2013年08月28日

「オン・ザ・ロード」 狂ったように生き、燃え尽きる 路上を駆け抜けた 作家の若き日

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 「ぼくにとってかけがえのない人間とは、なによりも狂ったやつら、狂ったように生き、狂ったようにしゃべり、狂ったように救われたがっている、なんでも欲しがるやつら、あくびはぜったいしない、ありふれたことは言わない、燃えて燃えて燃えて、あざやかな黄色の乱玉の花火のごとく、爆発するとクモのように星々のあいだに広がり、真ん中でボッと青く光って、みんなに『ああ!』と溜め息をつかせる、そんなやつらなのだ」(ジャック・ケルアック著『路上 オン・ザ・ロード』より)

 1947年。米ニューヨークに住む若き作家サル(サム・ライリー)の前に、西部出身のディーン・モリアーティ(ギャレット・ヘドランド)が現れる。少年院帰りで車泥棒の常習犯、16歳の恋人メリールウ(クリステン・スチュワート)を連れ、遊び回る奔放な男。“セックス至上主義”を掲げ、全身からエネルギーを発する男。父を亡くして沈んでいたサルは、たちまちディーンの熱にとりつかれる。

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 ディーンとの出会いで、サルの“路上の日々”が始まった。「デンバーに来い」。手紙1本で家を飛び出したサルは、ヒッチハイクで米大陸を横断する。再会したディーンは、サルに金髪の女性カミール(キルスティン・ダンスト)を紹介。メリールウがいるにもかかわらず、「彼女と結婚する」と告げる。

 ディーンの奔放は、とどまるところを知らなかった。カミールと一児をもうけながら、サルや友人のエド(ダニー・モーガン)、メリールウを引きつれ、車で大陸を疾走する。乾ききった砂漠にほこりを舞い上げ、先々で繰り広げられる性と狂乱の夜。しかし、ゴールなき旅は徐々に4人の心を疲れさせていた──。

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 1950年代、米国を席巻した「ビート文学」の旗手、ジャック・ケルアックの代表作「路上 オン・ザ・ロード」。ケルアックは実体験をベースに、わずか3週間でこの物語を完成させた。後に“ヒッピーの聖典”と呼ばれた同作は、ボブ・ディラン、ジム・モリソン、ブルース・スプリングスティーンらに大きな影響を与える。

 語り手であるサル、つまりケルアック自身が、台風のようなディーンに巻き込まれ、熱を受け、路上を駆け抜けた。若き放浪願望の赴くまま、恋、友情、ドラッグ、セックスを経て、何かを失い、傷つき、旅の終わりへ導かれる。ケルアックがディーンに出会い、旅で感じた興奮は、冒頭の一文が言い尽くしている。あまりに無軌道で、破滅的で、刹那的なディーン。時代や場所を問わず、若さのあやうさそのものだ。

 興奮を一気に紙に移そうと、タイプライター用紙を巻紙のようにつなげ、マシンガンを撃つがごとく書き続けたというケルアック。路上を疾走するように、47歳の短い生涯を終えた。

(文・遠海安)

「オン・ザ・ロード」(2012年、仏・ブラジル)

監督:ウォルター・サレス
出演:サム・ライリー、ギャレット・ヘドランド、クリステン・スチュワート、エイミー・アダムス、トム・スターリッジ、キルスティン・ダンスト、ビゴ・モーテンセン

2013年8月30日、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.ontheroad-movie.jp

作品写真:(c)Gregory Smith
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posted by 映画の森 at 15:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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