2014年02月20日

「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」 父と息子、冬の荒野を行く ブルース・ダーン、円熟の新境地

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 寒風吹きすさぶ米モンタナの冬。白髪をなびかせたウディ(ブルース・ダーン)が、高速道路を一心不乱に歩いている。ポケットには「100万ドル当選」と書かれた出版社の通知が入っていた。目指すは遠いネブラスカ。ウディは歩いて行くつもりだった。

 あえなく警察に保護された父を、息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)が迎えに来る。大酒飲みで記憶が混乱気味のウディ。デイビッドは当選話を「よくあるインチキだ」と断定する。母のケイト(ジューン・スキップ)も怒り心頭。駆けつけた兄のロス(ボブ・オデンカーク)は「老人ホームに入れるべきだ」と冷たい。

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 騒ぎが4度繰り返され、デイビッドは「当選はうそだと分からせるため、父の希望通りに連れて行ってやろう」と思い立つ。母の反対を振り切り、車の助手席にウディを乗せ、一路ネブラスカを目指すデイビッド。しかし息子の気づかいにも、ウディはいたってマイペース。こっそりバーで酒を飲み、頭をぶつけて病院に担ぎ込まれる。

 いよいよ目的地・ネブラスカのリンカーンが近づいた。デイビッドは父の生まれ故郷、ホーソーンの伯父レイの家に泊まると決めた。ケイトとロスも合流し、久しぶりに親戚一同が集合。しかしウディは旧知の知人と再会。うっかり「100万ドル当たった」と漏らしてしまう。ニュースは町を駆けめぐり、ウディは一躍“時の人”となるが──。

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 父と息子の一風変わったロードムービー「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」。ジョージ・クルーニー主演「ファミリー・ツリー」(11)が高く評価されたアレクサンダー・ペイン監督最新作だ。自身の故郷ネブラスカを舞台に、モノクロ映像で綴られる。

 父役のダーンが素晴らしい。過去にアルフレッド・ヒッチコック、フランシス・フォード・コッポラ、クエンティン・タランティーノ監督ら、数々の作品で反逆者や殺し屋を演じてきた。その荒っぽいイメージを一転、枯れてひょうひょうとした演技が評価され、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した。ダーンは言う。

 「今まで演じたどの役にも似ていなかった。個性を捨て、新しい方向性を探ってほしいと監督に言われ、非常にうれしかった。ウディは変化に興味がない。ずっと同じ生き方をしている。米国を築いたのは彼のような人々だ」

 その言葉通り、ウディが行く吹きさらしの荒野は、人の気配もなく閑散としている。ハリウッドらしい劇的な出来事も、驚くべき事件も起きない。どこかちぐはぐな家族も、からっぽな荒野と脱力感も、今の米国を象徴しているのかもしれない。

(文・遠海安)

「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」(2013年、米国)

監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ステイシー・キーチ、ボブ・オデンカーク

2014年2月28日(土)、TOHO シネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://nebraska-movie.jp/

作品写真:(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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posted by 映画の森 at 08:48 | Comment(0) | TrackBack(1) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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