2015年09月26日

「サム・ペキンパー 情熱と美学」暴力映画の巨匠、横顔追ったドキュメンタリー

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 スローモーションを効果的に用いた暴力描写で、後のアクション映画に多大な影響を与えた「ワイルドバンチ」(69)。あまりに過激な暴力シーンが物議を醸した「わらの犬」(71)。その徹底した暴力描写から、ブラッディ・サム(血まみれのサム)の異名を取ったサム・ペキンパー。

 どの作品にも共通して貫かれていたのが、完成度のためには一切妥協しないという、頑ななまでの姿勢だ。そのため、プロデューサーとは衝突を繰り返した。チャールトン・ヘストン主演の「ダンディー少佐」(65)では編集をめぐり決裂。ハリウッドを敵に回し、しばらく映画界から遠ざかった。

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 俳優に対しても譲らなかった。テレビ映画「昼酒」(66)では、オスカーを2度も受賞している名女優オリヴィア・デ・ハヴィランドを罵倒したうえ、カットをかけた後もカメラを回し続け、その映像をこっそり使った。「わらの犬」ではダスティン・ホフマンの“メソッド演技”をせせら笑った。

 当然のことながら、人間関係は破綻。酒とドラッグに走り、最後は心臓発作で死去。59歳だった。遺作となったのは、ジュリアン・レノンのミュージック・ビデオ。巨匠らしからぬ寂しい晩年だった。

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 本作は、こういったペキンパーの貴重なエピソードの数々を、ペキンパー本人、および家族や仕事仲間たちが赤裸々に語るドキュメンタリーだ。

 「ワイルドバンチ」のアーネスト・ボーグナイン、「戦争のはらわた」(77)のジェームズ・コバーン、センタ・バーガー、「ゲッタウェイ」のアリ・アッグロウ……。ペキンパーにとって気の置けない仲間たち。偉大な監督をただ称賛するのではなく、トラブルメーカーでもあったペキンパーの奇行や武勇伝を、ジョーク混じりに語っている。

 マッチョで、わがままで、破滅型。タフなようで、もろい面もあった。作品中、蠍(さそり)を映したカットが何度も挿入される。「ワイルドバンチ」の冒頭で、蠍が蟻の群れに食い殺される有名なシーンを思い出した。もしかしたら、あの蠍はペキンパーが自身の姿を投影させたものだったのかもしれない。

(文・沢宮亘理)

「サム・ペキンパー 情熱と美学」(2005年、ドイツ)

監督:マイク・シーゲル
出演:サム・ペキンパー、アーネスト・ボーグナイン、ジェームズ・コバーン、クリス・クリストファーソン、センタ・バーガー、アリ・マッグロウ

2015年9月26日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.doc-peckinpah.com/


作品写真:(C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.
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posted by 映画の森 at 09:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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