2014年07月20日

第16回台北映画祭、グランプリに社会派ドキュメンタリー「不能戳的秘密2:國家機器」 長編劇映画賞に「迴光奏鳴曲」

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 台湾の第16回台北映画祭は2014年7月19日、台北市内で台湾映画を対象とした「台北映画賞」の授賞式を開き、グランプリにドキュメンタリー映画「不能戳的秘密2:國家機器」、最優秀長編劇映画賞に「迴光奏鳴曲」などを選んで閉幕した。

 「不能戳的秘密2:國家機器」は鳥インフルエンザ感染拡大をめぐり、政府・官僚によるデータの不正操作、情報隠ぺいを告発する。リー・フイレン(李恵仁)監督はテレビ局記者出身。08年からフリージャーナリスト、映画監督として調査報道を続けている。「独立メディアの精神を守り、勇気をもって政府・官僚の腐敗を伝えた。台湾社会の暗部を浮かび上がらせた」ことが評価された。

 「迴光奏鳴曲」は、青春映画「藍色夏恋」、コメディー「祝宴!シェフ」などの撮影を担当したカメラマン、チエン・シャン(銭翔)監督の長編第2作。南部・高雄に暮らす平凡な主婦の孤独を描く。主演のチェン・シャンチー(陳湘h)は最優秀主演女優賞を獲得。審査員は「家族や社会から隔絶された中年女性の寂しさを、細やかな描写で映し出した」と評価した。

「KANO 1931 海の向こうの甲子園」.jpg

 主演男優賞は日本で8月下旬公開されるツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督の引退作「郊遊 ピクニック」のリー・カンション(李康生)。主演女優賞のチェン・シャンチーとは同作で共演。蔡監督作品の常連俳優二人は、トロフィーを手にそろって笑顔を見せた。

 台湾の高校が甲子園で準優勝した物語「KANO 1931 海の向こうの甲子園」(2015年1月24日日本公開)は観客賞、最優秀助演男優賞(ツァオ・ユーニン=曹佑寧)の2部門を受賞。マー・ジーシアン(馬志翔)監督は「自分の子供が受賞したようにうれしい」と笑顔を見せた。

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 さらに「藍色夏恋」以来12年ぶりの新作「行動代號:孫中山」を発表したイー・ツーイェン(易智言)監督が最優秀脚本賞、ミャンマー出身で台湾で活動するジャオ・ダーイン(趙徳胤)監督が最優秀監督賞を獲得した。

 ほか受賞結果は以下の通り。

・最優秀ドキュメンタリー賞
「不能戳的秘密2:國家機器」

・最優秀短編映画賞
「神算」(陳和榆=チェン・ハーユー監督)

(文・写真 遠海安)

タグ:台北映画祭
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2014年07月11日

日台合作映画「南風」コウ・ガ(黄河)に聞く 「いろいろな場所で人に会い、演技に反映させたい」

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 日本と台湾の合作青春映画「南風」が2014年7月12日公開される。台湾を訪れた日本人女性が人々や風景に触れ、行くべき道を見つけるロードムービー。旅先で出会う青年役で出演した台湾の若手俳優コウ・ガ(黄河)は「いろいろな場所へ行き、人に会い、経験を演技に反映させたい」と意欲を語った。

 夏の台湾を駆け抜ける自転車青年。爽やかな雰囲気が印象的なコウ・ガは現在24歳。台湾人の父とシンガポール人の母の間にシンガポールで生まれ、台湾で成長した。名作「藍色夏恋」(02)の易智言(イー・ツーイェン)監督に見出された期待の若手俳優だ。チェン・ボーリン(陳柏霖)、グイ・ルンメイ(桂綸鎂)、ジョセフ・チャン(張孝全)ら新人俳優を発掘してきたイー監督との出会いは、中学卒業を控えた頃だったという。

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 「監督との出会いを話し始めると、少し長くなります(笑)。友達の一人がモデルをしていて、路上でたまたま監督に会いました。その子は女の子だったけれど、『監督が男の子を探しているから』と、ドラマのオーディションに誘われました。半年ぐらい訓練して候補が減らされていき、最終的に僕が主演になりました」

 その作品がドラマ「危険心霊」(06)。今回「南風」で共演したテレサ・チー(紀培慧)、公開中の映画「GF*BF」(12)のチャン・シューハオ(張書豪)も出演していた。中学時代はごく普通の子で、将来もよく考えず「自分がどこへ向かうか分からなかった」という。ただ絵を描くことは好きで、子供の頃から今まで続けている。「日本の宮崎駿や大友克洋の作品も大好き」と笑顔を見せた。その後、台湾芸術大学でデザインを専攻。最近卒業したばかりだ。

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 「俳優の仕事はとても好きです。芸術的な表現だから。外に行っていろいろな人と会って話したり、あちこち出かけて絵を描くのも好き。日本も2度旅行して、美術館や博物館へ行きました。本もよく読みます。俳優は生活で得た経験を演技に反映させるべきだと思います」

 中国の大河と同じで印象的な名前は本名。父が「人に覚えられやすいように」と付けたそうだ。日本との合作映画「南風」への出演も、俳優として貴重な経験になった。もともと自転車に乗るのが大好きで、迷いなくオーディションに参加した。最大のハードルは言葉だったが、日本側のスタッフと話し合いを繰り返し、乗り越えていったという。

 「監督の言うことを正確に聞き取るよう努めました。台湾の監督はどちらかというと俳優に指示、命令することが多いですが、萩生田監督は僕たちとコミュニケーションを取ろうとしていました。監督とよく相談し、納得のいく演技にしていきました」

 「南風」には自分の育った台湾の美しい風景、人情が盛り込まれている。「おすすめの場所は?」と聞くと、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の代表作「悲情城市」(89)の舞台にもなった「九[●=にんべんに分]」を選んだ。

 「街を歩くのもいいし、山の上から海を見下ろすのもいい。台湾の街中であれば夜市に行ってほしいです。台湾のおいしい食べ物、美しい風景、温かい人情をぜひ体験して下さい」

(文・写真 遠海安)

「南風」(2014年、日本・台湾)

監督:萩生田宏治
出演:黒川芽以、テレサ・チー(紀培慧)、郭智博、コウ・ガ(黄河)

2014年7月12日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.nanpu-taiwan.com

作品写真:(c)Dreamkid/好好看國際影藝
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2014年07月10日

日台合作映画「南風」萩生田宏治監督に聞く 「台湾の匂い、風を体感してほしい」

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 日本と台湾の合作青春映画「南風」が2014年7月12日公開される。台湾を訪れた日本人女性が人々や風景に触れ、行くべき道を見つけるロードムービー。「コドモのコドモ」(08)以来6年ぶりの新作となった萩生田宏治監督は「台湾の匂い、風を体感してほしい」と語った。

 夏。雑誌編集者の藍子(黒川芽以)が取材で台湾を訪れ、16歳の少女トントン(テレサ・チー=紀培慧)に出会い、自転車旅行に出発。美しい風景や食べ物、人々の温かさに触れながら、自分を見つめ直す。台湾北西部をぐるりとツーリングし、名所や景勝地を紹介していく。

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 「帰郷」(04)、「神童」(07)などの萩生田監督にとって初の合作映画で、スタッフ、キャストは日台混合チーム。若手俳優の初々しさ、夏の風景が爽やかな作品となった。

 「7月の一番いい時期に撮りました。準備期間が短かったので、思い切って行ってみて、その場で何ができるか試したい気持ちもありました。前に助監督としてついた林海象監督が台湾に縁が深く、ロケ撮影で来たこともあります」

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 初めて単独でメガホンを取った台湾。文化の違いや時間の感覚、仕事の進め方には戸惑うこともあったという。

 「言葉が通じない人たちとの作業。『あうん』の呼吸で動くのではなく、しっかりと説明しなければだめだな、と。自分の意志を伝えたい気持ちが、一緒にいればいるほど湧くように出てきました。エネルギーを出していく自分が面白い。言葉は通じなくてもやりたいことを伝えるのは本当に大事なんだな、と」

 俳優は台湾からテレサ・チーのほか、旅先で出会う青年役でコウ・ガ(黄河)を起用した。二人はドラマ「危険心霊(原題)」(06)で共演した旧知の仲。オーディションで息の合った様子を見せたため、採用を決めたという。

 「二人は台本を渡せばすぐ演技に入っていきました。説明してもなかなか芝居にならない人もいるけれど、彼らは感受性、感覚がいい。通じ合える回路がある」

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 台湾各地をめぐる旅には、日本統治時代の痕跡も随所に出てくる。たとえば台湾北西部・苗栗県の「龍騰断橋」跡。1908年、台湾総督府鉄道(当時)が建設したレンガ製の鉄道橋だ。現在は朽ちて崩れかけているが、主人公たちはその壮大な光景に息をのむ。台湾と日本の関係について、監督は語る。

 「台湾の人々は表面的には(日本人に)嫌な態度をする人はいません。でも絶対にそれだけではないだろうし、彼らの心情を掘っていけば、複雑なものも出てきたかもしれません。日本とアジアの国々は歴史的にいろいろあったが、今どう付き合うかが大切ではないでしょうか」

 台湾では聴覚障害のある青年が台湾を自転車で一周する映画「練習曲」(07)のヒットもあり、自転車ツーリングの人気が拡大している。監督は台湾の人たちと交流するうち「彼らの生まれた場所に寄せる思いが見えてきました」という。

 「取材で話を聞いた人はみな、心から自分の国の美しい風景を見たいと思っていました。自分の国を自分のことのように考えている。台湾の再発見といいましょうか。撮影でも1週間ぐらい雨もふらず、信じられないような青空も見ました。台湾の匂いや風を体感してもらえればうれしいです」

(文・遠海安)

「南風」(2014年、日本・台湾)

監督:萩生田宏治
出演:黒川芽以、テレサ・チー(紀培慧)、郭智博、コウ・ガ(黄河)

2014年7月12日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.nanpu-taiwan.com

作品写真:(c)Dreamkid/好好看國際影藝 
 
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2014年07月04日

台湾映画「祝宴!シェフ」、11月1日公開決定 チェン・ユーシュン監督16年ぶり新作

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 台湾映画「祝宴!シェフ(原題:総舗師)」が2014年11月1日、日本公開されることが決まった。「熱帯魚」(95)、「ラブゴーゴー」(97)のチェン・ユーシュン(陳玉勲)監督16年ぶりの新作だ。

 台湾の美食の都・台南を舞台に、伝説の料理人を父に持った娘が、人々を幸せにする“究極のレシピ”を探し求めるコメディー。昨年公開された台湾では大ヒットを記録。いきのいい台湾語のせりふ、食欲を刺激する台湾料理、人々の情と温かさが、台湾への旅情を誘う作品にもなっている。

 出演はドラマや映画で活躍する個性派女優、リン・メイシウ(林美秀)、若手人気俳優トニー・ヤン(楊祐寧)、キミ・シア(夏于喬)ら。「祝宴!シェフ」は11月1日、シネマート新宿ほかで全国公開。

(文・遠海安)

作品写真:(c)2013 1 PRODUCTION FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED.

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2014年07月03日

2014年台北映画祭、最優秀作品賞に韓国映画「10分」 非正規社員の日常を活写

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 台湾台北市で開催中の2014年台北映画祭で、コンペティション部門「国際青年監督賞」の受賞作品が7月2日発表され、最優秀作品賞に韓国の「10分(原題)」(イ・ヨンスン監督)が選ばれた。

 「10分」は社会的、経済的プレッシャーにさいなまれる若い男性非正規社員の日常を描く。イ監督は授賞式で「受賞は思いがけず驚いた。台湾の皆さんの反応は熱烈で感謝している」と語った。

 受賞理由は「監督は小さな世界にとらわれた人物の行動や反応をとらえ、生活の苦しみの中へ観客を引き込んだ。社会に生きる苦痛を的確に表現し、観る者の心を震わせた」。昨年の釜山国際映画祭でも観客賞など2賞、4月の香港国際映画祭で国際批評家協会賞を獲得している。

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 映画祭は今年で16回目。若手の発掘を目指すコンペ部門には、日本の「祖谷物語 おくのひと」(蔦哲一朗監督)、台湾の「共犯」(張榮吉=チャン・ロンジー=監督)など12作品が出品。審査員は熊切和嘉監督ら5人が務めた。

(文・遠海安)
タグ:記者会見
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