2016年03月12日

「エスコバル 楽園の掟」逆らえない逃げられない 麻薬王はすべてを支配する

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 カナダ人青年がコロンビアにやってくる。一足先に現地入りした兄と合流し、サーフィンを楽しむ計画だ。眼前に広がる青い海、白い砂浜。思い描いていた通り、そこは最高のビーチだった。しかもとびきりの美女までゲットした。彼女の叔父は現地でも有名な大富豪。青年はパーティーで紹介された叔父に、たちまち気に入られるのだが――。

 優しく気前のいい叔父のパブロ。だが彼には「極悪非道な麻薬カルテルのボス」という裏の顔があった。青年ニックが気付いた時はもう手遅れ。“家族”の一員に組み込まれ、身動きがとれなくなっていた。

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 家族すなわち犯罪組織。パブロがニックを家族として受け入れた時点で、ニックは犯罪実行者の役割を割り振られていた。拒否する選択肢はない。生き延びるためには命令に従うしかない。だからといって、殺人を犯すわけにもいかない。驚くべきは警察を頼れないこと。政治家、慈善家の顔も持つパブロは、警察をも牛耳っているからだ。

 ジレンマに押しつぶされそうになりながら、必死で活路を探るニックを「ハンガー・ゲーム」シリーズのジョシュ・ハッチャーソンが熱演。自分自身と愛する女性を守るため、プロの殺し屋たちを向こうに回し「ハンガー・ゲーム」さながらのアクションを繰り広げる。

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 一方、実在した麻薬王、パブロ・エスコバルに扮するのはベニチオ・デル・トロ。服従する者には報酬を与え、反抗する者には容赦ない制裁を加える。二面性を持つ伝説の犯罪者を演じ、圧倒的な存在感を見せている。

 パブロの人物造形に、デル・トロの演技力が大きく寄与していることは間違いない。しかし、初メガホンとは思えないアンドレア・ディ・ステファノ監督の洗練された演出力の貢献度も大きい。

 たとえばニックに「猛犬に襲われた」と聞き、即座に誰の仕業かを悟り、パブロが手にメモをとるシーン。次のカットでは、加害者が逆さ吊りで焼き殺されている。パブロの冷酷無残さを、最も簡潔なやり方で、最も鮮烈に描写しており見事である。

(文・沢宮亘理)

「エスコバル 楽園の掟」(2015年、フランス・スペイン・ベルギー・パナマ)

監督:アンドレア・ディ・ステファノ
出演:ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ハッチャーソン、クラウディア・トレイザック、ブラディ・コーベット、カルロス・バルデム

2016年3月12日(土)、シネマサンシャイン池袋ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.movie-escobar.com/

作品写真:(c)2014 Chapter 2 – Orange Studio - Pathé Production – Norsean Plus S.L – Paradise Lost Film A.I.E – Nexus Factory - Umedia – Jouror Developpement
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posted by 映画の森 at 23:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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