2016年12月15日

「フィッシュマンの涙」薬を飲んだら魚になった 平凡なフリーターを襲った悲喜劇

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 病院で寝ているだけで報酬30万ウォン(3万円弱)がもらえる――。おいしい条件につられて参加した製薬会社の臨床実験。ところが、薬の副作用で上半身が魚へ突然変異してしまう。「フィッシュマンの涙」は、泣くに泣けない悲劇に見舞われた若者パク・グをめぐる物語だ。

 人魚(マーメイド)とは逆に、上半身が魚。シュルレアリスムの画家ルネ・マグリットの作品「共同発明」に想を得たという造形は不気味ではあるが、ギョロッとした目と厚い唇に愛嬌がある。モンスターというより、着ぐるみの“ゆるキャラ”といった感じ。とはいえ、本人にとっては深刻な事態である。

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 なのに、父親もガールフレンドのジンもパクに同情するどころか、金もうけの手段としか考えようとしない。自宅にかくまってくれた新人記者サンウォンも、製薬会社相手に戦う人権派弁護士も、あくまで自分たちの仕事が第一。どこまで親身になってくれているのか分からない。世間もパクに同情する人々がいるかと思えば、排除しようとする者もいる。

 面白いのは、父親やジンをはじめ、魚人間のパクを目にする誰もが大して驚かないことだ。それどころか、父親は対面するや開口一番「勉強もしないで何してる!」と息子の魚顔にビンタを食らわす。内容はシリアスだが、こういうコミカルな演出が全編にあふれていて、笑いが途切れない。

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 平凡なフリーターのパク。無名大学卒のサンウォン。ネットの投稿マニアであるジン。いずれも、社会の片隅でひっそり生きてきた人々だ。だから、金や地位に目がくらむのも仕方ないのだろう。各キャラクターに納得できるバックグラウンドがあるので、ストーリー展開に無理がない。

 製薬会社を相手取った訴訟での敗訴。パクの魚化の進行。そんな中、サンウォンも、ジンも、そしてパク自身も、気持ちに変化が生じていく。そして、最終的にパクが下した決断とは。

 格差社会、拝金主義、メディアの暴力──。日本はもちろん、どの先進国にも共通する問題をえぐり出し、各国の映画祭をにぎわせた話題作。「オアシス」、「ポエトリー  アグネスの詩」の巨匠、イ・チャンドン監督が脚本に惚れ込み、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加している。

(文・沢宮亘理)

「フィッシュマンの涙」(2015年、韓国)

監督:クォン・オグァン
出演:イ・グァンス、イ・チョニ、パク・ボヨン

2016年12月17日(土)、シネマート新宿、HTC渋谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://fishman-movie.jp/

作品写真:(C)2015 CJ E&M, WOO SANG FILM
posted by 映画の森 at 08:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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