2019年10月23日

「ロボット2.0」スマホが鳥となって人々を襲う 現代社会に警鐘鳴らすインド娯楽大作

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 インド南部の大都市・チェンナイ。ある日突然、街からすべてのスマホが消えた。人々の手から、まるで鳥のように空へ飛んで行ったのだ。原因が分からず、携帯電話会社と警察署の前に群集が集まり、大パニックになる。同じ頃、携帯業者や通信大臣が「スマホに殺される」事件が続発。ロボット工学の専門家バジー博士(ラジニカーント)は、知的で美しいロボットの助手ニラー(エイミー・ジャクソン)と事件の謎を追う──。

 「ロボット」(10)の大ヒットで製作された「ロボット2.0」は、主演ラジニカーント、シャンカール監督、音楽のA.R.ラフマーンが再集結。インド映画史上最高の90億円が投じられ製作された。

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 時代設定は前作から8年後。人々の手から飛んで行ったスマホは、意志を持ったかのごとく、要人を殺し始める。捜査に乗り出したバジー博士も、飛んできたスマホの大群に襲われる。集団化したスマホは巨大な怪鳥に変身。軍隊も手に負えなくなり、バジー博士は封印したロボット「チッティ」を復活させ、人類を守ると議会で宣言する。

 奇想天外な物語に、視覚効果抜群のVFXが融合。黒いサングラスとシルバーのスーツ姿のラジニが“おじさんロボット”という開き直ったキャラクターだ。監督は逆にコミカルな設定を利用し、実写とVFXをミックスさせた変幻自在な映像で、スーパーパワーを持った超人ロボット「チッティ」を大活躍させる。

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 「スマホが人を襲う」というと、むちゃくちゃな話に感じるが、裏には非常に重いメッセージが込められている。冒頭で鳥類学者のパクシ・ラジャン博士が、鉄塔で首吊り自殺する。インドでは増え続ける電波塔の影響で、鳥が次々と死んでいた。嘆いた博士はスマホ使用制限を訴えてきたが、誰にも受け入れられず、絶望して自殺したのだ。

 1年後。鳥の怨念とパクシ博士の負のエネルギーは人々からスマホを奪い、巨大なモンスターとなって復讐を始めた。表向きエンターテインメント映画の形を取りながら、環境問題を訴え、スマホ依存の現代社会に警鐘を鳴らす奥深さだ。

 敵役のパクシ博士には当初、アーノルド・シュワルツェネッガーを構想したという。あいにく実現せず「パッドマン 5億人の女性を救った男」(18)のアクシャイ・クマールが演じた。「ロボット対ターミネーター」の夢の対決は実現しなかったが、クマールも社会に見放された鳥類学者を悲哀たっぷりに演じている。

 インド映画の娯楽性に英米のVFXチームが配置され、一歩も二歩も予想の先を行く最強映画が生まれた。クライマックスはやり過ぎな気もするが、インド映画お約束の豪華絢爛なミュージカルも盛り込んだ。ハリウッドを超えてサービス精神満点なインド映画。続編「3.0」の製作に期待したい。

(文・藤枝正稔)

「ロボット2.0」(2018年、インド)

監督:シャンカール
出演:ラジニカーント、アクシャイ・クマール、エイミー・ジャクソン

2019年10月25日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://robot2-0.com/

作品写真:(C)2018 Lyca Productions. All rights reserved.
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2019年10月16日

「ガリーボーイ」ラップで世界を変えたい インド発青春サクセス・ストーリー

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 インド最大の商業都市、ムンバイ。大学生のムラド(ランビール・シン)は、雇われ運転手を父にスラムで暮らしている。両親はムラドを大学に行かせ、成功できるよう懸命に働いていた。しかしムラドは、生まれで人を判断する社会に憤り、地元の悪友とつるみ、内緒で裕福な恋人と交際していた。

 ある日、大学でラップをする学生MCシェール(シッダーント・チャトゥルヴェーディー)と出会い、言葉とリズムで気持ちを自由に表現する世界にのめりこんでいく。ムラドは“ガリーボーイ”(路地裏の少年)と名乗り、現実を変えるためラップ・バトルで優勝を目指す決意する──。

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 実在するインドの若きラッパー、Naezy(ネイジー)とDivine(ディバイン)の半生を映画化した。主演は「パドマーワト 女神の誕生」(18)のランビール・シン。監督は「チャンスをつかめ!」(09)、「人生は一度だけ」(11)のゾーヤ・アクタル。字幕監修は日本語ラップに造詣の深い、いとうせいこう。

 映画大国インドの作品は、最近すさまじい勢いで日本に押し寄せている。口コミでロングランヒットしたアクション史劇「バーフバリ」二部作など劇場公開も増えた。豪華絢爛なダンスと歌の「ムトゥ 踊るマハラジャ」(95)、青春コメディー「きっと、うまくいく」(09)、VFX満載のSFアクション「ロボット」(10)などジャンルは多岐にわたる。英国ではダニー・ボイル監督がムンバイを舞台に「スラムドッグ$ミリオネア」(08)を撮って大ヒットさせた。

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 「ガリーボーイ」の舞台もムンバイで、スラム街のダラビ地区だ。貧困と格差の閉塞感に苦しむムラドは、両親と祖母、弟とプライパシー皆無の狭い家に暮らしている。仲間が車を盗んだり、子どもを使って麻薬を取引する様子を目の当たりにし、悩み苦しむ一方で、裕福な医学生の恋人サフィナ(アーリア・パット)との交際は13歳から続いている。しかし、サフィナはムラドとの交際を両親に隠している。

 繊細で恥ずかしがりのムラドは、内に秘めた熱い思いを隠して学生生活を送っていたが、大学で行われたコンサートでラップと出会い、熱い思いを言葉に込める世界へ足を踏み入れる。ラップはアーティストの魂の叫びをリズムに乗せ、韻を踏んで発する歌唱法だ。遊びで始めたラップが、魂の叫びへ変わる邦画「サイタマノラッパー」シリーズと同じである。主人公が困難を乗り越えて魂の叫びを吐き出す姿は熱い。

 貧困と格差の激しいインドで、ラップを武器に未来を切り開く青年のサクセス・ストーリーだ。ランビール・シンは「パドマーワト 女神の誕生」で披露した筋骨隆々な自慢の肉体美を封印。繊細な青年を好演している。

(文・藤枝正稔)

「ガリーボーイ」(2018年、インド)

監督:ゾーヤー・アクタル
出演:ランビール・シン、アーリアー・バット、シッダーント・チャトゥルベーディー、カルキ・ケクラン、ビジャイ・ラーズ、ビジャイ・バルマー

2019年10月18日(金)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gullyboy.jp/


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2014年02月12日

「神さまがくれた娘」 温かく固い父娘の愛 南インドより 美しい風景とともに

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 幼い少女と知的障害の父の愛を描くインド映画「神さまがくれた娘」。インド南部・タミル語映画界が送る心温まる人間ドラマだ。

 インド南部の避暑地ウッティー。チョコレート工場で働くクリシュナ(ビクラム)は、5歳の一人娘ニラー(ベイビー・サーラー)を男手一つで育てている。ニラーを産んだ母は出産直後に亡くなった。しかし、父娘は職場の同僚や隣人の助けを受け、穏やかで幸せな毎日を送っていた。

 ニラーは「お月様」の意味。その名の通り、丸く輝くように愛らしく、誰からも好かれる少女だった。学校に通うようになったニラーは、女性事務局長のシュヴェータと親しくなる。シュヴェータはある日、ニラーが姉の娘だと知る。姉は家を出たまま音信不通となり、そのまま亡くなっていた。

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 姉が残した一粒種。クリシュナが子供ほどの知能しかないと知ったシュヴェータは、父で資産家のラージェンドランと共謀。断りなくニラーをチェンナイの自宅へ連れ帰る。娘が突然いなくなり、クリシュナは混乱して街をさまよう。やがて若手弁護士のアヌ(アヌシュカー)と知り合い、娘を取り戻すため法的措置に訴えることに。

 果たしてニラーは父のもとへ帰れるのか。娘の幸せを何より願うクリシュナが、最後に選んだ結論とは──。

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 年間製作本数1600本以上、世界随一の映画大国インド。日本の3倍、米国の2倍だ。国内市場はヒンディー語など35言語に分かれ、それぞれにスター俳優がいる。中でも北部のヒンディー語、中西部のテルグ語と並ぶのが南部のタミル語映画。12年には262本が製作され、国内トップとなった。

 そんなタミル語映画界をけん引する実力派俳優の一人が、クリシュナを演じたビクラム。日本でも知られる“スーパースター”ラジニカーント(『ムトゥ 踊るマハラジャ』『ロボット』)に続く存在として、現地で高い人気を誇っている。

 一方、娘ニラーを演じたサーラーは、ヒンディー語映画界出身。今回の出演に向けタミル語を学び、台本を丸暗記して撮影に臨んだという。愛らしい表情、大人顔負けの感情表現が光る。舞台となる南インドの美しい自然も印象的だ。

 日本でもこのところ、インド映画の公開がコンスタントに続いている。昨年の「きっと、うまくいく」、「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」、「マッキー」などに続き、2月は「デリーに行こう!」と「神さまがくれた娘」が公開される。いずれも異なるジャンル、キャストに彩られ、インド映画の奥深さを知る機会になるだろう。

(文・遠海安)

「神さまがくれた娘」(2011年、インド)

監督:A・L・ビジャイ
出演:ビクラム、ベイビー・サーラー、アヌシュカー、アマラー・ポール、ナーセル

2014年2月15日(土)、渋谷ユーロスペース、シネマート六本木ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.u-picc.com/kamisama/

作品写真:(C)AP International All Rights Reserved.
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2014年02月10日

「デリーに行こう!」 美貌の女社長と無責任中年男 波乱と笑いの珍道中 インド発人情ロードムービー

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 美貌の敏腕女社長と無責任中年男が繰り広げる珍道中。2月15日公開の「デリーに行こう!」は、笑って笑ってほろりとさせられる、インド発の人情ロードムービーだ。

 インド最大の商業都市・ムンバイ。大手投資銀行のやり手女性社長ミヒカ(ラーラ・ダッタ)は仕事でデリーへ向かった。しかし、搭乗した便は機体トラブルで手前のジャイプールに着陸。やむなく怪しげなタクシーをチャーターし、陸路デリーへ向かうことに。

 車は夜道をひた走っていたが、運転手の道案内は頼りない。路肩に停車したところ、機内で見かけた布屋の男マヌ(ビナイ・パタック)と偶然再会する。調子のいいマヌは「俺が一緒に行く。大丈夫だ!」とむりやり乗車。ミヒカはなぜかマヌとデリーへ向かうはめになる。

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 有名ブランドのスーツで身を固め、潔癖症で完ぺき主義者のミヒカ。「なんとかなる」が口ぐせで、トラブルも気にしないマヌ。正反対の二人は車や列車を乗り継ぎ、旅先でさまざまな人たちに出会い、助けられて前へ進む。最初は怒りを爆発させていたミヒカも、徐々に心を開いていく。

 ついにデリーの灯が見えた。マヌの自宅を訪れるミヒカ。そこで見たものに、彼の楽観主義、前向きな姿勢の秘密が隠されていた──。

 マヌを演じたパタックによると、ムンバイは「洗練されて都会的な大都市」。デリーは「もっとのんびりして人と人の関係が緊密な街」だそうだ。そこを水と油、住む世界も違う二人が、車に乗り合わせて山あり谷ありの旅を展開する。

 行き先々でみられるインドの風景、生活が興味深い。掘っ建て小屋のような道端の食堂では、お世辞にも清潔とはいい難い料理が運ばれる。飛び乗った列車はすし詰めで、さながらインド社会の縮図を見るよう。それでも人々はくったくなく、活力に満ちあふれている。最初は顔をしかめていたミヒカも、次第に彼らのペースに合わせ、流れにまかせるようになる。

 最後に明かされる秘密に、思わず涙腺が緩む。パタックは「インド人は悩みがあってもユーモアを見つけ、前向きになる方法を探す。貧しくても裕福でも、教育があろうとなかろうと関係ないんだ」という。マヌの一見無責任な行動は、日本に住む私たちの背中も、そっと押してくれるだろう。

 ミヒカを演じたラーラ・ダッタは、2000年のミス・ユニバース。夫はテニスの元有名選手マヘシュ・ブパシ。夫妻が設立した映画会社の初作品で、ダッタは製作も兼ねている。

(文・遠海安)

「デリーに行こう!」(2011年、インド)

監督:シャシャーント・シャー
出演:ビナイ・パタック、ラーラ・ダッタ

2014年2月15日(土)、オーディトリウム渋谷ほかで全国順次公開。
タグ:レビュー
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2013年11月22日

「神さまがくれた娘」、2014年2月15日公開決定

 父と娘の愛を描くインド映画「神さまがくれた娘」が、2014年2月15日に公開されることが決まった。

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