2019年07月22日

「アンダー・ユア・ベッド」忍び込みのぞき見る 男のゆがんだ盲目の愛

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 雨の日のエレベーターに、香水の匂いが残る。三井(高良健吾)は11年前、一度だけ名前を呼んでくれた佐々木千尋(西川可奈子)を思い出した。人生で唯一幸せだったあの感覚に触れたくなり、千尋を探すことにする──。

 「殺人鬼を飼う女」の大石圭の同名小説を映画化。監督、脚本は「呪怨 黒い少女」(09)、「バイロケーション」(14)の安里麻里。都市伝説に「一人暮らしの女性の家のベッドの下に、見知らぬ男が潜む」があるが、それを地で行く屈折した愛情だ。

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 大学時代に一度だけ「三井くん」と呼んでくれた佐々木に淡い恋心を抱き、喫茶店で飲んだマンデリンコーヒー。飼っていたグッピーを譲る約束。甘い記憶をたぐり、探偵に住所を探させ、近所に引っ越した三井は、1階で観賞魚店を開き、2階を自宅に暮らし始める。

 店に千尋が乳母車に娘を乗せて来た。昔の輝きは失われ、やつれた様子で、三井にも気付かない。三井も名乗らず「開店祝いにグッピーと飼育キットをあげるから、餌を定期購入してほしい」と頼む。応じた千尋の家にグッピーと飼育キットを設置し、すきを見て合い鍵を盗み、外出中に侵入。ベッドに盗聴器を仕掛け、望遠レンズで見えたのは、夫・浜崎(安部賢一)の激しい暴力に耐える千尋だった。

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 「石の下に隠れる虫と同じ」と自虐的に言うように、三井はこっそり家に入り込み、ベッドの下に隠れ、千尋のぬくもりを感じて悦に入る。愛はゆがみ、狂っている。そこへ暴力に苦しむ千尋の現実が交錯。三井に真の記憶がよみがえる。

 体を張って演じた西川、妄想の愛を体現した高良。「ガチ★星」(18)の崖っぷち男から一転、凄惨なDV夫を演じた安部。限界ぎりぎりの演技を引き出した安里監督は、盲目の愛をスリリングに描き、暴力描写もいとわない。屈折した愛が暴走する。

(文・藤枝正稔)

「アンダー・ユア・ベッド」(2019年、日本)

監督:安里麻里
出演:高良健吾、西川可奈子、安部賢一、三河悠冴、三宅亮輔

2019年7月19日(金)、テアトル新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://underyourbed.jp/

作品写真:(C)2019 映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会

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2019年06月24日

「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」坂口健太郎&吉田鋼太郎、父子の絆を絶妙な呼吸で

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 インターネットのオンラインゲームを通した父と息子の絆を描いた「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」が公開中だ。東京都内でこのほど開かれた関連イベントに主演の坂口健太郎、吉田鋼太郎が参加し、撮影を振り返った。

 互いに距離ができてしまった父親と息子が、素顔を隠して人気ゲーム「ファイナルファンタジー」でつながり、ともに戦いながら絆を取り戻していく物語。実話をもとにした人気ブログの映画化だ。

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 父親を演じた吉田は「セリフの少ない寡黙なお父さん。難しい役だったが、健太郎が受け止めてくれて、いい作品ができた」と感謝。息子役の坂口は「鋼太郎さんとせりふのやり取りが少なく、せりふに頼れなかった。目があった瞬間の微妙な距離感とか、瞬間、瞬間の反応を大事にしようと思った。鋼太郎さんが父親でいてくれて(役を)構築できた」と振り返った。

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 吉田は実生活でも20代の息子の父親。「一緒にゲームを買いに行ったりした小さな時代があって、大きくなって、いつの間にか話をしなくなった。その過程が胸にぐっときた。共感できるところが多かった」と話した。

 吉田について坂口は「紳士でダンディーな印象があった。(実際には)すごくチャーミングで驚いた。一緒に芝居して、好きになっちゃう。すごいと思う」。吉田は坂口を「優しく、穏やかな好青年。芝居の集中力はすごい。せりふのやり取りがあまりない中、一言に思いを込めて返してくれる。きっちりできる俳優」と絶賛した。

(文・写真 岩渕弘美)

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「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」(2019年、日本)

監督:野口照夫(実写パート)、山本清史(ゲームパート)
出演:坂口健太郎、吉田鋼太郎、佐久間由衣、山本舞香、前原滉

2019年6月21日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/hikarinootosan/

作品写真:(c)2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会 マイディー/スクウェア・フェニックス
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2019年06月15日

「女の機嫌の直し方」男女脳の違い研究、トラブル解決 結婚式コメディー

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 大学で人工知能(AI)を研究する真島愛(早見あかり)は、「男女脳の違いによる女の機嫌の直し方」をテーマに卒業論文を執筆している。データを集めるため、結婚式場でアルバイトをスタート。上司のウェディングプランナー・青柳誠司(平岡祐太)とある結婚式を担当し、控室に顔を出すと、新郎・北澤茉莉(松井玲奈)と新郎・悠(佐伯大地)の間にトラブルの予感──。

 黒川伊保子の同名ベストセラーが原案のコメディー作品。全3回のテレビドラマを、劇場映画版として再編集した。監督は日本テレビでバラエティー番組を中心に担当する有田駿介。

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 結婚式場を舞台に、式直前にトラブルを抱えた新郎新婦。火種は招待客、新郎の母らに飛び火し、最悪な状態に陥るが、「男女脳の違い」を最新AIで研究した愛が次々と問題を解決していく。

 時間を上手に前後させ、ほぼ全編式場内だけで話を進める構成が秀逸だ。結婚式が進む様子をメーンに、トラブルの原因が回想として織り込まれる。トラブルのエピソードはそれぞれよく練られている。

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 披露宴の直前に汚れてしまったウェディングドレス。新郎の同僚・小早川梓(水沢エレナ)の突然の余興拒否。めでたい席で熟年離婚の危機に陥る新婦の叔父(金田昭雄)と叔母(原日出子)。優柔不断な新郎・悠のせいで起きる新婦・茉莉と新郎の母・晴美(朝加真由美)の女性同士のバトル。さまざまなパターンで男女脳の違いを示す。

 バラエティー番組で培われた有田監督の演出は、ツボを押さえて小気味良く、笑いと涙のバランスもいい。アイドルグループ「ももクロ」の早見あかり、「SKE48」の松井玲奈が、女優としてめざましい成長を見せる。朝加真由美、原日出子、金田明夫らベテランがドラマをうまく引き締めている。

(文・藤枝正稔)

「女の機嫌の直し方」(2019年、日本)

監督:有田駿介
出演:早見あかり、平岡祐太、松井玲奈、佐伯大地、水沢エレナ

2019年6月15日(土)、ユナイテッドシネマアクアシティ台場ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kigen-movie.official-movie.com/

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2019年05月21日

「貞子」中田秀夫監督、14年ぶりに貞子の恐怖を描く 「リング」シリーズ原点回帰

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 心理カウンセラーの秋川菜優(池田エライザ)のもとに、記憶喪失の少女が入院してくる。少女は、1週間前の公営団地放火事件の容疑者・祖父江初子(ともさかりえ)が、人知れず生み育てた子供だった。少女と真摯に向き合う菜優だったが、次第に周囲で奇妙なことが起き始める──。

 鈴木光司原作の映画「リング」シリーズ最新作「貞子」。「リング」(98)、「リング2」(99)、ハリウッド版「ザ・リング2」(05)の中田秀夫監督が14年ぶりに貞子の恐怖を描いた。原作は鈴木の「タイド」だが、映画版はほぼオリジナルストーリー。

 「そのビデオ映像を見た者は7日後に死ぬ」。都市伝説「呪いのビデオ」の恐怖を描いた「リング」シリーズ。時代が進み映像技術は進歩し、ビデオは姿を消して動画配信へ変化。「撮ったら呪われる」に変わった。さらに「見た7日後に死ぬ」もなくなり、一度貞子に見入られた者は死から逃れられない。呪いの「新ルール」のもとで物語は展開する。

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 注目すべきは中田監督の帰還に加え、「リング」、「リング2」で貞子の呪いを逃れた佐藤仁美が、同じ倉橋雅美役で20年ぶりに登場したことだ。「リング2」で雅美は呪いから逃れたものの、精神を病んで病院に幽閉された。今回は雅美のその後が描かれる。高校生だった雅美は中年になり、病院の心理カウンセラー・菜優に執着。ストーカー患者として現れる。新作が旧作とリンクする仕掛けだ。

 さらに、貞子と対になる少女(姫嶋ひめか)が登場する。放火事件で助かった少女は、貞子と同様に戸籍がなく、名前も言えぬ記憶障害。怒りの力で物を動かす超能力・テレキネシスを持っていた。怒りの念力で人を殺す子ども時代の貞子を彷彿させる。ここ数年の「リング」シリーズの焦点は、貞子の恐怖に特化していたが、久々にその原点になる超能力者が現れた。

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 少女が暮らした公営団地の部屋は、放火事件後にネットで心霊スポットと名指しされた。一攫千金を目論む菜優の弟でユーチューバーの和真(清水尋也)は、肝試し動画を撮るために放火現場に無断侵入。しかし、無人の部屋で自撮りする和真の背後に、髪が長く白いドレス姿の貞子が写り込んでいた。その後、和真は行方不明となり、菜優は和真の相談相手だった石田(塚本高史)と弟の行方を探す。

 98年にスタートした「リング」シリーズは、続編「らせん」(98)、映画版続編「リング2」と展開。前日譚「リング0 バースディ」(00)、ハリウッド・リメイク版3本も派生させながら、最近では「貞子3D」シリーズや「貞子vs伽耶子」(16)などイベント的な作品も生まれた。いわば貞子の独り歩き状態だったが、今回の「貞子」は中田監督が本領発揮。時代を象徴するSNSを物語に取り入れながら、派手なCGを使わず、アナログ的な王道演出。観客を恐怖に陥れる正統な作風だ。

 物語の根底に流れるのは家族愛だ。「リング」では家族の呪いを回避するため主人公があがいた。「貞子」では呪いで行方不明となった弟を救うため姉が苦しむ。一方、超能力を持ってしまった少女の苦しみと悲しみ、貞子生誕の地・伊豆大島の洞窟内“賽の河原”のクライマックスも必見。長きに渡る「リング」シリーズが本道に戻り、原点回帰を試みた作品である。

(文・藤枝正稔)

「貞子」(2019年、日本)

監督:中田秀夫
出演:池田エライザ、塚本高史、清水尋也、姫嶋ひめか、桐山漣

2019年5月24日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://sadako-movie.jp/

作品写真:(C)2019「貞子」製作委員会
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2019年04月18日

「愛がなんだ」男女5人のねじれる思い 屈折した不毛の恋が心に刺さる

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 猫背でひょろひょろのマモちゃん(成田凌)に出会い、恋に落ちた時から、テルコ(岸井ゆきの)の世界は一変した。どこにいようと電話一本で駆け付け、デートに誘われれば会社をさぼる。大好きで優しいけれど、マモちゃんは自分を好きではなかった──。

 「紙の月」、「八日目の蝉」の原作者・角田光代の同名小説を映画化。NHK連続テレビ小説「まんぷく」(18)の岸井ゆきの、「スマホを落としただけなのに」(18)の成田凌が主演。監督・脚本は「サッドティー」(14)、「退屈な日々にさようならを」(17)の今泉力哉。

 テルコはマモちゃん(マモル)に盲目だ。「熱が出た」と呼び出され、喜び勇んでアパートへ向かい、鍋焼きうどんを作り、風呂掃除をしてウキウキ気分でいたところ、「そろそろ帰ってくれ」と冷たく深夜の街に放り出される。行き場を失って向かうのは、唯一の女友達・葉子(深川麻衣)の家だ。不憫な姿を見た葉子は、マモルと別れるように助言するが、テルコは聞く耳を持たない。そんな葉子は葉子で、自分に好意を抱く年下男ナカハラ(若葉竜也)をいいように扱っていた。

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 一方的な片思いが悪循環を生む。テルコはマモルが好きすぎて仕事が手に付かず、会社をクビになる。マモルが好きなのは、だらしない年上喫煙女・すみれ(江口のりこ)だ。テルコはすみれに気に入られ、すみれを利用してマモルに会おうとする。テルコと同じ道を行くのがナカハラだ。葉子に尽くしまくるナカハラに、テルコは自分を重ね、葉子への怒りを募らせていく。

 キャスティングが成功の鍵だ。テルコ演じる岸井は、観客が切なくなるほどの片思いぶり。女をいいように利用する俺様男・マモルに、成田は容姿が良すぎる気もするが、心のうちを見せぬ身勝手なキャラクターをうまく演じている。意外にいいのが深川だ。監督の前作「パンとバスと2度目のハツコイ」(18)のおとなしい主人公から一転、自分本位な「自己中」女。健気な年下男を演じた若葉に、思わず同情してしまう好演だ。江口のりこは、短い出演でも若手と格の違いを見せ付ける。

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 若い男女5人のねじれた恋を、監督は日常のさりげないすれ違いから掘り下げていく。片思いの相手に徹底的に尽くす者。相手の思いを利用してポイ捨てする者。ドライで不器用な若さがリアルで、屈折した不毛の愛が心に刺さる。

(文・藤枝正稔)

「愛がなんだ」(2019年、日本)

監督:今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、穂志もえか

2019年4月19日(金)、テアトル新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://aigananda.com/

作品写真:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会
posted by 映画の森 at 15:05 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする