2016年10月11日

釜山国際映画祭、危機乗り越え開催 「表現の自由」めぐり市と対立も

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 韓国の第21回釜山国際映画祭が、釜山市で開催中だ。台風一過の秋晴れとなった初日の10月6日は、国内外のゲストがレッドカーペットに登場。詰めかけたファンを熱狂させた。2年にわたり表現の自由をめぐって映画祭側と釜山市が対立し、一時は開催すら危ぶまれたが、組織改編を行うなどしてなんとか初日を迎えた。15日まで69カ国・地域の計299本を上映する。

 オープニング会場の「映画の殿堂」には多くの市民が訪れ、次々に姿を見せるスターに声援を送った。開会セレモニーの司会を務めたハン・ヒョジュとソル・ギョング、新作「THE NET」を上映するキム・ギドク監督、「コーヒーメイト」で共演したオ・ジホとユン・ジンソらが登場。日本勢は「怒り」の李相日監督と渡辺謙、日活のロマンポルノ・リブート・プロジェクト作品「ジムノペディに乱れる」の行定勲監督と板尾創路らキャストが参加した。

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 オープニング作品は、中国朝鮮族のチャン・リュル(張律)監督が韓国で撮影した「春夢」。小さな酒場を経営する女性(ハン・イェリ)と、社会の底辺で生きる3人の男の心の交流を描く。3人の男を演じるのは「息もできない」のヤン・イクチュン監督、「ムサン日記 白い犬」のパク・ジョンボム監督、「許されざるもの」、「群盗 民乱の時代」のユン・ジョンビン監督。キャスティングのユニークさも話題を呼んだ。

 釜山映画祭は14年、旅客船セウォル号の沈没事故に対する政府の対応を批判したドキュメンタリー「ダイビング・ベル」の上映をめぐり、釜山市と対立。韓国の映画人は表現の自由と映画祭の独立性を訴え、海外の映画界からもエールが送られた。

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 映画祭側と釜山市側の交渉はなかなか妥協線を見いだせなかったが、女優のカン・スヨン執行委員長に加え、「釜山映画祭の父」と呼ばれるキム・ドンホ元執行委員長を新たに理事長に据えて開催への道筋をつけた。

 今年の映画祭は例年並みの規模で行われることになったが、この決着に納得しない映画人も多く、火種は残ったままだ。アジア最大級に成長した映画祭をどう維持していくか、試行錯誤はまだ続きそうだ。

(文・芳賀恵 写真・岩渕弘美、芳賀恵)

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写真1:司会のハン・ヒョジュ
写真2:司会のソル・ギョング
写真3:アン・ソンギ
写真4:チェ・ミンホ(SHINee)
写真5:(複数写真は左から)オ・ジホ、ユン・ジンソ
写真6:キム・ギドク監督とチェ・グィファ
写真7:オープニング作品「春夢」のチャン・リュル(張律)監督とキャスト
写真8:カン・スヨン執行委員長とキム・ドンホ理事長
写真9:俳優キム・ウィソンは映画祭の独立性をアピール
写真10:「怒り」の渡辺謙、李相日監督
写真11:「ジムノペディに乱れる」の芦那すみれ、行定勲監督、板尾創路、岡本いずみ
写真12:「嫌な女」の黒木瞳監督
写真13:「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督、長谷川博己=いずれも釜山市で6日
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2016年08月06日

「ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆」登山家オム・ホンギル氏に聞く「自然に入る時は『愛する気持ち』が重要」

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 ヒマラヤ8000メートル級14座登頂に成功した韓国の登山家、オム・ホンギル氏と仲間の友情を描いた「ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆」が公開されている。モデルとなったオム氏は韓国を代表する登山家の一人。映画はエベレスト頂上付近で遭難死した後輩のため、危険を顧みず遺体回収に向かった実際のエピソードを描く。オム氏は豊富な登山経験を振り返り「自然の中に入る時は『愛する気持ち』が重要」と語った。

 2004年。引退したオム・ホンギル(ファン・ジョンミン)のもとに、後輩の登山家パク・ムテク(チョンウ)遭難の知らせが入る。オム氏はエベレスト8750メートルに残された遺体を家族のもとに帰すため、後輩たちとチームを結成。翌05年、決死の覚悟で再びピッケルを握る。

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 作品のモデルとなったオム氏は、アジアで初めてヒマラヤ8000メートル級14座の登頂に成功した。後輩のパク氏とは20代で出会い、カンチェジュンガ、K2、シシャパンマ、エベレストの8000メートル級4座をともに登った仲だった。映画では二人の出会い、輝かしい遠征の記録、別れと「再会」までを描いている。オム氏は遺体回収に向かった11年前を振り返る。

 「完成した作品を観た後、胸がつまり息苦しくなりました。リアルにあの時の状況がよみがえり、悲しみがこみ上げて。映画化にあたっては『私の志が伝わるよう表現して』と求めました。(パク氏らの)遺族に迷惑をかけたり、傷つけないようにしてほしいと」

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 「後輩の遺体を回収に行く」と告げた時、周囲の反応は厳しいものだった。オム氏は孤軍奮闘する。すでに引退した仲間たちに声をかけ、資金を募る。やがて熱い思いに応え、かつての山仲間たちが集まってきた。再び訓練を経ての遠征は、記録も名誉も求めず、ただ友情に支えられていた。

 「人々には君のもどかしさ、つらさは100%理解する。だがどうみても不可能な計画だ、と言われました。行けばまた遭難や大事故につながる可能性がある。否定的な意見がほとんどでした」

 女性で世界初のエベレスト登頂に成功した田部井淳子氏は、オム氏の行動に「多くの苦悩、葛藤、逡巡に見舞われただろう。険しい旅路を支えたのは、恵まれた体力、技術、運……一番は『どうしても回収したい』という強い思いに、山が『来い』と応えてくれたからではないだろうか」と言葉を寄せている。

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 数々の死線を乗り越えてきたオム氏自身、山へ向かう際は「いつも恐怖を感じる」という。遠征地へ向かう飛行機が離陸する際、「もう一度韓国に戻ってこられるだろうか」と感じてきた。一線を退いた今は、穏やかな気持ちで楽しんで山に登れるようになった。

 「自然に入る時は『愛する気持ち』が重要です。謙虚な気持ちで山に向かえば、自分が癒され、他者と心を通わせることもできる。嫌だという気持ち、拒否する心は破壊につながります。登る行為が自分にとって害になり、事故につながるのです」

 オム氏は50代後半を迎え、若者たちへの登山指導、ヒマラヤのシェルパの家族の支援活動に力を入れている。貧しさから教育を受けられない子供たちのために学校や奨学金を作った。

 「人間関係が希薄になり、情や命の尊厳が軽視される時代。命よりも重いものがあることを、作品を観た人に伝わればうれしいです」

(聞き手・写真 遠海安)

「ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆」(2015年、韓国)

監督:イ・ソクフン
出演:ファン・ジョンミン、チョンウ、チョ・ソンハ、キム・イングォン、ラ・ミラン

2016年7月30日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://himalayas-movie.jp/

作品写真:(C)2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

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2016年07月29日

「あなた、その川を渡らないで」チン・モヨン監督に聞く 結婚76年の純愛「小さな思いやりが与える意味、分かってほしかった」

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 韓国映画「あなた、その川を渡らないで」が2016年7月30日公開される。韓国東北部の小さな村を舞台に、98歳の夫と89歳の妻、結婚76年目の日々を追ったドキュメンタリー。長編デビュー作となるチン・モヨン監督は「(日常の)小さな思いやりが愛する人に与える意味を、作品を観る人に分かってほしいと思った」と語った。

 老夫婦の日常を淡々と追った作品。韓国では14年秋の公開後、口コミで評判が広がり、韓国でドキュメンタリー映画としては過去最高の約480万人を動員した。

 江原道横城郡古時里。山に囲まれた静かな集落に、おじいさん(チョ・ビョンマン)とおばあさん(カン・ゲヨル)は暮らしている。四季折々に表情を変える自然。市場での買い物、老人会の遠足、花畑での散策。二人の生活はつつましく穏やかだ。チン監督は一人、1年3カ月にわたって夫妻の日常にカメラを向けた。

 「二人がなるべく話しやすいように、環境作りに心を配りました。大勢のスタッフを連れて押しかけるのは避けたかったのです。夫妻の家まで行ったり来たりしながら、一人で撮り続けました」

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 二人は村に市が立つと、毎日着ているおそろいの民族衣装・韓服で出かけていく。おばあさんが作った食事を、おじいさんはおいしそうに食べる。2匹の飼い犬をかわいがり、春には一緒に花を摘み、冬は雪とたわむれる。笑い声が絶えない家。ありふれているようにみえるが、誰もが夢見る夫婦の姿ともいえる。現実世界でいかに人は傷付け合っているか。改めて実感させられる関係でもある。

 「二人は特別なことをしているわけではありません。一緒にご飯を食べる。手をつないで市場へ行く。小さなことに一生懸命で、常に相手を思いやっている。出かける時は髪をきちんととかすなど、人目につかないところで毎日を丁寧に過ごしている。ささいなこと、小さな思いやりが愛する人に与える意味を、作品を観る人に分かってほしいとも思いました」

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 76年の結婚生活がずっと順風満帆だったわけではない。二人には12人の子に恵まれたが、うち6人を幼いうちに亡くしている。たまに集まる子供たちも、年老いた両親を心配して口論を始める。おじいさんの体は徐々に弱っていき、おばあさんは心を痛める。「天国でも着られるように」とおじいさんの服をたき火で焼く。そんな二人の姿に、韓国の若い世代が心を動かされた。観客の約4割が20代だったという。

 「韓国では今ほど若者が困難を感じている時代はありません。就職難で経済的に困窮しています。苦しくても恋愛はしたいが長続きしない。悩む彼らの理想を76年続けている二人が目の前にいたのです。幻想ではなかったんだ、自分にもできるんだ。若者たちは憧れ、映画を観て確かめたのではないでしょうか」

(聞き手・写真 遠海安)

「あなた、その川を渡らないで」(2014年、韓国)

監督:チン・モヨン
出演:チョ・ビョンマン、カン・ゲヨル

2016年7月30日(土)、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://anata-river.com/

作品写真:(C)2014 ARGUS FILM ALL RIGHTS RESERVED.

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2016年07月08日

「ひと夏のファンタジア」奈良を舞台に日韓合作 穏やかに流れる時間 チャン・ゴンジェ監督最新作

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 奈良県五條市を舞台にした日韓合作映画「ひと夏のファンタジア」が、渋谷ユーロスペースほかで公開されている。韓国チャン・ゴンジェ監督の長編3作目。日本から岩瀬亮、韓国から女優のキム・セビョクが主演している。

 2012年、奈良県の「なら国際映画祭」による若手監督支援プロジェクト「NARAtive」に選ばれたチャン監督が、日本と韓国の俳優、スタッフで製作した。奈良県出身の河瀬直美監督が製作を担当している。

 設定や役柄が異なる二つのストーリーを2部構成で描く。いずれも岩瀬とキムが主演。1部は韓国から五條に調査に来た映画監督テフン(イム・ヒョングク)が、日本語を話す助手のミジョン(キム)とともに、市の観光課職員・武田(岩瀬)の案内で町を歩く。古い喫茶店、廃校、一人暮らしのお年寄りの家を周る。滞在最後の夜、不思議な夢を見たテフンは、窓の外に上がる花火を見る。

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 2部は韓国から五條に来た女性ヘジョン(キム)が、観光案内所で出会った柿栽培農家の青年・友助(岩瀬)と、五條の古い町を歩く。「ひとりになる時間が必要だった」と話すヘジョン。初対面から彼女にひかれた友助は、徐々に距離を縮めようとする──。

 韓国から来た異邦人が、偶然に導かれるまま日本の田舎町を歩く。山に囲まれた五條には、ゆったりとした空気と時間が流れている。ささやかで穏やかなロードムービーの趣。チャン監督によると、1部の脚本は撮影前から固まっていたが、2部の内容は現地で決めていったという。

 「もともと二つのエピソードを盛り込むつもりだった。一つ目は自分自身の話。もう一つは歴史に興味がある韓国人女性の話。二人にそれぞれ二役を演じてもらったのは、時間と予算的な制限があったから。日本に来てから思いついた」

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 キムが演じたミジョンとヘジョンは、ともに「日本語ができる」設定。日本語のせりふが多い撮影をキムは「大変だった」と振り返る。

 「きつかった。だからこそ撮れたとも思う。上映後に観客の意見を聞くと『友助とヘジョンの沈黙のシーンが気に入った』と言ってくれる人が多かった。あの沈黙は、私の日本語が流暢なら生まれなかった。監督が沈黙に気付き、演出で生かしてくれた」

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 監督と共演女優、韓国の二人にはさまれた岩瀬は、自然体で挑んだ。海外作品への出演は初めて。「日本語、韓国語、つたない英語」が飛び交う現場を楽しんで過ごしたという。映画祭を通じて知り合ったチャン監督とは、長い付き合いの友人同士だ。「日本と韓国の違いというより、チャン監督独自の撮影手法が新鮮だった」と話す。

 チャン監督によると、日韓とも上映後の反応はすこぶるいいという。韓国から舞台になった奈良を旅行で訪れる人もいるそうだ。

 「韓国では20代の女性の観客が多かった。旅先の外国で生まれるロマンスが受けたのだろう。日本では自分の故郷への懐かしさを、五條に重ねた人が多いように感じた」

 日本と韓国、五條の山並み。静かに流れる空気と時間が、観る者を包み込む作品だ。

(文・写真 遠海安)

「ひと夏のファンタジア」(2014年、日本・韓国)

監督:チャン・ゴンジェ
出演:キム・セビョク、岩瀬亮、イム・ヒョングク、康すおん

2016年6月25日(土)から渋谷ユーロスペースでレイトショー。シネ・ヌーヴォ(大阪)ほかで全国順次公開中。作品の詳細は公式サイトまで。

http://hitonatsunofantasia.com/

作品写真:(C)Nara International Film Festival+MOCUSHURA

撮影協力:ときのもりLIVRER http://www.tokinomori-nara.jp/livrer/



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2016年07月05日

ユ・ヨンソク来日「ともに歩ける、温かい俳優になりたい」

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 韓国人俳優のユ・ヨンソクがこのほど来日し、日本で初めてのファンミーティングを開催した。

 デビュー13年。映画やドラマに多く出演するほか、ミュージカルやバラエティーなど活動の幅を広げている。最近ではドラマ「応答せよ1994」(13)、「幸せのレシピ 愛言葉はメンドロントット」(15)、映画「ビューティ・インサイド」など出演作が次々と日本で紹介された。初主演映画「その日の雰囲気」も7月23日、日本公開される。

 ファンミーティング前の記者会見では「韓国まで会いに来てくれるファンが最近増えたので、日本のファンに直接会いにくることができてうれしい」と語った。「日本の人たちが作品をどうみているか、とても気になっていた」とも話した。

 昨年は初のミュージカル「壁抜け男」に出演。「ミュージカルにはとても出たかったが、簡単なことではなかった。最初は心配したけれど、観客の皆さんの反応をもらい、一緒に呼吸できる感じがよかった」と振り返った。

 イベントでは会場を埋めたファンをみて感激した様子。言葉を詰まらせながら「皆さんの心の中で、温かい俳優になれるよう最善を尽くします。ともに歩ける俳優になりたい」と決意を語っていた。

(文・岩渕弘美)

タグ:イベント
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