
「猟奇的な彼女」(01)、「僕の彼女はサイボーグ」(08)のクァク・ジェヨン監督(韓国)がメガホンを取った日本映画「風の色」が7月14日、韓国の「第21回富川国際ファンタスティック映画祭2017」でワールドプレミア上映された。上映には監督と主演の古川雄輝、藤井武美が駆けつけた。日本では来年1月末に劇場公開される。
恋人ゆり(藤井)の死を知らされた涼(古川)は、ゆりが「自分にそっくりな女性がいる」と話していた北海道を訪れ、彼女とうり二つの彩(藤井・二役)に出会う。彩も恋人のマジシャン隆(古川・二役)を海中イリュージョンの事故で失っていたが、隆は涼とそっくりだった。マジシャンを目指し腕を上げた涼は「隆のドッペルゲンガー」と呼ばれるようになる。涼は隆が失敗したイリュージョンを再現するため、真冬の知床に向かう。涼とゆり、隆と彩の関係が交錯する─−−。

「風の色」は、08年にゆうばり国際ファンタスティック映画祭に参加するため北海道を訪れたクァク監督が一面の雪景色にインスピレーションを受け、構想を温めてきた作品。10年の冬には札幌市に1カ月間滞在しシナリオを執筆。15年に北海道と東京などでロケを行った。
映画の重要なモチーフはマジックだ。Mr.マリックが指導と監修を担当し、古川が鮮やかな手さばきでマジックを披露している。過酷だったのはクライマックスとなる海中イリュージョンのシーン。水中での撮影は長時間に及び、古川はロケ後に体調を崩して安静を強いられたという。


同じ顔をした登場人物の正体をめぐるミステリーが加味されたロマンス。ゆりと彩、涼と隆は、顔こそ同じだが何かが違う。そのイメージには監督が感じた都市の類似性と相違性が投影されている。「札幌は日本の他の都市とは違い、風景や人々が東京と妙に似ている。それが雪に覆われると別の姿に変わるところに神秘的なものを感じた」(クァク監督)。
クァク監督特有のユーモアや小ネタもいたるところに散りばめられ、旧作のファンには必見の作品となっている。「風の色」は18年正月第二弾、TOHOシネマズ日本橋ほかで全国公開予定。
写真
1:ワールドプレミア上映後に登壇した(左から)古川雄輝、藤井武美、クァク・ジェヨン監督=2017年7月14日、韓国富川市で(映画『風の色』製作委員会提供)
2:クァク・ジェヨン監督=17年7月、韓国富川市で芳賀撮影
3:「風の色」場面写真=富川国際ファンタスティック映画祭事務局提供
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