
イタリア・ローマに暮らすジェンマ(ペネロペ・クルス)に電話がかかる。青春時代を過ごしたサラエボの旧友ゴイコ(アドナン・ハスコヴィッチ)からだった。ジェンマは16歳の一人息子、ピエトロとの関係を修復するため、二人で過去を振り返る旅に出る。
「ある愛へと続く旅は」は、ペネロペ・クルスが「赤いアモーレ」(04)のセルジオ・カステリット監督と再び組んだ作品。原作は監督の妻マルガレート・マッツァンティーニのベストセラー小説だ。
ローマからサラエボへ。ジェンマとピエトロの旅立ち、サラエボで過ごしたジェンマの青春時代、ゴイコとの出会い。写真家ディエゴ(エミール・ハーシュ)とのめぐり合いと結婚。ローマでの蜜月。しかし、楽しいはずの結婚生活は、不妊を発端に思いもよらぬ方向へ動く。

報道写真家のディエゴは、戦火が強まるサラエボへ。ジェンマも後を追う。仲間との再会を喜ぶ二人だが、ジェンマの不妊を知ったゴイコが、代理母としてアスカ(サーデット・アクソイ)を紹介する。夫妻と意気投合したアスカは、やがて男の子を出産する。しかし、サラエボの戦闘は激化し、ディエゴは戦地に取り残される。
ジェンマの波乱に満ちた人生を、史実を交えて描いたフィクションだ。白髪交じりになった現在のジェンマを軸に、青春を過ごしたローマ、ボスニア、クロアチアが時を超えて多層的に交差。ゴイコやディエゴとの出会い、ピエトロの出生の秘密が断片的に描かれる。ジェンマの旅は思い出と感傷にひたるのではなく、記憶の修正と真実を知るためのもの。その答えは意外な事実となり、息子に新たな生命を与える。

92年に勃発したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を巧みに盛り込み、一人の女性の現在と過去が複雑に絡み合う。パズルのピースを拾い集める作業で、完成した姿は予想を越えた美しさとなり、人を驚かせ感動させる。若さと老いを演じ分けたクルスの熱演も光る。
(文・藤枝正稔)
「ある愛へと続く旅」(2012年、イタリア・スペイン)
監督・脚本:セルジオ・カステリット
出演:ペネロペ・クルス、エミール・ハーシュ、アドナン・ハスコヴィッチ、サーデット・アクソイ、ジェーン・バーキン
2013年11月1日、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
作品写真:(C)Alien Produzioni / Picomedia /Telecinco Cinema/ Mod Producciones 2012