2016年07月25日

「ターザン REBORN」新解釈と最新技術 現代に蘇るヒーロー

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 古典小説「ターザン」が、新たな解釈と最新技術で再びスクリーンに蘇った。今回のターザンは一味違う。監督は「ハリー・ポッター」シリーズのデビッド・イェーツ。主演はアレクサンダー・スカルスガルド、マーゴット・ロビー、サミュエル・L・ジャクソン。

 英国貴族のジョン・クレイトン(アレクサンダー・スカルスガルド)、またの名をターザン。生後間もなくアフリカの密林で動物に育てられた過去、ロンドンで妻のジェーン(マーゴット・ロビー)と優雅に暮らす現在。二つの顔を持つ男は政府の厚い信頼を受け、外交特使として故郷コンゴへの派遣を打診されていた。

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 一方、コンゴはベルギー国王のレオポルド2世の餌食となっていた。国王の右腕レオン・ロム(クリストフ・ヴァルツ)は有力な部族ムボロンゴに対し、ダイヤモンドと引き換えに怨敵のターザンを引き渡すことを密約していた。

 ジョンは米国人のジョージ博士(サミュエル・L・ジャクソン)、妻のジェーンと共に、ロムの陰謀と残酷なジャングルが待ち受けるコンゴへ旅立つ──。

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 ジャングルを疾走し、木から木へと飛び移る。トレードマークの雄叫びと蔦(つた)のスイング。今回のターザンは従来のイメージを踏襲しつつ、気品も感じさせる。スカルスガルドの役作りに工夫を感じさせる。

 躍動しているのはターザンだけではない。登場する動物は全てCG(コンピューター・グラフィックス)だが、存在感は圧倒的だ。ターザンの自然との調和がスクリーン全体から伝わってくる。

 弱肉強食のジャングルは、かつてそこに君臨したターザンにさえ牙をむく。自然の過酷さがターザンの強さを際立たせている。

(文・魚躬圭裕)

「ターザン REBORN」(2016年、米国)

監督:デビッド・イェーツ
出演:アレクサンダー・スカルスガルド、サミュエル・L・ジャクソン、マーゴット・ロビー、クリストフ・ヴァルツ、シャイモン・フンスー、ジム・ブロードベンド

2016年7月30日(土)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://wwws.warnerbros.co.jp/tarzan/

作品写真:(C)2016 EDGAR RICE BURROUGHS, INC., WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

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2016年07月20日

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」赤狩りに屈せず、ペンを放さず 名作を書き続けた男

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 「ローマの休日」、「スパルタカス」、「ジョニーは戦場へ行った」、「パピヨン」──。1940〜50年代ハリウッドに吹き荒れた共産主義者弾圧事件「赤狩り」に屈せず、数々の名作を世に送り出した名脚本家、ダルトン・トランボの半生を描く「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」。主演は米人気ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストン。

 1947年、米国。東西対立が色濃くなる中、赤狩りの波はハリウッドにも及んでいた。ジョン・ウェイン(デヴィッド・ジェームズ・エリオット)やコラムニストのヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)らによる赤狩りの急先鋒組織「アメリカの理想を守るための映画同盟」は、労働者の所得向上を訴えるトランボ(クラストン)をターゲットに定める。

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 トランボは議会公聴会での証言を拒み、ブラックリストに加えられる。共産主義者のレッテルを張られた映画人が次々仕事を奪われる中、トランボは本名を隠して脚本を書き続ける。その中の一つ「ローマの休日」を、友人のイアン・マクラレン・ハンター(アラン・デュディック)に託すのだった。

 1950年6月、トランボは有罪判決を受けて収監。家族の手紙を支えに1年の刑期を終えるも、さらなる苦難が待ち受けていた。ブラックリスト入りした男に脚本を書かせる映画会社などなかったのだ。そこでトランボは一計を案じる──。

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 「自由の国」であるはずの米国が、第二次世界大戦でファシズムとの戦いを終えた数年後、自己矛盾を抱えた。敵国ソ連の思想に同調する者をつるし上げ、言論の自由を制限する社会。ハリウッドの輝かしいイメージと対極だ。

 しかし、そんな暗黒時代が名脚本家トランボを生んだのかもしれない。社会からつまはじきにされるほど、トランボの製作意欲は高まった。不当な弾圧に屈せぬ強い意志が、数々の名作を生んだ。一方で、あまりに多くの人たちの生活が「正義」の名のもと壊された。

 信条のため犠牲をいとわず、すべてを捧げて書き続けた男。名を隠さざるを得なかった理由に思いを馳せれば、数々の名作もまた違ってみえるかもしれない。

(文・魚躬圭裕)

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(2015年、米国)

監督:ジェイ・ローチ
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、エル・ファニング、ヘレン・ミレン

2016年7月22日(金)、TOHOシネマズシャンテほか全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://trumbo-movie.jp/

作品写真:(C)2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
Photo by Hilary Bronwyn

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2016年07月05日

「死霊館 エンフィールド事件」説得力あるドラマ、ショック演出、美しい幕引き ワン監督のホラー到達点

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 英ロンドン北部のエンフィールド。シングルマザーのペギー・ホジソンと子供4人は、室内の奇妙な物音に悩まされていた。あろうことかある日、家具が勝手に動き出し、家族を攻撃するようになる。テレビが取材に訪れたところ、11歳の次女ジャネットが怒り出し「出て行け」と老人のような声を出した──。

 「ソウ」シリーズのジェームズ・ワン監督作「死霊館」(13)の続編。1977年に英国で起きた「エンフィールド事件」をベースにした実録ホラーだ。前作に続いてパトリック・ウィルソンとベラ・ファーミガが、超常現象の解明を依頼された米研究家ウォーレン夫妻を演じる。

 冒頭でやはり1965年に米で起きた「デフェオ一家殺害事件」が取り上げられる。家に取り憑いた霊をみるショッキングな描写で、過去には映画「悪魔の棲む家」(79)の題材にもなった。続いて舞台はエンフィールドへ。ホジソン家の次女ジャネットの霊憑依を時系列で描いていく。

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 ワン監督の演出は正攻法で丁寧だ。ホジソン家で発生する超常現象を一つ一つ積み重ね、事件の全体像を観客が納得できるように提示する。ウィリアム・フリードキン監督「エクソシスト」(73)同様、あくまでリアリティーを追求している。こけおどしのショック演出とは正反対に、ドラマと恐怖を融合させ、作品に緊張感を与える。

 「エクソシスト」との共通点も多い。時代設定に加えて、少女に霊が憑くことで表れる奇妙な行動。場所は住宅密集地の室内で、外は平和な町並みが広がる。静と動の対比により、ホジソン家で起きている異常事態を際立たせる仕組みだ。

 巧みな演出は恐怖シーンにとどまらない。全体にピンと緊張の糸を張る一方で、さりげなくなにげない日常風景をはさみ込む。クリスマスの日。パーティーの席でエルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」が弾き語りされる。優しい歌声に心がなごむ。うまい緩急の付け方だ。

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 ワン監督は実録物の制約の中、事件全体を忠実になぞりつつ、真正面から破綻させずにドラマを積み上げだ。一見古風な作風だが、最新技術も十分に投入。屋外から室内への継ぎ目ない撮影、大胆なCG(コンピューター・グラフィックス)。映画ならではの想像の翼を羽ばたかせている。一時は「ホラー引退」も口にしたワン監督だが、饒舌な語り口は健在だ。説得力あるドラマ、ショック演出、美しい幕引き。監督としてピークに到達した印象すら受ける。

(文・藤枝正稔)

「死霊館 エンフィールド事件」(2016年、米国)

監督:ジェームズ・ワン
出演:ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、フランシス・オコナー、マディソン・ウルフ、フランカ・ポテンテ

作品写真:(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

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2016年06月13日

「二ツ星の料理人」食と人のアンサンブル ブラッドリー・クーパー、凄腕シェフの再起好演 

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 ブラッドリー・クーパーは不思議な俳優である。「世界にひとつのプレイブック」(12)、「アメリカン・ハッスル」(14)、「アメリカン・スナイパー」(15)と3年連続で米アカデミー賞主演男優賞候補に。ハリウッドのトップに上り詰めているはずなのに、どこか自信なさげで決定打に欠ける。「二ツ星の料理人」はそんなクーパーの個性──突き抜けられない鬱屈をうまく生かした作品だ。

 凄腕シェフのアダム(クーパー)は、酒と女のトラブルで仏パリの二ツ星レストランを追い出された。3年後。英ロンドンで旧友トニー(ダニエル・ブリュール)の助けを借り、新規開店に奔走する。エレーヌ(シエナ・ミラー)、ミシェル(オマール・シー)ら優秀なスタッフを集め、「世界一のレストラン」を作って再起するつもりだった。

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 目標は料理ガイド「ミシュラン」で三ツ星を取ること。ミシュランの覆面調査員来店に備え、スタッフを教育し、入念に料理のメニューを考えるアダム。星を取ることは、アダムにとって過去の清算と再出発を意味していた。

 しかし、完ぺき主義で短気なアダムに、周囲は翻弄される。かんしゃくを起こし、出来上がった料理をぶちまけるアダム。厨房にはピリピリした空気が流れ、スタッフの気持ちはなかなか一つにならない。ぎくしゃくした空気が流れるところへ、ミシュランの調査員らしき客が来店する──。

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 二ツ星を辞めさせられた料理人が、起死回生で三ツ星獲得に挑む。すねに傷を持った男をクーパーが好演。女で一つで娘を育てるエレーヌに、強気でさばさばしたミラーがぴったりだ。シー、ブリュールとも過不足ない演技で脇を固める。エマ・トンプソン、ユマ・サーマンの抑えた演技も楽しい。

 監督はメリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツらの群像劇「8月の家族たち」(14)のジョン・ウェルズ。食と人のアンサンブルをうまく料理している。

(文・遠海安)

「二ツ星の料理人」(2015年、米国)

監督ジョン・ウェルズ
出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、オマール・シー、ダニエル・ブリュール、リッカルド・スカマルチョ

2016年6月11日(土)、角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://futatsuboshi-chef.jp/

作品写真:Artwork (C) 2015 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.
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2016年06月10日

「ノック・ノック」一夜の過ちで地獄へ転落 キアヌ・リーブス主演、理不尽限界サスペンス

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 父の日。建築家のエヴァン(キアヌ・リーブス)は、外出する妻カレンと子供を見送り、一人自宅で仕事していた。夜。豪雨の中、玄関をノックする音がする。開けるとずぶ濡れの美女2人が立っていた。暖を取らせるため家へ招き入れたエヴァンだったが、それは地獄への第一歩だった──。

 感染パニック・ホラー「キャビン・フィーバー」(02)でデビューしたイーライ・ロス監督の最新作「ノック・ノック」。近作の「グリーン・インフェルノ」(15)は食人族を取り上げた。今回は人気スターのキアヌ・リーブスを起用。一夜の過ちで人生が崩壊する男の悲劇を描いたサスペンスだ。

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 家族を愛する良き父エヴァンの元に、ジェネシス(ロレンツォ・イッツォ)とベル(アナ・デ・アルマル)が迷い込む。警戒するエヴァンだったが、美女2人はぐいぐい距離を詰めていく。いつの間にか家中に入り込み、バスルームでエヴァンを誘惑。理性を保とうとするエヴァンだったが、ついに誘いに屈してしまう。

 これまでのロス監督作品では、主人公が訪れた先で悪夢に巻き込まれていた。今回は反対に安全なはずの自宅が地獄に変わる。いの一番に思い出したのが、1970年に漫画家の藤子不二雄Aが描いた「魔太郎がくる!!」。招き入れた他人に自宅を乗っ取られるエピソードに似ている。テロに怯える現代心理を映しているのかもしれない。

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 怖いのは入り込んだ2人の目的が分からないことだ。ゲームのように男を誘惑し、落とした翌朝に牙をむき、容赦ない暴力を浴びせる。平和だった男の人生は簡単に壊される。女の闇ともみえる描写に、世の男たちは震え上がるだろう。

 それにしても、ここまで不甲斐ないダメ男を演じるリーブスは初めて。逆にまったく悪びれず悪事をエスカレートさせる2人の怪演がすさまじい。悪趣味な不条理を徹底的に描くロス監督ならではで、観客の嫌悪感を引き出す演出が巧妙だ。積み重ねられる理不尽なエピソードに、不快指数が100%に達することは間違いない。

(文・藤枝正稔)

「ノック・ノック」(2015年、米国)

監督:イーライ・ロス
出演:キアヌ・リーブス、ロレンツァ・イッツォ、アナ・デ・アルマス

2016年6月11日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://knockknock-movie.jp/

作品写真:(C)2014 Camp Grey Productions LLC

タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 12:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする