2015年04月25日

「あの日の声を探して」チェチェンの悲劇 被害者と加害者、交差する運命

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 切ない恋愛劇を白黒無声で描いた「アーティスト」(11)で米アカデミー賞作品賞、監督賞を受賞したミシェル・アザナビシウス監督。新作「あの日の声を探して」は作風一変。チェチェン紛争に巻き込まれた3人を描く人間ドラマだ。

 99年、チェチェン。9歳の少年ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)は、ロシア軍兵士に目の前で両親を殺される。ショックで声を失い、赤ん坊の弟を見知らぬ家の玄関先に置き、ひとり放浪の旅に出たハジ。やがてフランスから調査に来たEU職員のキャロル(ベレニス・ベジョ)に出会い、心を通わせる。キャロルは幼いハジを守る決意をする。

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 一方、ロシア軍に強制入隊させられたコーリャ(マキシム・エメリヤノフ)は、過酷な任務、罵倒と暴力で心が壊れていく。人間性は失われ、普通の青年が戦争の道具に変わる。両親を惨殺された少年、おのれの無力さに絶望するEU職員、「人間兵器」に仕立てられた青年。3人のドラマが交差する。

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 原案はフレッド・ジンネマン監督の「山河遥かなり」(47)。ナチスの収容所に送られ、母と生き別れた少年を米兵が助ける物語だった。舞台はチェチェンに移され、説明描写は徹底的に排除され、観客は紛争に巻き込まれた人たちを目撃する。戦争の被害者への助けと友情。逆に加害者ができあがる過程。二つの線を重ねた構成が秀逸だ。非情な現実にもうならされる秀作である。

(文・藤枝正稔)

「あの日の声を探して」(2014年、仏・グルジア)

監督:ミシェル・アザナビシウス
出演:ベレニス・ベジョ、アネット・ベニング、マキシム・エメリヤノフ、アブドゥル・カリム・ママツイエフ、ズクラ・ドゥイシュビリ

2015年4月24日(金)、TOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://ano-koe.gaga.ne.jp/

作品写真:(C)La Petite Reine / La Classe Americaine / Roger Arpajou
posted by 映画の森 at 08:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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