2013年10月02日

「パッション」 デ・パルマ監督原点回帰 美女二人の嫉妬と憎悪 混乱と恍惚のサスペンス

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 パソコンを仲良くのぞき込む女性2人。クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)とイザベル(ノオミ・ラパス)は、ベルリンの広告代理店で上司と部下だった。2人はスマートフォンのCM用動画を製作中。イザベルは新しいアイデアをひらめき、プロモーション用ビデオを作る。

 その後、クライアントが待つロンドンに向かったイザベルは、プロモーションを見事に成功させ、出張に同行した愛人ダーク(ポール・アンダーソン)と熱い一夜を過ごす。しかしベルリンのオフィスに戻ると、クリスティーンの信じられない仕打ちが待っていた。イザベルの手柄を横取りし、米ニューヨーク本社復帰を手にしたのだ──。

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 ブライアン・デ・パルマ監督、5年ぶりの新作「パッション」。監督は若き日に「キャリー」(76)、「殺しのドレス」(80)などのスリラーで、“ヒッチコックの後継者”と呼ばれた。その後、犯罪映画「スカーフェイス」(83)、「アンタッチャブル」(87)、大作の「ミッション・インポッシブル」(96)、「ミッション・トゥ・マーズ」(00)を経て、再びフィルムノワールへ回帰した。

 「パッション」は、仏映画「ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて」(10)のリメイク。初期デ・パルマ作品に通じるサスペンスだ。広告業界を舞台に、美女2人が出世に火花を散らす。ねたみと嫉妬が交錯し、憎しみへ発展し、ついに殺人に至る。バイセクシャル、同性愛などが隠し味となり、エロチック路線全開だった「殺しのドレス」、「ボディダブル」(84)を思い出させる。

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 監督得意の映画的表現法も際立っている。中でもクリスティーナの殺害シーンは秀逸だ。劇場でバレエを観るイザベルの目に映る世界と、クリスティーナが殺される過程。まったく別の出来事を、分割画面を使い同時進行で描く。「キャリー」などで効果を発揮した手法で、監督は観客を混乱と恍惚の世界へいざなう。

 さらに物語を複雑にするのが、クリスティーナの双子の姉の存在だ。幼い頃に事故死したはずの姉が、クリスティーナの葬儀に出現。その姿はヒッチコック監督の遺作「ファミリー・プロット」(76)に影響を受けた「殺しのドレス」に登場する「黒帽子、黒サングラス、黒手袋、黒コート」の金髪美女を踏襲している。

 ラストの展開と驚愕のオチも、「キャリー」や「殺しのドレス」に通じる。初期デ・パルマ作品の多くで音楽を手がけた作曲家ピノ・ドナッジオが、再び流麗なスコアを書いている。小道具のスマートフォンも最終的に大きな役割を果たす。新旧の映画的表現法を使い分け、デ・パルマ監督の魅力が詰まったスリラーに仕上がった。

(文・藤枝正稔)

「パッション」(2012年、仏・独)

監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘルフルト、ポール・アンダーソン

2013年10月4日、TOHOシネマズみゆき座ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.passion-movie.jp/

作品写真:(C)2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA
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posted by 映画の森 at 21:12 | Comment(0) | TrackBack(1) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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