2018年10月25日

「旅猫リポート」愛する猫と別れの旅路 福士蒼汰、光る繊細演技

1.jpg

 元野良猫のナナ(声・高畑充希)は、交通事故に遭ったところを心優しい青年・悟(福士蒼汰)に助けられ、飼い猫として5年間、幸せに暮らしていた。しかし、悟はある事情でナナを手放さなくてはならなくなり、一緒に新しい飼い主を探す旅に出る──。

 有川浩の同名小説を映画化。監督はフジテレビのホラードラマ「トリハダ」シリーズや「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」(16)の三木康一郎、音楽は「この世界の片隅に」(16)のコトリンゴ。

 「吾輩は猫である。名前はナナである」。夏目漱石の「吾輩は猫である」の書き出しになぞらえ、物語の幕が開く。ナナの心の声が随時差し込まれ、悟との道中がロードムービーのように描かれる。悟は過去を回想し、過去と現在が交差する構成だ。

2.jpg

 ナナを手放す旅の最初の目的地は、悟の小学校時代の同級生・幸介(山本亮介)が働く実家の写真館。小学生のころ、二人は猫を拾い、悟が「ハチ」と名付けて飼い始める。一方で当時、幸せな悟の人生を左右する大変な出来事が起きる。

 次に向かった先は、高校時代の同級生の千佳子(広瀬アリス)と修介(大野拓朗)夫婦が経営するペンションだ。3人は高校時代に仲が良く、姉御肌の千佳子に悟と修介は淡い恋をした。しかし、ペンションの飼い犬とナナが大ゲンカ。最後に向かったのは、悟が子どもの頃から世話になっている伯母(竹内結子)の家だった。

3.jpg

 起承転結の「起」をぼかして旅は始まる。旅の途中で悟の人生が振り返られ、ナナを手放す理由も見えてくる。行きつく先はまさかの着地点。予想もせぬ展開に驚き、涙があふれた。過去と現在を交差させ、悟の過去と今をしっかり伝えながら、感情移入するよう作られている。巧みな構成と演出だ。

 今年公開の「曇天に笑う」(18)で、天真爛漫で破天荒な主人公をエネルギッシュに演じた福士。今回は正反対。憂いと陰りのある繊細な演技に成長を感じた。ナナを擬人化した心の声が効果的で、高畑のユーモアある表現力は、陰の功労者といえる。猫好きでない人にもお勧めの心温まる感動作だ。

(文・藤枝正稔)

「旅猫リポート」(2018年、日本)

監督:三木康一郎
出演:福士蒼汰、高畑充希(声)、広瀬アリス、大野拓朗、山本涼介

2018年10月26日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://tabineko-movie.jp/

作品写真:(C)2018「旅猫リポート」製作委員会 (C)有川浩/講談社

posted by 映画の森 at 23:55 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。