2014年11月28日

「フューリー」生々しく残酷な戦場 ピット渾身の反戦映画

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 1945年4月。第二次世界大戦末期のドイツ戦線。米軍戦車「フューリー」を操る指揮官ウォーダディー(ブラッド・ピット)の4人部隊に、新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が配属された。戦闘経験のないノーマンは、いきなり凄惨な現実を目の当たりにする──。

 人気俳優ブラッド・ピットが製作総指揮、主演を兼ねた戦争映画「フューリー」。シャイア・ラブーフ、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサルらが出演。監督、脚本、製作は潜水艦映画「U-571」(00)で脚本家デビューし、「エンド・オブ・ウォッチ」(12)、アーノルド・シュワルツェネッガー主演「サボタージュ」(14)を監督したデビッド・エアーだ。

 「フューリー」は「激しい怒り」を意味する。米独の戦車が正面からぶつかり、火花を散らす。現存する当時の戦車を博物館、コレクターから借り受けて撮影された作品だ。

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 いきなり最前線に放り込まれたノーマンは、元事務担当のタイピストだった。人と人が殺し合う現実を目の当たりにし、厳しい決断を次々と迫られる。ノーマンはいわば観客の視線を肩代わりする役。そんな彼に時に厳しく、時に優しく接するのがウォーダディーことドン・コリアー軍曹だった。幾多の激戦を生き抜いてきたウォーダディーは、戸惑うノーマンに人を殺す現実を教え込む。

 一方、いったん戦火がやむとノーマンを「息子」、「子供」と呼び、優しい一面を垣間見せる。立ち寄ったドイツの寒村で、村の娘と話すノーマンを見るウォーダディーの表情は、まさに父親の顔だ。しかし、つかの間の平穏は爆撃で地獄に。戦争の狂気、悲劇を短い時間で描いた出色のシーンだ。

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 さらに「フューリー」の5人は、上官から「連合軍の通り道を確保せよ」と命令を受ける。行く手にはドイツ軍の歩兵部隊300人が待ち受けていた。味方の戦車を次々失い、たった1台となったフューリー。このまま現場を放棄するか。陣地を死守するか。ウォーダディーは究極の選択を迫られる。

 爆撃で吹っ飛び、踏みにじられる兵士の肉片。見せしめに殺され、つるされる市民。戦場の現実が生々しく再現される。そんな極限状態で芽生える感情の揺れ動き。監督は人間心理を徹底的に掘り下げていく。成長するノーマンと、5人に生まれる絆が胸に迫る。戦争の過ちを伝えようとするピットの熱いメッセージを感じる。近年まれにみる骨太で硬派な戦争映画だ。

(文・藤枝正稔)

「フューリー」(2014年、米国)

監督:デビッド・エアー
出演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル

2014年11月28日(金)、TOHO シネマズ日劇ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://fury-movie.jp/

作品写真:(C)Norman Licensing, LLC 2014
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posted by 映画の森 at 15:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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