2017年05月21日

全州国際映画祭(2)権力への挑戦を強くアピール、表現の自由守る姿勢鮮明に

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 4月27日から10日間にわたり開かれた韓国の「全州国際映画祭2017」(JIFF)は今年、「映画表現の解放区」をスローガンに掲げた。言うまでもなく、表現の自由を脅かす権力への挑戦を強くアピールする姿勢の表れだ。

 映画祭組織委員会によると上映作品は58カ国・地域の229本、観客動員数は7万9107人で、いずれも過去最大だった。韓国の大型連休と重なって動員が増えた側面はあるだろうが、強いメッセージを打ち出す映画祭に映画人や市民が賛同した結果とみることもできそうだ。

 昨年のJIFFが開かれたのは、釜山国際映画祭が上映作品の選定に介入しようとする釜山市との対立を深めていた時期だった。JIFFは釜山の騒動を尻目に、表現の自由を重視することを宣言し、政治・社会問題を告発する映画の数々をここぞとばかりに上映した。

 その後、韓国では朴槿恵前大統領の友人による国政介入問題が社会を揺るがす。さらに政府機関が政権に批判的な芸術家や文化人の「ブラックリスト」を作成していたことが明るみに出て、国民の怒りは頂点に達した。そして迎えた今年のJIFF。ラインアップをみると、一般市民が楽しめる商業映画や新人監督による劇映画と並んで、政治問題を扱ったドキュメンタリーが前回にも増して存在感を放っていた。

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 JIFFが製作を支援した「盧武鉉(ノ・ムヒョン)です」(イ・チャンジェ監督)は、無名の弁護士から国のトップに上り詰めた盧武鉉元大統領の人物像を、多くの人々の証言から描き出す。「国定教科書」(ペク・スンウ監督)は朴槿恵前大統領が推進した国定歴史教科書がテーマだ。国定教科書をめぐっては、就任したばかりの文在寅大統領が廃止の方針を示し、再び関心が高まっている。米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反対する母親たちの運動を取材した「ブルーバタフライ効果」(パク・ムンチル監督)も注目された。

大統領親子のドキュメンタリー

 キム・ジェファン監督の「ミスプレジデント」は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾反対デモの中心となった「朴槿恵を愛する会」(「朴サモ」)の構成員の心情に迫るドキュメンタリー。彼らは、朴槿恵氏の両親である朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領(在任1963〜79年)と陸英修夫人に深い感謝と信頼を寄せ、娘である朴槿恵氏の強固な支持層となっている。こうした守旧派の人々をメディアが正面から取り上げるのは異例のことだ。

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 韓国での朴正煕の評価は真っ二つに分かれる。産業化の立役者という肯定的な面と、民主化を阻んだ独裁者という否定的な面だ。急速な経済発展を体験した世代が朴正煕政権を肯定的にとらえる一方、現在の40代以下の民主化世代では否定派が圧倒的だ。その世代間の断絶は深刻である。

 映画は「朴サモ」のメンバーへのインタビューを通して、なぜ朴正煕がこれほどまでに尊敬を集めるのかを解き明かしていく。キム監督は「朴正煕という“亡霊”が現在も韓国社会を支配していることを伝えたかった。信じているものが、本当に信じる価値があるものなのかを問う映画」と話す。

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 テレビプロデューサー出身のキム監督は、これまでも映画を通して社会を批判・風刺してきた。2012年には李明博政権を総決算するブラックコメディー「MBの追憶」をJIFFで上映。当時から、大統領が変わるたびに政権を検証する映画を作る構想を持っていたという。その鋭い視線は「反・朴槿恵」の象徴である文在寅(ムン・ジェイン)大統領にも注がれている。

(文・写真 芳賀恵)

写真1−2:全州映画祭の会場
写真3:「ミスプレジデント」キム・ジェファン監督
写真4:「ミスプレジデント」上映後の質疑応答


posted by 映画の森 at 21:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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