2017年08月02日

特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語」ジャック・ドゥミ夫妻、再評価受け一挙に5作品

『ローラ』main.jpg

 仏ミュージカル映画の傑作「シェルブールの雨傘」(64)、「ロシュフォールの恋人たち」(67)で知られるジャック・ドゥミと、同じく映画監督だった妻のアニエス・ヴァルダ。最近ドゥミの影響を受けた米ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」が注目され、再評価の動きが高まっている。

 特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福について5つの物語」ではドゥミが監督した「ローラ」(60)、「天使の入江」(62、日本初上映)、ヴァルダが監督した「ジャック・ドゥミの少年期」(91)、「5時から7時までクレオ」(61)、「幸福(しあわせ)」(65)の計5本がデジタルリマスター版で上映される。「幸福(しあわせ)」と同時に、ヴァルダが15年に監督した新作短編「3つのボタン」も上映される。

「ローラ」

 ドゥミの長編デビュー作。トレードマークとなった黒味から丸く画面が広がるアイリスインで幕を開ける。その後の作風を思わせる表現が随所に散りばめられている。港町ナントを舞台に、キャバレーの踊り子ローラ(アヌーク・エーメ)をめぐり、登場人物たちが繰り返しすれ違う。

 ドゥミの作品で面白い点は、人物が別の作品でも同じ役で登場することだ。「ローラ」は「シェルブールの雨傘」の前日譚ともいえる。主人公のローラン(マルク・ミシェル)は、この作品で夢破れて「アフリカに旅立つ」とナントの町を去っていく。その後「シェルブールの雨傘」で宝石商として成功。主人公のジュヌビエーヴ(カトリーヌ・ドヌーブ)と結婚する。

 「ローラ」に流れるミシェル・ルグランのテーマ曲「ウォッチ・ホワット・ハブンズ」は、「シェルブールの雨傘」の中で再び使われる。ローランが出会う母娘は、「シェルブールの雨傘」のジュヌビエーヴと母の原型だろう。ローラもドゥミ初の米映画「モデル・ショップ」(69)でその後が描かれる。「ローラ」はドゥミにとって原石。つたない部分もあるが、みずみずしい輝きを放つ愛すべき作品だ。

『天使の入江』main.jpg

「天使の入江」

 南仏のリゾート地ニースの「天使の入江」。パリから逃げてきた銀行員ジャン(クロード・マン)は、カジノでジャッキー(ジャンヌ・モロー)と出会い、2人でギャンブルにのめり込む。「天使の入江」はドゥミ作品では異質な意欲作といえる。ギャンブル依存症のジャッキー、ビギナーズ・ラックで博打にはまったジャン。ルーレットで勝ち負けを繰り返し、関係を深めていく。

 ジャッキーには夫と子供がいる。病んだ心をジャンは愛の力で断ち切れるか。夢見る作品が多いドゥミにしては現実的なテーマだ。ピアノの高音がきらめくルグランのテーマ曲は、ルーレットで転がり続ける玉の音を再現したよう。「ローラ」から始まるドゥミとルグランの合作は、ドゥミの遺作「思い出のマルセイユ」(98)まで続いた。

(文・藤枝正稔)

「ローラ」(1961年、フランス)

監督:ジャック・ドゥミ
出演;アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、ジャック・アルダン、アラン・スコット

「天使の入江」(1963年、フランス)

監督:ジャック・ドゥミ
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン、ポール・ゲール、アンリ・ナシエ

2017年7月22日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.zaziefilms.com/demy-varda/

作品写真:
「ローラ」(c) mathieu demy 2000
「天使の入江」(c) ciné tamaris 1994
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posted by 映画の森 at 10:32 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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