2020年01月12日

「パラサイト 半地下の家族」滑稽で残酷でほろ苦い 離れがたきこの世界

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 カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲ったポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」は、格差社会を糾弾する作品ではない。貧富の構図は、物語の入り口に過ぎない。

 半地下の家に住む貧乏な家族が、金持ち家族の豪邸に入り込み、「寄生」する悲喜劇だ。貧乏と金持ち、それぞれの家族の住居、家具や持ち物、服装や職業はリアルに考えられ、日常生活が詳細に映し出される。しかし、監督はどちらが幸せとも、不幸せとも断定しない。どちらがいいとも、悪いとも言わない。ポン・ジュノの映画はいつも饒舌だが、メッセージを発しない。

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 そんな中で、あえて意味を持たされた存在が二つあった。一つは匂いだ。貧乏家族の父親(ソン・ガンホ)が、爆発するきっかけになるのが、体にしみついた匂いだった。人は自分の匂い(具体的にも抽象的にも)に気づかない。ぬぐえない。だからこそ、他人に指摘されると癇に障る。知らぬうちに忌むべき「貧しさ」を拡散していたことを、父親は他人に指摘され、傷つき、爆発する。

 もう一つは、貧乏家族の元に到来した大きな石。息子は最後まで「なぜ離れられないのか分からない」と言いながら、石を持ち歩き、最後の決定的なエピソードが起きる。来日インタビューで石の意味を問われたソン・ガンホは、「私にも分からない」と答えていた。なぜなら、石は人なら誰しも抱えている「生きにくさ」の元凶──自分ではどうにもならない、内側に抱える業のようなもの──だからだ。人間の数だけ石があるから、何を象徴するかは言えない。ソン・ガンホはそれを理解していただろう。

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 ポン・ジュノの「語り」の力は圧倒的で、ディテールと構図に目を奪われ、ユーモアとリアリティーに感情をゆさぶられ、ぐいぐい物語に引き込まれていく。見終わった後、監督が何かを「訴えた」のではなく、この世界──ある時は容赦なく、逃げ出したく、ある時は心地よく、離れがたい──私たちが暮らす世界を、そのままざっくりすくい取っていたことに気づく。そこに暮らす貧乏な家族も、裕福な家族も、時に滑稽で、時に温かく、幸せにも、不幸せにも見える。自分と同じ人間なのだ。

 メッセージを発しないポン・ジュノが、この寄る辺なき世界を楽しく、ほろ苦く、残酷に、豊かに見せてくれて、心から満たされた。

(文・遠海安)

「パラサイト 半地下の家族」(2019年、韓国)

監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム

2019年12月27日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.parasite-mv.jp/

作品写真:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
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2019年11月26日

「EXIT」有毒ガスから逃れ、ビルを駆け上がれ 韓国サバイバル・アクション

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 今年の夏、韓国で大ヒットしたサバイバル映画「EXIT」。若手実力派俳優チョ・ジョンソク、ガールズ・グループ「少女時代」のユナが、体を張ったアクションに挑戦している。単純なパニック映画と違い、ドキドキしながら心にじわじわ響く感動作品だ。

 何をやってもうまくいかない就職浪人のヨンナム(チョ・ジョンソク)は、母(コ・ドゥシム)の古希祝いの宴会場で、学生時代に思いを寄せたウィジュ(ユナ)と再会する。再会の喜びもつかの間、二人は突如発生した有毒ガスに巻き込まれる。上昇してくるガスから逃れるため、ビルの上へ上へ上がっていく二人。屋上から救助が始まったが、二人はヘリに乗りきれず、次の救助を待つことに。しかし待つ間もガスは広がり、二人は自力脱出を試みる──。

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 毒ガス発生の原因や、巻き込まれた人々の人間模様など、よくあるパニック映画のエピソードはほとんど描かれない。どん底にいる若者たちが、迫り来るガスから逃れるため、必死に上を目指して行く。ヨンナムとウィジュは、学生時代山岳部だった。その経験を生かし、身の回りのものと体を使い、自分と互いを信じて困難を乗り越えて行く。

 舞台はとある町のそれほど高くないビル。派手なアクションもなく、特別なヒーローもいない。二人が力を合わせ、壁を登り、建物を飛び移る。必死で生きようとするさまは、厳しい現状からの脱出にも重なる。緊迫感の間に、微妙な心境の変化も描いている。

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 チョ・ジョンソクは、軽快な動きとコミカルな演技で存在感が際立つ。動画で現場を見た人たちが、ドローンを使って見ず知らずの二人を手助けする。動画サイトでは多くの人が声援を送る。いまどきのツールをうまく取り入れており、最後まであきらめない二人はすがすがしく、思わず応援したくなる。イ・サングン監督は、青龍映画賞で新人監督賞を獲得した。

(文・岩渕弘美)

「EXIT」(2019年、韓国)

監督:イ・サングン
出演:チョ・ジョンソク、ユナ、コ・ドゥシム、パク・インファン、キム・ジヨン

2010年11月22日(金)、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/exit/

作品写真:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

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2019年09月25日

ジュンス、ミュージカル俳優として存在感「いつか日本のキャストと、日本語で舞台に立ちたい」

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 高い歌唱力と圧倒的なパフォーマンスで人気の韓国の歌手、ジュンスがこのほど、千葉・幕張でファンミーティング「2019 XIA FANMEETING HOME PARTY NIGHT」を開催した。最近はミュージカル俳優としても活躍し、人気グループ「JYJ」のメンバーとして忙しく走り続けている。日本のファンに「愛されているから続けることができた。うれしく、感謝している」と話した。

 昨年秋の兵役除隊後は「一人でゆっくり過ごす時間も大切に楽しんでいる」という。最近主演したミュージカル「エクスカリバー」ではアーサー王役にも挑戦。「セリフも歌も多く、アクションなど覚えることが多かった。主演のプレッシャーもあり、大変だったが頑張った」と振り返った。また、今後もミュージカルでは「新しい役に挑戦を続ける姿を見せたい」と意欲十分。「いつか日本で、日本のキャストと、日本語でミュージカルの舞台に立って、日本で賞を獲りたい」と夢を語った。

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 今回は「ホームパーティー」がテーマのファンミーティングということもあり、トークを中心にしっとりしたバラードや舞台「エクスカリバー」より「王になるということ」などのナンバーを情感たっぷりに歌い上げ、ミュージカル俳優としての実力を見せつけた。久しぶりにミュージカル・ナンバーを歌ったそうで「一小節だけで公演で歌った時の感情を思い出したり、世界観を感じられる。幸せな気分になれる」と話していた。

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 また、ジュンスのコンサートやイベントでおなじみの「ファンの願いごとを3つかなえるコーナー」では、リクエストに応えてミュージカル「モーツァルト」から「黄金星」をアカペラで熱唱。得意のダンスや、韓国の太鼓・チャンゴの演奏も披露するなど、多才ぶりを見せた。最後に「皆さんのおかげで幸せ。力ももらった。頂いた愛を次のステージでお返しできるよう頑張ります」と、ファンへの感謝で締めくくった。

(文・岩渕弘美)

写真:(c)JX Entertainment/宮澤正明写真事務所
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2019年07月25日

日本映画も存在感、富川国際ファンタスティック映画祭

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 韓国・京畿道富川市で6月22日から7月7日まで「第23回富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭2019」(BIFAN)が開かれた。期間中に日本の輸出規制強化が報じられたが、日本映画と日本からのゲストは例年と同様、熱い歓迎を受けた。49カ国・地域、284本の上映作の最後を飾ったクロージング作品は、日本映画学校で学んだ韓国人監督の密室サスペンス。例年に増して日本とのつながりを実感した映画祭だった。

 日本映画が3部門で受賞

 BIFANはスリラーやホラー、ファンタジー、アニメーションなどのジャンル映画に特化した映画祭。韓国ではまだ愛好者が多くはないマニアックな映画を集め、例年熱心なファンを呼び込んでいる。こうしたジャンルが得意な日本映画はBIFANの常連で、今年も約30本が招待された。

 日本映画は3部門で受賞。斎藤工が企画・主演した「MANRIKI」(清水康彦監督)が欧州ファンタスティック映画祭連盟アジア映画賞を受賞したほか、同賞のスペシャル・メンションに「いぬむこいり」(片嶋一貴監督)が選出。さらに、子どもたちが選ぶ子ども審査団賞を「パパはわるものチャンピオン」(藤村享平監督)が受賞した。

 長編コンペティション部門の審査委員長を務めた金子俊輔監督の「平成ガメラシリーズ3部作」の上映とトークにも大勢の怪獣映画ファンが集まった。

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 “知日派”監督の密室サスペンス

 クロージング作品は、高命成(コ・ミョンソン)監督の「南山(ナムサン)詩人殺人事件」。高監督は釜山出身で、大学卒業後に日本映画学校(現・日本映画大学)で演出を学んだ。日本で10年ほど生活し、日韓合作映画のコーディネーターや通訳を担当。2012年に在日朝鮮人の帰還事業を扱ったドキュメンタリー「さよなら、アンニョン、再見」を撮った。

 「南山詩人殺人事件」の舞台は朝鮮戦争後の1953年、ソウル明洞にある日本家屋のカフェ。詩人や画家など芸術家のたまり場だ。このカフェに捜査官が現れ、ある事件の「容疑者」たちと息詰まる心理戦を繰り広げる。事件の真相が明らかになるにつれ「イデオロギー対立」や「過去の清算」といった、現在に続く韓国の痛みが浮き彫りにされていく。密室サスペンスに韓国の現在と過去への視線が絡み合う異色の作品だ。

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 捜査官役のキム・サンギョンの鬼気迫る演技はもちろん、新進俳優たちの演技も見どころだ。韓国では今秋、一般公開される予定。

 ジャンル映画の歴史

 今年は朝鮮半島で映画が作られ始めて100周年。1919年、ソウル・鍾路の劇場「団成社」で初のフィルムを使った連鎖劇(舞台劇と映画を組み合わせた演劇)「義理的仇討」が上映されたのが最初とされる。

 各映画祭が100周年を記念したプログラムを組む中、BIFANは過去のジャンル映画を特集した。怪獣映画「宇宙怪人ワンマグィ」(1967)や韓国初のゾンビ映画「怪屍」(1980)、女子高校生のリアルライフを描いたコメディー「ヨンシム」(1990)などを見ると、韓国で多様な映画が製作されてきたことが実感される。まさにBIFANならではのプログラムだった。

(文・芳賀恵)

写真1:富川市役所もファンタスティック=富川市で芳賀撮影
写真2:「南山詩人殺人事件」の舞台挨拶=富川市役所で7月5日、映画祭事務局提供
写真3:観客との質疑応答に参加する「南山詩人殺人事件」の高命成監督(右)=富川市役所で7月5日、芳賀撮影
写真4・5:「南山詩人殺人事件」場面写真=映画祭事務局提供

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2019年05月20日

パク・ヘイルがデビュー秘話、全州国際映画祭で「青春がテーマの詩を読み、演技を続けると決めた」

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 韓国・全羅北道全州市で5月2日から10日間「第20回全州国際映画祭2019」が開かれ、国内外の長短編275本が上映された。今年は韓国映画が作られ始めて100周年。これを記念して映画祭は「100年間の韓国映画」のセクションを設け、過去の映画を上映して監督や出演者をゲストに招いた。映画デビュー作「ワイキキ・ブラザーズ」(01)が上映されたパク・ヘイルはイム・スルレ監督とともに登壇し、撮影時のエピソードを明かした。

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デビュー作「ワイキキ・ブラザーズ」18年ぶり凱旋
 「100年間の韓国映画」セクションは1990年代以前の「20世紀」部門と2000年代以降の「21世紀」部門からなる。「21世紀」部門では2000年から2010年までに製作された14本が紹介された。その1本が、ナイトクラブでの演奏で生計を立てる中年バンドマンの悲哀を描いた「ワイキキ・ブラザーズ」(01)。第2回全州映画祭のオープニング作品で、今回は18年ぶりの「凱旋」となった。

 パク・ヘイルはこの作品でイ・オル演じる主人公ソンウの高校時代を演じた。イム監督によると、高校生のソンウ役のキャスティングに悩んでいた時、事務所のスタッフがソウルの演劇街・大学路の舞台に立つパクを“発掘”した。当時パクは23〜24歳。監督は「演劇ならともかく、カメラの前では年齢はごまかせないだろうと思った。しかし演技はうまいし、実際に会ってみると肌がとてもきれいだった(笑)」と起用の経緯を回想した。

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 パクは監督の話に照れ笑いしながら、「音楽が大好きだった高校時代を思い出し、バンドメンバー役の他の俳優と一緒に2カ月間スタジオにこもって練習した。この映画は今も常に(俳優としての自分の)土台になっている」と懐かしそうに振り返った。


「演劇を始めたけれど、お金にならない。やめようと思うこともあった」
 また、観客から若い頃の夢について尋ねられると「音楽が好きだったが才能がなかった。演劇を始めたけれど、まったくお金にならない。やめようと思うこともあった。ある時、青春をテーマにした詩を読んで、演技を続けることを決めた。それが今につながっている」と、悩み多き日々があったことを告白した。

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 イム監督が「理想と現実のギャップについて語ろうとした映画」と話すように、作品のテーマは社会のレールから外れたアウトサイダーの人生。何もかも思い通りにいかない人の焦りと諦念を淡々と描きながらも、生活に追われて夢と輝きを失ってしまう人に向ける視線は温かい。俳優の熱演も見どころで、無名時代のファン・ジョンミンやリュ・スンボムも現在の活躍を予告する演技を見せている。

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 「ワイキキ・ブラザーズ」は興行的に成功したとは言えないが、観客や評論家からは高い評価を受けた。1990年代までの多くの韓国映画が強いメッセージ性を備えていたのとは対照的な、作家主義的な感性が人々の心をつかんだのだ。韓国映画の歴史において2000年代前半という時代は「多様なジャンル映画が花開いた時代」といえる。この時期は教育機関で映画を学んだ人や芸術家、作家といったさまざまな人材が映画界に参入した。同時期に製作システムが確立してきたこともあり、韓国の映画産業は急激な広がりをみせた。

 今回、映画祭でこの時代の映画を再見し、発想力の豊かさに改めて驚かされた。特定のジャンルに偏りがちな商業映画へのアンチテーゼとしての映画祭の力を再認識した。

(写真・文 芳賀恵)

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1〜3:上映後の質疑応答に参加する(右から)イム・スルレ監督、パク・ヘイル=5月3日
4:映画祭メーン会場
5:「ワイキキ・ブラザーズ」場面写真=映画祭事務局提供

posted by 映画の森 at 21:27 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする