2012年12月27日

第13回東京フィルメックス 監督インタビュー(3)「ティエダンのラブソング」ハオ・ジェ監督 「農村生まれの経験、ルーツを記録したかった」

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 映画の森では2012年を締めくくり、第13回東京フィルメックス(11月23日〜12月2日)のため来日したアジアの監督インタビューをお届けします。第3回は中国映画「ティエダンのラブソング」の郝傑(ハオ・ジェ)監督です。

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 中国山西省の小さな村。6歳の少年ティエダンは、地元の民俗歌謡「二人台(アルレンタイ)」の劇団歌手・メイに恋をする。やがて文化大革命で歌謡が禁じられ、劇団は西へ流れていく。十数年後、メイは娘3人とともに村に戻る。成人したティエダンも歌手となり、劇団とともに旅に出る──。

 乾いた大地に響く朗々たる歌声、開放的でおおらかな村の人々。2年前の東京フィルメックス審査員特別賞「独身男」(10)のハオ監督が、再び自らのルーツである中国の農村を舞台に、ロードムービー調で送る人間賛歌だ。

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 主なやり取りは次の通り。

 ──映画に登場した「二人台」について詳しく紹介してほしい。現在も劇団形式で移動し、演じられているのか。

 山西省、河北省、陝西省、内モンゴル自治区で歌われている民間芸術。内モンゴル地域にはもともと漢民族がいなかったが、他の3省から漢民族が西へ移動する時、民謡も一緒に伝わっていった。二人台は「走西口(ゾウシーコウ)」という芝居形式で演じられる。

 今も移動して演じられているが、だんだんすたれてきている。若者はあまり二人台に興味がなく、年配の人たちしか見ないからだ。

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 ──なぜ映画に撮ろうと思ったのか。

 私は二人台を見て育った。中国農村部の農耕民族の行事は、生活と切り離せない芸術だった。中国では都市化が進むにつれ、農村には老人と子供だけ残され、若者は出稼ぎでいなくなった。農村は医療や教育制度が未整備なうえ、二人台のような劇も消えつつある。私は世代的にぎりぎりこの芝居を見るのに間に合った。きちんと農村のルーツを記録しておく必要があると思った。

 二人台は土地の人々と一体化している。「ティエダンのラブソング」を撮影中も、芝居や歌が始まると、周りの犬や鶏なども耳を傾け、吠えたり鳴いたりするのをやめた。土地とすべての生き物が、二人台と一体化しているようだった。

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 ──主人公の俳優は実際に二人台の歌手なのか。

 ティエダン役の俳優は、二人台で活躍する内モンゴルで有名な歌手。ほとんど毎日歌っている劇団生え抜きの歌い手だ。僕も彼が二人台で大変な有名人であることは知っていた。

 田舎で育ったので、小さいころは映画に触れる機会がほとんどなかった。大学で系統的に世界の素晴らしい作品を観て、映画監督になりたいと思った。自分の撮る映画は、自分の人生と密接に関係している。(1980年代以降に生まれた)「八十後」の若者として、自分の歩いてきた道──農村に生まれ、都会に出て、恋をして、仕事をしてきた経験を描いていきたい。 

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 ──農村のおおらかな性生活を描いた点も印象的だった。

 中国の田舎の農民は、嫁をもらい、子供を作り、金をもうけ、家を建てるのが人生のすべてだ。性生活もその一部として描いた。

 これまで中国の映画監督は知識人が中心だった。自分は農民ではないが、農民を撮る、というスタンスだ。賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督などもそう。逆に自分は農村に生まれ、町へ出て監督になった初めての世代。知識人が農民を描くのではなく、農村出身の自分が周りの人々を観察して撮っている。

 ──知識人が撮った農村映画に違和感を感じるのか。

 たとえば日本を撮る場合、外国人の僕が撮ると日本人が違和感を感じるのと一緒だ。知識人の彼らは「この人たちはこうだ」というが、自分は「僕たちは」と一人称を使える。

 農村の性生活についても、外から見る監督たちは実情をよく分かっていない。自分は中にいて知ったこと、赤裸々な部分を直接撮れると思う。

 郝傑(ハオ・ジェ) 1981年、中国河北省顧家溝生まれ。北京電影学院監督科卒。監督デビュー作「独身男」(10)は、サン・セバスチャン映画祭、バンクーバー映画祭などに出品された。

(文・写真 遠海安)

「ティエダンのラブソング」(2012年、中国)

監督:ハオ・ジェ
出演:フォン・スー、イエ・ラン

作品写真:東京フィルメックス事務局提供
posted by 映画の森 at 11:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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