2013年12月19日

「ウォーキング with ダイナソー」 英BBCのアドベンチャー 実写の大自然+CG恐竜 最新技術で迫力満点

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 自然ドキュメンタリーに定評がある英BBCが、科学的検証を経て実写とCG(コンピューター・グラフィックス)を組み合わせたアドベンチャー映画「ウォーキング with ダイナソー」。同社が製作した「アース」(07)、「ライフ いのちをつなぐ物語」(11)に続く作品だ。

 ザックおじさん(カール・アーバン)に連れられ、米アラスカの恐竜化石発掘現場を訪れた甥と姪の兄妹。兄は森で言葉を話す鳥と出会い、導かれるまま7000万年前の恐竜世界を垣間見る。そこから一気に時代は白亜紀後期へ。

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 主人公は草食恐竜パキリノサウルスのパッチだ。ひときわ体の小さいパッチは、子供のころに肉食恐竜にかまれ、右側の角に大きな穴が開いている。冬が来ると食料を求め、温暖な南へ移動するパキリノサウルスの群れ。しかし、旅路は楽ではなかった。肉食恐竜ゴルゴサウルスの襲撃を受け、群れを率いるパッチの父は子供たちの目の前で死んでしまう。兄と一緒に群れからはぐれたパッチは、さまざまな試練を乗り越え、仲間に会うため旅を続ける。

 英BBCは生物を模したロボット「アニマトロニクス」を用い、テレビや舞台用作品を製作してきた。今回は科学的な検証を重ねた上、最新のCGや3D技術も加え、圧倒的なスケールの映像が実現している。動物やおもちゃを擬人化するディズニーのアニメ同様、恐竜たちは人間のように会話する。子供のパッチを主人公に、恐竜の生態を分かりやすく描く。ファミリー層にぴったりの作品だ。

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 とはいえ、映し出される映像は、大人が見ても驚くクオリティー。スティーブン・スピルバーグ監督の「ジュラシック・パーク」(93)から20年。CGの完成度は頂点に達した感がある。アラスカやニュージーランドの実写映像を背景に、CGで作られた恐竜たちを合成。まるで実際に大自然に暮らしているかのよう。錯覚を与えるほど見事な映像である。

 オープニングとエンディングには、「スター・トレック」(09)のドクター・マッコイ役、カール・アルバーンがナビゲーター的に出演。ファンは必見だ。

(文・藤枝正稔)

「ウォーキング with ダイナソー」(2013年、英・米)

監督:ニール・ナイチンゲール、バリー・クック

2013年12月20日、TOHOシネマズ 日劇ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.wwd-movie.jp

作品写真:(C)2013 Twentieth Century Fox

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2013年11月16日

「フィルス」 ジェームズ・マカボイ、イメージ一転 壊れて異常な最低男に

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卑怯で最低な英スコットランド人刑事ブルース・ロバートソン(ジェームズ・マガボイ)。クリスマスの頃、日本人留学生殺人事件が発生。捜査指揮を任されたブルースは、解決して出世しようと目論む。やがて目撃者とみられる謎の女が急浮上。衝撃の真実が明らかになる。

 題名の「フィルス」は英国のスラングで、汚物、道徳的な堕落を意味し、暗に警察を指す。原作はダニー・ボイル監督の出世作「トレインスポッティング」(96)と同じアービン・ウェルシュ。出演は「つぐない」(07)、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(11)のジェームズ・マガボイ、「リトルダンサー」(00)のジェイミー・ベル。スコットランド出身ジョン・S・ベアードの初長編監督作品だ。

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 設定は日本人留学生殺人事件とシンプルだが、描き方は尋常ではない。ブルースの壊れた行動、異常な性格が物語全体を支配する。出世のために同僚や友人を陥れ、裏工作や不正申告は日常茶飯事。欲望のままポルノ、売春、不倫、アルコール、薬物にのめりこむ。刑事としてあるまじき最低男だ。

 ブルースの奇行の原因は、私生活に垣間見える。居間でポルノを見て欲望を処理した後、突然違うビデオを見始める。別れた妻と息子の映像だ。涙を流すブルース。彼は出世し、妻とよりを戻そうとしていた。表向きはろくでなしだが、心は悲しみに満ちている。精神のバランスを崩し、現実と妄想の狭間をさまよう状態だった。さらに人に言えない秘密も抱えていた──。

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 英国のスラングや下ネタがふんだんに盛り込まれ、ブラックな要素が強い作品だ。マカボイもこれまでのイメージを一転。転落した男を強烈に演じるため、引いてしまう人もいるかもしれない。

 破天荒の向こうに見える結末。単純なブラックコメディーではなく、心に闇を抱えた男の悲喜劇だったと分かる。原作者は同じだが、万人受けした「トレインスポッティング」と違い観客を選ぶかもしれない。個性的でひとくせある作品だ。

(文・藤枝正稔)

「フィルス」(2013年、英国)

監督:ジョン・S・ベアード
出演:ジェームズ・マカボイ、ジェイミー・ベル、イモージェン・プーツ、ジョアンヌ・フロガット、ジム・ブロードベント

2013年11月16日、シネマライズほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.uplink.co.jp/filth/

作品写真:(C)2013 Lithium Picture Limited

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2013年11月09日

「いとしきエブリデイ」 服役中の父と帰り待つ母子 積み重ねる家族の愛 ウィンターボトム監督、5年かけて

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 ある日本人監督が言った。「(イランのアッバス・)キアロスタミの映画を初めて観た時、『なんだ、子供を撮るのって簡単だな』と。自分が監督になって分かった。一生彼のようには撮れないと」

 英国東部・ノーフォークの小さな村。まだ薄暗い早朝、幼い4兄弟が起きてくる。ステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナ。子供たちは母のカレン(シャーリー・ヘンダーソン)に手を引かれ、寒空の下に電車を乗り継ぎ、服役中の父・イアン(ジョン・シム)に会いに行く。

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 刑務所の面会室で、イアンは子供たちを抱きしめる。ロバートは「家長はお前だ」と言われ緊張する。末っ子のカトリーナは「パパ、どこにも行かないで」と泣き出してしまう。面会時間はあっという間に過ぎ、子供たちは母に手を引かれて家路につく。

 子供4人を育てるため、カレンは昼はスーパーで、夜はパブで働いている。いるべき夫が不在の重荷。イアンの刑期は5年。子供たちが成長するにつれ、喜びとともに不安も広がっていく──。

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 マイケル・ウィンターボトム監督の「いとしきエブリデイ」。実の兄妹4人を主演に迎え、5年かけて撮った家族の物語だ。イアンの刑期は5年。父がいない間も、子供たちはすくすく育つ。男の子には反抗心が、女の子には恋心がめばえる。

 対照的に父と母は、心身ともに危うい橋を渡っている。父は塀の中で日々をやり過ごし、母は仕事と子育てに忙殺される。繰り返される毎日。観客は知らず知らずに彼らの隣人となり、時にはらはらと、時にほほえんで、この「どこにでもいそうな」家族を見守るだろう。

 原題は「Everyday」。その積み重ねこそ愛おしく尊いことを、ウィンターボトム監督は静かに証明する。「父の不在を埋める孤独に愛が勝つことを、5年かけて証明したかった」と監督。マイケル・ナイマンの穏やかな音楽が、彼らをゆっくり包んでいく。

 あの家族は、自分のすぐそばにいるかもしれない。冒頭の言葉通り、監督は鮮やかな手腕で夢を見せる。そして観客はわが毎日を振り返り、自分の場所に戻っていくのだ。

(文・遠海安)

「いとしきエブリデイ」(2012年、英国)

監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:シャーリー・ヘンダーソン、ジョン・シム、ショーン・カーク、ロバート・カーク、ステファニー・カーク、カトリーナ・カーク

2013年11月9日、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://everyday-cinema.com/

作品写真:(C)7 DAYS FILMS LIMITED 2012. ALL RIGHTS RESERVED.

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2013年11月02日

「セブン・サイコパス」 “いかれた奴ら”の奇妙な日々 悲喜劇&ミステリー 芸達者が余裕の怪演

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 米ロサンゼルス。脚本家のマーティ(コリン・ファレル)は、筆が進まず頭を抱えていた。題名の「セブン・サイコパス(7人のいかれた奴ら)」だけは決まったが、登場人物が思い浮かばない。

 酒で現実逃避するマーティに、恋人はあきれている。親友で売れない俳優のビリー(サム・ロックウェル)だけがマーティの才能を信じていた。なんとかネタが集まらないものか……ビリーは一計を案じ、無断で「いかれた奴ら募集」の広告を出す。

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 ビリーは一方で、敬虔なクエーカー教徒のハンス(クリストファー・ウォーケン)と犬の“拝借業”を営んでいた。金持ちの犬を誘拐ならぬ“拝借”し、「尋ね犬」の張り紙が張られたころに飼い主に返却。礼金をもらう“ビジネス”だ。

 しかしある時、ビリーが連れてきたシーズー犬がマフィアのチャーリー(ウディ・ハレルソン)の愛犬と判明。一味に追われるはめになる。一方、「ビリーの広告を見た」と、ウサギを抱いた不気味な男ザカリア(トム・ウェイツ)が登場。マーティの周辺はいつの間にか“いかれた奴”だらけになっていた──。

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 マーティン・マクドナー監督の長編第2作「セブン・サイコパス」。デビュー作の「ヒットマンズ・レクイエム」(08)同様、悲劇と喜劇、ミステリーが交じり合う独特の作風だ。映画の中に「脚本作り」が入れ子構造になっており、劇中劇のように“いかれた奴ら”が続々登場する。

 芸達者たちのとぼけた演技が、観客を煙に巻いていく。余裕たっぷりの怪演だ。こわもてのウォーケン、ロックウェル、ハレルソンが小犬に振り回され、ウェイツがウサギを抱えている。おかしくも恐ろしい光景。

 ばらばらだったパズルのピースは、やがて一つ一つあるべき場所に収まる。巧みな脚本も十分に楽しい。

(文・遠海安)

「セブン・サイコパス」(2012年、英国)

監督:マーティン・マクドナー
出演:コリン・ファレル、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン、クリストファー・ウォーケン、トム・ウェイツ

2013年11月2日、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://7-psychopaths.jp/

作品写真:(c)2011 Blueprint Pictures (Seven) Limited, The British Film Institute and Film4

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2013年09月26日

「ザ・ローリング・ストーンズ“スウィート・サマー・サン”」、10月26日に公開

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 英ロンドンで今年7月に行われたライブの記録映像「ザ・ローリング・ストーンズ“スウィート・サマー・サン” ストーンズ・ライヴ・イン・ロンドン・ハイド・パーク2013」が、10月26日から映画館上映される。

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