2014年07月10日

「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」 天才異端児の生きざま デビッド・ギャレットが熱演

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 前代未聞の超絶技法から“悪魔のバイオリニスト”と呼ばれたニコロ・パガニーニ(1782〜1840)。女、酒、ギャンブルに明け暮れた破天荒な生きざまと、生涯でただ一人純愛を捧げたシャーロットとの関係を描く。パガニーニ役には、クラシックとロックの両分野に挑む人気バイオリニスト、デビッド・ギャレット。今回が俳優デビュー作で、製作総指揮と音楽も担当した。監督は「不滅の恋 ベートーヴェン」(94)のバーナード・ローズだ。

 1830年、イタリア。オペラの幕間にバイオリンを演奏して生計を立てていたパガニーニ。観客は演奏に見向きもせず、おしゃべりに夢中である。才能は認められず、手持ちの金も尽きていた。そこへウルバーニ(ジャレッド・ハリス)と名乗る男が現れ、「君を世紀のバイオリニストにする」と宣言する。

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 ウルバーニの計画は、斬新すぎるパガニーニの演奏に「自分の手で観客をついていかせる」ものだった。ウルバーニは「あの世で恩を返してくれ」と言い、二人は音楽史を変える奇妙な同盟関係を結ぶ。パガニーニに「悪魔に魂を売り渡した」伝説をまとわせ、英国デビューを画策したのだ──。

 伝説の偉人を崇高に描いた作品ではない。監督はパガニーニを“音楽史上初のロックスター”ととらえている。そのアプローチはエンドロールの最後に記された「ケン・ラッセルに捧ぐ」に凝縮されている。ラッセル(1927〜2011)は伝記映画を多く監督した。チャイコフスキーの「恋人たちの曲 悲愴」(70)、グスタフ・マーラーの「マーラー」(74)、フランツ・リストの「リストマニア」(75)など、演奏家を一人の人間として赤裸々に描き、カルト的な人気を持つ監督だ。

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 そんなラッセルの遺志を引き継ぎ、ローズ監督はパガニーニを非常にくせのある、天才異端児として描く。酒と女におぼれ、コンサート前日に商売道具の楽器を賭博で失う。有名になった後は女性記者が色仕掛けで近づき、行く先々に熱狂的な女性ファンが集まる。一方で「女を惑わす男」として女性権利団体の抗議デモが待ち構える。現代のロックスターと重なる姿だろう。後半は英国にパガニーニを招いた指揮者ワトソン(クリスチャン・マッケイ)の娘シャーロット(アンドレア・デック)との純愛が描かれる。

 「24のカプリース」などパガニーニの代表曲をギャレットが吹き替えなしで演奏し、作品に説得力を与えている。俳優デビュー作とは思えない堂々たる演技とカリスマ性、圧倒的な存在感だ。コアなクラシック・ファンだけでなく、映画好きに向けても情熱を注いで作られた音楽映画である。

(文・藤枝正稔)

「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」(2013年、ドイツ)

監督:バーナード・ローズ
出演:デビッド・ギャレット、ジャレッド・ハリス、アンドレア・デック、クリスチャン・マッケイ、ジョエリー・リチャードソン

2014年7月11日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://paganini-movie.com/

作品写真:(C)2013 Summerstorm Entertainment / Dor Film / Construction Film / Bayerischer Rundfunk / Arte. All rights reserved

posted by 映画の森 at 21:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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