2017年05月20日

「家族はつらいよ2」舞台あいさつ 山田洋次監督ファミリー喜劇続編「本当の家族のように」

IMG_2175_1.JPG

 山田洋次監督のファミリー喜劇「家族はつらいよ2」の完成披露試写会がこのほど東京都内であり、出演した橋爪功、吉行和子、西村雅彦、妻夫木聡、蒼井優ら出席した。

 熟年離婚をテーマにした前作「家族はつらいよ」(16)の続編。離婚の危機を乗り越えた平田家の人々が、ある人の「死」を通じて起こす騒動と絆を描くコメディーだ。舞台挨拶でもキャストは本当の家族のよう。和気あいあいとした雰囲気で盛り上がった。

IMG_1917_1.JPG

 山田監督は「とうとうこの日が来たな、という思い。全国のたくさんの人たちに見てほしい」とあいさつ。橋爪は「監督からパート2を作ると聞いた時、うれしかった。本当に幸せ。1作目どころではなく面白い。楽しんで」と自信をのぞかせた。

 林家正蔵が「監督の厳しい演技指導にやりがいを感じた。でも監督より怖いのが蒼井優さん。悪魔に近いような(笑)。とにかく楽しい。家族っていいな、と思う映画」と話すと、すかさず蒼井の夫を演じた妻夫木が「うちの嫁がご迷惑をおかけしてすみません」とフォロー。「(キャスト)それぞれの役割が広がり、面白味が増している。大いに笑って楽しんで」と呼びかけた。

IMG_2104_1.JPG IMG_1994_1.JPG

 前作では妻夫木の恋人役で登場した蒼井は、今回「私も家族になりました」。「リラックスして話せるのも、続編をやらせてもらったから」と感謝。「(山田監督の)『東京家族』(13)でこのメンバーが一つの家族を作り、『またやりたいね』と話してできたのが前作。俳優さんを回を重ねるごとに楽しく、中身も良くなっていくように思えた。親戚がまた集まったようで嬉しかった」と話した。「平田家」の雰囲気そのままに、笑いの絶えない舞台あいさつとなった。

(文・写真 岩渕弘美)

kazoku_main.jpg

「家族はつらいよ2」(2017年、日本)

監督:山田洋次
出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、妻夫木聡、蒼井優、林家正蔵

2017年5月27日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kazoku-tsuraiyo.jp/

作品写真:(C)2017「家族はつらいよ2」製作委員会

posted by 映画の森 at 12:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月16日

「夜明け告げるルーのうた」心を閉ざした少年、島で人魚の少女に出会う 繊細で躍動的な青春アニメ

yo_main.jpg

 さびれた港町・日無町(ひなしちょう)に住む中学生の少年カイ(声:下田翔大)は、父と祖母の3人暮らし。両親の離婚で東京から引っ越してきた。親への複雑な思いを抱え、学校生活にも後ろ向きのカイ。ある日、同級生に「バンドに入らないか」と誘われ、練習場所の島へ行くと、人魚の少女ルー(谷花音)が現れた──。

 先月公開されたアニメーション映画「夜は短し歩けよ乙女」(17)を監督した湯浅政明が、初めて取り組んだ完全オリジナルの劇場用長編アニメだ。「マインド・ゲーム」(04)、「四畳半神話大系」(10)、「ピンポン THE ANIMATION」(14)など個性的な作風の湯浅。今回は人間の少年と人魚の少女の出会いを繊細に描く。

yo_sub1.jpg

 海に面した町を舞台に、少年が人魚に出会い、町の人々を巻き込む騒動を起こしながら、成長していく。甘酸っぱいジュブナイル(少年少女)作品だ。未知なる生物と少年の邂逅といえばスティーブン・スピルバーグ監督「E.T.」(82)を思い出す。が、今回の“生物”はかわいい人魚。片言だが話すこともでき、音楽を聴くと尾びれが二本足に。よちよち歩く子どものようだ。物語の主眼はカイの心の解放に置かれている。

 “ボーイ・ミーツ・ガール”の王道に、湯浅監督得意の疾走する躍動感が合わさっている。宮崎駿監督率いる「スタジオジブリ」作品に対抗できるクオリティーだ。キャラクターの随所にジブリ作品の影響を感じさせる部分があり興味深い。

yo_sub2.jpg

 親の離婚で心を閉ざした少年が、天真爛漫な人魚に寄せる初恋にも似た感情。心の動きが丁寧に、繊細に描かれる一方、“湯浅節”と呼ばれる躍動感が心地よく響く。細部まで精密に描き込まれた背景と相反するように、キャラクターは極端にデフォルメされ、ユニークだ。ジブリ作品と一線を画して見事。独創的な水の表現、レトロなダンスシーン。監督の魅力とアイデアが凝縮し、大人から子どもまで楽しめる作品に仕上がった。

「夜明け告げるルーのうた」(2017年、日本)

監督:湯浅政明
声の出演:谷花音、下田翔大、篠原信一、柄本明、斉藤壮馬

2017年5月19日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://lunouta.com/

作品写真:(C)2017ルー製作委員会

posted by 映画の森 at 10:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月07日

「八重子のハミング」病を抱えた夫妻、喜びと苦難の12年 佐々部清監督渾身の自主映画

yae_main.jpg

 4度のがん手術から生還した夫が、若年性アルツハイマー病の妻を介護した記録「八重子のハミング」。陽信孝の同名原作を「半落ち」(04)、「夕凪の街、桜の国」(07)の佐々部清が監督。大手映画会社の出資を受けず脚本、製作も兼ねて完成させた自主製作映画だ。ベテラン俳優の升毅が映画初主演。「サンダカン八番娼館 望郷」(74)などに出演後、作家に転身した高橋洋子の28年ぶりの映画女優復帰作である。

 舞台は山口県。実在の八重子さんが好きだった場所でロケ撮影したという。幕開けは街が見渡せる高台の風景。石橋夫妻が覚悟を決めたような表情でたたずんでおり、一瞬不安がよぎる。時と場所は変わり、白髪の誠吾(升)が妻の介護について講演している。テーマは「やさしさの心って何?」。妻の八重子(高橋)との思い出が回想シーンとなり、夫婦と家族の12年が過去と現在を交差して描かれる。

yae_sub1.jpg

 夫のがんに妻のアルツハイマー症。重く難しいテーマだ。しかし、夫婦の苦難を丁寧に回想する一方、老いた誠吾が講演会で過去の出来事をユーモラスに話す様子や、心温まるエピソードに救われる。バランスをうまく取った演出と構成だ。

 自分も病に苦しむ誠吾が、次第に「赤ちゃん返り」する妻に優しく接する。排便など映像として見せるのが難しいシーンは、誠吾の講演会での話術で乗り切る。升の柔軟な演技が作品を引っ張る。物語の中心になる八重子役の高橋が、復帰作でこんな難役を演じ切ったことに心打たれた。高橋はデビュー作「旅の重さ」(72)の無垢な家出少女が印象深い。今回は教師同士の夫妻が出会った若き日から、病で天真爛漫になった晩年まで魅力的に演じた。

yae_sub2.jpg

 がん、闘病、若年性アルツハイマー病、介護、老い、死。ネガティブな要素を真正面から描く一方、夫妻が友人や家族に見守られつつ、困難を乗り越える過程をバランス良く描いた。一歩間違えればつらい作品になる恐れがあったが、重い部分は浄化させて夫婦愛に焦点をしぼった。佐々部監督渾身の1本だ。

(文・藤枝正稔)

「八重子のハミング」(2016年、日本)

監督:佐々部清
出演:升毅、高橋洋子、文音、中村優一、安倍萌生

2016年5月6日(土)、有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://yaeko-humming.jp/

作品写真:(C)Team「八重子のハミング」

posted by 映画の森 at 09:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月26日

「イップ・マン 継承」ドニー・イェンのアクション炸裂、人気シリーズ最新作 タイソンと真っ向勝負

ip_main.jpg

 香港のアクションスター、ドニー・イェン主演の人気シリーズ最新作「イップ・マン 継承」。伝説のカンフースター、ブルース・リーが唯一師と仰いだ「詠春拳(えいしゅんけん)」の達人、イップ・マンの生涯を描く。敵役でボクシングの元ヘビー級世界チャンピオン、マイク・タイソンが出演している。

 監督は前2作「イップ・マン 序章」(08)、「イップ・マン 葉問」(10)に続いてウィルソン・イップ。アクション監督はサモ・ハンに代わり、ハリウッド映画「マトリックス」シリーズなどのユエン・ウーピンだ。音楽は押井守監督作品で知られる川井憲次。シリーズを通して素晴らしいスコアを披露している。

ip_sub1.jpg

 1959年、香港。街は好景気に沸く一方、治安は悪化し、無法地帯になりつつあった。裏社会を牛耳る不動産王フランク(タイソン)の前にイップ・マン(イェン)は立ち上がる。だがそれは、自分の家族も命の危険にさらす危ない賭けだった。

 イップ・マンを語るうえで欠かせない、弟子ブルース・リーとの師弟関係。幕開けに若き日の2人のユーモラスで切れのよい妙技が披露される。リー役はチャウ・シンチー監督、主演の「少林サッカー」(01)でそっくりさん役を演じたチャック・クォックワンだ。

 ドニー・イェンと二人三脚でシリーズを作ってきた監督によると、テーマは第1作が「生存」、第2作が「生活」、今回が「生命」。イップ・マンの人生を支える妻ウィンシン(リン・ホン)の存在がクローズアップされる。夫妻の息子が通う小学校がフランクに狙われる一方、詠春拳の正当性をめぐって息子の同級生の父チョン(マックス・チャン)と対立する。

ip_sub2.jpg

 普段は物静かで優しい男が、いざ格闘となると瞬殺で敵をなぎ倒す。静と動の対比で人物像を際立たせる。シリーズ恒例になった大勢の敵との格闘シーン。ボクシングと詠春拳の異種格闘技対決。変化球的な迫力が合わさった名場面となった。

 そしてチョンとの詠春拳での真っ向勝負。技と技のぶつかり合いは、ドニー・イェンのスタント担当だったマックス・チャンが、師匠に挑む様子を見るようだ。作品のところどころで使われるワイヤーに、アクション監督ウーピンの職人技を感じる。

 一方、病に伏せる妻との夫婦愛描写に多くの時間を費やし、ドラマに深みを与えた。狭いエレベーターで襲われ、身を挺して妻を守る姿や、ダンス教室で仲睦まじく踊る夫妻に、夫としての優しさを見た。昨年公開されて大ヒットした「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」(16)でドニー・イェンを知ったビギナーから、古くから作品を追う熱心なファンまで、武術とドラマで満足させる作品となっている。

(文・藤枝正稔)

「イップ・マン 継承」(2015年、中国・香港)

監督:ウィルソン・イップ
出演:ドニー・イェン、リン・ホン、マックス・チャン、
マイク・タイソン、パトリック・タム

2017年4月22日(土)、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/ipman3/

作品写真:(C)2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

posted by 映画の森 at 08:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月30日

「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」ケネディ夫人の素顔 ナタリー・ポートマンが熱演

jky_main.jpg

 ジャッキーことジャクリーン・ケネディ。世界で最も有名なファーストレディーである。洗練されたファッションは世界中で流行し、華やかな生活は女性たちの憧れの的となった。だが、それはあくまで彼女の表面的なイメージに過ぎず、素顔はベールに包まれたままだった。

 「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」は、ケネディ暗殺後から葬儀までの4日間に焦点を絞り、知られざるジャッキーの実像に光をあてた作品である。ジャッキーを取材するジャーナリスト、ケネディの弟ロバート、秘書のナンシー、悩みを打ち明ける神父。さまざまな人々との対話や交流を通して、試練に立ち向かう姿を描き出していく。

jky_sub1.jpg

 劇中、ジャッキーがホワイトハウス内を案内するテレビ番組の映像が挿入される。そこには紛れもない本物のジャッキーが映し出されているのだが、前後にジャッキー役のナタリー・ポートマンが登場しても、何ら違和感を抱かせないのは見事。

 「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(11)では、メリル・ストリープが英国初の女性宰相になりきっていた。ポートマンもアクセント、話し方、物腰、メイクに至るまで、ジャッキーを完璧にコピーしており、ストリープに負けていない。誰もが知っている人物は、いかにそっくりに演じるかが観客を引き込む上で重要だ。ポートマンの“なりきり演技”は大成功である。

 誰もが知っているといえば、ケネディ暗殺の瞬間をとらえた、あの8ミリ映像。作品では映像をさらに近距離で再現し、惨劇を生々しく伝えている。3発の銃撃のうち、2発目と3発目が命中。3発目が頭部を破壊し致命傷となった。飛び散った血はジャッキーの体に付着。シャワーを浴びるジャッキーの毛髪から血が流れ落ちるシーンが衝撃的だ。

jky_sub2.jpg

 「最初の銃声が響いた時、夫をかばえば次の銃撃を避けることができたかもしれない」。ジャッキーは後悔の念を語る。マリリン・モンローをはじめ女性関係が派手だったケネディ。浮気をめぐってジャッキーとはけんかが絶えなかったとも聞く。決して円満な関係ではなかった。夫を守れなかったのではなく、守らなかったのではないか。ついそんな想像をしてしまうのは、5年後にケネディとはまったくタイプの異なる大富豪と再婚してしまったことを知っているからだ。

 夫婦としてはうまくいかなかった。しかし、大統領とファーストレディとしてみれば、完璧なカップルだった。「リンカーンの葬儀に劣らぬ美しい葬礼を」。最後のミッションを完遂すべく、ジャッキーは毅然たる一歩を踏み出すのである。

(文・沢宮亘理)

「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」(2016、米国・チリ・フランス)

監督:パブロ・ラライン
出演:ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、ビリー・クラダップ、ジョン・ハート

2017年3月31日(金)、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://jackie-movie.jp/

作品写真:(c)2016 Jackie Productions Limited
posted by 映画の森 at 12:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする