2017年07月21日

「ローラ」「天使の入江」ジャック・ドゥミ初期の傑作 みずみずしい青春のきらめき

『ローラ』main.jpg

 「シェルブールの雨傘」(64)で知られるジャック・ドゥミが、1961年に発表した長編デビュー作「ローラ」。「海の沈黙」(47)や「いぬ」(63)の名匠ジャン=ピエール・メルヴィル監督に「真珠の輝きをもつ作品」と激賞されながら、日本では92年に一度公開されたきり。劇場ではなかなか見る機会のなかった貴重な作品だ。

 描かれるのは徹頭徹尾、男女の恋。踊り子のローラをローランが恋し、ローランを未亡人のデノワイエ夫人が恋し、水兵のフランキーをデノワイエ夫人の娘のセシルが恋し、そしてローラは水兵だったミシェルを恋し――。複数の恋が、それぞれ独立して、しかも互いに反響し合いながら進行する。とりわけアヌーク・エーメが二役を演じるローラとセシルの初恋が、それぞれ強い輝きを放って美しい。

 遊園地でフランキーと楽しい時間を過ごしたセシルが、乗り物から降り、ほどけた髪が風になびくスローモーションの場面。ミシェルが帰還し、ローラと再会、仲間の踊り子たちがすすり泣く場面……。印象的なシーンは枚挙にいとまがない。   

 主演は「男と女」(66)のアヌーク・エーメ。撮影はゴダール作品で有名なラウル・クタール。音楽はミシェル・ルグラン。名女優や巨匠たちがみな若く、全編にみずみずしい感覚があふれる作品だ。

『天使の入江』main.jpg

 「ローラ」に続く長編第2作が「天使の入江」。若い銀行員がカジノで出会ったブロンドの美女と意気投合し、一攫千金のギャンブルにのめり込んでいく。勤勉で消極的な生活を送っていた青年ジャンが、友人に誘われカジノを初体験。いきなり大金を稼ぎ出し、ギャンブルの魔力にとりつかれる。

 休暇を取って出かけたニーズのカジノでは、金髪の美女ジャッキーと意気投合。彼女の性的魅力も相まって、みるみるギャンブルに深入りしていく。世間知らずのジャンをそそのかし、持ち金を引き出す魔性の女を演じるのは、すでに大女優の風格が漂うジャンヌ・モロー。熟女の色香をふりまき、青二才のジャンを翻弄する。

 賭けが人生そのものと化しているジャッキーにとって、ジャンは単なる賭博のパートナーなのだろうか。一方、ジャンは、ばくちに夢中なのか、ジャッキーに夢中なのかが、自分でも分からないように見える。すれ違った二人の心が、重なり合うことはあるのか――。

 ギャンブルと年上の女性。それまでの人生にはなかった刺激と魅力に撹(かく)乱されながら、決断たる行動をとる青年ジャンの姿が爽快だ。

 両作品とも特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語」で上映。

(文・沢宮亘理)

「ローラ」(1961年、フランス)

監督:ジャック・ドゥミ
出演;アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、ジャック・アルダン、アラン・スコット

「天使の入江」(1963年、フランス)

監督:ジャック・ドゥミ
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン、ポール・ゲール、アンリ・ナシエ

2017年7月22日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.zaziefilms.com/demy-varda/

作品写真:
「ローラ」(c) mathieu demy 2000
「天使の入江」(c) ciné tamaris 1994

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posted by 映画の森 at 13:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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