2020年02月26日

「パラサイト 半地下の家族」ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ来日「世界は同じ苦痛を抱えている」

IMG_4121.jpg

 米アカデミー賞で外国映画として史上初の作品賞を含む最多4部門を制した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督、主演のソン・ガンホが2020年2月23日、東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見した。格差社会を巧みな演出で描いたポン監督は「世界のさまざまな国が同じ苦痛を抱えている。社会の二極化の事実を暴くより、未来に対する恐れを描きたかった」と語った。

 日本でも公開中の「パラサイト 半地下の家族」は、2月22日までに興行収入30億円(動員約220万人)を突破。韓国映画として「私の頭の中の消しゴム」を超え、歴代興行収入1位を記録した。ポン監督は「劇場で熱く反応してくれた日本の観客に感謝したい」と語った。

IMG_3627.jpg IMG_3739.jpg


ソン「監督の『ねっとりしたところ』が好き」
 さらに、ソンは開口一番、日本語で「ソン・ガンホです」とあいさつ。日韓の映画交流が盛んだった2000年代初頭を振り返り「残念なことにその後は減ってしまった。『パラサイト』を機に韓国の素晴らしい監督の作品、日本の優れた芸術家の活動が関心を呼び、互いの文化に共感が持てればいいと思う」と話した。

 二人は「殺人の追憶」(03)、「グエムル 漢江の怪物」(06)、「スノーピアサー」(13)を経て4作目のタッグ。ソンはポン監督の魅力を「ねっとりしたところ」と表現。カンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)受賞ではうれしさのあまりポン監督の胸を強く叩き、骨にひびが入ってしまったという。監督との仕事は「祝福であり苦痛。監督が芸術家として持つ野心を、私が俳優として達成するための苦痛。現場では監督とあまり話さず、何を撮ろうとしているか探るのが好きだ。俳優としては難しく、楽しく、興味深い行為で、あえて尋ねずに見つけようと心がけている」と明かした。

 一方、ポン監督は、ソンについて「演技が本当に素晴らしい」と絶賛。脚本をあて書きする時は「うきうき草原をはねる子馬のような気分になる」と高い信頼を寄せている様子を見せた。

IMG_3800 (1).jpg

ポン監督「匂いを語ることで、一線を越える状況描いた」
 また、作品の重要なポイントとなる「匂い」について、ポン監督は「匂いは礼儀に関することなので、たとえ感じても口に出せない。生きる環境、生活条件、置かれた状況を表すもの。映画では意図せず匂いについて聞いてしまうことで、人間の礼儀に対して一線を越えてしまう状況を描いた」と語った。

 これに対し、視覚の上には表れない匂いを繊細な演技で表現したソンは「目に見えない線や匂いは、映像で見せにくい。演技する時は、漠然と観念的な方法ではなく、ドラマの構造の中に入り込み、心理的に理解するよう心がけている」と話した。

 全米俳優組合(SAG) 賞の作品賞にあたるキャスト賞受賞について、ソンは「俳優のアンサンブルに与えられる賞。題名は『パラサイト』だが、私たちのこの社会をどう生きるか、寄生ではなく共生を描いている。(演技のアンサンブルを評価する)賞が獲れて、意図がきちんと伝わったと考えている」と述べた。

IMG_3742.jpg

ポン監督「ウイルスより過度な反応、国家的・人種的な偏見が恐ろしい
 新型コロナウイルスが拡大する現状について、ポン監督は「浦沢直樹さんの『20世紀少年』を思い出す。人間心理が作る不安や恐怖が大きく、巻き込まれると災害を克服するのが難しくなる。過度な反応や国家的・人種的な偏見で、より恐ろしいことが起きる。我々は問題を乗り越えられると希望的に考えている」と前向きに語った。

IMG_3864.jpg IMG_3886.jpg

 作品を通じて伝えたかったことについて、ポン監督は「世界のさまざまな国は同じ状況、苦痛を抱えている。二極化と呼ばれるその事実を暴くより、未来に対する恐れを描きたかった。未来の私たちは二極化を克服しうるのか。たやすいことではない。私は悲観主義者ではないが、今後どうすべきなのか。私の不安や恐れは、この時代を生きるすべての人が抱えているのではないか。メッセージやテーマを真顔で伝えるのが得意ではない。冗談交じりで伝えるのが好きだ。声高に主張するより、映画的な美しさの中、映画的方法で、俳優の豊かな表現とともに、映画的な活気をもって伝えたかった」

ポン監督「クラシックを作りたい。『七人の侍』のような」
 最後に今後の目標についてポン監督。「恥ずかしいが……クラシックを作りたい。作品が時間を超えてほしい。ほぼ妄想のようなものだ。キム・ギヨン監督の『下女』や黒澤明監督の『七人の侍』、ヒッチコック監督の『めまい』のように」と話した。

IMG_4024.jpg IMG_4059.jpg

 また、翌24日に東京・六本木で開かれた舞台あいさつには、二人の20年来のファンという草なぎ剛が登場。カンヌ最高賞、米アカデミー賞など世界で評価されたことを祝福した。

(文・遠海安 写真・岩渕弘美)

「パラサイト 半地下の家族」(2019年、韓国)

監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン

全国公開中。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.parasite-mv.jp/

作品写真:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
posted by 映画の森 at 00:47 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。