2018年02月28日

「シェイプ・オブ・ウォーター」冷戦時代に描く人間と異生物の愛 ギレルモ・デル・トロ監督、シンプルに独創的に

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 1962年、米政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は、秘かに運び込まれた不思議な生き物を見てしまう。アマゾンの奥地で神のように崇められていた“彼”は、奇妙だがどこか魅力的。イライザは周囲の目を盗んで会いに行くようになる。子どもの頃のトラウマで声が出ないイライザだが“彼”との間には言葉はいらなかった──。

 ギレルモ・デル・トロが監督、脚本、製作、原案のラブファンタジー「シェイプ・オブ・ウォーター」。ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)、ゴールデングローブ賞で監督賞を受賞、3月発表の米アカデミー賞では作品、監督、主演女優賞など13部門にノミネートされている話題作だ。

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 日本のマンガやアニメ、特撮作品をこよなく愛するデル・トロ監督。「ミミック」(97)、「ヘルボーイ」(04)、「パンズ・ラビリンス」(06)、「パシフィック・リム」(13)と、マニア心をくすぐるダーク・ファンタジーを送り出してきたが、今回は愛すべき小品といえよう。米国とソ連が科学技術開発でしのぎを削った冷戦時代、人間の女性と半魚人系クリーチャーの禁断の愛を描いた。

 話せないイライザは、自宅と職場を往復するだけ。寂しい日常を反復して描き、愛を知らない孤独を観客の脳裏に焼き付け本題に入る。巧みな演出だ。イライザが出合った生き物は、実験対象としてアマゾンで捕獲された。生き物に過酷な仕打ちをするエリート軍人のストリックランド(マイケル・シャノン)、研究チームの新任ホフストラー博士(マイケル・スタールバーグ)は、イライザや清掃員の同僚ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)を厳しく見張っている。イライザはすきを狙って研究室に忍び込み、生き物と交流を始める。

 人間と異生物と友情といえばスピルバーグ監督の「E.T.」(82)を思い出す。今回は友情より難易度の高い愛情だ。監督はファンタジーの魔法を使い、生き物を知能ある神秘的な存在に位置付け、主人公の孤独な心を埋める様子を描いた。

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 イライザは話せないため、生き物と手話でやり取りする。ゆで卵や音楽で親密になる過程が、違和感なく描かれる。ホーキンスはほぼセリフがないが、内面からにじみ出る感情表現が秀逸だ。イライザの代弁者となる勝気な相棒のゼルダを演じたスペンサー。隣人でよき理解者のジャイルズを演じたリチャード・ジェンキンス。悪役を一手に引き受けたストリックランド役のシャノン。デル・トロ作品の常連で数々のクリーチャーを演じた生き物役のジョーンズが、スーツアクターとして素晴らしい演技を見せている。

 動きを止めない流麗な映像、琴線に触れるシンプルな音楽。ダーク路線から一皮むけた監督が、新たな一面を見せる愛の物語だ。

(文・藤枝正稔)

「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年、米国)

監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ

2018年3月1日(木)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/

作品写真:(C)2017 Twentieth Century Fox
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2018年02月21日

「The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ」ソフィア・コッポラ監督、女性心理を深く繊細に

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 南北戦争3年目の1864年、米南部のバージニア州。世間から隔絶された女子寄宿学校に、美しい女性7人が暮らしていた。ある日、負傷した北軍の兵士に遭遇し、運んできて手当てをする。紳士的な兵士に、女性たちは心奪われていく──。

 1971年、クリント・イーストウッド主演、ドン・シーゲル監督で映画化された「白い肌の異常な夜」と同じトーマス・カリナンの原作を、ソフィア・コッポラ監督が女性の視点で描き直した。2017年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞している。

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 男子禁制の女の園を仕切るのは、園長のミス・マーサ(ニコール・キッドマン)だ。教師エドウィナ(キルスティン・ダンスト)は、好奇心旺盛なアリシア(エル・ファニング)ら女子生徒5人と暮らしている。ある日、生徒がキノコ採りに出かけ、負傷した敵軍のマクバニー伍長(コリン・ファレル)を連れ帰る。

 「白い肌の異常な夜」は、登場人物の内なる声を使い、夢や幻想を使ったスリラーだった。マクバニーは女性たちを女として見ており、男性の観客に向けて作られた印象があった。

 一方、「ビガイルド」では、女性たちがマクバニーに色めき立ち、おしゃれを始めるなど、女性心理を掘り下げている。濃密な雰囲気だった「白い肌」に比べ、シンブルでストレートな印象だ。自然光、ろうそくの光など照明を重視。手作りのドレスには「マリー・アントワネット」(06)にも共通する監督のこだわりが見える。

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 マクバニー役のファレルは、イーストウッドに比べて小粒の印象。逆に堂々たる風格のキッドマン、ダンスト、今が旬のファニング。女優は適材適所で愛憎劇を盛り上げる。シーゲル監督が「ダーティハリー」(71)と同年に作った「白い肌」と対照的に、寡黙で繊細な女性の心を見つめ、静かに観客の心に刺さるスリラーとなった。

(文・藤枝正稔)

「The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ」(2017年、米国)

監督:ソフィア・コッポラ
出演:コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、キルステン・ダンスト、エル・ファニング、オオーナ・ローレンス

2018年2月23日(金)、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://beguiled.jp/

作品写真:(C)2017 Focus Features LLC All Rights Reserved

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2018年01月28日

「ザ・リング リバース」人気ホラー米国版シリーズ最新作 “呪いのビデオ”も技術的進化

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「見た者は7日後に必ず死ぬ」“呪いのビデオ”。呪われたら恐怖の奈落へ突き落とされ、恐ろしい形相で亡くなるという。恋人のホルト(アレックス・ロー)の身代わりでビデオを見てしまったジュリア(マチルダ・ルッソ)の周辺で、奇妙な出来事が起こり始める。助かる方法は1つ。「ビデオのコピーを取り、誰かに見せること」だった。監督は「リング」シリーズの大ファンを自称するスペインの新星、F・ハビエル・グティエレス。

 鈴木光司の小説を映画化した「リング」(98)の米リメイク版「ザ・リング」(02)シリーズの第3弾だ。1998年にスタートした日本版シリーズは、同時上映の続編「らせん」(98)、別次元で描いた続編「リング2」(99)、前日譚「リング0 バースデイ」(00)でいったん終了した。

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 2002年に米国版の「ザ・リング」が製作され、海外版の貞子の名前は“サマラ”として大ヒット。続編「ザ・リング2」(05)は日本版「リング」の中田秀夫監督を招いて製作。休止していた日本版も「貞子3D」(12)、「貞子3D2」(13)として復活。16年には貞子と並ぶ「呪怨」の人気ホラーキャラ“伽椰子”が対決する「貞子VS伽椰子」が番外編的に製作された。

 さらに、今回満を持して製作されたのが「ザ・リング リバース」だ。米国版シリーズ第3弾として、12年ぶりに製作された。前2作とは直接関連はなく、呪いのビデオにまつわる新たなる物語で、呪いのビデオのルールを知っていれば誰でも楽しめる。

 呪いのビデオの映像は「ザ・リング」と全く同じ。アナログのVHSビデオテープでスタートした“呪いのビデオ”は、機材の進歩によりパソコンで複製され、ネット動画として拡散する。パソコン、スマートフォン、液晶テレビなど、あらゆる機材で再生された“サマラの呪い”が拡散していく。ビデオテープとブラウン管テレビで呪いが成立した旧世代とは比べ物にならない爆発的な威力だ。

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 そんな“呪いのビデオ”を、大学内で秘かに研究する大学教授と学生たちが、次々とサマラの呪いに感染していく。サマラの呪いの原点を探り、感染を食い止めようとするホルトとジュリア。シリーズの正統的な構成に新たな解釈も加わった。呪いのビデオを見てしまったジュリアが、ビデオの影響で幻覚を何度も見る。断片的な幻覚はサマラの謎を解くイメージのようだ。

 12年ぶりに米国で復活した「ザ・リング リバース」。「リング」シリーズの恐怖を継承しながら、プラスアルファを加えた正統的作風が好印象だ。おなじみの“呪いのビデオ”と“サマラ”の安定した恐怖は健在で、時代に合わせた解釈も不自然さはない。VHSテープだけでは再生不可能だった場所で、呪いのビデオは猛威を振るい、新たな映像表現と恐怖を生み出した。

 「マグニフィセント・セブン」(16)の好演も記憶に新しいヴィンセント・ドノフリオが、物語の鍵を握る重要な役で出演している。

(文・藤枝正稔)

「ザ・リング リバース」(2017年、米)

監督:F・ハビエル・グティエレス
出演:マティルダ・ラッツ、アレックス・ロー、ジョニー・ガレッキ、ビンセント・ドノフリオ、エイミー・ティーガーデン

2018年1月28日、TOHO シネマズ新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://thering-movie.jp/

作品写真:(c)2017 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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2017年11月17日

「KUBO クボ 二本の弦の秘密」ハリウッドが描いた「日本」アニメ 豪華声優陣

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 三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操る……不思議な力を持つ少年・クボ。サムライだった父親を闇の力に奪われ、追っ手を振り切り母と暮していたが、ついに居所を突き止められ、母を亡くしてしまう。闇の力に打ち勝つ道は、三種の神器を探すこと。毒舌だが面倒見の良いサルと、ノリは軽いが弓の名手・クワガタを仲間に旅を続けるクボ。やがて自分が執拗に追われる理由が、最愛の母が犯した悲しい罪にあると知る──。

 「コララインとボタンの魔女」(09)を製作したスタジオ「ライカ」が古き日本を舞台に作ったストップモーション・アニメ映画だ。声の出演が豪華。シャーリーズ・セロン、レイフ・ファインズ、マシュー・マコノヒーら主役級俳優が命を吹き込んだ。「ライカ」を経営するトラヴィス・ナイトの監督デビュー作。

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 黒澤明、宮崎駿監督作品のファンで、日本マニアの監督が選んだ「古き日本」が舞台。キャラクター達は着物姿で盆踊り。灯篭流し、刀など日本文化を徹底的にリサーチして取り入れている。クボは三味線を演奏し、音色は魔法のように折り紙を操り、さまざまな物を作り出す。米国人スタッフのフィルターを通し、日本文化が描かれると不思議な感触だ。

 米国製CGアニメではよく、動物やおもちゃが擬人化される。今回クボが三種の神器を探す旅にも、侍姿の折り紙、擬人化されたサルとクワガタがお供する。子どものクボにとって家族のように頼もしい存在だ。一方、人間のキャラクターデザインは、どうしても米国人の目を通した日本のせいか、一部中国風になっていて惜しい。

 ストップモーション・アニメの歴史は古い。1933年製作「キングコング」を筆頭に、レイ・ハリーハウゼンが特撮を手掛けた「アルゴ探検隊の大冒険」(63)は、その後の映画作家たちに多大な影響を与えた。最近ではティム・バートンが製作した「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(93)が有名だ。

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 「クボ 二本の弦の秘密」はCGアニメ全盛のハリウッドの流れに逆行する様に、一コマずつ人形を動かして撮影。手間ひまかかるストップモーションの長編映画。製作期間94週間を経て完成映像は見事のひとこと。日本文化が米国に渡り、精神を受け継いだクリエイターたちが、画面の隅々まで丹精込めて作り上げた。大人にも楽しんでもらいたいファンタジー映画だ。

(文・藤枝正稔)

「KUBO クボ 二本の弦の秘密」(2016年、米国)

監督:トラビス・ナイト
声の出演:アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラ、レイフ・ファインズ

2017年11月18日(土)新宿バルト9ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/kubo/

作品写真:(c)(C)2016 TWO STRINGS, LLC. All Rights Reserved.

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2017年11月09日

「ザ・サークル」SNSの光と影 監視社会を予言するサスペンス エマ・ワトソン×トム・ハンクス

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 世界で30億人が利用する巨大SNS(交流サイト)「サークル」。運営主体の最先端企業に採用された新人社員メイ(エマ・ワトソン)は、ある事件をきっかけにカリスマ経営者・ベイリー(トム・ハンクス)の目に止まり、新サービスの実験モデルに抜擢される。

 ベイリーは「隠しごとは罪だ。すべてさらけ出せば、世界はもっと良くなる」という理想を掲げていた。メイはベイリーの指示で、自分の生活を24時間ネットに公開。瞬く間に1000万人を超えるフォロワーを獲得し、アイドル的存在になる──。

 デイブ・エガーズの同名原作小説を、エガーズ本人と「人生はローリングストーン」(15、未公開)のジェームズ・ポンソルト監督が共同で脚本化し、映像化したサスペンスだ。

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 ある個人をカメラで24時間監視し、公開する映画といえば、ジム・キャリー主演「トゥルーマン・ショー」(98)が有名だ。19年前の作品だけにテレビ放送など大掛かりな仕掛けだった。今回は球体の超小型カメラで撮影し、SNSでライブ配信する。現代らしいリアルな設定だ。

 社会を「透明化」する名目で、個人の生活を24時間ライブ配信する新サービス「シーチェンジ」。実験者になったメイは、トイレに行く時間を除く一挙一動を公開するが、やがて心は徐々にむしばまれていく。

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 「シーチェンジ」はその後、全人類を透明化する新サービス「ソウルサーチ」に発展。あらゆる場所に設置した監視カメラで、犯罪者の居所まで突き止めようとする。運営企業の「サークル」は暴走を始め、思わぬ悲劇を招いてしまう。「迷惑ユーチューバー」や過剰な「インスタ映え」が話題になる現実に合致した描写だろう。

 「ハリー・ポッター」シリーズのハーマイオニー、「美女と野獣」(17)のベルなど、ファンタジックなヒロインを演じてきたエマ・ワトソン。今回は24歳の女性会社員を等身大で好演する。すっかり貫禄のついたトム・ハンクスは、謎めいた経営者を器用に演じた。ジェームズ・キャメロン監督作品の常連俳優、ビル・パクストンの遺作にもなった。

(文・藤枝正稔)

「ザ・サークル」(2017年、米国)

監督:ジェームズ・ポンソルト
出演:エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボヤーガ、カレン・ギラン、エラー・コルトレーン

2017年11月10日(金)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/circle/

作品写真:(C)2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 21:33 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする