2016年08月01日

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016特別招待作品「I PHONE YOU」重慶からベルリンへ 中国娘の恋の結末は?

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 中国・重慶で花束の宅配サービスをしている若い女性、リン。ベルリンからきた中国人ビジネスマンと一夜をともにし、熱を上げてしまう。帰国した後も、彼から贈られたiPhoneで連絡を取り合っていたが、もう一度会いたい気持ちを抑えられず、一人、ベルリンへと旅立つ。

 空港で出迎えたのは、彼の部下でマルコというドイツ人の男。とりあえず手配されたホテルで一晩過ごすと、翌日また男が現れる。彼女の世話をするよう命じられているのだろう。しかたなく行動を共にするが、いつまでたっても、彼には会わせてもらえない。「仕事で忙しいから」と言い訳するが、本当にそうなのか。業を煮やしたリンは、自力で彼に会おうと、ベルリンの街にさまよい出るが――。

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 言葉の通じない大都会で、恋する人を探し求めるヒロインの奮闘をコミカルに描く「I PHONE YOU」。主人公のリンに扮するのは、「レイン・オブ・アサシン」(2010)などに出演した中国の人気女優ジャン・イーエン。チンピラに絡まれたり、警察に捕まったり、数々のピンチに陥りながらも、決してくじけず、目標に向かって邁進する行動派のヒロインを、生き生きと演じている。

 そんなリンのボディガードとして付き従うマルコ役には、「アイガー北壁」(2008)のフロリアン・ルーカス。気の強いリンに手を焼きながらも、徐々に彼女を好きになっていく中年男を、クールに演じている。この2人の関係が、エンディングに向かってどう進展していくかが大きな見どころだ。

 メガホンを取ったのは、ドイツ在住の中国人女性監督タン・ダン。これまで多くのドキュメンタリー映画を撮ってきた手腕が、ベルリンの街のロケ撮影に発揮されている。大通りから小さな路地まで、さまざまなエリア、スポットを紹介しながら、その中に描き込まれる移民たちの姿。ドイツの現状が鮮やかに写し取られている。

 中国の映画プロデューサー、ワン・ユーが、タン・ダン監督と組んだ、初の中独合作映画。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016では特別招待作品として上映された。ぜひとも劇場公開してほしい秀作である。

(文・沢宮亘理)

「I PHONE YOU 」(2011年、中国・ドイツ)

監督:タン・ダン
出演:ジャン・イーエン、フロリアン・ルーカス、ヒー・ビン、デイヴィッド・ウー、ワン・ハイゼン

作品写真:(C)Ray International (Beijing) LTD.

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2016年07月22日

「ラサへの歩き方 祈りの2400km」チベット五体投地の巡礼の旅 「他者のため」大地にひれ伏す人々

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 チベット東端の村から西端の聖なる山へ。約2400キロを1年かけ、村人11人が仏教の礼拝方法「五体投地」で歩く。中国映画「ラサへの歩き方 祈りの2400km」は、チャン・ヤン(張楊)監督が現地に赴き、チベットの人々の暮らし、生と死、信仰に密着。村人を俳優として起用して忠実に再現した。

 中国チベット自治区東端のマルカム県プラ村。兄を亡くした70歳のヤンペルは「死ぬ前にラサへ行きたい」と願う。甥(おい)のニマはその思いを受け、家族に「巡礼に出る」と宣言。村の3家族11人で西へ向かうことになった。トラクターにテントや食料を積んでニマが運転。一行は手に板を付け、皮の前掛けをして、五体投地で進んでいく。

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 五体投地は仏教で最も丁寧な礼拝の方法だ。まず合掌。両手、両ひざ、額を大地に投げ出してうつぶせになり、立ち上がる。この動作を繰り返して進む。ずるをしてはいけない。なにより「他者のために」祈らなければならない。

 巡礼の先々でさまざまな人に出会う。トラクターのオイルタンクのネジが外れた時は、近くの村の元村長が泊めてくれた。一行はお礼に畑を耕す。すれ違った巡礼夫婦は「ロバも家族同然。ラサに着いたらロバに福があるよう祈る」と言う。さらに病人を乗せた車に衝突され、トラクターが壊れてしまうが、ニマたちは相手を責めずに「早く病院へ」と促す。

 落石にあっても、道が冠水しても、五体投地の歩みは止まらない。一行の中の若い女性ツェリンは、途中で産気づいて出産。生まれた子供を抱きかかえ、再び旅に合流する──。

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 映像はとても自然にみえる。まるでドキュメンタリーのようだが、綿密に計算されたフィクションなのだ。チャン監督はチベットの村に3カ月間住み込み、まずは村の日々の暮らしを映像に記録した。村人の中から事前に想定した年齢、性別の人たちを選び、一緒に巡礼に出発。ラサまでの約1200キロはすべて収録した。

 歩きながら撮り、撮りながら考える。チャン監督は振り返る。「私は思考の幅を広げ、その時々につかんだものを脚本家として映画の物語にはめ込んだ。次に脚本家から抜け出し、監督の手法で表現した。撮影の過程で意識的に取捨選択、再構築する必要があった」。ドキュメンタリーとフィクションの境界を行く映像が、臨場感とリアリティーを高めた。

 監督が現地に「入り込んだ」感触は、実際の手触り、息づかいとして伝わってくる。日本には断片的にしか知らされないチベットの人々の日常、宗教観。「祈りはまず他者のため」であり、道端の生き物や自然にさりげなく心を配る彼ら。全身全霊で大地にひれ伏す姿に、思わず利己的な我が身を振り返る。

 約2400キロの旅を経て、たどり着いた聖なるカイラス山。白く雪をかぶった山肌を見ながら、一行は祈ることをやめない。巡礼に到達点などないのだ。それは人生そのものだから。

(文・遠海安)

「ラサへの歩き方 祈りの2400km」(2015年、中国)

監督:チャン・ヤン(張楊)
出演:チベット巡礼の旅をする11人の村人たち

2016年7月23日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.moviola.jp/lhasa/

タグ:レビュー
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2016年04月22日

「山河ノスタルジア」ジャ・ジャンクー監督、チャオ・タオ会見「中国の急激な発展に翻弄される人々描いた」

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 1999年、2014年、2025年という3つの時代を背景に、一人の女性の半生を描いた中国映画「山河ノスタルジア」。ジャ・ジャンクーと主演女優のチャオ・タオがこのほど来日し、東京都内で記者会見した。ジャ監督は「中国社会の急激な発展に翻弄される人々の姿を描いた」と語った。

社会の激変に翻弄される人々

 暴力的な表現が目立った前作「罪の手ざわり」と比べると、かなり穏やかな印象を与える「山河ノスタルジア」。だが、ジャ監督は「中国社会の急激な発展に翻弄される人々の姿を描いた点は共通している」という。

 「たとえば99年にジンシェン(チャン・イー)と結婚したタオ(チャオ・タオ)は、2014年には離婚していて、息子の親権はジンシェンに渡してしまっている。裕福なジンシェンと暮らしたほうが、息子はよい人生を歩めると考えたからだが、このタオの判断には、中国社会の価値観が大きく影響している」

 タオとしては、よかれと思っての選択だったろう。だが、それによって彼女は大切なものを失ってしまう。

 「僕自身も社会の影響を受け、大事な人と過ごす時間を削るなど、人間的な感情をないがしろにしてきたという思いがある。この映画では、26年という長い時間の中で、タオが自分本来の姿から遠ざかっていく。多くのものを手に入れるが、その代償として感情を失っていく。そのプロセスを映画にしたかった」

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26年間を一人で演じるチャレンジ

 そんなジャ監督の意を受けて、ヒロイン役を演じたチャオ・タオ。「プラットホーム」(00)以来、ジャ監督の全作品に出演してきたが、25歳から50歳まで3つの年齢を演じ分けるのは初めて。大きなチャレンジだったが、2つの経験が演技上の助けとなった。

 「00年に『プラットホーム』で若者の一人を演じた。13年にはイタリアのアンドレア・セグレ監督作品『ある海辺の詩人 小さなヴェニスで』で、母親役を演じた。この2つの役柄を経験していたことが、タオを演じるうえで大きな参考になった。興奮しやすく喜びをストレートに表現する若き日のタオと、情感豊かだが身体的には若さが失われていく中年期のタオ。情感と身体をそっくり入れ替えるような演技を目指しました」

 脚本にはタオの人生がすべて書かれているわけではない。空白部分は想像で補ったという。

 「撮影前に、タオがどんな人生を歩んできたかという、彼女の伝記のようなものを書いてみた。それによってタオが自分の中で熟成し、撮影現場に入ったときには、私の中にタオという女性が出来上がっていました」

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時代を象徴する音楽、記憶と結びついた風景

 冒頭ディスコのシーンで流れるのは、ペット・ショップ・ボーイズのヒット曲「Go West」。ジャ監督は99年という時代を象徴するものとして選んだという。

 「99年は、中国にとって2回目の大きな経済改革がスタートした年。その年、若者は何をしていたかと考え、最初に頭に浮かんだのがディスコだった。中国でディスコが流行り始めたのは、90年代の半ばぐらい。後半になると、大都市から小さな町へも波及していった。僕もよく通っていたが、当時とても人気のあったのが「Go West」。あの時代の若者の気持ちを反映した曲だった。“前進していこうよ、きっと何かが変えられるよ”。そんな内容の詞だったと思う」

 音楽とともに重要な役割を果たしているのが風景だ。99年のパートでは山西省・汾陽(フェンヤン)の風景、そして25年のパートでは息子が夫とともに移住したオーストラリアの風景が映し出される。2つの風景には明らかな違いがある。

 「風景は人間の記憶と結びついている。たとえば、僕は黄河の風景を見ると、大学時代に黄河のほとりで花火をした記憶が蘇る。99年の背景となっているのは、まさにそういう風景。登場人物たちが生まれ育ち、愛情を育んだ記憶が染みついている。人間と風景との関係は濃密だ。一方、25年のオーストラリアは、仮住まいのような、よそよそしい風景。故郷から隔絶した場所で、人間との関係も希薄だ」

父の死によって、家族の一員と改めて意識

 14年のパートでタオは父親を亡くすが、ジャ監督も06年に父親と死別している。

 「父が生きていた時は、家族のことなど気にとめなかった。しかし、父が死んで、自分は家族の一員だということを改めて意識させられた。実家から帰るときのことだった。母が家の鍵を手渡してくれた。僕が実家の鍵を持っていないことを、母は知っていたのだ。これはつらかった」

 タオと同様に、若い時は気づかなかった家族の有り難さ、人間的な感情の大切さを噛みしめるジャ監督。

 「人生はある年齢に達しないと分からないこともある。しかし、映画ではその年齢にならなくても、それを体験できる。だから若い人にもぜひこの映画を見てもらいたい」

(文・沢宮亘理)

「山河ノスタルジア」(2015年、中国・日本・フランス)

監督:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ、チャン・イー、リャン・ジンドン、ドン・ズージェン、シルヴィア・チャン、

2016年4月23日(土)、Bunkamuraル・シネマほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.bitters.co.jp/sanga/

作品写真:(c)Bandai Visual, Bitters End, Office Kitano
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2016年02月17日

「ドラゴン・ブレイド」ジャッキー最新作 ローマ軍VS中国西域軍の死闘、壮大なスケールで

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 ジャッキー・チェン主演最新作「ドラゴン・ブレイド」。紀元前の中国で、ローマ帝国軍と西域連合軍が戦った史実をもとに、壮大なスケールで描く歴史アクションだ。監督は「三国志」、「項羽と劉邦」などのダニエル・リー。ジョン・キューザック、エイドリアン・ブロディが出演している。

 紀元前50年、前漢時代の中国。シルクロードの砂漠地帯を警備する西域警備隊長のフォ・アン(ジャッキー・チェン)は、金貨密輸の濡れ衣を着せられ、異民族と衝突の緊張高まる最前線へ送られる。

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 国境の砦修復を進めていたフォンの前に、謎の軍隊が現れた。ヘルメットをかぶった屈強な兵士の一軍は、はるか西方から来たローマ帝国軍。率いていたのは将軍ルシウス(ジョン・キューザック)だった。祖国での権力争いに巻き込まれ、暗殺された上官クラッススの幼い息子を連れ、東方へ逃れてきたという。

 ルシウスに敵意がないことを知ったフォ・アンは、ローマ軍を砦に招き歓待する。恩義を感じたルシウスは、先進的な「ローマの建築技術で砦を修復しよう」と申し出る。フォ・アンとルシウスに芽生えた友情。二人は過去を語り合う仲となる。

 一方、西方にはさらにローマから中国を目指す一軍がいた。同じくクラッススの息子ティベリウス(エイドリアン・ブロディ)。大軍を率いてシルクロード、果ては中国の侵略を狙っていた──。

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 東西の豪華キャストで描かれる「ドラゴン・ブレイド」。まず物語のスケールが大きい。紀元前の昔、シルクロードの砂漠地帯で、ローマ軍と西域軍が死闘を繰り広げた──歴史ファンでなくても胸躍るエピソードだ。中国では06年、実際に「甘粛省でローマ次帝国軍の末えいが今も暮らしている」とのニュースが伝えられ、学術的な検証が進められているという。

 砂漠での大規模なロケ撮影、国際色豊かなキャスト。急成長する中国映画界のパワーを感じる作品でもある。すでに60代になったジャッキー・チェンだが、監督、製作、アクション監督、主題歌まで、なお縦横無尽の働きぶりだ。

「ドラゴン・ブレイド」(2014年、中国・香港)

監督:ダニエル・リー
出演:ジャッキー・チェン、ジョン・キューザック、エイドリアン・ブロディ、リン・ポン、チェ・シウォン

2016年2月12日(金)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://dragon-blade.com/

作品写真:(C)2015 SPARKLE ROLL MEDIA CORPORATION HUAYI BROTHERS MEDIA CORPORATION SHANGHAI FILM GROUP CO., LTD. SHENZHEN TENCENT VIDEO CULTURE COMMUNICATION LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
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2016年01月18日

「最愛の子」ピーター・チャン監督に聞く 中国の幼児誘拐と親の葛藤「心で対話できる映画を」

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 中国で多発する幼児誘拐事件を題材に、親子の愛を描く映画「最愛の子」が2016年1月16日に公開された。一人の子供の誘拐をめぐり、生みの親と育ての親が出会い、葛藤する物語。ピーター・チャン監督は「観客一人一人が心で対話できる映画を撮りたい」と語った。

 中国広東省深セン市。3歳の男児が突然姿を消した。両親は警察に届け、ネットでも情報提供を呼びかけるが見つからない。3年後。遠く離れた中国北部の村で息子は発見されたものの、別の女性に育てられ、実の親を完全に忘れていた。生んだ両親と育てた女性。どちらにとっても「最愛の子」を間に子供も揺れ動く──。

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 年間約20万人の子供が行方不明になる中国。原因として経済成長で拡大する都市と農村の格差、一人っ子政策による農村の人手不足などが指摘されている。チャン監督は深センで起きた実際の事件をフィクションに仕立てた。なぜ悲惨な事件が起きるのか。

 「封建主義や男尊女卑、農村の人手不足。農村に男は欠かせない。女の子は嫁げば労働力は一人減るが、男なら嫁をもらえば一人増える。1万元(約18万円)で買えるなら男の子を買うことが、なんとも思われていない。その結果、年に20万人の子供が誘拐されている」

 「映画では子を誘拐された夫婦も問題を抱えていた。彼らは経済発展である程度豊かになった中流の人々だ。よりよい生活、チャンスを求め、(深センのような)大都会に出てきた。しかし、豊かになったことで結婚生活がぎくしゃくし、いい親でなくなる。その隙に子供が誘拐されてしまう」

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 香港映画界を代表する作り手で、最近は中国で大作を次々手掛けるチャン監督。文化の違う中国で作る難しさを今も感じている。今回はキャスティング段階から「香港との差」を感じたという。育ての親を熱演したビッキー・チャオも決定まで曲折があった。

 「最初に打診した時は即答でOKだったが、脚本を読んで断ってきた。話を聞いたところ、部分的に納得できないというので調整した。俳優が役を引き受けるか断るか、理由はよく分からないことがある。私の推測だがテーマが幼児誘拐だったことも関連しているのだろう」

 チャオが演じたのは、子供を誘拐した側の女性。つまり平たくいえば悪役である。しかし、彼女にも事情があり、追い詰められていた。生きるために子供を受け入れ、わが子として育てていた。しかし中国では「誘拐する側に立つ」視点は受け入れられないという。

 「中国と香港、中国と外国、中国の人々と私の考え方の違いかもしれない。ビッキーは『誘拐された側の話は素晴らしい。涙が出切った。感動した』と言った。しかし、彼女が演じるのは誘拐した側の女性だ。普通なら誘拐は悪い。批判すればいい。だが私はそれは意味はないと思った。彼らはなぜ悪いことをしなけらばならなかったのか。理解して知ることが大事だ」

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 しかし監督いわく、理由がどうあれ中国では「誘拐犯に同情するような映画」は共感を呼ばない。だから「ビッキーの考え方は中国では主流だと思う」と監督。これに対し「誘拐側の役を演じたい」と言った有名俳優もいたという。

 「つまるところ考え方、価値観の違いだ。中国の俳優でも人によって違う。一般的にいえるのは、都会に住んでいる人たちは農民にマイナスイメージを持っている。わがままで自己中心的で、ずるくて強引、などという。作品を見てもまだ『誘拐犯はうそを言っている』という人がいる」

 実際の事件を元にした社会性の高い「最愛の子」。過去に「ラヴソング」(96)、「君さえいれば 金枝玉葉」(94)など、良質なドラマを生んできた監督の演出も冴え渡る。子を思う親の気持ちが胸に迫り、涙を流さずにはいられない。しかし、監督はこうも言った。

 「ビッキーが電話ごしに言ったんだ。『監督は社会的責任を持っている人ですね』と。いや違う。私はただ映画を撮る人間だ。私の映画は、私自身と心で対話ができなければならない。さらに観客一人一人が対話できれば、私にとっていい映画だ。年齢、時代によって異なる映画を撮る。異なる段階で、異なる対話が観客とできればいいと思う」

(文・遠海安)

「最愛の子」(2014年、中国・香港)

監督:ピーター・チャン
出演:ビッキー・チャオ、ホアン・ボー、トン・ダーウェイ、ハオ・レイ、チャン・イー

2016年1月16日(土)、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.bitters.co.jp/saiainoko/

写真は東京フィルメックス事務局提供・撮影:吉田留美
作品写真:(C)2014 We Pictures Ltd.

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