2014年11月09日

第19回釜山映画祭 新旧才能きらり ムン・ソリ監督短編 イム・グォンテク監督新作

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 韓国釜山市で開かれた第19回釜山国際映画祭(2014年10月2〜11日)では、話題の大作もさることながら、映画祭ならではのラインアップが観客の人気を集めた。そんな作品の中から、演技派女優が監督した短編と巨匠監督の新作を紹介する。

ムン・ソリ「女優の習性」コミカルに鋭く

 オープニングセレモニーの司会を渡辺謙とともに務め、「自由が丘で」「官能の法則」と複数の主演作が上映されたムン・ソリ。さらに自身がメガホンを取った短編映画「女優」を発表し、多才ぶりを見せつけた。

 「女優」は在籍中の中央大学校の先端映像大学院で、授業の一環で製作したもの。“女優ムン・ソリ”を主人公にしたコメディーだ。キャスティングの決定権をもつ映画監督につい愛想を振りまいてしまう「女優」の習性や、「女優」という人種に対する周囲の無遠慮な目を、コミカルに鋭く風刺した。

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 男たちが主人公の容姿について本人の前であけすけに語るシーンや、「女優にとって魅力と演技はどちらが重要か」という議論が展開されるシーンは、「飛び抜けた美形ではないが演技はピカイチ」という本人の評価と相まってリアリティーを醸し出す。自分をネタに客観的に描ける能力は、学生時代の演劇サークルで裏方を志していた頃から培われてきたものだろうか。

 舞台あいさつでムン・ソリは「自分はきれいだと思うか?」という質問に苦笑い。「オアシス」のイ・チャンドン監督に、かつて「君は十分にきれいだ。ほかの女優たちがあまりにもきれいなだけだ」と言われたというエピソードで会場を笑いに包んだ。「今の韓国の映画界は“男の映画”が全盛。女優に送られてくるシナリオは多くない」と、女優の活躍の場が少ない現状を憂う一幕もあった。

イム・グォンテク新作 生と死「人間とは何か」
 78歳の今も現役で活躍し、今年9月に韓国・仁川市で開かれたアジア競技大会では開幕式の総監督を務めたイム・グォンテク監督が、新作「ファジャン(同音異義語で「火葬」「化粧」の意)を発表した。

「ファジャン」質疑応答.jpg

 主演はイム監督作品の常連アン・ソンギで、化粧品会社の有能な重役という役どころ。彼は重い病気の妻(キム・ホジョン)を献身的に介護しているが、中途入社の若く美しい女性(キム・ギュリ)に特別な感情を抱くようになるというストーリーだ。二人の女性を通して生と死を対比させ、その間で揺れる人間の性(さが)をアン・ソンギが円熟の演技で表現している。

ファジャン.jpg

 上映後の質疑応答でアン・ソンギは「妻を愛しながらも若く美しいものにひかれるのは本性のようなものかもしれない。愛にはいろいろな形があるのではないか」と話した。イム監督は「これは生と死の物語だが、生と死は別々に存在するのではない」と自身の死生観を展開。これまでも宗教や民族意識をテーマに人間を描き続けてきたイム監督だが、本作は“人間とは何か”という問いに対するひとつの答えになっていると感じる。

(写真・文 芳賀恵) 

写真1:舞台挨拶するムン・ソリ=10月3日
写真2:「女優」
写真3:「ファジャンの」(左から)イム・グォンテク監督、アン・ソンギ、キム・ギュリ、キム・ホジョン=10月5日
写真4:「ファジャン」

posted by 映画の森 at 08:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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