
小学校教師ダニエルの前に、子供時代の親友マリオが突然現れた。何かにおびえるマリオは「娘のフリアに会ってくれ」と訴える。しかし、ダニエルは幼い頃のいまわしい事件を思い出して拒絶。マリオはその夜、手首を切り自殺する。
マリオの葬式でダニエルはフリアと会い、妻ラウラの願いで彼女をしばらく預かることになる。しかし、フリアが家に来たことで、ダニエルの脳裏に忘れたい過去がよみがえる──。

ダニエルの現在を軸に、物語の鍵となる子供時代がフラッシュバックで挿入される。ダニエルの父はルイサとの再婚を決め、連れ子のマリオ、妹クララも一つ屋根の下で暮らし始める。ルイサはクララに怪物から身を守る“赤い魔法のリボン”と“ディクタド(書き取り歌)”を教えてかわいがっていた。数日後、ダニエルとマリオの後について外出したクララは、墓地で遺体で見つかった。クララの死はダニエルの心に封印された過去だったが、なぜかフリアも知っていた。
「フリアはクララの生まれ変わりではないか」。ダニエルは“赤い魔法のリボン”や“ディクタド”など、亡きクララを思い出させる物や言動に翻弄される。その姿は松本清張の短編小説「潜在光景」を松竹が映画化した「影の車」(70)の主人公のようだ。子供時代に犯した事件が原因で、一緒に過ごす愛人の子供に殺される恐怖を抱き、疑心暗鬼に陥って破滅する。ダニエルも同様に追い詰められていく。

「フリア よみがえり少女」は、輪廻転生を描いたオカルトホラーのように進行するが、実際はホラー的演出を用いたサスペンス映画だ。フリアの正体が焦点となるが、真相は意外に弱く、期待した分落胆も大きい。因果応報的な結末に後味の悪さが残るものの、ハッピーエンドともとれる不条理な幕引きに、かえって怖さを感じる作品だ。
(文・藤枝正稔)
「フリア よみがえり少女」(2012年、スペイン)
監督:アントニオ・チャバリアス
出演:ファン・ディエゴ・ボト、バルバラ・レニー、マヒカ・ペレス、マーク・ロドリゲス、アガタ・ロカ
4月13日、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://furia-movie.com/
作品写真:(c)2011 Oberon Cinematogràfica, S.A.