2017年02月28日

「フレンチ・ラン」豪腕CIA捜査官と天才スリ、テロ犯を追い詰める

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 仏パリで起きた爆弾テロ事件を、一匹狼の米中央情報局(CIA)捜査官と若き天才スリがコンビを組んで解決する“バディ・ムービー”「フレンチ・ラン」。

 革命記念日前夜のパリ。天才スリのマイケル(リチャード・マッデン)は、広場の雑踏に全裸の美女を歩かせ、人々が気を取られたすきに財布をかすめ取っていた。同じころ、テロ組織が実行犯の女ゾーエ(シャルロット・ルボン)を使い、ビル爆破を企てる。しかし、女は未遂のまま現場を去る途中、マイケルに爆弾入りのバッグを盗まれる。マイケルは広場にバッグを置き捨て、その後爆発が発生。防犯カメラにはバッグを手にしたマイケルの姿が映っていた──。

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 ジェームズ・ワトキンス監督が目指したのは「1970年代アクション映画」という。クリント・イーストウッド主演「ダーティハリー」(71)、ジーン・ハックマン主演「フレンチ・コネクション」(71)など名作刑事アクションが多い時代だ。一匹狼的な刑事が単独で事件に挑み、生身のアクションで解決する。今回のCIA捜査官ブライヤー(イドリス・エルバ)も同じく、猪突猛進で犯人を追う。アパートの屋根を走り、廊下で犯人と接近戦。肉弾捜査スタイルが印象的だ。

 ポイントはそんなCIA捜査官とスリが即席でコンビを組み、犯罪組織を追い詰めていく点だろう。堅物のブライヤーに調子のいいマイケル。そこへ容疑者として確保した女ゾーエが加わる。テロ組織の「革命記念日にパリを制圧する」目論見を阻止するため、捜査のプロと素人2人が街を走る。

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 爆弾テロで始まった物語は、大勢のパリ市民を巻き込み、大掛かりなクライマックスを迎える。一人テロと戦うストイックなブライヤーは、仏映画「レオン」(94)のジャン・レノ演じる主人公を思い出す。テロ犯の正体、目的にはやや荒っぽさを感じるが、疾走感と謎解きのバランスがいい。ひとひねり加えたオチまで92分間、痛快なバディ・アクションが楽しめる。

(文・藤枝正稔)

「フレンチ・ラン」(2016年、英・仏・米)

監督:ジェームズ・ワトキンス
出演:イドリス・エルバ、リチャード・マッデン、シャルロット・ルボン、ケリー・ライリー、ジョゼ・ガルシア

2017年3月4日(土)、渋谷シネパレスほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

作品写真:(C)2016 Studiocanal S.A. TF1 Films Production S.A.S.All Rights Reserved
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2017年01月21日

「ショコラ 君がいて、僕がいる」パリに実在した芸人コンビ 光と影に満ちた半生

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 20世紀初めのフランスで、実在した白人と黒人の芸人コンビをモデルにした映画「ショコラ 君がいて、僕がいる」。黒人芸人ショコラに「最強のふたり」(11)のオマール・シー、白人芸人フティットにチャールズ・チャップリンの孫ジェームス・ティエレ。今年はショコラの没後100年にあたる。

 地方巡業中のサーカス一座に、ピン芸人のフティットがオーディションを受けに来た。一座には「人食い人種」を名乗り、雄たけびで観客を脅かす黒人芸人カナンガがいた。かつては人気者だったフティットは、再起を目指して声をかけ、二人は舞台で芸を見せるチャンスを与えられる。

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 白人と黒人。かつてない芸人コンビに観客は固まる。それを見てこわばるカナンガ。しかし、フティットの機転で客席から小さな笑いが起こり、やがて爆笑が巻き起こった。座長にも認められてデビューに成功。カナンガは「ショコラ」に名を変え、フランス史上初の白人と黒人の芸人コンビが誕生した──。

 人種差別が根強い当時のフランスで、二人の芸も偏見がベースになっていた。ショコラは基本的に「白人に虐げられる」役回り。不法移民で常に警察を恐れていた。見世物的な芸ではあったが、コンビは一流サーカスにスカウトされ、看板芸人に上り詰める。地位と名声を手に入れたのもつかの間、ショコラは酒とギャンブルにおぼれる。

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 「映画の父」リュミエール兄弟のフィルムに、実際の二人の芸が残っている。コンビの半生は光と影に満ちていた。前半は人気を博して表舞台で輝き、後半でショコラは差別に苦しんでいく。二人を知らない人にも分かりやすく、丁寧な演出とテンポがいい構成だ。体を張った「動」、内面を掘り下げる「静」の演技。シーとティエレのアンサンブルもよく、ノスタルジックで郷愁に満ちた良作となった。

(文・藤枝正稔)

「ショコラ 君がいて、僕がいる」(2015年、仏)

監督:ロシュディ・ゼム
出演:オマール・シー、ジェームス・ティエレ、クロチルド・エム、オリビエ・グルメ、フレデリック・ピエロ

2017年1月21日(土)、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://chocolat-movie.jp/

作品写真:(C) 2016 Gaumont / Mandarin Cinema / Korokoro / M6 Films
タグ:レビュー
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2017年01月12日

「ネオン・デーモン」ファッション業界の嫉妬と狂気 レフン監督、独自に幻想的に

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 誰もが目を奪われる美しさを持つ16歳のジェシー(エル・ファニング)は、トップモデルになる夢をかなえるため、田舎町からロサンゼルスへやってくる。すぐに一流デザイナー、カメラマンの心をとらえると、ライバルたちが嫉妬の炎を燃やす──。

 カンヌ国際映画祭監督賞の犯罪アクション「ドライヴ」(11)で、世界中の映画ファンを魅了したニコラス・ウィンディング・レフン監督。次作「オンリー・ゴッド」(13)はタイに舞台を移し、暴力を前面に押し出す復讐劇だった。今回は一転、ファッション業界の嫉妬と狂気をスタイリッシュな映像で描く。

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 表の華やかさと裏腹に、実情は女のドロドロした感情が渦巻くトップモデルの世界。マネキンのような冷静さを装いながら、燃え上がる野心をぶつけ合い、狂気の牙をむく女たち。映像はスタンリー・キューブリック、デビッド・リンチのように独創的で説明を排除した表現で、観客を突き放す。

 赤、青、紫、緑などの色を画面に配しながら、真っ白い空間や左右対称の構図を多用する。キューブリック的で人工的な映像美だ。迷宮世界に踏み込んだジェシーは、脳の中で時おり幾何学模様を見る。「2001年宇宙の旅」(68)で、宇宙飛行士が見た脳内世界のようだ。

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 一方、音楽はクラシカルなアナログシンセで作り出した1970年代風エレクトロ・ミュージックが前面に。「タクシー・ドライバー」(76)のバーナード・ハーマンの曲を彷彿とさせるなど、迷宮に踏み込んだジェシーの悪夢に寄り添っていく。

 「ドライヴ」、「オンリー・ゴッド」で暴力と狂気を直接表現したレフン監督。今回は内面に湧き上がる狂気を幻想的に描いた。難解で内省的な世界は観る者を選ぶが、独創的な映像は観客を惑わせるだろう。静かな狂気を切り取る衝撃作だ。

(文・藤枝正稔)

「ネオン・デーモン」(2016年、仏・米・デンマーク)

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:エル・ファニング、キアヌ・リーブス、カール・グルスマン、クリスティーナ・ヘンドリックス、ロバータ・ホフマン、ジェナ・マローン

2013年1月13日(金)、TOHO シネマズ 六本木ヒルズほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/neondemon/

作品写真:(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch
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2016年09月02日

「アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)」クロード・ルルーシュ監督と音楽家フランシス・レイ、「男と女」の最終章

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 映画音楽家アントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)は、自由に人生を謳歌して生きてきた。まるで自分が書いた音楽のように。ボリウッド版「ロミオとジュリエット」の製作のため訪れたインドで、フランス大使夫人のアントワーヌ(エルザ・シルベルスタイン)と出会う──。

 名作「男と女」(66)から半世紀。クロード・ルルーシュ監督と作曲家フランシス・レイが再び組んだ作品だ。原題は「UN+UNE」。日本語に訳すと「男プラス女」。「男と女」の流れを組む恋愛模様だ。アントワーヌは「男と女」の主人公の息子と同じ名前だが続編ではない。

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 舞台はインド。宝石店強盗の男が逃亡中に女を車ではねる。大けがを負った女を見捨てられず、病院へ担ぎ込んだところ、警察に逮捕されてしまう。加害者と被害者の二人だが恋に落ちて結ばれる。このエピソードがインド版「ロミオとジュリエット」だと評判になり、映画化されることになる。音楽担当として白羽の矢が立ったのが、アントワーヌだった。

 レコーディングのため訪れたインドの晩餐会で、アントワーヌはアンナと出会って意気投合。フランスに恋人のアリス(アリス・ボル)を残したアントワーヌと、フランス大使の夫サミュエル(クリストファー・ランバート)がいるアンナ。パートナーがいる身ながらひかれ合う。子供ができないアンナは聖者に合うためインド南部へ。頭痛に悩まされていたアントワーヌも、休暇を兼ねてアンナの旅に同行する。

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 さまざまな男女の愛を描いてきたルルーシュ監督。「男と女」はスタイリッシュでみずみずしい映像で、世界の観客を魅了した。20年後の続編「男と女U」(86)は行き詰まったか、製作のジレンマが作品に投影され、中途半端になってしまった。

 時はさらに流れ、盟友レイと再び組んだ今回。どこか吹っ切れたのか、監督の心情が表れたのか。異国インドを達観したように見つめながら、中年期の恋愛をアグレッシブに描き出した。聖者のくだりはやや宗教色を感じるが、人生の岐路に立つ二人にとって、背中を押す大事な役目を担っている。レイの甘美なメロディーに導かれ、たどり着く愛の形。運命のいたずらともいえる心地よい幕引きだ。ルルーシュとレイによる「男と女」、最終章にふさわしい作品といえよう。

(文・藤枝正稔)

「アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)」(2015年、フランス)

監督:クロード・ルルーシュ
出演:ジャン・デュジャルダン、エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバートサミュエル
アリス・ポル、マーター・アムリターナンダマイー

2016年9月3日(土)、Bunkamura ル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://anna-movie.jp/

作品写真:(C)2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinema

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2016年08月31日

「アスファルト」パリ郊外の団地 3つの不思議な出会いと再起

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 フランス、パリ郊外のさびれた団地。奇抜な物語を紡ぐのは3組の男女。車いすの男と夜勤の看護師。落ちぶれた女優と留守番の高校生。アルジェリア移民の女性と米国人宇宙飛行士。団地に住む以外、彼らに共通点はない。交わることのない3つのストーリーには、「再起」のメッセージが込められている。

 団地の住人会議。議題は故障したエレベーターの修理費だ。2階に住むスタンコヴィッチ(ギュスタヴ・ケルヴァン)は支払いを頑なに拒む。費用を分担しない代わりに使用しないと約束する。しかし皮肉にもけがを負い、エレベーターが必要な生活になってしまう。そこで誰もいない深夜に人目を盗んで外出し、行きついた病院で夜勤の看護師(ヴァレリア・ブルー二・テデスキ)に出会う。

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 いつも家で留守番している高校生のシャルリ(ジュール・ベンシェトリ)。ある日隣に中年女性が越してきた。慣れない団地で困る彼女を助けるうちに、かつて名を馳せた女優ジャンヌ・メイヤー(イザベル・ユペール)だと知る。シャルリは出演作を観て絶賛し、ジャンヌは自信を取り戻す。以前演じた劇の再演を知り、再びヒロイン役を目指すジャンヌだったが──。

 米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士ジョン・マッケンジー(マイケル・ピット)が団地の屋上に着地した。フランスに着陸したことに取り乱すジョンは、最上階の部屋で電話を借りる。部屋の主はアルジェリア移民のマダム・ハミダ(タサディット・マンディ)。マダムは数日間ジョンをかくまうようNASAに頼まれる。言葉が通じない二人の共同生活が唐突に始まる。

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 セリフが少なく俳優の演技が際立つ作品。シャルリ役のジュール・ベンシェトリはサミュエル・ベンシェトリ監督の実の息子。名女優イザベル・ユペールの圧倒的な演技にも負けない存在感を放つ。

 団地で起きるそれぞれの物語は、互いにかかわりを持たない。しかし確かに「そこ」に存在する。無機質な見た目の内側で、人々の営みが続いている。たまたま居合わせた偶然が、それぞれの再出発をひと押しする。

(文・魚躬圭裕)

「アスファルト」(2015年、フランス)

監督: サミュエル・ベンシェトリ
出演:イザベル・ユペール、ヴァレリア・ブルー二・テデスキ、マイケル・ピット、ジュール・ベンシェトリ、ギュスタヴ・ケルヴァン、タサディット・マンディ

2016年9月3日(土)、 ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.asphalte-film.com/

作品写真:(C)2015 La Camera Deluxe - Maje Productions - Single Man Productions - Jack Stern Productions -
Emotions Films UK - Movie Pictures - Film Factory

posted by 映画の森 at 07:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする