2015年05月19日

「フランス映画祭2015」6月26日から オゾン、アサイヤス新作など12本 ゲストも豪華に

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 「フランス映画祭2015」のライナップと来日ゲスト発表記者会見がこのほど東京都内で開かれた。開幕作品はフランスで700万人以上を動員した「エール!」。少女の自己実現と家族愛をユーモアに包んで描いた作品だ。このほかフランソワ・オゾン監督の新作「彼は秘密の女ともだち」、オリヴィエ・アサイヤス監督がジュリエット・ビノシュ主演で撮った話題作「シルス・マリア(原題)」、セザール賞7部門を制した「ティンブクトゥ」、90年代フランスの音楽シーンを描いた「EDEN エデン」など12本が上映される。

 毎回恒例のクラシック作品はマックス・オフュルス監督の「たそがれの女心」。仏ゴーモン社の創立120周年を記念して上映されるもので、流麗なカメラワークと主演女優ダニエル・ダリュー絶頂期の美貌が堪能できる、まさにフランス映画を代表する逸品だ。

 映画祭の団長は「リード・マイ・リップス」(01)の実力派女優エマニュエル・ドゥヴォス。新作「ヴィオレット」(原題)を携えマルタン・プロヴォスト監督と来日する。「エール!」のエリック・ラルティゴ監督、主演のルアンヌ・エメラ、フランス・オゾン監督と主演のアナイス・ドゥムースティエ、オリヴィエ・アサイヤス監督ら計13人が来日。「EDEN エデン」の脚本を担当したDJスヴェン・ラブによるパーティー、来日ゲストの特別講義も予定されている。

 日本ではかつてハリウッド映画と人気を二分したフランス映画。往年の勢いはないものの復調の兆しも見られる。会見であいさつしたティエリー・ダナ駐日仏大使=写真=によると、2014年に日本で公開されたフランス映画の観客数は300万人を超え、前年比60%増と大幅に伸びた。今回の充実したラインナップからも好調ぶりが伝わってくるようだ。

 「フランス映画祭2015」は6月26日から29日まで、有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇で開催される。上映作品やスケジュールなどは、映画祭公式サイトまで。

http://unifrance.jp/festival/2015/

(文・写真 沢宮亘理)
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2015年04月02日

「やさしい女 デジタル・リマスター版」女の狂気、男の目で即物的に ブレッソン初カラー作品

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 質屋を営む男が、若い女の客に恋をする。二人は交際するようになり、男は結婚を切り出す。女は乗り気ではなかったが、男が押し切る形で結婚する。しかし、ほどなく二人の間に亀裂が生じ、女は精神に変調をきたす。そして悲劇が起こる――。

 女は結婚を望むもの。結婚したら将来のために倹約すること。男の通念や常識が、若い女には息苦しい。そんな窮屈な生活を強いる男への復讐だろうか。女は別の男と密会し、寝ている夫に銃口を向ける。男は嫉妬と恐怖に襲われる。だが、男には正面切って女と向き合う勇気がない。

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 やがて女は病を患い、その行動は日増しに狂気の度を増していく。一人で部屋にこもり大きな声で歌う姿の、ぞっとするような不気味さ。結婚式の後の初夜、いそいそとシャワーを浴び、小躍(おど)りしながらベッドに飛び込んで行った、あの溌剌(はつらつ)たる娘は一瞬の幻だったか。

 女は男を本当に撃ち殺すつもりだったのか。密会した男とは肉体関係があったのか。謎は謎のまま、最後まで解かれることはない。男の視点からのみ描かれているので、男の目がとらえた女の姿や行動だけが、この女のすべてなのだ。目に見えるものが世界のすべて。見えないものは映さない。説明しない。ロベール・ブレッソン監督の即物的スタイルは、初のカラー作品でも変わらない。

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 プロの俳優を使わない原則も守られている。ただし、当時モデルだったドミニク・サンダは、「やさしい女」への出演をきっかけに女優に転身。ベルトルッチの「暗殺の森」(70)やデ・シーカの「悲しみの青春」(71)で、世界的に知られるようになった。

 優美と残酷が同居する容姿。大きく見開かれながら何も語ろうとしないミステリアスな瞳。サンダの魅力が存分に味わえる作品でもある。

(文・沢宮亘理)

「やさしい女 デジタル・リマスター版」(69年、仏)

監督:ロベール・ブレッソン
出演:ドミニク・サンダ、ギイ・フランジャン、ジャン・ロブレ

2015年4月4日(土)、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://mermaidfilms.co.jp/yasashii2015/
タグ:レビュー
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2015年03月04日

「パリよ、永遠に」大戦末期 ナチの無謀作戦 手に汗握る駆け引き

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 1944年8月。ドイツ軍占領下の仏パリ。高級ホテル“ル・ムーリス”に駐留する同軍のパリ市防衛司令官コルティッツ将軍に電報が届く。「連合軍に防衛線を突破された」との知らせだった。いよいよ撤退。作戦決行だ。

 ヒトラーが計画した“パリ壊滅作戦”。自国の首都ベルリンが空襲で廃墟と化したのに、パリだけが無傷で美しい姿を保っている現実に我慢ならない。それだけの理由で、撤退時にはパリを爆破せよと言うのである。もはやドイツに活路はなく、今さらパリを壊滅させたところで、戦局が好転するわけではない。戦略的には無意味な作戦だった。

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 コルティッツも、作戦の馬鹿馬鹿しさは百も承知である。しかし、ヒトラーの命令に逆らえるわけがない。コルティッツに選択の余地はないように思えた。ところが、作戦の決行に向けて一歩踏み出したその時、突如スウェーデン総領事ノルドリンクが現われ、コルティッツに翻意を迫る――。

 “パリ壊滅作戦”を未遂に導いたスウェーデン人外交官とドイツ軍司令官のスリリングな駆け引きを描いた「パリよ、永遠に」。フランスで大ヒットした舞台劇を、同じキャストでフォルカー・シュレンドルフ監督が映画化した。第二次世界大戦末期の史実に基づいた物語である。

 ノルドリンクはパリ生まれのパリ育ち。愛するパリを何としてでも守りたいと思っている。一方、コルティッツにとってヒトラーの命令は絶対。背けば妻子の命が危険にさらされる。ノルドリンクは手を変え品を変え説得を試みるが、コルティッツの決意は揺るがない。それでもノルドリンクはあきらめない。

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 ノルドリンクの熱心な説得に、やがて心を開き、弱みさえ見せ始めるコルティッツ。人間味あふれる姿が感動的だ。ドイツ将校というと冷血で狂信的な人物に描かれがちだが、コルティッツはまったく正反対。話せば分かる。聞く耳を持っている。貴族の家に生まれ、教養も豊か。だから、ノルドリンクとも対等に議論ができる。そして最後は自分の責任において、ノルドリンクの提案に従うのである。

 もし、コルティッツが単なるヒトラーの心酔者であり、忠実な部下であったなら、コルティッツの努力は報われず、パリは焼き尽くされていただろう。原題は「Diplomatie(外交)」。歴史が大きく動く時、その舞台裏では外交という名のスリリングな駆け引きが行われていることを、改めて思い知らせてくれる映画だ。

(文・沢宮亘理)

「パリよ、永遠に」(2014年、仏・独)

監督:フォルカー・シュレンドルフ
出演:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ

2015年3月7日(土)、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://paris-eien.com/


作品写真:(c)2014 Film Oblige – Gaumont – Blueprint Film – Arte France Cinema
タグ:レビュー
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2015年02月12日

「愛して飲んで歌って」 仏の巨匠アラン・レネ遺作 実験的精神、最後まで

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 「二十四時間の情事」(59)や「去年マリエンバートで」(61)など、前衛的作品で映画界に衝撃を与え、実験的精神あふれる作品を撮り続けたフランス映画界の重鎮、アラン・レネ。昨年91年の生涯を閉じた巨匠の遺作「愛して飲んで歌って」もまた、実験性に満ちた作品に仕上がっている。

 伝説的プレイボーイのジョルジュに、人妻3人──カトリーヌ、モニカ、タマラが心をざわめかす。きっかけは「ジョルジュが末期がんに冒されている」との知らせだった。そもそも、カトリーヌはジョルジュの元恋人。モニカは元妻。過去に愛し合った男が余命いくばくもないとなれば、平静でいられるわけがない。一方、タマラは夫の浮気を見て見ぬふりの屈辱の日々を送っている。そんな彼女の心の隙間に、ジョルジュはするりと入り込んできた。

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 女性3人ともパートナーがいる。その関係を壊すつもりはない。何しろジョルジュはもうすぐ死んでしまうのだから。要は最後の日々を充実させるために力を合わせることだ。ところが、ジョルジュのある提案が、3人の女たちに動揺を与える――。

 サイレント映画ふうの黒地に白の字幕。ペラペラの書き割り。いかにも芝居然とした演技。舞台となる英国ヨークシャーの美しい風景。それらを組み合わせた融通無碍(ゆうずうむげ)なスタイルで、中年男女の恋の駆け引きをコミカルに描く。ただし単純な恋愛コメディーではない。意表を突くラストでは、一筋縄では行かない男女関係の怖さを突きつけられ、しばし呆然としてしまった。

 面白いのは主役のジョルジュが画面には一度も登場しないことだ。不在の人物に周囲の人々が振り回される構造で、ベルリン国際映画祭で通常なら革新的な若手に与えられるアルフレッド・バウアー賞に輝いた。最後まで斬新な表現を追い求めたレネにふさわしい受賞だった。

(文・沢宮亘理)

「愛して飲んで歌って」(2014年、フランス)

監督:アラン・レネ
出演:サビーヌ・アゼマ、イポリット・ジラルド、カロリーヌ・シオル、ミシェル・ヴュイエルモーズ、サンドリーヌ・キベルラン、アンドレ・デュソリエ

2015年2月14日(土)、岩波ホールほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://crest-inter.co.jp/aishite/

作品写真:(c)2013 F COMME FILM – FRANCE 2 CINÉMA – SOLIVAGUS
タグ:レビュー
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2014年12月18日

「毛皮のヴィーナス」謎の女が男を翻弄 官能と倒錯のポランスキー新作

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 舞台劇「毛皮のヴィーナス」のオーディションに、女が遅刻してやってくる。帰り支度をしていた演出家のトマに、女は“ワンダ”と名乗る。役名と同じ名である。だが、女の外見はまるで商売女。しゃべり方も下品極まりなく、トマが求めるワンダのイメージとは正反対だった。

 トマは体よく追い払おうとするが、女はやる気満々。自分がいかにワンダ役にふさわしいかをまくし立て、さっさと持参した衣装に着替えてしまう。トマは仕方なく彼女の相手役となって、オーディションを始める。

 すると驚くべきことが起こった。セリフを発した瞬間に、女の印象は一変。まるで役柄が憑依(ひょうい)したように、完ぺきな“ワンダ”が立ち現れたのだ。さっきまでの下卑た女はどこに行ったのか。貴族的な言葉づかい。エレガントな立ち居振る舞い。香り立つエロス。圧倒されたトマは、オーディションにのめり込み、しだいに虚構と現実の境がつかなくなっていく――。

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 マゾヒズムという言葉を生むきっかけとなった、ザッヘル=マゾッホの小説に想を得た戯曲の映画化だ。演出する側のトマと、演出される側の女優。いつのまにか力関係が崩れ、立場が逆転していくプロセスが、刺激的なSMシーンも交えながら、緊迫感たっぷりに描かれる。

 まず驚嘆させられるのが、序盤で女が見せる鮮やかな変身ぶりだ。無知で無教養なアバズレと思っていたら、実はとんでもなく知的で頭の回転も速い。油断させておいて意表を突くやり方。この時点ですでにトマは女の術中にはまっている。トマは女に翻弄され、彼女の下僕(しもべ)へと調教されていく。

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 “ワンダ”役に扮するのは、エマニュエル・セニエ。メガホンを取るロマン・ポランスキーの妻である。相手役トマには、ポランスキーそっくりの風貌を持つマチュー・アマルリック。妻であるセニエと、自分と似たアマルリックとを共演させ、SMをテーマとした映画を撮る。何とも粋な趣向ではないか。

 自作の「吸血鬼」(67)や「チャイナタウン」(74)では、俳優としての才能も見せたポランスキー。もう少し若かったら、トマ役は自分で演じていたかもしれない。だとすれば、アマルリックはポランスキーの分身。つまり、ワンダ=セニエに翻弄され、服従する男はポランスキー自身ということになる。エンディングはセニエに捧げる愛の讃歌だろうか。

(文・沢宮亘理)

「毛皮のヴィーナス」(2013年、フランス・ポーランド)

監督:ロマン・ポランスキー
出演:エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック

2014年12月20日(土)、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kegawa-venus.com/


作品写真:(c)2013 R.P. PRODUCTIONS - MONOLITH FILMS
タグ:レビュー
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