
中国・重慶で花束の宅配サービスをしている若い女性、リン。ベルリンからきた中国人ビジネスマンと一夜をともにし、熱を上げてしまう。帰国した後も、彼から贈られたiPhoneで連絡を取り合っていたが、もう一度会いたい気持ちを抑えられず、一人、ベルリンへと旅立つ。
空港で出迎えたのは、彼の部下でマルコというドイツ人の男。とりあえず手配されたホテルで一晩過ごすと、翌日また男が現れる。彼女の世話をするよう命じられているのだろう。しかたなく行動を共にするが、いつまでたっても、彼には会わせてもらえない。「仕事で忙しいから」と言い訳するが、本当にそうなのか。業を煮やしたリンは、自力で彼に会おうと、ベルリンの街にさまよい出るが――。

言葉の通じない大都会で、恋する人を探し求めるヒロインの奮闘をコミカルに描く「I PHONE YOU」。主人公のリンに扮するのは、「レイン・オブ・アサシン」(2010)などに出演した中国の人気女優ジャン・イーエン。チンピラに絡まれたり、警察に捕まったり、数々のピンチに陥りながらも、決してくじけず、目標に向かって邁進する行動派のヒロインを、生き生きと演じている。
そんなリンのボディガードとして付き従うマルコ役には、「アイガー北壁」(2008)のフロリアン・ルーカス。気の強いリンに手を焼きながらも、徐々に彼女を好きになっていく中年男を、クールに演じている。この2人の関係が、エンディングに向かってどう進展していくかが大きな見どころだ。
メガホンを取ったのは、ドイツ在住の中国人女性監督タン・ダン。これまで多くのドキュメンタリー映画を撮ってきた手腕が、ベルリンの街のロケ撮影に発揮されている。大通りから小さな路地まで、さまざまなエリア、スポットを紹介しながら、その中に描き込まれる移民たちの姿。ドイツの現状が鮮やかに写し取られている。
中国の映画プロデューサー、ワン・ユーが、タン・ダン監督と組んだ、初の中独合作映画。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016では特別招待作品として上映された。ぜひとも劇場公開してほしい秀作である。
(文・沢宮亘理)
「I PHONE YOU 」(2011年、中国・ドイツ)
監督:タン・ダン
出演:ジャン・イーエン、フロリアン・ルーカス、ヒー・ビン、デイヴィッド・ウー、ワン・ハイゼン
作品写真:(C)Ray International (Beijing) LTD.