2014年07月13日

「複製された男」 偶然出会った瓜二つの他人 どちらが“本物”か? 緻密で幻想的ミステリー

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 偶然出会った自分に瓜二つの他人。「複製された男」は、ポルトガルのノーベル文学賞作家、ジョゼ・サラマーゴの同名小説を、カナダの新鋭ドゥニ・ビルヌーブ監督が映画化した。幻想的で無機質な世界を舞台に、複雑で緻密に練られたミステリーだ。

 大学で歴史を教えるアダムは、同僚から映画のビデオテープを勧められて借りる。自宅でなにげなく見ていたところ、画面に自分と瓜二つの男がいることに気づく。あまりに似ているため、驚きは恐怖に変わり、アダムは男の行方を探し始める。

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 やがてその男・アンソニーの居場所を突き止めたアダム。遠くからこっそり監視するうち、居ても立ってもいられなくなり、直接会って話すことを決意する。対面した二人。話してみると、顔や声、体格、生年月日、長じてから体にできた傷まで一緒と分かる。

 いったいどちらがオリジナルで、どちらがコピーなのか。衝撃を受けた二人は、もう一人の自分の存在が頭から離れない。悩みは日常生活にも支障をきたし始め、互いの妻や恋人を巻き込み、自己喪失の危機が拡大していく──。

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 全体に黄味がかった画面と、無機質で生活感のない町。大学へ行き、帰宅し、自宅で過ごす単調な毎日。主人公のぼんやりした倦怠感をギレンホールがうまく出している。そんな中で偶然見てしまったもう一人の自分。神経質な彼は追いかけずにいられない。

 真相を暗示するセリフ、想像力を刺激するさまざまな小道具。近未来的でありながら、空気がのっぺりした息の詰まる世界。一番近くにいるのに、なぜか謎めいた恋人と妻。監督は原作を読みながら「強いめまいを感じた」というが、その戸惑いがうまく映像化されている。

 ポルトガル語圏が生んだ唯一のノーベル賞作家、サラマーゴが「ある朝ひげを剃っていて、鏡に映る自分を見た時思いついた」物語。観客に問いを投げ続けながら、混沌の世界にいざなう作品だ。

(文・遠海安)

「複製された男」(2013年、カナダ・スペイン)

監督:ドゥニ・ビルヌーブ
出演:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ、ジョシュ・ピース

2014年7月18日(金)、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://fukusei-movie.com/

作品写真:(C)2013 RHOMBUS MEDIA (ENEMY) INC. / ROXBURY PICTURES S.L. / 9232-2437 QUEBEC INC. / MECANISMO FILMS, S.L. / ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED.

posted by 映画の森 at 10:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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