2014年05月11日

第15回全州国際映画祭 大賞にアルゼンチン映画 大阪朝鮮高ラグビー部密着「60万回のトライ」も受賞

オープニング作品「新村ゾンビ漫画」の監督ら.jpg

 「デジタルと独立」をテーマにした第15回全州国際映画祭が、韓国・全州市で5月1日から10日まで開かれた。7日には各コンペティション部門の受賞作を発表。インターナショナル・コンペティション部門はアルゼンチンのBenjamin Naishtat監督の「History Of Fear」が大賞。韓国コンペティション部門はチャン・ウジン監督の「新たな出発」が大賞に、大阪朝鮮高校のラグビー部に密着したドキュメンタリー「60万回のトライ」がCGVムービーコラージュ配給支援賞に選ばれた。

「60万回のトライ」舞台あいさつ.jpg

 4月16日に発生した旅客船「セウォル号」の沈没事故を受け、韓国は重苦しい雰囲気に包まれている。テレビは娯楽番組を自粛し、イベントが相次いで中止となる中、全州映画祭もレッドカーペットや野外コンサートを取りやめ、映画の上映とトークイベントのみを行った。ゲストは華やかな衣装の代わりにモノトーンの衣装に身を包んで参加した。

 オープニング作品は、リュ・スンワンら韓国の若手3監督による3Dオムニバス作品「新村(シンチョン)ゾンビ漫画」。これを含め44カ国の181作品を上映した。

メーン会場「映画の通り」.jpg

 「南営洞1985 国家暴力、22日間の記録」のチョン・ジヨン監督や「許されざる者」の李相日監督らが審査員を務めたインターナショナル・コンペ部門は、ノミネート10本のうち4本が南米の映画。大賞の「History Of Fear」はブエノスアイレス郊外で起きる不可思議な事件をモチーフに、人間の感じる恐怖の根源を描き、独創的で実験的な作風が高く評価された。 

 韓国のインディペンデント映画を対象にした韓国コンペ部門では、韓国人映像ジャーナリストの朴思柔(パク・サユ)監督と在日コリアン3世の朴敦史(パク・トンサ)監督による大阪朝鮮高級学校ラグビー部のドキュメンタリー「60万回のトライ」が、CGVムービーコラージュ配給支援賞を受賞。賞金のほか、広報にかかる実費が2000万ウォン(約198万円)まで助成される。

 また山田洋次監督の「東京家族」が、非コンペ部門のアジア映画を対象にしたネットパック(アジア映画振興機構)賞に選ばれた。 

韓国人監督が見た朝鮮学校

 「60万回のトライ」は日本では公開中(渋谷アップリンクほか)だが、韓国では初上映。上映は3回ともほぼ満席となった。

「60万回のトライ」.jpg

 大阪朝鮮高級学校ラグビー部は、強豪が集まる大阪地区でもトップクラスの実力をもつ。二人は2010年のチームに密着し、彼らの全国制覇の夢への挑戦を軸に、日本の朝鮮学校が直面する問題も取り上げた。

 初上映後のQ&Aでは、北朝鮮の体制の問題に言及していないことを指摘する観客もいた。朴思柔監督は「ラグビーは試合が終わると敵味方がなくなって仲間となる“ノーサイド”の精神がある。この映画には(国境をめぐる)さまざまな問題がノーサイドになってほしいというメッセージを込めた」と説明した。

 韓国では、日本の朝鮮学校についてほとんど知られていない。映画関係者が朝鮮学校に目を向けはじめたのも最近のことで、2006年に発表された北海道朝鮮小中高級学校のドキュメンタリー「ウリハッキョ」(キム・ミョンジュン監督)が最初だ。朴思柔監督は「『60万回のトライ』を通じて、韓国の人が同胞を取り巻く現実をもっと知ってくれたら」と期待を寄せた=写真は全州市内で筆者撮影。

(文・写真 芳賀恵)

「History Of Fear」.jpg 「新たな出発」.jpg

【受賞一覧】
◆インターナショナル・コンペティション部門
大賞「History Of Fear」
Benjamin Naishtat監督(アルゼンチン、仏、独、ウルグアイ、カタール)
作品賞「Coast Of Death
Lois Patiño監督(スペイン)
審査員特別賞「Hotel Nueva Isla
Irene Gutiérrez監督、Javier Labrador監督(キューバ、スペイン)

◆韓国コンペティション部門
大賞「新たな出発」チャン・ウジン監督
CGVムービーコラージュ配給支援賞「60万回のトライ」朴思柔・朴敦史監督
CGVムービーコラージュ創作支援賞「魔女」ユ・ヨンソン監督

◆韓国短編コンペティション部門
大賞「あのドアはいつから開いていたんだっけ?」ハン・インミ監督
監督賞「12回目の補助司祭」チャン・ジェヒョン監督
審査員特別賞「ホサナ」
ナ・ヨンギル監督

◆ネットパック(アジア映画振興機構)賞
「東京家族」山田洋次監督
posted by 映画の森 at 11:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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