2016年10月20日

「スター・トレック BEYOND」新シリーズ第3弾 救済と裏切りテーマに ニモイ、イェルチンに捧ぐ

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 2009年に始まったリブート(再起動)シリーズ第3弾「スター・トレック BEYOND」。監督は前2作のJ・J・エイブラムスから、「ワイルド・スピード」シリーズのジャスティン・リンにバトンタッチ。エイブラムスは製作に回った。同シリーズで俳優がスタッフに参加する伝統が受け継がれ、スコッティ役のサイモン・ペッグが共同脚本を担当している。

 宇宙探査3年目に入ったU.S.S.エンタープライズ号。未知の惑星に不時着した宇宙船救出に向かうが、到着直前に無数の飛行物体に襲われる。船は壊れ、クルーは散り散りに救命艇で脱出。宇宙空間に放り出される──。

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 まず作品の鍵となる「パワーストーン」をめぐり、エイリアンとカーク(クリス・パイン)が軽妙にやり取りして物語は幕を開ける。航海3年。船がわが家になったクルーの恋愛、生活をテンポよく描きながら、カーク、スポック、マッコイ、スコッティらおなじみの面々にスポットをあてる。船が大破した後は、ばらばらになったクルーが単独で動き、個々のエピソードが並行して進む。意表を突く展開だ。

 今回のテーマは「救済」と「裏切り」だろう。不時着船を助けに行ったエンタープライズ号は、敵のエイリアン、クラール(イドリス・エルバ)のわなにはまって撃破されてしまう。ショッキングでファンも驚きの描写に違いない。船を失ったクルーたちは、不時着した星からどう脱出するか。新登場のエイリアン、ジェイラ(ソフィア・ブテラ)が運命の鍵を握る。

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 新シリーズ3作目で監督が代わり、作品のテイストがやや変わった。「スター・トレック」といえば宇宙船同士の戦いだが、今回は無数の飛行物体に攻撃され、異星人に船内に侵入されたクルーが、フェイザー銃で応戦する描写も登場。エンタープライズ号の円盤状の外見を意識した斬新なアクションも展開する。不時着した星に残された100年前のオートバイにカークが乗り、おとりとなって敵に立ち向かう。「ワイルド・スピード」で超絶カーアクションを見せたリン監督が、持ち味をいかんなく発揮している。

 作品の質は申し分ないが、リブート版の難点は決定的なテーマ曲を欠くことだ。旧シリーズはテレビ版のA・カレッジによる軽快なメロディー。旧映画版はJ・ゴールドスミスの重厚な調べを思い出すが、リブート版にはそれがない。音楽担当のマイケル・ジアッチーノが劇伴に徹したことが惜しい。

 「スター・トレック」はリブート版と旧シリーズが別次元、いわゆるパラレル・ワールド(並行世界)で描かれる。今回はその境界線を交差させる演出も取られて心憎い。旧シリーズで長くスポックを演じ、昨年亡くなったレナード・ニモイ、今年事故死したチェコフ役のアントン・イェルチンに捧ぐ、シリーズ屈指の感慨深い作品となった。

(文・藤枝正稔)

「スター・トレック BEYOND」(2016年、米国)

監督:ジャスティン・リン
出演:クリス・パイン、ザッカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、カール・アーバン

2016年10月21日(金)、IMAX3D、デジタル3D、2Dで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.startrek-movie.jp/

作品写真:(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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2016年08月27日

「ライト/オフ」闇に何かがうごめく 日常に潜む恐怖、シンプルに

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 一人暮らしのレベッカ(テリーサ・パーマー)は、実家の幼い弟から「電気を消すと何かが来る」と打ち明けられる。実はレベッカが家を出たのも「それ」が原因だった。おびえる弟のため、今度は逃げずに正体を突き止めようと決意する──。

 動画配信サイトで約1億5000万回再生された短編恐怖映像「Light Out」の長編映画化。監督はデビッド・F・サンドバーグ、製作は「ソウ」(04)や「死霊館」(13)のジェームズ・ワン。

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 暗闇の気配におびえる女性を、約2分40秒に収めた「Light Out」。シンプルな短編映像を長編化するため「それ」=怪物ダイアナとレベッカの背景を掘り下げている。アイデアは共通するが、完全に別物のバージョンアップ版といえよう。

 誰もが一度は感じる闇への恐怖。日常に潜む感情をシンプルなアイデアで描く。電気を消した闇にダイアナが現れるだけではただの脅かしだが、ダイアナが生まれた背景、子供時代のレベッカの母ソフィー(マリア・ベロ)との関係に踏み込んだ。

 ダイアナは闇の中を縦横無尽に動き、レベッカ家族の前に現れる。床のきしみ、何気ない音で観客に恐怖を感じさせる。米国でリメークされた日本製ホラー「リング」や「呪怨」の影響が色濃い。光と闇の間を移動するダイアナは、「呪怨」の伽椰子に通じるものがある。

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 正統ホラーの手法は製作のジェームズ・ワンならでは。デビュー作とは思えぬサンドバーグ監督の緩急自在な演出も冴える。監督は続いてワン製作の「アナベル 死霊館の人形」続編でメガホンを取る。狭く深く小さな世界を舞台に、話を大きく広げなかったのが成功のポイントだ。怪物に魅入られた家族の恐怖を、濃厚に描いたホラーの佳作といえよう。

(文・藤枝正稔)

「ライト/オフ」(2016年、米国)

監督:デビッド・F・サンドバーグ
出演:テリーサ・パーマー、ガブリエル・ベイトマン、ビリー・バーク、アレクサンダー・ディペルシア、マリア・ベロ

2016年8月27日(土)公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://warnerbros.co.jp/c/movies/lights-off/

作品写真:(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

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2016年08月10日

「栄光のランナー 1936ベルリン」激動の時代、差別と戦った伝説の男

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 1936年、ナチス政権下のドイツで行われたベルリン五輪。「栄光のランナー 1936ベルリン」は、陸上競技で史上初の4冠を達成した名選手、ジェシー・オーエンスの半生を描く。黒人選手として人種差別、政治的思惑と戦った伝説のランナーを、「グローリー 明日への行進」のステファン・ジェイムスが演じている。

 貧しい家に生まれたオーエンス(ジェイムス)は、中学、高校と数々の記録を樹立。オハイオ州立大学へ進み、コーチのラリー・スナイダー(ジェイソン・サダイキス)と出会って鍛えられる。35年、大学陸上競技大会「ビッグテン選手権」で、けがを負いつつ世界新記録を樹立。ベルリン五輪の有力候補になった。

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 一方、米国五輪委員会は当時、ナチスの人種差別政策に揺れていた。五輪参加を訴えるアベリー・ブランデージ(ジェレミー・アイアンズ)と、ボイコット派のエレミア・マホニー(ウィリアム・ハート)が激しく議論する。ナチスの宣伝大臣ゲッペルス(バーナビー・メッチェラート)が裏で手を回し、委員会投票では参加派が僅差で勝利。米国の五輪参加が決まった。現実味が増したオーエンスの五輪出場だったが、さらなる壁が待ち受けていた──。

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 ベルリン五輪はナチスにとって「アーリア人の優位性」を証明し、「ユダヤ人迫害」を正当化する機会に過ぎなかった。一方で米国内では五輪ボイコットを求める声が拡大。差別を許さず、友情と連帯、フェアプレー精神に基づくオリンピック精神が叫ばれる。黒人奴隷の子孫であるオーエンスにとって、激動の時代でもあった。

 五輪を取り巻く情勢の急激な変化が、説得力ある時代考証で描かれる。緊迫感が途切れない。サダイキス、アイアンズらの演技も、主役のジェームスを脇から支える。

 ナチスのスローガン一色のスタジアムで、オーエンスは4つの金メダルを獲得。人種に優劣がないことを証明し、ナチスの鼻をあかした。しかし、米国での差別はなくならなかった。歴史の皮肉でもある。

(文・魚躬圭裕)

「栄光のランナー 1936ベルリン」(2016年、米・独・カナダ)

監督:スティーブン・ホプキンス
出演:ステファン・ジェイムス、ジェイソン・サダイキス、ジェレミー・アイアンズ、ウィリアム・ハート、カリス・ファン・ハウテン

2016年8月11日(木・祝)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://eiko-runner-movie.jp/

作品写真:(C)2016 Trinity Race GmbH / Jesse Race Productions Quebec Inc. All Rights Reserved.

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2016年07月30日

「アンフレンデッド」いないはずの彼女が突然現れた ネットで追い詰められる恐怖 パソコン画面だけで展開するホラー

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 ネットいじめで女子高生が自殺した。1年後。同級生たちがネット上でおしゃべりしていると、突然メッセージが現れた。「私の恥ずかしい動画をアップしたのは誰?」。自殺したはず彼女だった。仲間の秘密を暴露しながら、SNS(交流サイト)を使った壮絶な復讐が始まった──。

 SNS上だけで物語が展開するホラー「アンフレンデッド」。製作総指揮は「パラノーマル・アクティビティ」シリーズのジェイソン・ブラム。監督は過去にCM100本以上を演出してきたレヴァン・ガブリアゼだ。

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 女子高生ローラは同級生たちの目の前で拳銃自殺した。ネットにはその様子を写した動画がアップされ、関連リンクで自殺の原因になった「恥ずかしい動画」が見られるようになっている。動画を見た友人たちがネットでチャット(雑談)していると、正体不明のアカウントが登場。死んだはずの「ローラ」を名乗り、友人たちに話しかける。

 3D全盛の現代。映画の大スクリーンで立体的な映像、ダイナミックな動きを楽しむのが主流になっている。そんな流れに反するように、「アンフレンデッド」は狭いパソコン空間を舞台にした。スクリーンに映し出されるのは、ほぼパソコン画面のみ。すべてが平面上て展開すると独特の作品だ。

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 仲間の前に再び現れた「ローラ」は、ネットの中だけに生きる実体のない霊だ。仲間の秘密や弱点、隠しごとを暴露しながら、自分主導のゲームに強制的に参加させる。仲間割れや恋愛感情を利用し、疑心暗鬼に陥れ、精神的に追い込んでいく。これまでにない変わり種の霊といえよう。

 主観映像で恐怖に陥れる「パラノーマル・アクティビティ」シリーズで頂点を極めたブラムが、次なる一手として仕掛けた「アンフレンデッド」。本末転倒に聞こえるが、映画のスクリーンよりパソコンの画面向けといえる。今の若者の必需品になったネットとSNSを巧みに取り入れた。ネットを使わない人にはピンとこないが、新たな世代に向けて斬新な切り口で描いたホラーだ。

(文・藤枝正稔)

「アンフレンデッド」(2014年、米国)

監督:レヴァン・ガブリアーゼ
出演:シェリー・ヘニッヒ、モーゼス・ストーム、レニー・オルステッド、ウィル・ペルツ、ジェイコブ・ワイソッキ

2016年7月30日(土)、新宿シネマカリテほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://unfriended.jp/

作品写真:(C)2014 Universal Studios. All Rights Reserved.

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2016年07月28日

「DOPE ドープ!!」90年代オタクの高校生、違法ドラッグ手にして大騒動 痛快青春コメディー

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 米ロサンゼルス。スラム街を疾走する高校生のマルコム(ジャメイク・ムーア)は、1990年代ヒップホップをこよなく愛するオタクである。しかし、あるパーティーで知らぬ間に違法ドラッグを手にしてしまい、思わぬ騒動がぼっ発する──。

 監督、脚本、製作総指揮は「ソウルメイト」のリック・ファムイーワ。製作総指揮、ナレーションはフォレスト・ウィテカー、音楽は「怪盗グルーのミニオン危機一発」(13)の楽曲で米アカデミー賞候補になったファレル・ウィリアムスだ。

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 軽快なヒップホップとウィテカーのナレーションで幕が開ける。90年代オタクのマルコムは、カセットプレーヤーとアナログレコードを偏愛。部屋には90年代グッズがあふれている。同じオタクでバンド仲間のディギー、男装女子のジブと学校へ行けば、不良や体育会系の生徒にからまれる。校内を逃げ回りながら、ハーバード大学進学を夢見る日々だ。

 マルコムはある日、地元で有名なドラッグディーラーのドムに「俺の誕生日パーティーに連れて来い」と命じられ、美女ナキアを誘って会場に向かう。しかし、警察の急な捜索でその場はパニックに。ドムはマルコムのバッグに大量の違法ドラックを隠してしまう。

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 「風が吹けば桶屋がもうかる」的に話は転がっていく。オタク高校生が違法ドラッグを手に入れ、困難を乗り越え、一発逆転の大勝負に出る。懐かしくどこか滑稽な90年代を、ポップな青春譚に仕立てた着眼点、センスがいい。70年代テイストを生かすクエンティン・タランティーノに共通する。

 水と油に思える「オタク」と「犯罪」が、中盤から交わり初めて面白くなる。オタクならではの知恵と行動力で、マルコムがドラッグをさばいていく様子が痛快だ。軽妙に語られる恋と犯罪、勢いで駆け抜ける青春コメディーだ。

(文・藤枝正稔)

「DOPE ドープ!!」(2015年、米国)

監督:リック・ファムイーワ
出演:シャメイク・ムーア、トニー・レボロリ、カーシー・クレモンズ、ゾーイ・クラビッツ、エイサップ・ロッキー

2016年7月30日(土)、渋谷HUMAXシネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://dope-movie.jp/

作品写真:(C)2015 That's Dope, LLC. All Rights Reserved.

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