2020年02月29日

韓国の映画人、「ポスト・ポン・ジュノ法」制定求め署名 映画産業の構造改革求める

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 「次世代のポン・ジュノを生み出すためには映画産業の構造改革が必要」――。韓国の映画人らが、映画産業における「格差」を解消する法案(通称「ポスト・ポン・ジュノ法」)に賛同し、署名を行った。

 署名を呼びかけたのは「映画産業の構造改善法制化準備の集い」。同団体が作成した映画産業の構造改善を求める宣言書に、2月26日までに1325人が賛同した。

 同団体が求めるのは次の3項目だ。まず、大企業の映画配給業と上映業の兼業制限。報道資料によると、韓国ではシネコン大手3社(CJ・ロッテ・メガボックス)のシェアが大きく、国内の全映画館の入場料金の97%を占める。3社は配給も手掛けるため、利益が社内のみで循環し、製作者や出演者、スタッフに還元されないことが問題だとの指摘だ。

 次に、特定の映画のスクリーン独占・寡占の禁止だ。昨年、ある人気の映画が一日の上映延べ回数の81%を占めたという。この日の全国の上映作品数は106本だった。実際に韓国のシネコンではスクリーンの半分以上をたった一本のブロックバスター映画が占めることが珍しくない。そのたびに「多様性」が叫ばれるが、なかなか改善しないのが実情だ。同団体は、韓国の映画館の売上高の上位10本の合計額は全体の46%を占め、米国(33%)、日本(36%)に比べて偏りが顕著だと指摘する。

 三つ目はインディペンデント映画・アート映画の製作と、それらを専門に上映する映画館への支援の制度化。インディペンデント映画・アート映画の一般公開数は全体の9.5%に達するが、観客のシェアはわずか0.5%だという。

 署名簿には俳優のムン・ソリ、ソル・ギョング、アン・ソンギ、オム・ジョンファ、イ・ソンギュン、チョン・ウソン、監督のイム・グォンテク、イム・スルレ、イ・ミョンセ、ヤン・イクチュンらが名を連ねている。

 法案の名前となっているポン・ジュノ監督の名前は署名簿にはない。「パラサイト 半地下の家族」のアカデミー賞受賞も、CJエンターテインメントが配給を手掛けたからこそ実現したとも考えられるわけで、単なる「大企業憎し」の発想だけではこの問題は解決しないと思われる。

 ただ、報道資料には「多くの映画人から『大企業と契約関係があり、今すぐ署名するのは難しい。理解してほしい。しかし意志は同じだ』との声が寄せられた」とある。すぐれた映画人を発掘・育成するには、さまざまな映画が観客の目に触れることが不可欠だ。どこかに眠る「未来のポン・ジュノ」のために、映画人がどう取り組んでいくのかに注目したい。

(文・芳賀恵)

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2020年02月26日

「パラサイト 半地下の家族」ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ来日「世界は同じ苦痛を抱えている」

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 米アカデミー賞で外国映画として史上初の作品賞を含む最多4部門を制した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督、主演のソン・ガンホが2020年2月23日、東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見した。格差社会を巧みな演出で描いたポン監督は「世界のさまざまな国が同じ苦痛を抱えている。社会の二極化の事実を暴くより、未来に対する恐れを描きたかった」と語った。

 日本でも公開中の「パラサイト 半地下の家族」は、2月22日までに興行収入30億円(動員約220万人)を突破。韓国映画として「私の頭の中の消しゴム」を超え、歴代興行収入1位を記録した。ポン監督は「劇場で熱く反応してくれた日本の観客に感謝したい」と語った。

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ソン「監督の『ねっとりしたところ』が好き」
 さらに、ソンは開口一番、日本語で「ソン・ガンホです」とあいさつ。日韓の映画交流が盛んだった2000年代初頭を振り返り「残念なことにその後は減ってしまった。『パラサイト』を機に韓国の素晴らしい監督の作品、日本の優れた芸術家の活動が関心を呼び、互いの文化に共感が持てればいいと思う」と話した。

 二人は「殺人の追憶」(03)、「グエムル 漢江の怪物」(06)、「スノーピアサー」(13)を経て4作目のタッグ。ソンはポン監督の魅力を「ねっとりしたところ」と表現。カンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)受賞ではうれしさのあまりポン監督の胸を強く叩き、骨にひびが入ってしまったという。監督との仕事は「祝福であり苦痛。監督が芸術家として持つ野心を、私が俳優として達成するための苦痛。現場では監督とあまり話さず、何を撮ろうとしているか探るのが好きだ。俳優としては難しく、楽しく、興味深い行為で、あえて尋ねずに見つけようと心がけている」と明かした。

 一方、ポン監督は、ソンについて「演技が本当に素晴らしい」と絶賛。脚本をあて書きする時は「うきうき草原をはねる子馬のような気分になる」と高い信頼を寄せている様子を見せた。

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ポン監督「匂いを語ることで、一線を越える状況描いた」
 また、作品の重要なポイントとなる「匂い」について、ポン監督は「匂いは礼儀に関することなので、たとえ感じても口に出せない。生きる環境、生活条件、置かれた状況を表すもの。映画では意図せず匂いについて聞いてしまうことで、人間の礼儀に対して一線を越えてしまう状況を描いた」と語った。

 これに対し、視覚の上には表れない匂いを繊細な演技で表現したソンは「目に見えない線や匂いは、映像で見せにくい。演技する時は、漠然と観念的な方法ではなく、ドラマの構造の中に入り込み、心理的に理解するよう心がけている」と話した。

 全米俳優組合(SAG) 賞の作品賞にあたるキャスト賞受賞について、ソンは「俳優のアンサンブルに与えられる賞。題名は『パラサイト』だが、私たちのこの社会をどう生きるか、寄生ではなく共生を描いている。(演技のアンサンブルを評価する)賞が獲れて、意図がきちんと伝わったと考えている」と述べた。

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ポン監督「ウイルスより過度な反応、国家的・人種的な偏見が恐ろしい
 新型コロナウイルスが拡大する現状について、ポン監督は「浦沢直樹さんの『20世紀少年』を思い出す。人間心理が作る不安や恐怖が大きく、巻き込まれると災害を克服するのが難しくなる。過度な反応や国家的・人種的な偏見で、より恐ろしいことが起きる。我々は問題を乗り越えられると希望的に考えている」と前向きに語った。

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 作品を通じて伝えたかったことについて、ポン監督は「世界のさまざまな国は同じ状況、苦痛を抱えている。二極化と呼ばれるその事実を暴くより、未来に対する恐れを描きたかった。未来の私たちは二極化を克服しうるのか。たやすいことではない。私は悲観主義者ではないが、今後どうすべきなのか。私の不安や恐れは、この時代を生きるすべての人が抱えているのではないか。メッセージやテーマを真顔で伝えるのが得意ではない。冗談交じりで伝えるのが好きだ。声高に主張するより、映画的な美しさの中、映画的方法で、俳優の豊かな表現とともに、映画的な活気をもって伝えたかった」

ポン監督「クラシックを作りたい。『七人の侍』のような」
 最後に今後の目標についてポン監督。「恥ずかしいが……クラシックを作りたい。作品が時間を超えてほしい。ほぼ妄想のようなものだ。キム・ギヨン監督の『下女』や黒澤明監督の『七人の侍』、ヒッチコック監督の『めまい』のように」と話した。

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 また、翌24日に東京・六本木で開かれた舞台あいさつには、二人の20年来のファンという草なぎ剛が登場。カンヌ最高賞、米アカデミー賞など世界で評価されたことを祝福した。

(文・遠海安 写真・岩渕弘美)

「パラサイト 半地下の家族」(2019年、韓国)

監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン

全国公開中。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.parasite-mv.jp/

作品写真:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
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2020年01月12日

「パラサイト 半地下の家族」滑稽で残酷でほろ苦い 離れがたきこの世界

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 カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲ったポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」は、格差社会を糾弾する作品ではない。貧富の構図は、物語の入り口に過ぎない。

 半地下の家に住む貧乏な家族が、金持ち家族の豪邸に入り込み、「寄生」する悲喜劇だ。貧乏と金持ち、それぞれの家族の住居、家具や持ち物、服装や職業はリアルに考えられ、日常生活が詳細に映し出される。しかし、監督はどちらが幸せとも、不幸せとも断定しない。どちらがいいとも、悪いとも言わない。ポン・ジュノの映画はいつも饒舌だが、メッセージを発しない。

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 そんな中で、あえて意味を持たされた存在が二つあった。一つは匂いだ。貧乏家族の父親(ソン・ガンホ)が、爆発するきっかけになるのが、体にしみついた匂いだった。人は自分の匂い(具体的にも抽象的にも)に気づかない。ぬぐえない。だからこそ、他人に指摘されると癇に障る。知らぬうちに忌むべき「貧しさ」を拡散していたことを、父親は他人に指摘され、傷つき、爆発する。

 もう一つは、貧乏家族の元に到来した大きな石。息子は最後まで「なぜ離れられないのか分からない」と言いながら、石を持ち歩き、最後の決定的なエピソードが起きる。来日インタビューで石の意味を問われたソン・ガンホは、「私にも分からない」と答えていた。なぜなら、石は人なら誰しも抱えている「生きにくさ」の元凶──自分ではどうにもならない、内側に抱える業のようなもの──だからだ。人間の数だけ石があるから、何を象徴するかは言えない。ソン・ガンホはそれを理解していただろう。

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 ポン・ジュノの「語り」の力は圧倒的で、ディテールと構図に目を奪われ、ユーモアとリアリティーに感情をゆさぶられ、ぐいぐい物語に引き込まれていく。見終わった後、監督が何かを「訴えた」のではなく、この世界──ある時は容赦なく、逃げ出したく、ある時は心地よく、離れがたい──私たちが暮らす世界を、そのままざっくりすくい取っていたことに気づく。そこに暮らす貧乏な家族も、裕福な家族も、時に滑稽で、時に温かく、幸せにも、不幸せにも見える。自分と同じ人間なのだ。

 メッセージを発しないポン・ジュノが、この寄る辺なき世界を楽しく、ほろ苦く、残酷に、豊かに見せてくれて、心から満たされた。

(文・遠海安)

「パラサイト 半地下の家族」(2019年、韓国)

監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム

2019年12月27日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.parasite-mv.jp/

作品写真:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
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2019年11月26日

「EXIT」有毒ガスから逃れ、ビルを駆け上がれ 韓国サバイバル・アクション

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 今年の夏、韓国で大ヒットしたサバイバル映画「EXIT」。若手実力派俳優チョ・ジョンソク、ガールズ・グループ「少女時代」のユナが、体を張ったアクションに挑戦している。単純なパニック映画と違い、ドキドキしながら心にじわじわ響く感動作品だ。

 何をやってもうまくいかない就職浪人のヨンナム(チョ・ジョンソク)は、母(コ・ドゥシム)の古希祝いの宴会場で、学生時代に思いを寄せたウィジュ(ユナ)と再会する。再会の喜びもつかの間、二人は突如発生した有毒ガスに巻き込まれる。上昇してくるガスから逃れるため、ビルの上へ上へ上がっていく二人。屋上から救助が始まったが、二人はヘリに乗りきれず、次の救助を待つことに。しかし待つ間もガスは広がり、二人は自力脱出を試みる──。

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 毒ガス発生の原因や、巻き込まれた人々の人間模様など、よくあるパニック映画のエピソードはほとんど描かれない。どん底にいる若者たちが、迫り来るガスから逃れるため、必死に上を目指して行く。ヨンナムとウィジュは、学生時代山岳部だった。その経験を生かし、身の回りのものと体を使い、自分と互いを信じて困難を乗り越えて行く。

 舞台はとある町のそれほど高くないビル。派手なアクションもなく、特別なヒーローもいない。二人が力を合わせ、壁を登り、建物を飛び移る。必死で生きようとするさまは、厳しい現状からの脱出にも重なる。緊迫感の間に、微妙な心境の変化も描いている。

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 チョ・ジョンソクは、軽快な動きとコミカルな演技で存在感が際立つ。動画で現場を見た人たちが、ドローンを使って見ず知らずの二人を手助けする。動画サイトでは多くの人が声援を送る。いまどきのツールをうまく取り入れており、最後まであきらめない二人はすがすがしく、思わず応援したくなる。イ・サングン監督は、青龍映画賞で新人監督賞を獲得した。

(文・岩渕弘美)

「EXIT」(2019年、韓国)

監督:イ・サングン
出演:チョ・ジョンソク、ユナ、コ・ドゥシム、パク・インファン、キム・ジヨン

2010年11月22日(金)、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/exit/

作品写真:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

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2019年09月25日

ジュンス、ミュージカル俳優として存在感「いつか日本のキャストと、日本語で舞台に立ちたい」

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 高い歌唱力と圧倒的なパフォーマンスで人気の韓国の歌手、ジュンスがこのほど、千葉・幕張でファンミーティング「2019 XIA FANMEETING HOME PARTY NIGHT」を開催した。最近はミュージカル俳優としても活躍し、人気グループ「JYJ」のメンバーとして忙しく走り続けている。日本のファンに「愛されているから続けることができた。うれしく、感謝している」と話した。

 昨年秋の兵役除隊後は「一人でゆっくり過ごす時間も大切に楽しんでいる」という。最近主演したミュージカル「エクスカリバー」ではアーサー王役にも挑戦。「セリフも歌も多く、アクションなど覚えることが多かった。主演のプレッシャーもあり、大変だったが頑張った」と振り返った。また、今後もミュージカルでは「新しい役に挑戦を続ける姿を見せたい」と意欲十分。「いつか日本で、日本のキャストと、日本語でミュージカルの舞台に立って、日本で賞を獲りたい」と夢を語った。

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 今回は「ホームパーティー」がテーマのファンミーティングということもあり、トークを中心にしっとりしたバラードや舞台「エクスカリバー」より「王になるということ」などのナンバーを情感たっぷりに歌い上げ、ミュージカル俳優としての実力を見せつけた。久しぶりにミュージカル・ナンバーを歌ったそうで「一小節だけで公演で歌った時の感情を思い出したり、世界観を感じられる。幸せな気分になれる」と話していた。

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 また、ジュンスのコンサートやイベントでおなじみの「ファンの願いごとを3つかなえるコーナー」では、リクエストに応えてミュージカル「モーツァルト」から「黄金星」をアカペラで熱唱。得意のダンスや、韓国の太鼓・チャンゴの演奏も披露するなど、多才ぶりを見せた。最後に「皆さんのおかげで幸せ。力ももらった。頂いた愛を次のステージでお返しできるよう頑張ります」と、ファンへの感謝で締めくくった。

(文・岩渕弘美)

写真:(c)JX Entertainment/宮澤正明写真事務所
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