2018年09月03日

「MEG ザ・モンスター」ジェイソン・ステイサム、巨大ザメに立ち向かう 王道の動物パニック映画、ベテラン監督で質高く

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 大陸から200キロ離れた海洋研究施設の探査船が、未知の海溝を発見した。しかし、喜びもつかの間、船は消息を絶つ。潜水救助のプロ、ジョナス・テイラー(ジェイソン・ステイサム)は助けに向かった先で、常識を超えたモンスター「MEG」と遭遇する──。ジェイソン・ステイサム主演、ジョン・タートルトーブ監督の海洋パニック映画「MEG ザ・モンスター」。「MEG」(メガロドン)は、約200万年前に実在した巨大ザメを指す。

 サメの恐怖を描いたパニック映画の元祖は、スティーブン・スピルバーグ監督「ジョーズ」(75)だ。その後、続編が作られたが、質の低下でシリーズは一旦終息する。その後、サメ映画ではレニー・ハーリン監督の「ディープ・ブルー」(99)がスマッシュヒットした。2000年代に入るとCG(コンピューター・グラフィックス)技術の進歩により、サメ映画は安くで作られ、ビデオ映画の定番となった。「メガ・シャーク」など多くの亜流も撮られ、サメ映画はすっかりチープなバッタ物扱いに成り下がった。ところが、ここにきて本命といえる「MEG ザ・モンスター」の誕生だ。

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 巨大サメに立ち向かうジョナスには、「エクスペンダブルズ」(10)などアクション映画で大活躍するジェイソン・ステイサム。タートルトーブ監督は「クール・ランニング」(93)、「ナショナル・トレジャー」シリーズなど、ドラマから娯楽アクションまで幅広いジャンルで活躍。ベテラン監督の起用で、近年のサメ映画では群を抜いたクオリティーに仕上がった。

 幕開けで未知の海溝の発見、巨大生物の恐怖が手際よく描かれる。ジョナスの決断は誤解を招き、仲間と亀裂が発生。ジョナスは現場を去る。「クリフハンガー」(93)などアクション映画で定番の「主人公が冒頭で挫折を味わい、一度は現場から去る」描写だ。後に新たな困難に立ち向かうため、ジョナスは現場に復帰する。お決まりのプロットで潔い構成だ。

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 技術の進歩で「描けないものはない」とされる最近のハリウッド。さすがに体長23メートルの巨大ザメは、あまりに大きく現実味に欠けるが、相手がステイサムならこのぐらいの大きさが必要だろう。ステイサムは元水泳の飛び込み選手。多くの水中アクションをスタントなしで挑み、貫録を見せつけた。

 乗り物のデザインは、リアリティーと未来志向を融合させ、隠し味になっている。ハイテクの結晶が古代生物にかなわない構図で、巨大ザメの不気味さを印象付ける。往年の動物パニック映画のセオリーを受け継ぎながら、実写とCGで王道のドラマを描く。バランス感覚がいい快作だ。

(文・藤枝正稔)

「MEG ザ・モンスター」(2018年、米国)

監督:ジョン・タートルトーブ
出演:ジェイソン・ステイサム、リー・ビンビン、レイン・ウィルソン、ルビー・ローズ、ウィンストン・チャオ

2018年9月7日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://warnerbros.co.jp/movie/megthemonster/

作品写真:(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.

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2018年06月28日

「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」ヘレン・ミレン、ホラー初出演 実在の幽霊屋敷と銃の因縁

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 米西海岸サンフランシスコから885キロ。人里離れた広大な土地に世界で最も呪われた巨大な屋敷がある。建設者は“西部を征服した”ウィチェスター銃を作った一族の一人で、莫大な財産を相続したサラ・ウィンチェスター(ヘレン・ミレン)だ。屋敷は8年間、365日、24時間、絶え間なく増築され、7階建てで部屋は500。どこにも行きつかない階段や迷路のようなホール、13にまつわる装飾など、奇怪な構造になっていた──。

 米国でテレビ特番が組まれるほど有名な実在の幽霊屋敷「ウィンチェスターハウス」。出演は「クイーン」(06)のエリザベス女王役で米アカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレン、「ターミネーター 新起動 ジェニシス」(15)のジェイソン・クラークら。「ジクソウ ソウ・レガシー」(17)のスピエリッグ兄弟がメガホンをとった。

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 「ウィンチェスター銃のせいで命を落とした人の霊を閉じ込める」と、取りつかれたように屋敷を増築するサラ。ウィンチェスター社の経営陣は、サラを精神鑑定して経営権を奪うため、精神科医のエリック(ジェイソン・クラーク)を屋敷に送る。しかし、エリックの目にサラの異常は感じられず、逆に屋敷で不可解な恐怖現象を体験する。

 時代設定は1906年。20世紀初頭の米西海岸を舞台に、監督はクラシカルなゴシック・ホラー作りを目指す。外部から来たエリックの目を通し、屋敷で起きる不可解な出来事を積み重ね、ウィンチェスターハウスの素顔を明かしていく。中盤までは抑制されたアナログなショック演出を小出しに。後半は屋敷を使った大胆な仕掛け、最新のデジタル技術でたたみかける。

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 かなりゆったりとドラマが進み、サラを演じるミレンの演技が物語に説得力を持たせる。ホラー初出演のミレンは、黒いドレス姿で役に命を吹き込んだ。クラークも地味ながら堅実に演じ、物語を引き締めている。実際の屋敷を使った映像、凝りに凝ったセット。ウィンチェスター銃にまつわる因果応報的な解釈が要になる。全体に踏み込みが足りない感もあるが、目ざといホラー映画ファンにはおすすめだ。

(文・藤枝正稔)

「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」(2018年、米・豪)

監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ
出演:ヘレン・ミレン、ジェイソン・クラーク、サラ・スヌーク、フィン・シクルーナ=オープレイ、エイモン・ファーレン

2018年6月29日(金)、TOHO シネマズシャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://winchesterhouse.jp/

作品写真:(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

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2018年06月13日

「ワンダー 君は太陽」人と顔が違う少年オギー 友情と葛藤、成長の物語

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 オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は遺伝子の疾患で、人と異なる顔で生まれてきた。何度も手術を受け、自宅で勉強を続けてきたが、両親は息子を外の世界へ送り出すと決める。学校でオギーはいじめや裏切りに合うが、ありったけの勇気と知恵で立ち向かい、周囲の人々が変わり始める──。

 R・J・パラシオの原作小説を、「ウォールフラワー」(12)のスティーブン・チョボスキーが監督した作品。「ルーム」(15)の名子役ジェイコブ・トレンブレイ、「エリン・ブロコビッチ」(00)のジュリア・ロバーツ、「ミッドナイト・イン・パリ」(11)のオーウェン・ウィルソンが出演。

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 宇宙飛行士用のヘルメットをかぶった少年が、一人で遊ぶシュールな幕開け。少年オギーは顔が変形しており、外出時は常にヘルメット姿。両親と高校生の姉、ペットの犬とニューヨークで暮らし、自宅学習をしてきたが、5年生で初めて小学校に入る。

 入学を前に、オギーは母と校長に会い、クラスメート3人に学校を案内してもらう。3人のうちジャックは良き理解者となり、唯一の親友になる。期待と不安の登校初日は、挑戦と試練の日々の始まりでもあった──。

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 デリケートな題材で、一歩誤れば重苦しくなる恐れがある。監督は病を隠さず、ユーモアを交えながら正面から描いている。オギーは差別や偏見と戦いながら、学校に通い始める。クラスメートとの友情、いじめや裏切り。一つ一つきっちり描き、成長と葛藤の物語をつむぐ。

 オギーが現実逃避するような脳内世界は、ポップで幻想的。大好きな映画「スター・ウォーズ」の人気キャラクターが登場する凝りようだ。家族の物語と並行して、姉のヴィア(イザベラ・ヴィドヴィチ)の悩みと友情、恋愛を描き、物語に膨らみを持たせる。

 オギーを演じたトレンブレイは、感情が出し辛い特殊メイクで難役に挑み、観客の心をつかむ。両親を演じたロバーツとウィルソンは脇に徹して好演。両親の無償の愛、クラスメートとの温かい友情。オギーが勇気を与えられ、成長する姿に感動する。

(文・藤枝正稔)

「ワンダー 君は太陽」(2017年、米)

監督:スティーブン・チョボウスキー
出演:ジュリア・ロバーツ、ジェイコブ・トレンブレイ、オーウェン・ウィルソン、マンディ・パティンキン、ダビード・ディグス

2018年6月15日(金)、TOHO シネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://wonder-movie.jp/

作品写真:(C)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.
タグ:レビュー
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2018年05月08日

「ミッドナイト・サン タイヨウのうた」シュワルツェネッガーの息子パトリック主演 日本ヒット作のリメイク

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 17歳のケイティ(ベラ・ソーン)は、日光にあたることができない“XP(色素性乾皮症)”。幼い頃から昼は家から出られず、父親と時間が経つのを待つだけだった。唯一の楽しみは、毎夜ギターを片手に駅前まで行き、通行人相手に歌うこと。ある夜、ケイティは同世代の青年チャーリー(パトリック・シュワルツェネッガー)と出会う──。

 サブタイトルが示す通り、日本映画「タイヨウのうた」(06)のハリウッド・リメイク版だ。06年に沢尻エリカ主演のテレビドラマ版や、10年に韓国で上演されたミュージカル版が親しまれ、15年にベトナムでテレビドラマ化もされた。今回のハリウッド版はドラマ「シェキラ!」(10〜13)で人気を得た歌手で女優のベラ・ソーン主演。恋人役はアーノルド・シュワルツェネッガーの息子、パトリック・シュワルツェネッガー。監督、製作総指揮はスコット・スピアー。

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 子どもの頃、引きこもり状態のケイティは、近所の子供たちにとって気味の悪い存在だった。だが、モルガン(クイン・シェパード)だけは普通に接してくれ、外とつないでくれる貴重な親友になった。ケイティの楽しみは、ギターを弾いて曲を作ったり、詩を書いたり、父親と話すこと。中でも一番は、家の前を通る隣人の少年チャーリーを窓から眺めることだった。

 やがてケイティは成長し、夜になると駅で歌うストリートミュージシャンになった。ある夜、ケイティが恋こがれていた隣人チャーリーに声をかけられる。突然の出来事に動揺したケイティは、歌詞を書き留めたノートを置いたまま逃げ出してしまう。このノートが恋のキューピットとなり、二人は初デートにこぎつける。

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 日本でも大ヒットした「タイヨウのうた」のリメイクのため親しみやすく、オリジナル版と比較しながら見ることができる。もちろん未見でも十分に楽しめる普遍的な愛の物語だ。舞台のカナダ・バンクーバーの雰囲気も手伝い、カラッとした解放的な空気が心地良く、すんなり心に入ってくる。主演を務めたソーンと親友役クイン・シェパードの明るくアメリカンな友情、背景に描かれる群像劇。米国青春ドラマの王道的な展開も心地良い。

 一番の目玉はパトリック・シュワルツェネッガーだ。また演技はうまくないが、「ターミネーター」(84)出演時の父にそっくりなたたずまい、話し方や声まで似ていて、父のファンは2度楽しめる。若い2人を優しく見守るケイティの父ジャック(ロブ・リグル)が話をうまく盛り上げる。リメイクだけに新鮮味は薄いが、観客を選ばぬ王道のラブストーリーは、多くの映画ファンに受け入れられるだろう。

(文・藤枝正稔)

「ミッドナイト・サン タイヨウのうた」(2018年、米国)

監督:スコット・スピアー
出演:ベラ・ソーン、パトリック・シュワルツェネッガー、ロブ・リグル、クイン・シェパード、ケン・トレンブレット

2018年5月11日(金)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://midnightsun-movie.jp/

作品写真:(C)2017 MIDNIGHT SUN LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (C)2017 OPEN ROAD FILMS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

タグ:レビュー
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2018年05月03日

「サバービコン 仮面を被った街」コーエン兄弟脚本×クルーニー監督 黒い笑いに満ちた犯罪推理劇

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 「明るい街、サバービコンへようこそ!」。1950年代の米国。アメリカン・ドリームの街に住むロッジ家の生活は、強盗の自宅侵入で一変する。足が不自由な妻ローズ(ジュリアン・ムーア)が亡くなり、幼い息子ニッキーが遺され、仕事一筋の主ガードナー(マット・デイモン)と妻の妹マーガレット(ジュリアン・ムーアが二役)は、前向きに日常を取り戻そうとする──。

 1950年代の実話と、コーエン兄弟が99年に書いた脚本を融合させた犯罪サスペンス。監督、脚本、製作をジョージ・クルーニーが務め、マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザックら人気スターが競演する。

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 米国人の理想を反映したような郊外の住宅地「サバービコン」に、黒人一家が引っ越してきて激震が走る。人種差別が当たり前の時代。住民たちのあからさまな嫌がらせが始まる。一方、黒人一家の隣に住むロッジ家に2人組の強盗が押し入り、妻ローズが死亡してしまう。ローズの双子の妹マーガレットは、姉と入れ替わるように、妻の座に収まろうとしていた。

 トランプ大統領が「白人至上主義」を叫ぶ狂った現代に、コーエン兄弟ならではのブラックでシニカルな脚本がさく裂。劇場映画の監督6本目となるクルーニーは、毒気たっぷりに料理する。

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 クルーニーが影響を受けた作品の気配が見える。ムーア演じる双子の姉妹はヒッチコック監督の「めまい」(58)か。地下室での情事を目撃する姿は「サイコ」(60)のパロディーのようだ。劇中音楽は、部分的にヒッチコック作品の常連作曲家、バーナード・ハーマンを彷彿とさせる。絶妙な旋律が隠し味として効いてくる。

 大人たちの悪だくみに振り回される子供・ニッキーの冷めた視点が本質を突く。欲望のために平気で嘘をつき、人をだまして殺人まで犯し、暴徒化する身勝手な大人たち。そんな大人をしり目に、隣に住む黒人少年と友情を育むニッキー。根強い人種差別に対する強烈なアンチテーゼが込めつつ、シニカルでブラックな喜劇にした監督のセンスにしびれる。

(文・藤枝正稔)

「サバービコン 仮面を被った街」(2017年、米国)

監督:ジョージ・クルーニー
出演:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザック、ノア・ジュプ、グレン・フレシュラー

2018年5月4日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://suburbicon.jp/

作品写真:Hilary Browyn Gayle (C)2017 Paramount Pictures. All rights reserved.

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