2016年04月10日

「ルーム」監禁された母子 脱出と再生の物語

room_main.jpg

 閉ざされた部屋で暮らす母親のジョイ(ブリー・ラーソン)と息子のジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)。体操して、テレビを見て、ケーキを焼く。部屋の中だけが2人の世界だった。

 小さな部屋は簡素だ。ベッドと洋服ダンス、キッチンと洗面台。バスタブはむき出しで置かれ、天井に小さな天窓があるだけ。ジャックはこの部屋で生まれ育った。ベッドで母と一緒に目覚め、部屋にあるもの一つ一つにあいさつ。2人だけで1日を過ごす。

 夜。ジャックはタンスに入れられる。重い足音とともに男が部屋に入ってくる。男は母に親しげに声をかけ、差し入れを手渡す。男の名前はオールド・ニック。母は男とベッドに入り、ジャックの孤独な時間が過ぎていく──。

room_sub1.jpg

 前半は起承転結の「起」がばっさり削られている。ジャックから見た室内劇で、つつましく愛あふれる世界だ。ところが母親が語る真実で状況は一転。サスペンスフルな部屋からの脱出劇になり、後半は外界を舞台に犯罪被害者の再生が描かれる。現実世界に戸惑うジャック、望まぬ形で生まれた孫を受け入れられない祖父(ウィリアム・H・メイシー)の苦悩。社会復帰を目指す母にも試練が課される。

 拉致監禁事件を被害者側から見た作品は珍しく、米国の闇があぶり出された印象だ。母子は好奇の視線に苦しみながら、一歩ずつ前へ進んでいく。米アカデミー賞主演女優賞を獲得したラーソン、子役のトレンブレイが名演。視点の置き方で見え方が変わる演出、構成が見事だ。

(文・藤枝正稔)

「ルーム」(2015年、アイルランド・カナダ)

監督:レニー・アブラハムソン
出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョアン・アレン、ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー、トム・マッカムス

2016年4月8日(金)、TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズシャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/room/

作品写真:(c)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015
posted by 映画の森 at 12:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | アイルランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック