2019年04月18日

「愛がなんだ」男女5人のねじれる思い 屈折した不毛の恋が心に刺さる

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 猫背でひょろひょろのマモちゃん(成田凌)に出会い、恋に落ちた時から、テルコ(岸井ゆきの)の世界は一変した。どこにいようと電話一本で駆け付け、デートに誘われれば会社をさぼる。大好きで優しいけれど、マモちゃんは自分を好きではなかった──。

 「紙の月」、「八日目の蝉」の原作者・角田光代の同名小説を映画化。NHK連続テレビ小説「まんぷく」(18)の岸井ゆきの、「スマホを落としただけなのに」(18)の成田凌が主演。監督・脚本は「サッドティー」(14)、「退屈な日々にさようならを」(17)の今泉力哉。

 テルコはマモちゃん(マモル)に盲目だ。「熱が出た」と呼び出され、喜び勇んでアパートへ向かい、鍋焼きうどんを作り、風呂掃除をしてウキウキ気分でいたところ、「そろそろ帰ってくれ」と冷たく深夜の街に放り出される。行き場を失って向かうのは、唯一の女友達・葉子(深川麻衣)の家だ。不憫な姿を見た葉子は、マモルと別れるように助言するが、テルコは聞く耳を持たない。そんな葉子は葉子で、自分に好意を抱く年下男ナカハラ(若葉竜也)をいいように扱っていた。

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 一方的な片思いが悪循環を生む。テルコはマモルが好きすぎて仕事が手に付かず、会社をクビになる。マモルが好きなのは、だらしない年上喫煙女・すみれ(江口のりこ)だ。テルコはすみれに気に入られ、すみれを利用してマモルに会おうとする。テルコと同じ道を行くのがナカハラだ。葉子に尽くしまくるナカハラに、テルコは自分を重ね、葉子への怒りを募らせていく。

 キャスティングが成功の鍵だ。テルコ演じる岸井は、観客が切なくなるほどの片思いぶり。女をいいように利用する俺様男・マモルに、成田は容姿が良すぎる気もするが、心のうちを見せぬ身勝手なキャラクターをうまく演じている。意外にいいのが深川だ。監督の前作「パンとバスと2度目のハツコイ」(18)のおとなしい主人公から一転、自分本位な「自己中」女。健気な年下男を演じた若葉に、思わず同情してしまう好演だ。江口のりこは、短い出演でも若手と格の違いを見せ付ける。

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 若い男女5人のねじれた恋を、監督は日常のさりげないすれ違いから掘り下げていく。片思いの相手に徹底的に尽くす者。相手の思いを利用してポイ捨てする者。ドライで不器用な若さがリアルで、屈折した不毛の愛が心に刺さる。

(文・藤枝正稔)

「愛がなんだ」(2019年、日本)

監督:今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、穂志もえか

2019年4月19日(金)、テアトル新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://aigananda.com/

作品写真:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会
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2019年04月10日

「多十郎殉愛記」巨匠・中島貞夫監督、20年ぶり長編は“ちゃんばら時代劇” 光る高良健吾の役者魂

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 幕末の京都。貧乏長屋に住む清川多十郎(高良健吾)は、親が残した借金から逃れるため長州を脱藩し、無為な日々を過ごしていた。かつて名うての侍だったが、今は鬼神のような剣の強さを持て余す毎日。何かと世話を焼く小料理屋の女将・おとよ(多部未華子)の思いに気付きながらも、孤独を貫こうとしていた──。

 東映映画の巨匠・中島貞夫、20年ぶりの長編作品は、ちゃんばら時代劇だ。1970年代に犯罪アクションの傑作「狂った野獣」(76)、ヤクザ映画大作「やくざ戦争 日本の首領」(77)のほか、多くの実録ヤクザ映画を監督。「にっぽん’69セックス猟奇地帯」(69)など一連の風俗ドキュメンタリー作品も手がけるなど、オールマイティーな監督だ。

 数々の作品を世に送り出した後、「極道の妻たち 決着」(98)を最後に監督業を離脱。後継の育成に力を注いでいたという。84歳での新作「多十郎殉愛記」には、教え子で「海炭市叙景」(10)を監督した熊切和嘉が“監督補佐”として名を連ねている。

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 東映忍者もの「くノ一忍法」(64)でデビューした中島監督にとって、古巣の「東映京都撮影所」で撮ったちゃんばら時代劇「多十郎殉愛記」は、原点回帰と受け取れる作品だろう。「くノ一忍法」に出演した三島ゆり子、斬られ役で有名な福本清三、地回りの親分役の堀田眞三、医師役の野口貴史ら、監督作品の常連俳優が顔をそろえた。

 京都見廻組に目をつけられた多十郎は、腹違いの弟・数馬(木村了)とおとよを守るためにおとりとなる。一人で溝口蔵人(寺島進)率いる抜刀隊と見廻り組を敵に回し、30分間に渡る壮絶な大捕り物がクライマックスに用意されている。長屋を背景に多十郎が大勢の敵と繰り広げる殺陣、大八車を使った捕り物シーンは、勝新太郎主演「座頭市」シリーズを彷彿させる。竹やぶを使ったざん新な殺陣は、往年の時代劇ファンのツボをくすぐるだろう。

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 肉体と剣術だけで戦い続ける多十郎の姿は、昨今のCG(コンピューター・グラフィックス)を駆使したアクションと正反対。ちゃんばら時代劇の真骨頂、活劇の醍醐味だ。立ち回りの最中、多十郎が人質を取り立てこもるシーンがある。監督の青春犯罪映画「ジーンズブルース 明日なき無頼派」(74)の立てこもりシーンを思わせる演出で、今も体の中に変わらぬ70年代の魂が息づいているのか。93分と短めな上映時間に加え、あっさりとした幕引きも、かつて2本立て興行がメインだったブログラム・ピクチャーを思い出させる。

 生と死をかけた見事な殺陣。ふんどし姿で男の色気を醸し出した高良の役者魂。意志の強さと母性を合わせ持つ演技の多部。いずれも小池一夫原作「子連れ狼」など、70年代の劇画から飛び出したようだ。中島監督の健在ぶりと、衰えぬ「活動屋魂」に改めて感服する作品だ。

(文・藤枝正稔)

「多十郎殉愛記」(2019年、日本)

監督:中島貞夫
出演:高良健吾、多部未華子、木村了、三島ゆり子、栗塚旭

2019年4月12日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://tajurou.official-movie.com/

作品写真:(C)「多十郎殉愛記」製作委員会

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2019年03月13日

第29回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭を振り返る 開幕作に波紋、斎藤工がサプライズ登場 最後の冬開催

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 北海道夕張市で開かれていた「第29回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」は10日、森田和樹監督の「されど青春の端くれ」をオフシアター・コンペティション部門のグランプリに選んで幕を閉じた。開幕作のキム・ギドク監督作品が韓国の「#MeToo」運動の余波で波紋を呼んだほか、予算削減でスクリーン数が減りメジャー作品も減るなど、開催環境は決して良くなかった。それでもファンタ映画ファンの思いに支えられ、約1万2000人を動員した。雪に囲まれた幻想的な映画祭は今回で冬開催を終了。来年からは夏の映画祭に生まれ変わる。


男子高校生の日常描く

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 オフシアター・コンペ部門は、白石和彌監督を審査委員長とした4人の審査員が6作品の中から受賞作を決定した。グランプリの「されど青春の端くれ」は男子高校生3人の青春と性を描くもの。荒削りだが画面の構図や映像表現が個性的な作品だ。白石委員長は「マイナス面も多いが、何かを爆発させたい思いがストレートに伝わった」と選定理由を説明した。

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 同作が初長編の森田監督は鳥取県出身、東京都在住の30歳。2年前に病気で2カ月入院し、一度は映画をやめようと思ったことも。「映画を作りたいという強い気持ちがあった。これからもっと頑張りたい」と喜びを語った。次回作は青春スプラッター映画を構想中という。

 北海道知事賞は太田慶監督の「桃源郷的娘」。老浮浪者が若い娘に恋をしたことで始まる「艶笑コメディ」。太田監督は日活の事務部門で働きながら映像制作を学んだ遅咲きの監督だ。審査員特別賞はムン・シング監督(韓国)の「赤い原罪」が受賞した。神の神聖性を否定し宗教界に刃を突きつける衝撃的な内容だが、シナリオ準備と理論武装のために10年間神学を学び牧師となったというビハインドストーリーも観客を驚かせた。

斎藤工がサプライズ登場
 斎藤工が9日、都内で主演作「家族のレシピ」の初日舞台あいさつを終えて空路夕張入りし、映画祭恒例の屋外イベント「ストーブパーティー」に参加。4月公開の「麻雀放浪記2020」でタッグを組んだ白石和彌監督、脚本家のはしもとこうじ氏とのトークショーに登壇し、氷点下の夕張に熱気を呼んだ。

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 自身の監督初長編「blank13」を2017年のゆうばりで初上映するなど「ゆうばり愛」が強い斎藤。今回の映画祭では「ふだんファンタ映画祭に来ない親子連れなどが見られる映画を上映したかった」と、子ども向けのプログラムを選定。自身がプロデュースしたアニメーション作品や、この日のために企画・演出・出演した「スーパーベジタブルブギ 北海道・北の国から編」を上映した。

 映画館のない地域に映画を届ける「シネマバード」(移動映画館)の活動の一環として、年内に北海道内で開催する計画も明かし、地元ファンを喜ばせた。

キム・ギドク作品が物議、#MeToo運動で
 2月6日のラインアップ記者会見のあと、ゆうばり映画祭は「#MeToo運動」の渦中に投げ出された。開幕作にキム・ギドク監督の「人間、空間、時間、そして人間」(仮題)を選んだためだ。

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 キム監督は「韓国の鬼才」と呼ばれ、海外での評判は高い。しかし映画の撮影中に暴行やセクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)があったとして17年に女優に告発され、罰金500万ウォン(約50万円)の略式命令を受けた。その後も正式な謝罪や反省がないとして、韓国の女性団体などが強く非難している。

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 家父長制の価値観が残る韓国の「#MeToo運動」は日本では想像もできないほど強力だ。抑圧されてきた女性たちの怒りが噴出し、政治家や芸能人、芸術家など著名人が次々に告発されている。この状況で同監督の作品を上映することは韓国では考えられないのだ。

 ゆうばり映画祭には韓国の女性団体「民友会」が抗議声明を出し、上映の取りやめを求めた。映画祭側は同会への返答文で監督を招待しないことを伝え、差別や犯罪を助長する作品は上映しないとの立場を表明。さらに「本作品は問題の映画とは別個のものであり、個人の行為と多くの映画人の力が結集された作品とは別の問題」と主張した。

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 この映画の上映に、参加者からも疑問の声が上がったのは事実だ。白石和彌監督はオープニングセレモニーの審査委員長あいさつで「MeToo運動の流れで大きな罪を犯した監督。なぜそれを上映するのかという公式のコメントが必要だった」と苦言を呈した。これに対し塩田時敏プログラムディレクターは「問題が起きると作品を公開しない、お蔵入りにするということは、そろそろやめたほうがいい」と私見を述べたあと「ゆうばり映画祭は罪を憎む。しかし映画は憎まない」として、映画を見た上で自ら考え、議論してほしいと訴えた。

 「罪」と「作品」は果たして別個に考えるべきなのか、「表現の自由」は「被害者の権利」に優先するのか――。ゆうばり映画祭の選択は一作品の上映という問題を超えて多くの問いを残した。

(文・芳賀恵)

【受賞一覧】
◇ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門
グランプリ 「されど青春の端くれ」森田和樹監督
北海道知事賞「桃源郷的娘」太田慶監督
審査員特別賞「赤い原罪」ムン・シング監督(韓国)
シネガーアワード(批評家賞)「されど青春の端くれ」森田和樹監督

◇インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門
グランプリ「極東ゲバゲバ風雲録」中島悠作監督
優秀芸術賞「ムーンドロップス」ヨーラム・エヴァー・ハダニ監督(イスラエル)
「5つ目の記憶」小野寺しん監督
「M&A」宮城伸子監督

◇ファンタランド大賞作品賞(観客賞)「いつくしみふかき」大山晃一郎監督


1:グランプリの森田和樹監督(右)と白石和彌審査委員長=芳賀撮影
2:グランプリ「されど青春の端くれ」=映画祭事務局提供
3:クロージングの集合写真=芳賀撮影
4:トークイベントに参加した(右から)斎藤工、脚本家はしもとこうじ氏、白石和彌監督=映画祭事務局提供
5:「人間、空間、時間、そして人間」(仮題)=映画祭事務局提供
6:塩田時敏プログラムディレクター(オープニングセレモニー)=芳賀撮影
7:冬開催は今年で最後=芳賀撮影


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2019年02月20日

「サムライマラソン」日本初の幕末マラソン、国際的スタッフで現代的に

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 幕末、1855年。米政府の使者ペリー(ダニー・ヒューストン)の黒船が幕府を揺るがせた時代。安中藩主・板倉勝明(長谷川博己)は藩士を鍛えるため、十五里(約58キロ)を走らせる遠足(とおあし)を開催する。優勝者の望みは「何でもかなえてもらえる」という。「姫と結婚したい」、「侍になりたい」、「もうひとはな咲かせたい」など願いを胸にスタートした侍たち。一方、裏では陰謀がめぐらされていた──。

 「超高速!参勤交代」の原作者、土橋章宏の小説「幕末まらそん侍」を実写化。日本初のマラソンとされる「安政十足(あんせいとおあし)」を題材にしている。企画・製作は「ラストエンペラー」(88)のジェレミー・トーマス、監督は「不滅の恋 ベートーヴェン」(94)、「アンナ・カレーニナ」(97)のバーナード・ローズ、衣装はワダエミ、音楽は「めぐりあう時間たち」(02)のフィリップ・グラス。そうそうたるスタッフが顔をそろえた。

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 藩主・板倉の目的は「米国の侵略から国と藩を守ること」。「何でも望みをかなえる」ことが賞品と知り、色めき立つ藩士の姿はほほえましい。逆に、わいろを使って足の速い者を買収しようとしたり、コースを外れて近道をもくろむ輩もいるのは、現代とあまり変わらない。一方、幕府の大老・五百鬼祐虎(豊川悦司)は遠足を謀反の動きととらえ、江戸から刺客を差し向ける。藩士の鍛錬のはずの遠足の帰路は、壮絶な戦いと化してしまう。

 五百鬼の動きを察知したのは、安中藩の勘定方を務めつつ、実は幕府の隠密である(佐藤健)だった。「るろうに剣心」(12)を思わせる侍役で、研ぎ澄まされたたたずまい、無駄のない所作が美しい。原作では小さな役の雪姫(小松菜奈)を大きくふくらませ、物語に大々的にからませたのもいい。雪姫の色鮮やかな衣装に、ワダエミが手腕を発揮する。黒澤明監督「隠し砦の三悪人」(58)の「雪姫」へのオマージュか。コメディーリリーフに徹した竹中直人が、老いた侍役で一癖ある演技を見せる。

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 日本を舞台に、日本人俳優による時代劇を、外国人監督が演出する。やや堅苦しさはあるものの、大きな違和感はない。原作の面白さをうまく脚本に取り入れ、俳優たちの好演が化学反応を起こした。今の世に合ったエンターテインメント時代劇に仕上がっている。

(文・藤枝正稔)

「サムライマラソン」(2019年、日本)

監督:バーナード・ローズ
出演:佐藤健、小松菜奈、森山未來、染谷将太、青木崇高

2019年2月22日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/SAMURAIMARATHON/



作品写真:(C)“SAMURAI MARATHON 1855”FILM Partners
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2019年02月10日

「洗骨」沖縄に残る弔いの風習、ゴリこと照屋年之監督が映画化

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沖縄の離島・粟国島に住む新城家。母・恵美子(筒井真理子)が亡くなり、島を離れていた息子と娘が帰ってきた。東京の大企業で働く長男の剛(筒井道隆)と、名古屋で美容師をしている長女・優子(水崎綾女)だ。恵美子の葬儀は終わったが、父・信綱(奥田瑛二)は酒を飲んで悲しみを忘れようとし、剛に愛想を尽かされている。島に残る習慣「洗骨」が近づき、家族はそれぞれの思いを抱いていた──。

 お笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリこと照屋年之が監督・脚本を担当した「洗骨」。25分の短編「born、born、墓音。」(16)の長編化だ。「洗骨」は、土葬や風葬で遺体が骨となった後、海水や水、酒で洗い、再び埋葬する風習という。

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 照屋監督は06年、短編「刑事ボギー」でデビューした。短編8本と長編「南の島のフリムン」(09)を経て、満を持して演出したのが「洗骨」だ。沖縄県出身の照屋にとって必然に向かい合うべきテーマだったのだろう。ドラマは葬式で幕を開け、悲しみに暮れる家族とは対照的に、ほのぼのとしたご近所さんとのやり取りが笑いを呼ぶ。笑いの間合いが良く、楽しいシーンはコントのようだ。

 苦労人の長男・剛、妊婦の長女・優子、酒浸りで無職の父・信綱。葬儀の4年後、再び家族は島に集まった。剛は父を許せず、父と息子の軋轢は家族崩壊の危機さえ予感させる。

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 しかし、監督は険悪な空気を和らげるように、鈴木Q太郎演じる美容師・神山を投入する。優子を妊娠させた張本人で、信綱に結婚を認めてもらうため島に来たのだ。Q太郎はお笑いコンビ「ハイキングウォーク」の芸人。ロン毛に口ひげをたくわえ、島では浮きまくる。空気が全く読めない男だが、憎めないキャラでガス抜き的な存在になる。

 バラバラになりかけた家族をつなぎ、物語を引き締めるのが信綱の姉・信子役の大島蓉子だ。どこまでも情けない信綱に代わり、場を仕切り、おろおろする男たちを大声で叱咤する。たくましい叔母さん役の大島が、情けない奥田の演技を引き立てた。

 家族は感情をぶつけ合い、荘厳な「洗骨」を迎える。親族が集まり、風葬された美恵子がいる場所まで道具を運ぶ。しかし、厳かな儀式は、予想外のハプニングで、とんでもない展開になってしまう。

 離島に伝わる風習を通して、家族という名の命のバトンがつながれる。監督はユーモアを交え、笑いと涙をバランス良く配合。感動的なドラマに仕上げた。

(文・藤枝正稔)

「洗骨」(2018年、日本)

監督:照屋年之
出演:奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女、大島蓉子、坂本あきら

2019年2月9日(土)、丸の内TOEIほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://senkotsu-movie.com/

作品写真:(C)「洗骨」製作委員会


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