2018年04月04日

「ミスミソウ」壮絶ないじめ、復讐の鬼と化した少女 「実写不可能」漫画を切れ味鋭く

1.jpg

 東京から田舎の中学校に転校した野咲春花(山田杏奈)は、“部外者”として壮絶ないじめを受けていた。春花の唯一の味方は、同じ転校生の相場晄(清水尋也)。彼を心の支えに必死に耐える春花だが、クラスの女王的な小黒妙子(大谷凛花)の取り巻きによる嫌がらせは加速していった──。

 「実写化不可能」と言われた押切蓮介原作の漫画の映画化だ。監督は「先生を流産させる会」(11)の内藤瑛亮。

 雪に覆われた過疎の町で、春花に対する陰湿ないじめがエスカレートする。グループが春花の家に放火し、両親を殺し、小学生の妹を全身やけどにしたことで、春花は復讐の鬼と化す。

2.jpg

 特定人物に対する妬みや嫉妬が悪循環となり、いじめへ発展するメカニズムが焦点だ。発端はいじめの首謀者・妙子の春花に対する妬みだった。晄に好意を寄せる妙子だが、晄が好きなのは春花だ。妙子の嫉妬は刃となり春花に向かう。

 一方、担任の森京子(奥田亜紀)は、学生時代にいじめられた経験から、自分のクラスのいじめには無関心。春花が転校してくる前にいじめられていた佐山流美(大塚れな)は、新たなターゲットになった春花を見て、「また自分が狙われるのでは」とびくびくしている。そんな流美の恐怖心が野咲家の放火殺人事件へ発展していく。

3.jpg

 「先生を流産させる会」では、実際に起きた事件を題材に、多感な少女たちの危うい心理を鋭く描いた内藤監督。今回は「実写化不可能」な漫画を忠実に実写化。ネガティブな要素を妥協せず描いた。

 中学生の無邪気で残酷な悪意。復讐する春花の行為はホラー映画的だ。眼球を釘で刺す描写は、東映映画の「女囚701号さそり」(72)を思わせる。子どもの復讐は田舎町を血で染め上げ、大人たちはうろたえるばかり。絶望的な風景がナイフのように切れ味鋭い演出で切り取られる。

(文・藤枝正稔)

「ミスミソウ」(2017年、日本)

監督:内藤瑛亮
出演:山田杏奈、清水尋也、大谷凜香、大塚れな、中田青渚

2018年4月7日(土)、新宿バルト9ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://misumisou-movie.com/

作品写真:(C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会

タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 20:00 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月28日

復活11回目のゆうばり映画祭、「出会いの場」として盛況のうち幕

1.jpg

 北海道夕張市で3月15日から19日まで開かれた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」は昨年をやや上回る1万2522人を動員した。例年同様に多くの映画人が集い、映画ざんまいの5日間を過ごした。市の財政破たんによる中断を経て復活してから今年で11回目。会場の選定やスポンサーの確保などでは手探りが続く中、「出会いの場」としての映画祭は盛況のうちに幕を閉じた。

 期間中は国内外の長短編約110本を上映。メーンのコンペ部門、ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門はグランプリに「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」(西口洸監督)を選出した。大阪芸術大学を卒業後、同大学で機材係として働きながら映画製作を続ける西口監督は、「学生時代は“いけてない方”だった。賞を取れるとは思っていなかったがうれしい」と、控えめに喜びを語った。審査委員長の瀬々敬久監督は審査が最後までもつれたことを明かしつつ、「(グランプリ作は)弱者への目配りや優しさを持っている点がよかった」と評した。

2.jpg

 これに先立つ15日のオープニングセレモニーで発表された期待の映画人を選定する「京楽ピクチャーズ.PRESENTS ニューウェーブアワード」は、俳優部門で葉山奨之と川栄李奈が受賞。葉山は「日本映画界に必要とされる俳優を目指して精進したい」とコメントした。クリエーター部門は、脚本家としてキャリアを積み、このほど長編アニメーション「さよならの朝に約束の花をかざろう」で監督デビューした岡田麿里が受賞した。

 今年の映画祭は昨年より半月遅く始まった。オープニング当日は気温が上がり、雪景色の夕張にも雨が降った。真冬の開催にこだわってきたゆうばり映画祭。運営に長年携わるスタッフは「期間中に雨が降るなんて初めてのこと」とつぶやいた。

3.jpg

 開催時期の変更は、市内の宿泊施設とスキー場の経営権所有者が変わったためだ。売却先を探していた施設を東京の不動産会社が昨年買収し、中華圏のスキー客誘致を優先する方向に転換した。夕張の3月はまだスキーのハイシーズン。書き入れ時に映画祭があると集客に響くとの判断があったのだろう。

 参加者の立場に立てば、映画祭に向かう交通手段が年々不便になっていることが気にかかる。夕張は公共交通の衰退が著しい。この冬は新千歳空港と市内スキー場を結ぶバスが廃止され、JR石勝線夕張支線の廃止も決まった。

 夕張を取り巻く厳しい状況が映画祭にも影響を及ぼすなか、今年は上映会場を合宿施設「ひまわり」に集約したほか、札幌市内にサテライト会場を開設するなど新しい取り組みが目を引いた。映画祭が30回目となる2020年を見据え、関係者の模索が続いている。

(文・写真 芳賀恵)

<受賞作>

・ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門

グランプリ 「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」(西口洸監督)

審査員特別賞「温泉しかばね芸者」(鳴瀬聖人監督)

北海道知事賞「キュクロプス」(大庭功睦監督)

シネガーアワード(批評家賞)「キュクロプス」(大庭功睦監督)

・インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門

グランプリ 「ぱん。」阪元裕吾監督・辻凪子監督

優秀芸術賞 「NO LINE」(川中陸監督)

      「父の日」マット・ジョンズ監督

      「Black Dog」ジョシュア・ディーン・タットヒル監督

・アニメーション企画優秀賞

「ドントクライ」(高嶋友也監督)

・その他

ゆうばりファンタランド大賞(観客賞)「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)

写真
1:参加者によるフォトセッション
2:ファンタスティック・オフシアター・コンペティション グランプリ「EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)」の西口洸監督(右)と瀬々敬久審査委員長
3:ニューウェーブアワードを受賞した(左から)葉山奨之、川栄李奈、岡田麿里監督
posted by 映画の森 at 23:16 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月21日

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」佐藤健、大ヒット御礼舞台挨拶「上映されている時間が幸せ」

1606.JPG

 「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の大ヒット御礼舞台挨拶がこのほど東京都内で開かれ、主演の佐藤健が出席した。佐藤は「素敵な物語をそのまま伝えることができれば、感動してもらえるし、映画もヒットする」と話した。

 佐藤はこの日、客席から登場。観客から「おめでとう」とヒットを祝う声がかかり、「うれしかった」と感動した様子を見せた。もとになったのは動画サイト「YouTube」の映像が話題になり、書籍化された実話。土屋太鳳との主演で映画化された。

1649.JPG

 佐藤は「(原作の主人公である)尚志さんと麻衣さんが素敵な奇跡を起こしてくれたおかげ。改めて感謝を伝えたい」と語った。

 また、第41回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を受賞したことに「役者の力はちっぽけなもの。どんな作品、役に出合い、どんなクリエイターと仕事をするかで生かされもするし、その逆もある。今回は瀬々監督のおかげだと思っている」と話した。

1577.JPG

 さらに、相手役の土屋も優秀主演女優賞を獲得。W受賞になったことに「賞を獲っても驚かない力を持っている。出会いがあれば今回のような素敵なことが起こるとずっと思っていた」と称えた。

 最後に「この映画が上映されているこの時間が、とても幸せ。少しでも続けばいいと思う。映画を応援、愛して下さって感謝しています」と話し、舞台挨拶をしめくくった。

(写真・文 岩渕弘美)

2.jpg

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2017年、日本)

監督:瀬々敬久
出演:佐藤健、土屋太鳳、北村一輝、浜野謙太、中村ゆり

全国公開中。作品の詳細は公式サイトまで。

http://8nengoshi.jp/#/boards/8nengoshi

作品写真:(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会
posted by 映画の森 at 12:29 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月08日

「サニー 32」実際の事件モチーフに 白石和彌監督の犯罪サスペンス

1.jpg

 「ずっと会いたかったよ、サニー……」。そう言って柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)は女性を拉致し、雪深い山の廃屋に監禁した。連れ去られたのは24歳の中学校教師・藤井赤理(北原里英)。「サニー」は「史上最も可愛い殺人犯」と呼ばれた11歳の少女の名で、ネットで神格化されていた。柏原と小田はサニーの狂信的な信者だった──。

 アイドルグループ「NGT48」から卒業を発表した北原里英が映画初主演。俳優やスタッフは白石和彌監督の「凶悪」(13)のメンバー再集結。脚本・高橋泉、主演のピエール瀧、リリー・フランキーで、衝撃的なサスペンス映画だ。

3.jpg

 まずは「サニー事件」の説明から始まる。11歳の小学生女児が、同級生の女児の首をカッターナイフで切り付けて殺害した。加害者少女のかわいい容姿、3本指と2本指の決めポーズから“32=サニー”と名付けられ、ネットで神格化された。事件から14年。狂信的サニー・ファンの柏原と小田は、女性を拉致監禁する。

 「サニー 32」は、北原主演のアイドル映画を装っているが、紛れもなく白石監督による犯罪映画の流れをくむ。監禁には途中から参加者も増え、予想外のいざこざも発生。監禁場所が何者かに突き止められたため、廃屋から海の家に女性を移す。集団心理は悪い方向に動き、「自己批判」や「集団リンチ」などの陰惨な暴力にエスカレートしていく。

2.jpg

 そんな中、ごく一般的な女性だった藤井が「サニー」と祭られて教祖へと神格化していく。監督と脚本家は1970年代以降に起きた実際の凶悪事件をなぞりながら、新たなドラマとして再構築した。

 作品のスーパーバイザーを務めた秋元康が要求した「北原主演映画を撮る」ことから企画が始まったという。白石作品ファンの北原は、劇中の藤井のように、白石組に放り込まれ、一皮むけた演技を見せる。ピエール瀧とリリー・フランキーの立場は「凶悪」と逆。力関係が面白い。

 中学生のいじめ、ネットの闇などさまざまなネタを使い、現代社会の暗部を大胆に料理した。白石組のぶれない姿勢が素晴らしい。アイドル映画と経験するのも、うっかり手を出すのも難しい。実際の事件をモチーフにした衝撃の犯罪サスペンスだ。

(文・藤枝正稔)

「サニー 32」

監督:白石和彌
出演:北原里英、ピエール瀧、門脇麦、リリー・フランキー、駿河太郎

2018年2月17日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://movie-32.jp/

作品写真:(C)2018「サニー 32」製作委員会
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 15:48 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月04日

ゆうばり映画祭がラインアップ発表 オープニングは「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」

180202yubari.jpg

 2018年3月15日〜19日に開かれる北海道夕張市の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」は2日に札幌市内で記者会見を開き、ラインアップを発表した。オープニング作品はジェイク・カスダン監督の「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」。1995年に公開された「ジュマンジ」の続編で、ビデオゲームの中に閉じ込められた高校生たちの冒険を描く。期間中は市内の「合宿の宿ひまわり」をメーン会場に、計114件の映画上映とイベントが行われる。

 招待作品部門はオープニング作品のほか、実話を元にしたインド映画「ダンガル きっと、つよくなる」、米国の日系三世監督スティーブン・オカザキが三船敏郎の映画人生に迫るドキュメンタリー「MIFUNE:THE LAST SAMURAI」など5本を上映する。

シ_ュマンシ_.jpg

 新人監督を発掘するファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門には計9本がノミネート。国内353本、海外103本の合計456本の応募作から日本作品7本、海外作品2本を選んだ。瀬々敬久監督を審査委員長とする5人の審査員がグランプリや審査員特別賞などを選出する。

 企画上映「HKT48×48人の映画監督たち」では、アイドルグループHKT48のメンバーひとりひとりのために48人の監督が作った短編映画の中から19本を上映。“18歳未満お断り”のセクション「フォービデンゾーン」もますますパワーアップしてお目見えする。

180202ゆうばりキービジュアル.jpg

 今年のキービジュアルは、映画監督としてゆうばりを訪れたこともあるクリエイター、宇治茶氏の「はじめての映画祭」。映画祭キャラクターの「シネガー」や夕張市のご当地キャラ「メロン熊」も登場している。

(文・芳賀恵)

<招待作品>
「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」【オープニング】
「ダンガル きっと、つよくなる」
「モリーズ・ゲーム」
「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(原題)
「MIFUNE:THE LAST SAMURAI」

写真1:映画祭関係者の記者会見後のフォトセッション
=札幌市内で2月2日、芳賀撮影

作品写真:「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」=2018年4月6日(金)公開

キービジュアル:「はじめての映画祭」宇治茶

posted by 映画の森 at 20:27 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする