2017年07月30日

「海辺の生と死」島尾ミホと敏雄の恋 満島ひかりの熱演光る

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 太平洋戦争末期。奄美群島のカゲロウ島。国民学校で代用教員をしているトエは、駐屯してきた海軍特攻隊の隊長である朔(さく)中尉と出会う。知的で軍人らしからぬ朔に好意をいだくトエ。ある日、朔がトエの家を訪ねたのをきっかけに、ふたりは急速に接近し、愛し合うようになるが――。

 島尾ミホと島尾敏雄の恋愛実話を映画化した「海辺の生と死」。トエと朔は島尾夫妻、舞台となるカゲロウ島は、奄美大島の南に位置する加計呂麻島(かけろまじま)がモデルとなっている。

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 物語の中心人物はトエだ。朔に対するトエの思いの激しさ、一途さが全編を貫いている。子どもたちに慕われるやさしい先生。そんなトエが、朔と知り合い、恋に落ちるや、見る見る“女”となっていく。朔からの手紙を読んで陶然とし、浜辺での密会に恍惚となるトエ。狂おしいまでの恋心に、トエは身も心も委ねていく。

 朔は、いずれ爆弾を積んだ舟艇で敵艦に体当たりして果てる運命。そのときは、後を追って自分も死ぬ。残された短い時間の中で、トエは朔との恋に燃え尽きる覚悟なのだ。死と隣り合わせであるからこそ、トエの恋心は極限まで高まるのである。

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 実話がベースとなっている以上、トエにはどうしても島尾ミホが重なって見える。つまり、夫の敏雄が書いた小説「死の棘」で、嫉妬のため精神を病むミホの若き日の姿として、つい見てしまう。夫を強く愛するがゆえに、浮気を許せないという、ある意味、情の深い女性。そういう女性の若き日の姿がトエということになる。

 この映画は、そういう見方をしても十分に納得できる作品となっている。その最大の立役者は、もちろん満島ひかりである。育ちは沖縄だが奄美大島にルーツを持つ満島は、奄美の言葉を完璧にマスターした上で、トエ=島尾ミホのイメージを鮮やかに造形することに成功している。満島によって具現化されたミホは、この後、敏雄と結婚し、浮気した敏雄を執拗に責め立てる。そんな女性になるであろうことを予感させるのである。

(文・沢宮亘理)

「海辺の生と死」(2017年、日本)

監督:越川道夫
主演:満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種

2017年7月29日(土)、テアトル新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.umibenoseitoshi.net/

作品写真:(C)2017 島尾ミホ / 島尾敏雄 / 株式会社ユマニテ
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posted by 映画の森 at 07:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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