2019年09月27日

「ヘルボーイ」異色のアメコミ・ダークヒーロー 血しぶき多めで刺激的に

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 紀元517年、暗黒時代のイングランド。“ブラッドクイーン”こと、魔女ニムエ(ミラ・ジョボビッチ)は疫病を拡散させ、世界を手に入れようとしたが、アーサー王の聖剣エクスカリバーに野望を断たれる。バラバラにされたニムエの死体は、人里離れた地に封印された──。

 マイク・ミニョーラ原作のコミック「ヘルボーイ」は、ギレルモ・デル・トロ監督の手により「ヘルボーイ」(04)と「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」(08)の2作品として映画化された。監督はニール・マーシャル。「ドッグ・ソルジャー」(02)の鬼才が「ヘルボーイ」を現代に復活させた。原作者ミニョーラが製作総指揮、脚本にも参加したという。

 ハリウッドのアメコミ・ヒーロー映画は、一つのジャンルとして確立している。「スーパーマン」や「バットマン」で知られる“D.C.コミックス”と、「アベンジャーズ」で知られる“マーベル・コミック”が、しのぎを削りあうように大ヒット作を立て続けに製作してきた。

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 そんな2強ブランドと一線を画す異色の存在が“ダークホースコミックス”の「ヘルボーイ」だ。地獄の悪魔の子として生まれ、人間に育てられたダークヒーローは、善にかえったものの、体に流れる悪の血に苦しみ、何かの拍子に悪魔に戻る。極秘の超常現象調査防衛局(B.P.R.D.)のエージェントとして、悪魔の力を駆使して人間界を守っている。

 ヘルボーイの敵が魔女ニムエだ。人間への復讐心に突き動かされて、1500年の時を超えて復活し、疫病をまき散らし、世界征服を目論む。イノシシのような獣人グルアガッハを従え、地球の女王として君臨しようとする。「女王には王が必要」と、白羽の矢を立てられたヘルボーイは、魔女ニムエと戦い始める。

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 騎士道物語「アーサー王と円卓の騎士」を巧みに取り入れながら、地球を守る悪魔の子と、地球征服を狙う魔女の戦いを、VFX満載で描いたダークファンタジーだ。一方、見たこともない様な巨大モンスターやクリーチャーが登場。モンスター映画の一面も持っている。

 デル・トロ版でヘルボーイを演じたロン・パールマンも凄い存在感だったが、今回のハーバーもいい。善と悪の間で揺れる新生ヘルボーイとして、申し分のない役作り。魔女ニムエには「バイオハザード」シリーズのミラ・ジョボビッチ。適役である。悪魔と対等に戦える最強の女優で、最高のキャスティングだ。

 監督のニール・マーシャルはホラー映画「ディセント」(05)、「マッドマックス」に通じる荒廃した近未来アクション映画「ドゥームズデイ」(08)というジャンル映画で頭角を現した。ダークヒーローとクリーチャーとの戦いをえげつなく描いた。D.C.コミックスやマーベルコミックとはまた一味違う、血しぶき多めで刺激的なアメコミ・ヒーローの快作だ。

(文・藤枝正稔)

「ヘルボーイ」(2019年、米)

監督:ニール・マーシャル
出演:デビッド・ハーパー、ミラ・ジョボビッチ、イアン・マクシェーン、サッシャ・レイン

2019年9月27日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://hellboy-movie.jp/

作品写真:(C)2019 HB PRODUCTIONS, INC.

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2019年09月18日

「アナベル 死霊博物館」恐怖の人形巡るシリーズ第3弾 原点に返りシンプルに

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 超常現象研究家のウォーレン夫妻の家に、強烈な呪いを持つ人形「アナベル」が運び込まれ、地下の博物館に他の呪われた品々と一緒に厳重に封印された。夫妻が仕事で家を空けた日。娘のジュディ(マッケナ・グレイナ)は年上の少女メアリー(マディソン・アイズマン)、ダニエラ(ケイティ・サリフ)と3で一夜にを過ごす。しかし、ダニエラが博物館に勝手に入り込み、アナベルの封印を解いてしまう──。

 「アナベル 死霊博物館」は、「死霊館」(13)に登場した人形アナベルを主人公としたシリーズ第3弾だ。パトリック・ウィルソンとベラ・ファーミガが、ウォーレン夫妻として再登場する。原案、製作は「死霊館」シリーズを生んだジェームズ・ワン、監督、脚本は「アナベル」シリーズ、「IT イット “それ”が見えたら、終わり」(17)のゲイリー・ドーベルマン。今回が長編デビューとなる。

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 「死霊館」シリーズから派生した「アナベル」シリーズ第3弾だが、前2作が「死霊館」の前日譚だったのに対し、今回は後日談を描いている。つまり「死霊館」の後なので、物語をある程度自由に創作できる。人形の恐怖に焦点を絞り、ジュディら少女たち、さらに男友達の話を中心とした。夫妻の家で一夜を過ごし、彼らはさまざまな恐怖を味わう。観客を怖がらせることに特化し、ホラーの原点に立ち返った構成と演出が潔い。

 ドーベルマン監督の演出は、緩急をつけつつ、非常にシンプルだ。アナベルを預かったことで発生する墓地での超常現象。ジュディが学校で見てしまう神父の亡霊。ダニエラが過去に犯した父を巡る過ち。アナベル以外のエピソードをうまくふくらませ、伏線を張りめぐらせる。クライマックスでは恐怖をたたみかけながら、伏線をうまく回収していく。

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 シリーズ前2作は「死霊館」につながるよう整合性が求められたが、今回は人形と博物館の品々が巻き起こす恐怖に特化した。「お化け屋敷」的な恐ろしさを押し出し成功している。対象年齢を引き下げたようにシンプルで、計算されたショック演出。シリーズを知らない観客も十分楽しめるだろう。

(文・藤枝正稔)

「アナベル 死霊博物館」(2019年、米)

監督:ゲイリー・ドーベルマン
出演:マッケンナ・グレイス、マディソン・アイスマン、ケイティ・サリフ、パトリック・ウィルソン、ベラ・ファーミガ

2019年9月20日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://wwws.warnerbros.co.jp/annabelle-museumjp/

作品写真:(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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2019年09月08日

「荒野の誓い」開拓時代の終わりと変わる西部 騎兵隊大尉の心情に重ね クリスチャン・ベール好演

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 1892年、米西部。騎兵隊大尉ジョー(クリスチャン・ベール)はかつての宿敵でシャイアン族の長、イエロー・ホーク(ウェス・ステューディ)とその家族を、居留地へ送り返すよう命じられる。ニューメキシコからコロラド、モンタナへ。途中、コマンチ族に家族を殺されたロザリー(ロザムンド・パイク)も加わり、一行は北を目指す。ジョーとロザリーは危険に満ちた旅を通じ、互いに協力せずには生きてはいけないとを知る──。

 監督、脚本、製作は「クレイジー・ハート」(09)で長編デビューしたスコット・クーパー。ベールとは「ファーナス 訣別の朝」(13)に続くタッグで、4本目の長編だ。

 西部開拓時代が終わり、産業革命で新時代が始まった米国が舞台の西部劇。荒野で平和に暮らしていたクウェイド家を、コマンチ族が襲う。夫と子ども3人は殺され、ロザリーだけがかろうじて生き延びた。一方、騎兵隊はインディアンの家族を捕らえ、刑務所に強制連行していた。白人から見たインディアン、インディアンから見た騎兵隊の蛮行が、対比するように描かれる。

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 騎兵隊のジョーはかつて、インディアンとの戦争で英雄になった。たび重なる戦いで仲間を失い、インディアンを嫌っている。しかし、上官から命じられたのは、皮肉にもがんに冒されたインディアンの長、イエロー・ホーク一家の護送だった。

 インディアンとの融和をアピールし、出世を目論む上官は、インディアンの言葉が話せるジョーに白羽の矢を立てたのだ。ジョーは任務を拒むが、上官は軍法会議をたてに受け入れない。ジョーは仕方なく引き受け、小隊を組織して馬に乗り、モンタナへ向かう。道中、焼け跡で放心状態だったメアリーを見かけ、安全な場所に連れて行くため同行させる。

 かつての敵を護送するジョーの心境の変化が物語の鍵になる。職業軍人として任務に取り組むが、コマンチ族や野盗に襲われ、騎兵隊5人だけでは手に負えない。護送するインディアンの手を借りずにいられなくなり、かつての敵であるイエロー・ホークの意志を尊重し、理解しようとする。さらに、家族を失い自暴自棄のロザリーと心を通わせるうち、ジョーの中に自尊心が芽生え始める。

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 開拓時代が終わり、時代も移る転換期に、騎兵隊の心情も変わっていく。ジョーを演じるベールがいい。職業軍人として感情を殺し、ストイックに任務をこなす男が、行動をともにすることで、嫌っていたインディアンを認め、考えを変えていく。非常に複雑な感情のせめぎあいを、ベールが繊細かつ力強く演じている。ロザリーを演じるパイクも、傷心で破壊行動を見せる女性が、次第に人間らしく変わる難役を好演した。

 敵対する民族同士の理解は、現代に通じる普遍的なテーマだ。米国の負の歴史を、監督は骨太のメッセージとして観客に投げかけている。

(文・藤枝正稔)

「荒野の誓い」(2017年、米)

監督:スコット・クーパー
出演:クリスチャン・ベール、ロザムンド・パイク、ウェス・ステューディ、アダム・ビーチ、ベン・フォスター、クオリアンカ・キルヒャー

2019年9月6日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kouyanochikai.com/

作品写真:(C)2017 YLK Distribution LLC. All rights reserved.
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2019年09月03日

「ラスト・ムービースター」バート・レイノルズ、最後の主演作 大スターの大らかさと輝き

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 かつて一世風靡した映画界のスーパースター、ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)のもとに、ある映画祭から功労賞授与式の招待状が届く。歴代受賞者がロバート・デ・ニーロやクリント・イーストウッドと聞き、しぶしぶ参加したものの、だましに近い名もない映画祭と知ると、エドワーズは憤慨する。だが、映画祭の場所は生まれ育った街ノックスビルに近く、過去の思い出がよみがえる──。

 2018年9月、82歳で世を去ったレイノルズ最後の主演作「ラスト・ムービースター」。一周忌にあたる9月6日に公開される。監督・脚本は「デトロイト・ロック・シティ」(99)、「LOOK」(07)のアダム・リフキン。

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 レイノルズは「脱出」(72)、「ロンゲスト・ヤード」(74)、「トランザム7000」(77)など、男臭さを売りにしたアクションスターだった。今回演じるエドワーズは、レイノルズにあてがきしたような役だ。かつてスーパースターだったが、引退後は映画オタクにしか知られておらず、愛犬と寂しい余生を過ごす男。

 そこへ「国際ナッシュビル映画祭」から功労賞を授与すると連絡がある。デ・ニーロやイーストウッドら、かつての仲間たちも受賞してきたと知り、旧友の元スターのソニー(チェビー・チェイス)に相談。「もらいに行ったほうがいい」と助言され、しぶしぶ授賞式に出席する。

 しかし、待っていたのは厳しい現実だった。エコノミー席でナッシュビルの空港に着くと、迎えに来たのはボロ車の若い女性運転手リル(アリエル・ウィンター)。タトゥーの入った不愛想な女で、運転中も彼氏と電話でけんか。まったく自己中心的な態度に抱いた嫌な予感は的中する。

 映画祭はまやかしイベントだった。小さなスクリーンにプロジェクター、ホームシアターに毛が生えたような会場。エドワーズが登場すると主催者やファンは大喜びするが、だまされた当人の怒りは収まらない。ホテルで安酒を飲み、転倒して額にけがを負う。翌朝、リルを呼び出して空港へ向かったが、道路標識に懐かしい「ノックスビル」の文字を見つけ、導かれるように生まれ故郷を目指す。

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 レイノルズの人生をなぞったような物語が秀逸だ。スタントマンとしてキャリアをスタートさせたエドワーズ。レイノルズがスタントマン役を演じた「グレート・スタントマン」(78)につながる。雑誌で披露したヌードが劇中に引用されるなど、本人の過去がそのまま使われている。

 代表作「脱出」と「トランザム7000」の映像で、当時のレイノルズとエドワーズがCG合成で共演。粋な演出も用意されている。内容はレイノルズにとって自虐的ともいえるが、大らかに受け入れ、自分色に染め上げてしまう大スター、レイノルズの最後の輝きを収めた。

(文・藤枝正稔)

「ラスト・ムービースター」(2017年、米国)

監督:アダム・リフキン
出演:バート・レイノルズ、アリエル・ウィンター、クラーク・デューク、エラー・コルトレーン、チェビー・チェイス

2019年9月6日(土)、シネマカリテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://lastmoviestar2019.net-broadway.com/

作品写真:(C)2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

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2019年07月21日

「ポラロイド」古いカメラから広がる死の連鎖 恐怖と葛藤にさいなまれる高校生

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 アンティーク店で手に入れた年代物のポラロイドカメラ。SNS世代の高校生バード(キャサリン・プレスコット)は、シャッターを押せば写真が出る仕組みに夢中になる。しかし、撮影された友人たちが次々と悲惨な死を遂げ、悪夢の原因はカメラにあると気付くバードだが、自分も写真に写っていたことが分かる──。

 ノルウェー出身のラース・クレブバーグ監督が、自作の短編をリメイクしたホラー映画。才能がこの作品でハリウッドの目に止まり、「チャイルドプレイ」リブート版の監督に抜てきされた注目の新鋭だ。

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 1972年発売の「ポラロイドSX-70」を、少女が母の遺品から発見する。冒頭のシーンは下敷きになった短編を再構築しており、続いて長編オリジナルの物語が始まる。バードがアルバイトするアンティーク店に、いわくつきポラロイドカメラが持ち込まれ、写真を撮られた友人たちの死の連鎖が始まる。

 ポラロイドで撮った写真には、人物と一緒に謎の黒い影が映っている。「黒い影が出てしまった人物が死ぬ」設定だ。死の連鎖から逃げようとする人々の恐怖と葛藤。カメラがたどった負の歴史。中田秀夫監督「リング」(99)が作ったルールが、世界のホラー映画で一般化したようにみえる。「ポラロイド」では高校生が死の連鎖に翻弄され、予知夢で死亡が予告される「ファイナル・デスティネーション」(00)に近い印象だ。

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 「死の連鎖からの回避」に新味はないが、演出は抑制が効いており、じわじわと恐怖が迫りくる。カメラにまつわる負の歴史もミステリアスに描かれるが、後半はCGを大盤振る舞い。ハリウッド的なサービスが炸裂し、リアリティーが薄くなった。しかしながら、短い上映時間88分をまったく飽きさせず、監督の語りのうまさを感じる作品だ。

(文・藤枝正稔)

「ポラロイド」(2018年、米)

監督:ラース・クレブバーグ
出演:キャスリン・プレスコット、タイラー・ヤング、サマンサ・ローガン、グレイス・ザブリスキー、ミッチ・ピレッジ

2019年7月19日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/polaroid/

作品写真:(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

posted by 映画の森 at 14:28 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする