2013年04月11日

「フリア よみがえり少女」 記憶に追い詰められる男 オカルトホラー的サスペンス

フリア よみがえり少女.jpg

 小学校教師ダニエルの前に、子供時代の親友マリオが突然現れた。何かにおびえるマリオは「娘のフリアに会ってくれ」と訴える。しかし、ダニエルは幼い頃のいまわしい事件を思い出して拒絶。マリオはその夜、手首を切り自殺する。

 マリオの葬式でダニエルはフリアと会い、妻ラウラの願いで彼女をしばらく預かることになる。しかし、フリアが家に来たことで、ダニエルの脳裏に忘れたい過去がよみがえる──。

フリア よみがえり少女2.jpg

 ダニエルの現在を軸に、物語の鍵となる子供時代がフラッシュバックで挿入される。ダニエルの父はルイサとの再婚を決め、連れ子のマリオ、妹クララも一つ屋根の下で暮らし始める。ルイサはクララに怪物から身を守る“赤い魔法のリボン”と“ディクタド(書き取り歌)”を教えてかわいがっていた。数日後、ダニエルとマリオの後について外出したクララは、墓地で遺体で見つかった。クララの死はダニエルの心に封印された過去だったが、なぜかフリアも知っていた。

 「フリアはクララの生まれ変わりではないか」。ダニエルは“赤い魔法のリボン”や“ディクタド”など、亡きクララを思い出させる物や言動に翻弄される。その姿は松本清張の短編小説「潜在光景」を松竹が映画化した「影の車」(70)の主人公のようだ。子供時代に犯した事件が原因で、一緒に過ごす愛人の子供に殺される恐怖を抱き、疑心暗鬼に陥って破滅する。ダニエルも同様に追い詰められていく。

フリア よみがえり少女3.jpg

 「フリア よみがえり少女」は、輪廻転生を描いたオカルトホラーのように進行するが、実際はホラー的演出を用いたサスペンス映画だ。フリアの正体が焦点となるが、真相は意外に弱く、期待した分落胆も大きい。因果応報的な結末に後味の悪さが残るものの、ハッピーエンドともとれる不条理な幕引きに、かえって怖さを感じる作品だ。

(文・藤枝正稔)

「フリア よみがえり少女」(2012年、スペイン)

監督:アントニオ・チャバリアス
出演:ファン・ディエゴ・ボト、バルバラ・レニー、マヒカ・ペレス、マーク・ロドリゲス、アガタ・ロカ

4月13日、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://furia-movie.com/

作品写真:(c)2011 Oberon Cinematogràfica, S.A.
posted by 映画の森 at 09:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月04日

「アパートメント:143」 スペイン発“フェイク・ドキュメンタリー・ホラー” 怪奇現象、科学で解明

アパートメント:143.jpg

 ある金曜日の午後、超心理学科学者チームが、ホワイト家の新居であるアパートメントに来る。チームは精神科医のDr.ヘルザー(マイケル・オキーフ)と、自称“ゲートキーパー”のエレン(フィオナ・グラスコット)、科学技術担当ポール(リック・ゴンザレス)だ。3人はカメラなどさまざまな機材を次々と運び込む。ホワイト家は父親アラン(カイ・レノックス)と、十代の娘ケイトリン(ジーア・マンテーニャ)、4歳の息子ベニー。妻シンシアが死亡した数カ月前から、家族の周りで不可解な現象が起き始めたという。電気が勝手に点滅したり、原因不明の物音が聞こえたり。アランは前の家を引き払い、今のアパートに移り住んだ。ところが引越後しばらくして再び奇妙な出来事が発生。不安にかられたアランは、チームに原因究明を依頼したのだった。

 異国の地で拉致され、棺に入れられ生き埋めにされた男の脱出スリラー「リミット」を監督した、スペイン出身のロドリゴ・コルテスが製作、脚本を担当。今回が劇場映画デビューとなるスペインの新人カルレス・トレンスが監督を務めた“フェイク・ドキュメンタリー・ホラー(虚構の事件に基づく記録映画風ホラー)”だ。映像は科学者チームの手持ちカメラ、各部屋に設置した小型カメラによるもので、16種類の映像方式を使い、P.O.V.(ポイント・オブ・ビュー、カメラがとらえた主観映像)で描かれる。

アパートメント:143_2.jpg

 超心理学科学者チームがホワイト家のアパートに到着した。チームは室内のあらゆる場所にカメラや特殊装置を設置する。機材は家庭用ビデオカメラ、暗視赤外線カメラ、超音波発生装置、磁場修正メーターなど。最新技術を駆使し、怪奇現象を科学的に検証しようとする。機材に興味津々のベニーがチームに質問する形で、観客に機材についてさりげなく説明する演出がうまい。設置を終えたチームは早速、天井や壁からのラップ音を聞く。

 P.O.V.ホラー作品の走りとなった「パラノーマル・アクティビティ」や、「REC レック」と同系列作品だ。撮影目的や主人公の行動が不自然な「パラノーマル・アクティビティ」に比べると、チームが持ち込んだ特殊機材の映像が物語に説得力をもたせている。依頼主のホワイトはどこか訳ありで、父と娘の関係も極めて悪く、年頃の娘はチームが自分の部屋に出入りすることを拒否する。さらに「母の死は父のせい」と責め立てる。

アパートメント:143_3.jpg

 複雑な家族関係を伏線にしながら、小出しに怪現象を積み重ね、ここぞのシーンで霊体が出現。眠る娘の衣服がめくれ上がるなどの人的被害が出始め、Dr.ヘルザーは「家に暮らす人間に関係したポルターガイスト(心霊)現象だ」と判断。幼いベニーを祖父の家に避難させ、高名な霊媒師に協力を仰ぎ“霊界通信”を試みる。すると娘に異変が起きる。

 「パラノーマル・アクティビティ」のヒットを受け、次々製作されたP.O.V.ホラーだが、質は玉石混こうではずれの方が多い。本作は心霊現象を科学的に解明しようとするチームを登場させた点がいい。しかし物語が進むにつれて壁にぶち当たり、霊媒師に頼る心霊映画の王道パターンに。最終的にはポルターガイスト現象=反復性偶発性念力が大爆発。映画的なダイナミズムで締めくくられる。

 起承転結がしっかりしたストーリー展開、キャストのリアリティーあふれる演技で、ホラー映画ならではのカタルシスを感じる仕上がりとなった。恐怖演出のさじ加減もバランスがいい。うそ臭さを感じさせない虚構を作り出した、クリエイターのセンスを感じる作品である。 

(文・藤枝正稔)

「アパートメント:143」(2011年、スペイン)

監督:カルロス・トレンス
出演:カイ・レノックス、ジーア・マンテーニャ、マイケル・オキーフ、フィオナ・グラスコット、リック・ゴンザレス

11月3日、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gacchi.jp/movies/143/

作品写真:(C)Nostromo Pictures SL 2011
posted by 映画の森 at 07:29 | Comment(0) | TrackBack(1) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月29日

ホセ・ルイス・ゲリン映画祭 処女作「ベルタのモチーフ」から最新作「メカス×ゲリン 往復書簡」まで 8作品一挙紹介

ベルタのモチーフ.jpg

 2010年に「シルビアのいる街で」(07)で日本デビュー。斬新なスタイルで映画ファンをうならせた、スペインのホセ・ルイス・ゲリン監督作品が6月30日から特集上映される。処女作「ベルタのモチーフ」(83)から最新作「メカス×ゲリン 往復書簡」(11)まで8本のうち2本を紹介する。

 今回最も注目したいのは「ベルタのモチーフ」だ。田園地帯で暮らす思春期の少女の夢想を描く作品。父親の農作業を手伝いながら、単調な日々を送っていたベルタ。都会からやってきた風変わりな男と出会うことで、彼女の内面世界が一変してしまう。男にロマンティックな妄想を抱くベルタの姿は、「シルビアのいる街で」で幻の女性に思いこがれる青年と重なっており、ゲリンの強い作家性を感じさせる。

工事中.jpg

 「工事中」(01)は、バルセロナの再開発プロジェクトによって立ち退きを余儀なくされる人々の生活に焦点を当てたドキュメンタリーだ。いきなり向けられたカメラに向かって、都市論を語る人々。どこまでが記録で、どこからが演出なのか。ドキュメンタリーとフィクションとの境界のあいまいさは、すべてのゲリン作品に共通する特徴だ。売春で生計を立てる女性が恋人の男を背負って歩くシーンは、「シルビアのいる街で」の移動撮影を先取りしたものだろうか。「ベルタのモチーフ」同様、ここにもゲリンの強固な作家性が見て取れる。

 特定のモチーフをさまざまに変奏することで、強い作家性を放つゲリンの作品群。「ミツバチのささやき」(73)のビクトル・エリセ監督が、「今のスペインで最もすぐれた映像作家」と評したゲリンの、比類なき映像世界を楽しみたい。

(文・沢宮亘理)

「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」 

6月30日、渋谷シアター・イメージフォーラムで4週間限定公開。初日から3日目まで来日したゲリン監督による作品解説あり。上映プログラムなど詳細は公式サイトまで。

http://www.eiganokuni.com/jlg/
posted by 映画の森 at 13:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月28日

「REC レック3ジェネシス」 シリーズ3作目、愛をテーマに

REC3ジェネシス.jpg

 コルドとクララの結婚式当日。皆に祝福されてなごやかに進行していた披露宴は、コルドの叔父が突如醜悪な姿に変わり、参列者を襲撃し始めたことで一変する。襲われた人間もおぞましい「感染者」となり、会場は阿鼻叫喚の地獄絵と化した。混乱の中、離ればなれとなった二人だが、互いの生存を信じて必死に探し出そうとする。しかし、迫りくるのは変わり果てた姿の家族や親族、友人たち。彼らにどう立ち向かえばいいのか──。「REC」シリーズはこれまで、ジャウマ・バラゲロとパコ・プラサが共同監督してきた。今回はパコ・プラサが単独監督。ジャウマ・バラゲロはクリエイティブ・プロデューサーとなっている。

REC3ジェネシス2.jpg

 スペイン発のホラー映画「REC」シリーズ。P.O.V.(ポイント・オブ・ビュー、一人称視点)で撮られた作品だ。1作目「REC レック」は、バルセロナのアパートを舞台に、謎のウイルスが蔓延した密室で起こる惨劇を、消防隊を密着取材するTVクルーの視点で描いた。2作目「REC レック2」は同じアパートを舞台に、事件現場に突入したSWAT部隊のヘルメットに着けたカメラと、騒ぎを聞きつけアパートに忍び込んだ若者のビデオカメラの映像を使った。1作目の恐怖とショックを倍増させつつ、オカルト的解釈を盛り込んだ。

 3作目となる本作は、1作目とほぼ同時刻の別の場所が舞台。「病院で犬にかまれた」とぼやく叔父が感染元となり、披露宴は惨劇の場となる。犬は1作目のアパートで暮らす少女が飼っていた感染元の犬らしい。冒頭は参列者が撮影したビデオ映像で、登場人物や状況が長々と見せられる。知らない人のホームビデオを延々と見せられているようでまったく面白味はない。一方、今回は素人カメラマンの参列者とは別に、移動のブレを抑える“ステディカム”カメラを使うプロも動員され、期待させる。

REC3ジェネシス3.jpg

 「REC」シリーズは密閉空間で起こる惨劇を、P.O.V.手法で描いた。今回は冒頭こそP.O.V.の形態を保つが、惨劇が始まるとP.O.V.手法は影を潜め、普通に撮影したスプラッター・ホラー映画に成り下がってしまう。舞台も披露宴会場や教会、地下道、庭と広げすぎで緊張感が薄れた。過激すぎるスプラッター描写は、恐怖を取り越して笑いに転化してしまう。

 シリーズに一貫性を貫いた作り手であったが、今回は「愛」をテーマに状況設定を変えた。欲が悪い方向に傾いてしまった感は否めない。期待したステディカムも有効に使われず、拍子抜けである。シリーズの限界を感じる仕上がりに不満は残るが、続編「REC 4 APOCALIPSIS」に期待する。

(文・藤枝正稔)

「REC レック3ジェネシス」(2012年、スペイン)

監督:パコ・プラサ
出演ト:ディエゴ・マルティム、レティシア・ドレラ

4月28日、シネマスクエアとうきゅう、ヒューマントラストシネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.rec3.jp/

作品写真:(C)2011 REC GENESIS A.I.E
posted by 映画の森 at 08:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月10日

「フラメンコ・フラメンコ」 生命の旅と光 音楽の情熱に乗せ

フラメンコ・フラメンコ.jpg

 「ガラスの飼育」「血の婚礼」「カルメン」などで知られるスペインのカルロス・サウラ監督と、「暗殺の森」「地獄の黙示録」「ラストエンペラー」で“光の魔術師”と賞されたイタリアの撮影監督ヴィトリオ・ストラーロ。二人が初めて組んだ「フラメンコ」(95)は日本でもヒットし、フラメンコ熱が一気に加速した。二人はその後も「タンゴ」「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」など、ダンスと音楽をテーマにした作品を撮り続けた。さらに踊りの真髄に迫った作品が「フラメンコ・フラメンコ」だ。

 フラメンコは歌(カンテ)、踊り(バイレ)、ギター(フラメンコギター)伴奏が主体となった、スペインのアンダルシア地方に伝わる民族芸術。情熱的でダイナミックな世界は人々を魅了してやまない。「フラメンコ・フラメンコ」は、「生命の旅と光」をテーマに、人の誕生から晩年、そして復活を、多彩なパロ(曲種)を用い全21幕で描き出す。

フラメンコ・フラメンコ3.jpg

 サウラ監督によると、生命の旅は“音楽に乗って人間の一生を巡る”ことという。誕生の「アンダルシアの素朴な子守唄」から始まり、幼少期の「アンダルシア、パキスタンの音楽とそれが融合した音楽」、思春期の「より成熟したパロ」、成人期の「重厚なカンテ」、死期の「奥深く、純粋で清浄な感情」。そして希望ある再生につなげ、命のよみがえりに期待を抱かせる。

 スタジオに作られたスペースをステージに見立て、各楽曲を一幕として21曲を使用。曲に合わせた背景や絵画が用意され、光と影を徹底的にコントロール。ストラーロは陰影の強い濃厚な絵を作り出し、画面に命を吹き込む。

フラメンコ・フラメンコ2.jpg フラメンコ・フラメンコ4.jpg

 フラメンコ界の“神”と称されるマエストロたちと、新世代の豪華アーティストの競演が繰り広げられる。フラメンコ好きには夢のようだろう。クライマックスは79年、ジョン・マクラフリン、ラリー・コリエルと“スーパー・ギター・トリオ”を組み人気を得たフラメンコ・ギターの名手、パコ・デ・ルシアが登場。重厚な演奏を披露する。本国スペインに次ぎ、世界2位のフラメンコ人口を抱える日本。多くのファンを魅了するに違いない。

(文・藤枝正稔)

「フラメンコ・フラメンコ(2010年、スペイン)

監督:カルロス・サウラ
出演:サラ・バラス、パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカル、ホセ・メルセー、ミゲル・ポベダ、エストージャ・モレンテ、イスラエル・ガルバン、エバ・ジェルバブエナ、ファルキート、ニーニャ・パストーリ

2月11日、渋谷Bunkamuraル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.flamenco-flamenco.com/
posted by 映画の森 at 09:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする