスもいい。アイドルグループ「ももクロ」の早見あかり、「SKE48」の松井玲奈が、女優としてめざましい成長を見せる。朝加真由美、原日出子、金田明夫らベテランがドラマをうまく引き締めている。

(文・藤枝正稔)

「女の機嫌の直し方」(2019年、日本)

監督:有田駿介
出演:早見あかり、平岡祐太、松井玲奈、佐伯大地、水沢エレナ

2019年6月15日(土)、ユナイテッドシネマアクアシティ台場ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kigen-movie.official-movie.com/

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2019年06月14日

「パージ:エクスペリメント」シリーズ4作目「すべての犯罪が合法になる」スリラー

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 経済が崩壊した米国。政権を握るNFFA(新しいアメリカ建国の父たち)は犯罪率を抑えるため、すべての犯罪を12時間合法化する「パージ法」の実験的導入を決定。ニューヨークのスタテン島の住民に報酬5000ドルを約束し、サバイバル競争をスタートさせる──。

 「パージ」(13)、「パージ:アナーキー」(14)、「パージ:大統領令」(16)に続くシリーズ4作目。製作総指揮、脚本はジェームズ・デモナコ。製作は「パラノーマル・アクティビティ」シリーズのジェイソン・ブラム、「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイ。監督は「ヘルウィーク」(17・未)のジェラード・マクマリー。

 「パージ法」に則って展開するスリラーは、過去3本で描き切ったと思われたが、今回は意表をついて時間軸をさかのぼる。法の制定前、実験段階を描く前日譚になっている。

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 実験ではスタテン島を外部と遮断。島に残った住民には、映像が記録できるコンタクトレンズの装着と引き換えに、報酬5000ドルが約束される。腕には追跡装置が埋め込まれ、政府の監視下に置かれるのだ。
 
 残った住民は黒人やヒスパニック系の低所得者たち。12時間をやり過ごすため自宅に閉じこもる人。安全な教会に集まる人。一方で、ギャングの抗争に「パージ法」を利用する者も出現。島民たちのサバイバルが始まる。

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 島という閉ざされた場所が舞台なのは、ジョン・カーペンター監督「ニューヨーク1997」(81)を思わせる。監獄となった近未来ニューヨークの島に大統領機が墜落。行方不明になった大統領を、元特殊部隊員の男が救出に向かう物語だ。今回脚本を書いたデモナコは、カーペンター監督「要塞警察」(76)のリメイク版「アサルト13 要塞警察」(05)の脚本も担当した。
カーペンター監督の影響は、次世代に受け継がれたようだ。

 犯罪が増え続ける国内のガス抜きを目的に、12時間だけ殺人と犯罪を政府が肯定する。暴力を通して世相を映したスリラーといえよう。

(文・藤枝正稔)

「パージ:エクスペリメント」(2018年、米)

監督:ジェラード・マクマリー
出演:イラン・ノエル、レックス・スコット・デイビス、ジョイバン・ウェイド、クリステン・ソリス、スティーブ・ハリス

2019年6月14日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://purge-exp.jp/

作品写真:(C)2018 Universal Pictures
posted by 映画の森 at 11:17 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする